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調査・報告(野菜情報 2017年1月号)


野菜需給協議会現地協議会の概要

野菜需給部・企画調整部

要約

 野菜需給協議会(座長:中村靖彦、事務局:野菜需給部)は、平成28年11月21日、会員(マスコミ、生産者団体、消費者団体、流通・小売り団体など)を対象に、野菜の生産現場への理解を深めるため、埼玉ひびきの農業協同組合(本庄市)管内において現地協議会を開催し、意見交換やじょうの視察などを行った。今回の現地協議会は、当機構が主催する「消費者代表の方々との現地意見交換会」と合同での開催となり、消費者代表が生産現場を訪問して生産者などの関係者と意見交換することにより、情報共有を図ることができた。

 訪問先の概要

(1)埼玉県

埼玉県は人口728万人(平成28年日現在)で、全国でも番目に人口の多い都道府県である。一方、県の総面積は3798平方キロメートル(全国順位39位)と、人口とは逆に総面積小さな県である。その中で、農業産出額は1902億円(26年度)と全国17位で農業が盛んな県であり、野菜の産出額は967億円と約半分を占めて全国位に位置している(農林水産省「平成26年生産農業所得統計」)全国農業協同組合連合会埼玉県本部(以下「JA全農さいたま」という)では「暮らしのとなりが産地です」「近いがうまい埼玉産」などのキャッチフレーズで埼玉産野菜のPRをしている。27年の農産物別出荷量は、こまつなが全国位、ほうれんそう、ねぎ、さといも、かぶがそれぞれ全国位、ブロッコリーが全国位となっており、そのほか位以内に入るものも多くある(農林水産省「平成27年産野菜生産出荷統計」)

訪問した本庄市は埼玉県の北西部に位置し、人口万人(28年11月日現在)、面積は89.69平方キロメートルの田園都市で、肥よくな農地に恵まれ、ねぎ、ブロッコリー、きゅうり、ほうれんそう、なすなどの野菜の生産が盛んで、京浜地域をはじめ京阪神・中京・北海道地域へ出荷する、全国でも有数な野菜生産地である。夏秋きゅうり、冬春きゅうり、冬春トマト、夏秋なす、冬レタスにいては、国の野菜指定産地でもある。

(2)JA埼玉ひびきの

埼玉ひびきの農業協同組合(以下「JA埼玉ひびきの」という)は、平成年に埼玉本庄農業協同組合、上里町農業協同組合、埼玉美里農業協同組合、児玉町農業協同組合、神川農業協同組合、神泉村農業協同組合のつの農業協同組合が合併して設立された。管内は埼玉県北西部、都心から80キロメートル圏内に位置し、本庄市、上里町、美里町、神川町の町で、人口14万人、面積は200平方キロメートルである(図)。管内の耕地面積は5075ヘクタールで、全面積の25を占めている(平成27年農林水産省統計情報(市町村データ)より)。耕地の多くは畑作地帯と水田地帯であり、整備が行き届いた圃場や恵まれた栽培環境の下、野菜や米麦、果樹などの栽培が行われている。

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現在は、本庄市に本店・施設などがあり、組合員1万6417人(正組合員9975人、准組合員6290人、その他団体などを含む)で構成されている。

(3)JA埼玉ひびきの南部選果場

JA埼玉ひびきの南部選果場(以下「選果場」という)は、平成14年12月にJA埼玉ひびきの児玉集出荷所内に野菜産地強化特別対策事業(国庫補助)を活用して設置された(写真)。この施設の事業主体であるひびきの南部選果機利用組合(以下「利用組合」という)は、組合員である生産者139名(きゅうり54名、なす85名)によって構成されている。27年度はきゅうり40万ケース、なす15万ケースを出荷している。

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JA埼玉ひびきの管内は、きゅうりとなすの生産が盛んな地域である。しかし、近年は生産者の高齢化や後継者不足による供給力の低下、輸入野菜の増加などによる経営の不安定化が問題となっている。そこで生産者は、利用組合に出荷作業を依頼することで軽減された時間を品質の向上や規模拡大、新規作物の導入などに充てている。

選果場では、約60人が就業している。稼働期間は、きゅうりとなすの出荷に合わせた月から12月までとなっている。品目別の出荷時期は、春きゅうりは月中旬~7月上旬、秋きゅうりは月中旬12月末、なすは11月となっている。稼働時間はきゅうりの出荷時が10時14時、なすの出荷時は14時を基本としている。

視察の当日は、きゅうりの選果が行われており、生産者が利用組合の用意した青いコンテナに詰め選果場に持ち込んでいた。荷受けしたきゅうりは、コンテナごとにローラーの上を通って作業場に集められ、生産者ごとに作業員が本ずつきゅうりを白いトレイに丁寧に載せる。トレイに載ったきゅうりは、カメラセンサーにより曲がりと長さをチェックされ、つの等級に選別される。その後は作業員によって、機械では選別できない色の悪いものや傷みのあるものなどを取り除き、等級ごとに段ボールに詰めて出荷している(写真2~6)。

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○選果場での参加者からの質疑などの概要

Q:一番品質の良いA級品の割合は?

A:全出荷量の7~8割。

Q:きゅうりの品種はたくさんあるのか?

