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調査・報告(野菜情報 2016年11月号)


ベビーリーフの需要特性と周年供給ニーズへの対応
~株式会社HATAKEカンパニーを事例として~

岩手大学農学部食料生産環境学科 教授 佐藤 和憲

要約

 ベビーリーフは、ヘルシーなイメージと手軽さから需要が急速拡大している。これに対応して、食品企業、ベンチャービジネス、カット野菜業者が子会社、出資、契約取引などの形態で参入してきており、大規模経営が形成されている。こうした大規模経営は、機械化、自動化された選別・調製・包装工程により、スーパーマーケットなどの大ロット発注に迅速かつ機動的に対応するとともに、低コスト化を実現しており、大きな競争力を有している。

1 課題

ベビーリーフは野菜の幼葉をミックスして袋詰めした商品で、ヘルシーなイメージや洗ってすぐに食べられる手軽さから、需要が急速に拡大している。これに対応して、近年、急速に企業的な大規模経営が短期間に形成されている。つまりベビーリーフは、需要と供給の両側面における野菜産業のフロンティアといえよう。

そこで、本稿ではベビーリーフの需要特性と競争構造、周年供給ニーズへ対応した大規模生産経営の実態について明らかにするとともに、将来的な課題について整理したい。

2 ベビーリーフの需要特性と競争構造

(1)商品・需要特性

ベビーリーフは、数種の野菜の幼葉を未洗浄のままミックスして包装した生鮮野菜商品である(写真1)。その特徴は、まず葉菜類の幼葉を多種ミックスしたものであることから、柔らかな食感とバラエティに富んだ色や香りが楽しめることにある。また、さっと洗えば生のまま食べられ、サラダだけでなく色々な料理のトッピングにも利用できるという利便性もある。さらに大規模生産経営から周年安定供給されることにより、スーパーマーケットや外食・中食事業者にとっては定番商品として扱えることも魅力的である。

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ベビーリーフの消費・流通に関する統計データはないが、カゴメ株式会社によれば、2016年現在の国内市場規模は約100億円、1人当たり消費量は18グラムであるが、今後ヨーロッパ並みの消費量(50グラム)に増加すれば、市場規模は300億円に拡大するとされている(注1)

なお、ベビーリーフは、卸売市場をどの程度経由して流通しているのか分からないが、参考までに東京都中央卸売市場への入荷状況を見ると、図1のように、近年、入荷量は年々増加傾向にあり、卸売価格も高い水準で安定しており、マーケットが拡大している傾向が見てとれる。

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ベビーリーフの用途は、スーパーマーケットなどを通じて一般消費者に販売される家計用と飲食店、総菜業者、カット野菜業者などへ卸売りされる業務用に大別されるが、前者が後者を上回っていると推定される。家計用は30~60グラムに小分けされてフィルム包装された商品が多い。これに対して業務用は顧客のニーズに応じて数キログラム単位にバルク包装されている。

注1:参考・引用文献(1)による。

(2)生産構造と競争構造

ベビーリーフの生産に関する統計データはないが、全国には大規模な生産経営が数社あることが知られている。中でも茨城県の株式会社HATAKEカンパニー(注2)(以下「HATAKEカンパニー」という)と熊本県の株式会社果実堂の規模は他を抜きん出て大きく、両者を合わせた生産シェアは20~30%に達していると推定される。

農業では養鶏、養豚および一部の花きを除くと、品目別に見ても市場集中が進んでいる分野は少ないが、ベビーリーフは数少ない集中の進んだ品目と言えよう。両者は、ともに関東圏や関西圏を主な出荷先としていることから、両者間には目に見える競争関係が形成されていると見られる。なお、小売店頭では大手食品メーカーやカット野菜事業者のブランドを冠したベビーリーフが目立つが、これらは生産者から仕入れたものをパッケージしたものも少なくない。

注2:後述するが、平成28年9月1日より、株式会社TKFより株式会社HATAKEカンパニーと会社名を変更。

3 周年供給ニーズに対応した企業的な生産経営の展開 

  ─HATAKEカンパニーの事例─

以下では、茨城県つくば市に本社のあるHATAKEカンパニーを事例として、ベビーリーフ大規模生産経営の実態と今後の課題について検討する。なおHATAKEカンパニーは売上高の約8割をベビーリーフが占める専業的な経営であるが、近年はほうれんそう、ミニ根菜、ハーブ類へ多角化を進めている。ただし、本稿ではベビーリーフを中心に話を進めていきたい。

