野菜業務部
トマトは、栄養豊かな野菜として世界中で愛され、食卓に欠かせない野菜の一つである。日本では、戦後の食の洋風化とともに、栽培技術が発展して品種改良も進んだ結果、消費量が大きく増加した。消費量の増加などに伴ってトマトの作付面積や出荷量も増加し、トマトの指定産地は全国作付面積の51%、全国出荷量の65%を占める中核供給産地になっている。冬から春にかけては熊本県、栃木県、愛知県などの産地、夏から秋にかけては北海道、青森県、福島県、茨城県などの産地がバトンをつないで一年を通じてトマトを消費地に安定供給している。今回は、トマトの需給動向、トマトの指定産地の動向、全国一のトマトの指定産地である熊本県八代地域の取り組みを紹介する。
(1) トマトの作付面積・出荷量 ~冬春トマトの生産増で現状維持~
平成2年産から18年産、30年産にかけてのトマトの需給動向をみると、作付面積は、2年産1万4200ヘクタール、18年産1万2900ヘクタール(平成2年比91%)、30年産1万1800ヘクタール(同83%)となっており、30年産は2年産に比べ17%減少している。種別にみると、夏秋トマト(7~11月出荷)は、2年産1万100ヘクタール、18年産8750ヘクタール(平成2年比87%)、30年産7810ヘクタール(同77%)、冬春トマト(12~翌6月出荷)は、2年産4140ヘクタール、18年産4120ヘクタール(平成2年比100%)、30年産3970ヘクタール(同96%)となっており、夏秋トマトの作付面積が大きく減少している(表1)。
出荷量は、トマト全体では、2年産65万8900トン、18年産64万2200トン(平成2年比97%)、30年産65万7100トン(同100%)となっており、作付面積の減少を単収増などでカバーし現状を維持している。種別では、夏秋トマトは、2年産33万8100トン、18年産28万9000トン(平成2年比86%)、30年産26万8300トン(同79%)、冬春トマトは、2年産32万800トン、18年産35万3200トン(平成2年比110%)、30年産38万8800トン(同121%)となっている。主要産地が施設園芸ハウスの導入などにより冬春トマトの生産を拡大したことから、18年産には冬春トマトの出荷量が夏秋トマトを逆転している。夏秋トマトの出荷量の減少の要因の一つは、加工用夏秋トマトの出荷量が2年産7万5800トン、18年産3万8900トン(平成2年比51%)、30年産2万5700トン(同34%)と大きく落ち込んだことがある(表2)。なお、平成元年にトマト加工品の輸入が自由化され、毎年イタリア、米国、中国などから25万トン程度のトマト加工品(ジュース、ソース、ケチャップなど)が輸入されている(図1、2)。
30年産の都道府県別作付面積と出荷量をみると、作付面積上位5位は、熊本県1250ヘクタール(全国シェア11%)、茨城県915ヘクタール(同8%)、北海道804ヘクタール(同7%)、千葉県780ヘクタール(同7%)、愛知県507ヘクタール(同4%)となっている(表3)。出荷量の上位5位は、熊本県13万2800トン(全国シェア20%)、北海道5万500トン(同8%)、愛知県4万4000トン(同7%)、茨城県4万3900トン(同7%)、栃木県3万3700トン(同5%)となっており、トマト全体では産地が分散している(表4)。
しかし、種別にみると、冬春トマトは、熊本県11万800トン(全国シェア29%)、愛知県4万1000トン(同11%)、夏秋トマトは、北海道4万2400トン(全国シェア16%)、茨城県3万3300トン(同12%)、加工用夏秋トマトは、茨城県1万3100トン(同51%)、長野県6980トン(同27%)とそれぞれ上位2県に集中しており、各産地が季節、種別などですみ分けしつつ消費地に安定供給していることがうかがえる。
東京都中央卸売市場のトマトの月別入荷実績をみると、冬から春にかけては熊本県、栃木県、愛知県、千葉県などの産地、夏から秋にかけては北海道、青森県、福島県、茨城県などの産地がバトンをつないで一年を通じて消費地に安定供給していることがわかる(図3)。
(2) トマトの消費動向 ~トマトの消費量は増加傾向~