A:きゅうりの品種は多種あるが、この選果場で扱うものは種類となっている。品種の決定については利用組合で審議され、審議された品種の中から生産者が選ぶため、品質が良く栽培しやすい品種に集約されている。

(4)きゅうり(視察先:本庄地区きゅうり部会長の井上氏)

井上氏の圃場は約20アールのハウスで、栽培品種は「グランツ」、出荷は12月上旬で終了する。10月11月に出荷するきゅうりは、~9月ごろに定植作業を行っている。

きゅうりの生育適温は1825度程度と、比較的高温を好み、夏野菜として出回っていたが、施設栽培により周年出荷を行っている(写真)。

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○きゅうりの圃場での参加者からの質疑などの概要

Q:きゅうりの花が咲いてから収穫までの期間は

A:きゅうりは花が咲いてから約20日(最盛期は週間)で収穫できる大きさに成長する。また、きゅうりは単為結果性といって雌花は受粉しなくても全てが実になる。

Q:水はどのようにやるのか

A:ハウスの地下にはパイプが通り、それを通してきゅうりに水や肥料を与えている。

Q:地面に敷いてあるビニールシート(マルチ)はどのような効果があるのか

A:湿度が上がり、病気になりやすくなることを防いでいる。

Q:収穫が終わったきゅうりの樹はどうするのか

収穫が終わったら全て抜き、土壌消毒をしてから次の苗を植える。

(5)レタス(視察先:本庄地区金井氏)

出荷期間は10月から月までで、10月12月は露地栽培の結球レタス、サニーレタスやグリーンリーフなどの非結球レタスを出荷し、~3月はハウス栽培のレタスを出荷する。

結球レタスは、しゅから出荷まで約カ月かかる。露地栽培では、ハウスで約カ月育苗した後、圃場に定植し、約カ月で出荷できるようになる。ハウス栽培の場合は、同様に定植後カ月半で出荷できるようになる(写真、10)。

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視察した圃場では、胞子が出てレタスが腐る菌核病が一部で発生していた。例年であれば、この地域は赤城山からのからっ風が吹いて圃場を乾燥させるが、今年は雨が多く、霧が発生して湿度が高かったことが原因という。収穫間際でこの病気が発生すると消毒もできず、また菌が内部に侵入するとレタスの味が苦くなるので出荷できないことがあるという。

○レタスの圃場での参加者からの質疑などの概要

Q:マルチはどのような効果があるのか

A:マルチは土壌の保温と水分を一定に保つ効果があり、マルチを少し高くすることで雨が降っても水が残りにくく、多湿の状態にならない。また計画(継続)的な出荷を行うには、計画的に定植する必要がある。今年は降雨が多かったが早めにマルチを敷いていたため、雨が降っても定植できた。

Q:おいしいレタスの選び方はあるのか

A:お尻の部分をやさしく押してみて弾力があり、柔らかいものが甘味があっておいしい。

Q:どれ位の間隔で定植しているのか

A:27センチメートル×30センチメートル。10アール当たり8000株を植え、そのうち7000株の収穫を目標にしているが、病気の発生などでなかなか難しい。

 生産者との意見交換

(1)概要

意見交換会は、本庄営農センターの会議室で開催された。

初めに、欠席の中村座長に代わる藤島座長代理とJA埼玉ひびきのはちす常務理事よりあいさつがあり、JA全農さいたまの石川園芸販売部長、船越園芸販売課長より埼玉県の農業概況およびJA全農さいたまの取り組みが説明され、JA埼玉ひびきの五十嵐営農統括課長より農協管内の農業概況の説明が行われた(写真11)。

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○意見交換会における参加者からの質疑などの概要

Q:ほうれんそうなどの葉物類は保存期間が短いのでロスが多いと聞くが

A:露地栽培から施設(ハウス)栽培が多くなったことや、品種改良が進んで出荷に合わせて収穫できるため、昔と比べロスは少ない。

Q:冷凍野菜への取り組みは

A:ほうれんそうでは一部取り組んでいる。冷凍加工用に出荷するほうれんそうは、市場に出荷するものと比べ大きく育てる必要があり、生育期間が長くなる。野菜は天候によって成長が左右されるため、前もって予約した工場の予定に合わせるのが難しく、効率的な出荷ができないリスクがある。また、冷凍加工用は加工費がかかるため、生産者からの仕入れ値が抑えられる傾向がある。そのため、生産者からすると生食用に市場向けに出荷したほうがもうかるので、限定的になってしまう。

新規就農者を増やすための対策は

A:定年退職者を対象とした経営塾を開催したり、またJA全農さいたまでは、機械の導入に当たって補助金制度を取り入れたり、新規就農しやすい環境作りをしている。

Q:その耕作地はどのようにしているか

A:新規就農者を希望する地域の指導員に依頼し、地元の休耕地を紹介するなどしている。また、就農後は新規就農者の交流を図る場を設けるなどしている。

Q:契約栽培への取り組みは

A:カット野菜や漬物の製造メーカーなどから依頼があった際、取引条件などを生産者に提示し、マッチングを行っている。

Q:生産者は、天候に対するリスクにどのように対応しているか

A:各生産者は天候不順でも影響を受けにくい施設(ハウス)栽培を行ったり、多雨にも強い品種を選んだり、土壌を改良したりしている。

意見交換会では、参加者や消費者団体から地元農産物や新規就農者対策などの取り組みに対する質疑だけでなく、普段疑問に思っていること、若者や主婦の立場での要望についても活発な意見交換が行われ、生産者団体にとっても消費者の持つ意識の共有が図られるなど有意義な場となった。



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