(1)経営の展開過程

HATAKEカンパニーの社長である木村 誠氏は、早稲田大学理工学部(経営工学)を卒業後、塾講師を経て茨城県つくば市の農業資材関係企業に勤務していたが、取引先の農家と付き合ううちに農業に魅力を感じ就農を決意した。

就農に当たっては二つの経営理念を持っていたという。一つは「農業で最も重要なことは、土作りである」ということである。農業資材関係企業に勤務していた頃から、土壌が農作物を育てているのに、篤農家でさえ堆肥や微量要素に十分な知見を持っている者は少ないことを痛感していた。このため、自社では土壌や作物を分析して、その結果を栽培管理に反映することにより、安定して、おいしく、安全な野菜づくりを目指すことにした。もう一つの理念は「契約取引を目指す」ことである。野菜は卸売市場へ出荷されるのが一般的であるが、価格変動リスクがあることから、木村氏は事前に規格、価格、数量を決め、これを遵守して出荷すれば予定通りの収入が得られる契約取引を選択した。

当初きゅうりかほうれんそうを選択することを考えたが、農地の確保に苦慮しているうちに、カット野菜業者から需要拡大が予想される新品目としてベビーリーフを紹介され、生産物の買い取りを約束してくれたこともあり、これを選択することになった。また、ベビーリーフは無農薬で栽培しやすいことが、経営理念に合致するものであったこともあるようである。ただし、当時、日本国内では、先進産地がなかったことから、豪州の農場を視察し、ベビーリーフの生産、販売の基本的な仕組みを習得した。

営農開始には、基本的な経営要素を準備する必要があるが、まず労働力については木村氏1人でと考えていたところ夫人も手伝ってくれることとなり夫婦2人となった。農地の調達は困難であったが、最終的には前職の農業資材関係企業の保有地と知人の親戚の農地を合わせて38アールを借地し、その一部にハウス(16アール)を設置した。また、ハウス、トラクター、1年分の肥料などの資材の購入するため、1280万円の資金を借り入れた。

こうして1998年に以前から関係のあった農家15戸とともに、ベビーリーフの生産・販売を開始した。ベビーリーフの栽培は初めての経験であったが、野菜栽培の基本技術は習得していたこと、および契約取引であったことから、創業3年目の2000年には年間売上が1200万円に達した。また、同年に将来の経営規模拡大を見越して正社員1名を雇用した。2003年には遊休化していたハウス(45アール)を借り受け、面積拡大するとともに、集出荷施設および事務所を同所に設置し、一貫した生産・出荷体制を確立した。

また、全農茨城県本部から一部出資を受け、製品販売、農地の紹介など提携関係を結ぶこととなった。2005年には生産は個人農家のまま、販売会社として有限会社TKFを設立したが、翌2006年には、全農茨城県本部との関係からトヨタ自動車の生産方式を学んだ。その成果は、生産面では無駄なスペースの削減と有効活用化、スプリンクラー給水からチューブ給水への切り替えによる生育の斉一化であり、出荷面では包装工程の細分割とライン化であり、試行錯誤の末、効率的な3ライン体制に落ち着いた。

この間にも、周辺の遊休農地やハウスを借り受け、パートも増やすとともに研修生も入れて、生産規模を逐次拡大し、2006年には年間売上が1億円2000万円に達した。2007年には、農業生産法人・株式会社TKFとして、生産部門も含めて法人化し組織体制を固めた。事業規模拡大により木村氏一人での経営管理は難しくなったため、管理業務を分担させられる正社員を徐々に増やしながら、生産規模をさらに拡大し、2010年度には年間売上が3億円に到達した。2013年の東日本大震災の影響を受け、一時的に売上が低迷したが、1~2年で回復して急成長に転じ、2015年度には年間売上8億5000万円に到達した。

本年(2016年)9月1日には、同業他社と事業統合して社名を㈱HATAKEカンパニーに変更し、期末には売上高11億円を達成する予定である。また、これに先行して大規模な集出荷施設を新設し、出荷量の増大に対応できるようにしている。