トマトの1人当たりの年間購入量は、平成2年3552グラム、18年3583グラム(平成2年比101%)、30年3989グラム(同112%)となっており(表5)、生鮮野菜全体の購入量が微減の中で、トマトブームもあって23年から増加し、25年以降は4000グラム程度で推移している。
1人当たりの年間支出額も、2年1788円、18年1938円(平成2年比108%)、30年2730円(同153%)となっており、生鮮野菜全体の支出額が横ばいの中で増加している(表6)。
トマトは、そのまま生食できるだけでなく、加熱調理して一度にたくさん食べることも多いため、栄養分を摂取しやすい野菜である。赤色の成分はリコペンで、活性酸素を除去する抗酸化作用があり、がんや動脈硬化を予防する働きがある。また、成熟果実に含まれるエスクレオサイドAという成分が動脈硬化を抑制する効果があることが確認され注目されている(注1)。
注1:2020年3月号農畜産業振興機構「野菜情報」「トマトに含まれるエクスレオサイドAの研究成果について~動脈硬化のメカニズムとトマトの関係~」
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2003/wadai.html
資料:農畜産業振興機構「野菜ブック」
https://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000313.html
(3) トマト加工品の生産量は増加
ケチャップ、ジュースなどのトマト加工品の生産量は、近年増加傾向にあり、平成30年度の生産量は35万9000トンと5年前(平成25年度30万5000トン)から18%増加している(図4)。品目別には、トマトジュースの生産割合が30年度生産量の33%と最も高く、次いでトマトケチャップ32%、トマトミックスジュース16%、トマトピューレー・ペースト1%の順であるが、トマトジュースが約12万トンと5年前から19%増えている。健康志向の高まりの中で、27年度に食品に含まれる機能性成分を表示する機能性食品表示制度が始まったことも需要増加の要因の一つになっているとみられる(表7)。
(1) 指定産地は全国作付面積の51%、出荷量の65%を占めるトマトの中核供給基地
トマトの指定産地数は、平成2年度127産地、18年度151産地(平成2年比119%)、29年度132産地(同104%)、作付面積は、2年度4705ヘクタール、18年度6562ヘクタール(平成2年比139%)、29年度6165ヘクタール(同131%)と、ともに近年減少傾向にあるが、出荷量は、2年度28万8955トン、18年度41万9352トン(平成2年比145%)、29年度43万1798トン(同149%)と増加している。
指定産地の収穫農家1戸当たりの作付面積をみると、2年度1924平方メートル、18年度3333平方メートル(平成2年比173%)、29年度3620平方メートル(同188%)と1.9倍に拡大し、指定産地外(912平方メートル)の約4倍となっており、経営規模の拡大や単収増等で効率的な経営を展開し、作付面積が微減の中で出荷量増加を実現していることがうかがえる(表8)。
指定産地における種別の作付面積上位5位の2年度から18年度、29年度の産地の推移をみると、冬春トマトは、2年度が愛知県、熊本県、千葉県、宮崎県、群馬県、18年度が熊本県、愛知県、栃木県、千葉県、宮崎県、29年度が熊本県、愛知県、栃木県、宮崎県、千葉県、夏秋トマトは、2年度が福島県、茨城県、熊本県、岐阜県、秋田県、18年度は熊本県、愛知県、栃木県、千葉県、宮崎県、29年度が茨城県、北海道、千葉県、青森県、熊本県の順となっている。また、上位5位の作付面積の合計は、冬春トマトは、2年度1250ヘクタール、18年度1514ヘクタール(平成2年比121%)、29年度1607ヘクタール(同129%)と増加する一方、夏秋トマトは、2年度1451ヘクタール、18年度2151ヘクタール(平成2年比148%)、29年度2038ヘクタール(同140%)と18年度から29年度にかけて8%減少している。この間に、全国の作付面積は17%減少しており、大規模な指定産地が全国シェアを増加させていることがうかがえる (表9)。