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(2)経営資源

ア 労働力

ベビーリーフは、極めて労働集約的な作物であるため、労働力の調達と省力化は経営管理の上で重要なポイントである。創業当初は、経営者夫妻のみであったが、2年目にはパートを雇用し、3年目には生産や管理を担当できる正社員の雇用を試みた。しかし、当初は定着に至る人材はなかなか得られなかった。このため生産担当の作業員については、大学生アルバイトや外国人研修生でしのいできた。近年、正社員の採用については、農業人フェアなどで自社の宣伝に努めるとともに、入社希望者に対しては見学、体験(インターンシップ)を実施し、採用に際しては面接を行うとともに、入社後は試用期間を経て正社員にするといった手順を踏んで採用するようになっている。また、福利厚生面についても徐々に充実させてきている。こうしたこともあり、正社員は徐々に増加し、現場の作業管理は、正社員に任せられるようになっている。2016年現在、正社員63名、パート91名を雇用している他、インターンシップおよび研修生も受け入れている。

イ 農地

ベビーリーフは、年当たり露地で3~4作、ハウスでは無加温で5~6作できることから、平均すると10アール当たり年間100万円以上の粗収益が上がる土地生産性の高い品目である。さらに、ハウスの環境制御を高度化して回転数を増やせば、粗収益を高めることも可能である。HATAKEカンパニーでもハウスは回転数が高く、生産も安定することから、逐次拡大してきた。しかし、ハウスには設備投資が必要であり、水利の確保も不可欠である。さらに回転数を上げようとすれば、環境制御のために追加投資も必要である。このため地域の気象条件にもよるが、露地や簡易なハウスで作付面積を拡大したほうが、短期間に生産が拡大でき、採算性もよい場合が少なくない。このためHATAKEカンパニーでも面積としてみると露地を主体に拡大してきたのが実態である。

ただし、農地の確保は容易ではなかった。木村氏は農外参入者で農地は全く所有していなかったため、周辺の農家などからの借地で確保してきた。借入前の状態は野菜畑であるものが望ましいが、現実に貸してもらえたのは芝生畑、耕作放棄地、基盤整備直後の水田などが多く、土作りに時間と経費がかかっている。また、貸借方法は、当初は木村氏の前職関係や個人的なつながりを通じてであったが、近年は関係機関からの情報も得ている。

ウ その他

資本金については、木村氏が約85%、全農茨城県本部が約15%出資している。事業展開に必要な長期、短期の資金については、政策金融公庫のスーパーL資金や市中銀行から調達している。

(3)生産システム

ベビーリーフに使える野菜は100種類以上あると言われているが、日本ではルッコラ、みずな、ターサイ、こまつな、マスタードなどの葉菜類が用いられている。これらを品目別にしゅし、10センチ程度の幼葉になったところで収穫する。

HATAKEカンパニーでは経営理念にもあるように土作りを重視しており、ボカシ肥料や堆肥などの有機質肥料と無農薬で栽培している。全じょうの3割強が有機JASの規格に準拠、その他の圃場も特別栽培基準以上に準拠している。ただし有機JASの認定を取得している圃場は約1割である。

作業工程は、まず露地、ハウスとも、太陽熱消毒を行ってから、堆肥を散布後、耕耘して平畝ベッド(注3)を作る。ベッドができたら播種機でじょう(注4)し、薄くふくした後でかんすいし、メッシュシートで被覆しておく。播種後は乾燥させないように適宜灌水する。収穫は草丈10センチ程度、アブラナ科野菜で2週間、キク科野菜で1カ月をめどとし、適期を見定めて収穫機および手作業で刈り取る。露地で約250キログラムを年当たり3~4回、ハウスなら約400キログラムを年当たり5~6回、収穫することが可能である(写真2、3)。

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HATAKEカンパニーの生産圃場における作業時間データは得られなかったが、北海道で作成された『ベビーリーフ栽培マニュアル』によれば、施肥・耕起から収穫に至る生産工程に10アール当たり221時間、包装・出荷工程には同293時間、同計514時間を要するとされており、極めて労働集約的であり、かつ包装・出荷に要する比率が高いことを示している(注5)

このためHATAKEカンパニーでは、生産性を上げるために、作業編成の改善を重ねてきている。面積規模が拡大した当初は、エリア別の作業チームを編成しそれぞれに栽培責任を持たせていた。その後、作業工程別(施肥・耕耘/堆肥、播種選別、収穫、管理)に数名単位のチームを編成にすることにより、作業者の習熟度を向上させて作業効率を高めるようにしてきた。しかし、広域に農場が広がった現在では、エリア別と作業工程別を併用する方向に再編しつつある。

ベビーリーフは幼葉で収穫するため、適期であれば栽培は比較的容易である。しかし、HATAKEカンパニーのようにスーパーマーケットや業務系実需者と取引するには、周年かつ安定的な供給が強く求められる。そのためには、露地栽培とハウス栽培の組み合わせ、また播種時期を少しずつずらすことにより、平準的に収穫できるようにする必要がある。

HATAKEカンパニー本社の立地する茨城県では、露地とハウスを組み合わせれば周年生産することは可能であるが、厳冬期には収量は低下する。このため、大分県にベビーリーフ農場を設置している。また岩手県にも農場を設置し夏期にほうれんそうを生産している。この他、茨城県(6戸)、埼玉県(1戸)、千葉県(1戸)、長野県(1社)、秋田県(1社)、岩手県(1社)、大分県(1社)の農家や農業法人と連携関係を結び、生産を委託している。このように、立地条件の異なる直営農場と委託生産を組み合わせることにより、より安定的した周年供給の実現に努めている(図3)。

注3:高さが5~10センチの低い畝

注4:穀類や野菜などを一定間隔のすじにくこと

注5:参考・引用文献(4)5頁による。

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(4)選別・調製・包装システム

ベビーリーフは、葉長10センチ程度の幼葉であるため、選別、調製して一定量に包装しなければ家計用の商品にはならない。まず品目ごとに収穫された幼葉は、集出荷施設に搬入され、ベルトコンベアを用いた流れ作業ではあるが、目視と手作業で、傷んだもの、雑草、異物などを除去し選別される。品目別に選別された幼葉は、商品コンセプトや季節に応じて数品目から十品目程度が調製機で調製(ミックス)される。その後、自動包装機または手作業で計量・包装される(図4)。

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小売向けの包装形態は、内容量30~80グラムの縦ピロー包装が主体であるが、顧客のニーズに応じてトレー型容器の包装も行われている。業務向けについては、調製後バルク包装される。小売向け(家計用)、業務向けとも包装後、顧客のニーズに応じて段ボール箱などに詰められて出荷される。

現在、選別・調製・包装工程は、出荷先別に4つのラインに分けられ、生産性を高めるように工夫されている(写真4)。このようなシステム化も手伝って、日量1500キログラムの出荷を可能としている。

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(5)販売体制

HATAKEカンパニーは経営理念として契約取引をうたっていることもあり、委託取引による卸売市場出荷は行っていない。このため取引先を、各種の商談会や既存取引先からの紹介などによって開拓してきた。現在、取引先は110社以上に及んでいるが、うち中間流通業者や全農茨城関係が約6割と大半を占めており、その他は直接取引している外食・中食チェーンが約3割、スーパーマーケットが約1割となっている。

契約取引というと、生産者とスーパーマーケットや外食・中食事業者との直接取引と思われがちだが、HATAKEカンパニーのような大規模生産者にとっては、市場の仲卸業者、市場外の青果問屋、カット野菜業者といった中間流通業者との契約取引が現実的な販売チャネルなのである。

つまり、事業規模の拡大に伴い、取引上のリスクを分散させるには、それなりに多くの取引先を持つ必要がある。しかし、全ての取引先をスーパーマーケットや外食・中食チェーンなどの小売業者との直接取引にすると、中間流通業者と比較して取引ロットが相対的に小さいため、より多くの取引先と取引せざるを得ない。

こうした多数の小売業者と取引するためには、商談や納品のための営業体制の構築が必要である。また小ロット納品が増えるので、物流コストが大きくなりがちな点も問題である。このために、事業規模の拡大を優先すれば、手数料を支払っても中間流通業者を利用したほうが有利な場合が少なくない。

ただし、最終的な顧客であるスーパーマーケットなどのニーズに応じてブランドや包装を変更するといったプライベートブランド(以下「PB」という)対応も行っており、中間流通業者を利用していても、基本的な販売チャネル管理は自社で行っている。なお、今後は土作りを重視した経営理念を訴求しやすく、独自な新商品提案もやり易い生協との取引を拡大する予定である。

(6)生産者連携

木村氏は就農当初15戸の農家とグループを形成し、カット野菜業者と契約取引を開始した。当時の農家はベビーリーフを生産した経験はなく、栽培面積も数十アール程度と小さかった。このため、カット野菜業者の持つ情報を共有して栽培技術を向上させるとともに、業者側が求めるロットを満たすには、生産者が連携して対応する必要があった、とみられる。こうした生産者間の連携は、一般の家族農業経営が新品目へ参入する場合によくみられるパターンである。