指定産地の全国シェアは、作付面積では、2年度33%、18年度51%、29年度51%、出荷量では、2年度44%、18年度66%、29年度65%と着実に増加している。指定産地は、全国作付面積の51%、出荷量の65%を占めるトマトの中核供給基地になっている(表10)。
(2) トマトの全国出荷量の約3割が野菜価格安定制度を活用
トマトの野菜価格安定制度の交付予約数量(制度加入数量)は、平成2年度11万6319トン、18年度17万4539トン(平成2年比150%)、30年度20万6506トン(同176%)と着実に増加しており、特に出荷期間が12~翌6月と長い冬春トマトの交付予約数量は、2年度から30年度にかけて約2.8倍に大きく増加している(表11)。全国出荷量に占める交付予約数量の割合(制度加入率)は、トマト全体で2年度18%、18年度27%、30年度31%と着実に増加しており、種別でも、冬春トマトが2年度13%、18年度24%、30年度30%、夏秋トマトが2年度22%、18年度32%、30年度33%と着実に増加している。トマトは、全国出荷量の約3割が野菜価格安定制度を活用しており、全国で132地区の指定産地が天候などによる価格変動リスクに対応しながら安定生産・安定出荷に取り組んでいることがうかがえる。
(3) トマトの入荷量・価格の変動は縮小
トマトの価格動向を、東京都中央卸売市場の月別卸売価格を使って、昭和41年度~43年度の「制度創設期」、昭和62年度~平成元年度の「中間期」、28年度~30年度の「最近年」で比較する。夏秋トマト(出荷期間7~11月)の平均卸売価格(キログラム当たり)は、制度創設期74円(100%)、中間期269円(364%)、最近年412円(557%)となっており、制度創設期から中間期にかけて2.7倍となり、中間期から最近年も1.4倍に上昇している。冬春トマト(出荷期間12~翌6月)の平均卸売価格は、制度創設期122円(100%)、中間期313円(257%)、最近年361円(296%)となっており、制度創設期から中間期にかけて2.6倍となり、中間期から最近年も1.2倍に上昇している。トマトの品種改良、栽培技術の向上、需要増加などにより価格は上昇傾向にあるが、特に夏秋トマトの価格上昇率が高く、冬春トマトの価格を上回るようになっている(表12)。
次に、東京都中央卸売市場の月別入荷量の変動係数を使ってトマトの3つの期間の入荷量の変動をみる。「変動係数」とは、「標準偏差÷平均」で求められ、バラツキや振れの大きさを示し、値が小さいほどバラツキが小さい。夏秋トマトの月別入荷量の変動係数は、制度創設期0.75、中間期0.34、最近年0.25、冬春トマトは、制度創設期1.03、中間期0.35、最近年0.29となっており、制度創設期はともに大きな入荷量の変動がみられたが、中間期にかけて大幅に低下し、その後も着実に低下し、最近年では0.25~0.29となっている。入荷量の変動係数は、制度創設期から最近年にかけて3分の1から4分の1に大幅に減少している。
また、東京都中央卸売市場の月別卸売価格の変動係数を用いて、トマトの3つの期間の価格の変動をみると、夏秋トマトの月別価格の変動係数は、制度創設期0.42、中間期0.28、最近年0.25、冬春トマトは、制度創設期0.28、中間期0.25、最近年0.24となっており、入荷量の安定化、栽培技術の向上、需要増加などに伴い、制度創設期から着実に低下し、最近年では0.24~0.25となっている。この間、トマトの指定産地の全国作付面積シェアは51%、出荷量シェアは65%まで増加するとともに、野菜価格安定制度の加入率も全国出荷量の約3割に上昇しており、しっかりした指定産地が育成され安定生産・安定出荷が行われるようになったことが入荷量と価格の安定に寄与していることがうかがえる(表13)。
(1) 熊本県八代地域の農業概況 ~全国一のトマトの指定産地~
熊本県八代地域は、東は九州山地、西は八代海をのぞみ、九州の中央に位置し、日本三大急流の球磨川の河口部に広がり、球磨川・氷川などから流入した土砂が堆積してできた扇状地、三角州を基部とした沖積平野、藩政時代から行われてきた干拓事業によって形成された豊かな八代平野を擁し、トマト、いちご、メロン、ブロッコリー、しょうが、キャベツ、ばれいしょ、い草など多種多様な農産物が生産される全国有数の農業地域である。
八代地域は、昭和41年に冬春トマト、53年に夏秋トマトが指定産地に指定され、トマトの市町村別出荷量は全国1位となっている(平成30年産出荷量①八代市6万6270トン、②玉名市(熊本県)2万9800トン、③鉾田市(茨城県)1万4600トン)(注2)。古くから春トマトの栽培が盛んであったが、施設栽培の近代化によって定植時期を早めることが可能となり、45年頃から冬トマトの生産が春トマトの生産を上回るようになった(写真1)。
注2:農林水産省「平成30年野菜生産出荷統計」
JAやつしろは、夜蛾類の活動を抑制する黄色蛍光灯やコナジラミ類を補足する粘着板を使用し、できる限り農薬を控えた栽培を行い、安全・安心なトマト、“はちべえトマト”(八代平野の「八」と「平」の字からネーミング)としてブランド化し販売している(図4)。また、八代の干拓地特有の塩分・ミネラルを多く含んだ土壌で栽培され、高糖度・小玉で果皮が固い特徴をもつトマトを“塩トマト”(商品名:「太陽の子」「塩次郎」)としてブランド化し、糖度8度以上を「セレブ」、糖度10度以上を「ロイヤルセレブ」と命名し、生産量は限られるが高級食材として販売している。また、規格外のトマトをドライトマト、トマトケチャップ、トマトジュースなどの加工用に活用している(写真2、3、4、5)。
(2) 八代地域のトマトの生産動向
~はちべえトマトの生産が大幅増~
八代地域のトマトの作付面積は、平成2年度282ヘクタール、18年度450ヘクタール(平成2年度比160%)、29年度521ヘクタール(同185%)となっており、全国の作付面積が減少傾向にある中で増加している。種別にみると、冬春トマトの作付面積が2年度189ヘクタール、18年度348ヘクタール(同184%)、29年度437ヘクタール(同231%)と大幅に増加する一方、夏秋トマトは、2年度93ヘクタール、18年度102ヘクタール(同110%)、29年度84ヘクタール(同90%)と減少している。
トマトの出荷量も、2年度1万9770トン、18年度3万4906トン(平成2年度比177%)、29年度5万9493トン(同301%)と大幅に増加しているが、種別には、冬春トマトが、2年度1万5030トン、18年度2万7280トン(平成2年度比182%)、29年度5万4620トン(同363%)と大幅に増加する一方、夏秋トマトは、2年度4740トン、18年度7626トン(平成2年比161%)、29年度4873トン(同103%)と近年減少している。はちべえトマトとしてブランド化を推進している冬春トマトを、主力商品として育ててきたことがうかがえる(表14)。
八代地域のトマトの収穫農家数は、2年度925戸、18年745戸(平成2年度比81%)、29年度860戸(同93%)と、2年度から18年度にかけて減少したが、18年度から29年度には増加している。収穫農家1戸当たりの作付面積をみると、2年度3049平方メートル、18年度6040平方メートル(平成2年度比198%)、29年度6058平方メートル(同199%)と倍増しており、経営規模の拡大、栽培技術の向上、選果場整備による労力軽減など産地全体で効率的な経営を展開し出荷量の大幅増を実現していることがうかがえる(表15)。JAやつしろの平均的なトマト農家の経営規模は、8000平方メートル程度、労働力5~10人程度、経営者の平均年齢は50歳程度となっている。
(3) JAやつしろのトマト戦略
ア これまでの取り組み
~はちべえトマトのブランド化による全国一の産地づくり、出荷量の約8割が野菜価格安定制度を活用~
JAやつしろは、多様で豊かな八代平野の自然環境を活かし、昭和41年に八代地域が冬春トマト、53年に夏秋トマトが指定産地の指定を受け、リース方式による施設園芸ハウスの導入、選果場の整備、トマト指導員の配置など生産基盤の強化と安定出荷に取り組んできた(表16、写真6、7)。こうした中で、価格変動リスクに対応するため、トマトの出荷量の約8割が野菜価格安定制度を活用している(全国では約3割)。また、前述のとおり、夜蛾類の活動を抑制する黄色蛍光灯やコナジラミ類を補足する粘着板を使用し、できる限り農薬を控えた安全・安心なトマトをはちべえトマトとしてブランド化を進めてきました。選果場で糖度を計測し糖度4度以下のものを規格外とし、糖度6.5度以上のものは「プライムトマト」として販売している。具体的には、次の六つの取り組みを重点的に進めてきた。①選果場の再編と同一選果機導入による4生産部会とJA熊本うき(宇城)を含めた規格・品質統一 ②専門的営農指導員の配置と施設園芸ハウスの導入 ③栽培履歴の徹底 ④消費地での宣伝・販売 ⑤新商品の開発 ⑥八代地域としての取り組み。
こうした取り組みの結果、平成20年から30年にかけて熊本県のトマトの出荷量、販売単価などをみると、
① 全国のトマトの栽培面積が20年3270ヘクタールから30年2910ヘクタール(平成20年比89%)に減少する中で、熊本県は20年550ヘクタールから30年543ヘクタール(平成20年比99%)と横ばいで推移している(表18)。
② 単収は、全国平均が20年10アール当たり8954キログラムから30年1万381キログラム(平成20年比116%)と微増にとどまっている中で、熊本県は20年10アール当たり8981キログラムから30年1万5341キログラム(平成20年比171%)と大幅に増加している(表18)。
③ この結果、出荷量は、全国では20年29万2800トンから30年30万2100トン(平成20年比103%)と増加している中で、熊本県は、20年4万9400トンから30年8万3300トン(平成20年比168%)へと、大幅な増加を実現している(表18)。
④ 販売単価をみると、24年の抗酸化作用があるリコペンによるトマトブームで23年産(平成23年10月~翌6月出荷分)の平均販売単価がキログラム当たり378円に上昇した後、翌年産から横ばいで推移したが、29年産以降低下傾向にある(図5)。
⑤ 生産・流通コストは、人件費(熊本県最低賃金)が20年628円から30年762円(平成20年比121%)、輸送費(東京までの4キログラム当たりコスト)が20年100円から30年120円(平成20年比120%)に上昇するなど、年々増加している(表19)。
このため、トマトの品質維持・向上と単収向上、生産現場や選果場の労働力の確保などによる農家の手取りの確保が課題となっている。
イ これからの取り組み
~消費者・実需者に選ばれる全国一のトマト産地づくり~
JAやつしろは、野菜価格安定制度の活用により価格変動リスクに対応しながら、消費者・実需者に選ばれる産地づくりに向けて、次の4つを重点的に取り組むこととしている。
① GAPの取り組み
平成28年度から熊本県版GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)の取得を推進し、30年3月に1組織が初めて取得し、30年度末までに全トマト農家が取得している。今後は、JGAP(運営主体:一般財団法人日本GAP協会)の取得を視野に入れて取り組む方針である。
② 機能性成分リコペンの計測
抗酸化作用がある機能性成分リコペンを計測し、機能性食品としての販売を検討する。29年度から計測と実証を行い、30年度産から試験販売を実施する。
③ 栽培技術の高位平準化
環境制御技術を用いたトマト栽培の新技術を補助事業も活用しながらソフト面・ハード面で積極的に導入する。
④ 雇用安定に向けた取り組み
生産現場、選果場等の人手不足に対応するため、外国人技能実習生の受入体勢の強化(これまでの中国人に加えカンボジア人の技能実習生を導入)、労働者派遣事業を活用した労働力確保対策、障害者福祉施設との農福連携の取り組み等を推進する。
ウ まとめ
熊本県八代地域は、野菜価格安定制度が創設された昭和41年に冬春トマトの指定産地に指定され、以来半世紀にわたり、野菜価格安定制度を活用しながら、施設園芸ハウスの導入拡大、栽培技術の向上、選果場の整備等に取り組み、全国一のトマトの中核供給基地となっている。トマトの出荷量の約8割が野菜価格安定制度を活用しており、高齢化・人手不足、人件費・輸送費等のコスト増などの課題がある中で、野菜価格安定制度で価格変動リスクに対応しながら、消費者・実需者に選ばれる産地を目指してGAPの取得、機能性成分リコペンの計測と販売、環境制御技術の導入、外国人技能実習生の受入体勢の強化などの取り組みを推進することとしている。
本稿の作成に当たり、現地調査や情報提供に協力いただいたJAやつしろおよび一般社団法人熊本県野菜価格安定資金協会の皆様に深く感謝申し上げる。