しかし、HATAKEカンパニーは現在、別の形で生産者連携に取り組んでいる。自社での直営生産は8割程度とし、残り2割は、先に述べたように茨城県、埼玉県、千葉県、長野県、秋田県、岩手県の農家や農業法人と連携関係を結び、ベビーリーフやその他の野菜を委託生産している。これらの連携生産者に対しては、HATAKEカンパニーが中心となって、栽培技術の共有化や研修を実施して、栽培技術や出荷規格を統一し、グループとして高品質なベビーリーフを安定的に供給できる体制を目指している。将来は従業員の独立支援も含めてグループ生産者を100戸に増やす予定としている。

こうした生産者連携には、短期間で供給能力の拡大を可能にしようとする側面もあるとみられる。すなわち自社農場の拡大は労働力や農地の調達の制約もあることから、自社農場だけで供給能力を短期間に拡大することには制約がある。この点、連携生産者は労働力と農地は持っているため、栽培技術の共有化や研修実施により、栽培技術や出荷規格を統一できれば、リスクを分散しながら比較的短期間に供給力を拡大できるというメリットがある。

4 まとめ

以上のように、ベビーリーフは需要が急拡大しているが、これに対応してHATAKEカンパニーのような大規模生産経営が急速に成長している。こうした大規模経営は、生産工程の機械化と作業チーム編成を確立しており、中小経営と比較して労働生産性は高いと推定される。ただし、天候に左右されやすい露地栽培もあるため、供給変動から完全に逃れられているわけではなく、生産性の上げにくい手作業も残されている。

他方、労働時間の半分以上、労働コストの4~5割を占めていると推定される選別・調製・包装工程は、ほぼ完全な機械化とシステム化が可能である。このため、機械化された包装ラインを確立することにより、中小規模経営に対してコスト面で大きな優位性を持つものとみられる。また、これが顧客ニーズに応じた柔軟で機動的な包装対応を可能にしていることも強みになっている。

販売については、委託取引で卸売市場を経由する比率は低いと見られるが、市場の仲卸業者、市場外の青果問屋、カット野菜業者など中間流通業者を経由する比率は高いとみられる。ただし、最終的な顧客であるスーパーマーケットなどのニーズに応じて、自ら包装やブランドを変更するといったPB対応をしていることからも分かるように、メーカーとしての販売チャネル管理を行っている。

今後もベビーリーフの需要は増大すると予想されているが、食品企業、ベンチャービジネス、カット野菜業者などが多様な形態で参入してきている。このため、将来的にはより少数の大規模生産経営や関係するブランドオーナーへの市場集中が進み、企業間での顔の見える競争がより一層激化することが予想される。このような状況の下でのベビーリーフ生産経営の今後の課題としては、以下の点が指摘できる。

第一は、人材の確保である。これは大規模な農業生産法人に共通した課題であるが、事業の急速な拡大に伴い、生産管理や販売管理といった中間管理を担える人材が不足している。家族経営や小規模な農業生産法人では、経営者が家族やパートに直接指示すれば済むため、こうした人材の必要性は少ない。しかし、事業規模の拡大とともに、生産現場が広域に分散し、販売チャネルが増えるとともに、経営者一人では管理できなくなり、経営者の役割を分担する中間管理職とその候補者が不可欠になる。HATAKEカンパニーでも、採用イベントへの出展、インターンシップ、異業種交流を通じたヘッドハンティングなどの取り組みを行っている。今後は長期的な経営戦略、事業計画に応じた計画的な人材採用、OJT、OFF-JT、自己啓発といった社内外での人材育成活動が必要となろう。

第二は、品質と安全性の向上である。大規模なベビーリーフ生産経営では、目視による選別や金属探知機によって、異物の混入を防いでいるが、クレームは少なくないようである。消費者はベビーリーフのように包装された野菜に対して、漠然とした安心感を持っているようである。それだけに万が一、異物が混入していた場合の怒りはかえって大きくなるようである。自社ブランドを持つ大規模生産経営にとって、異物混入は死活問題になりかねない。異物混入を防ぐには、まず圃場での収穫時において、雑草、昆虫、その他の混入を防ぐのが基本である。この点、収穫時に異物を除去できる手収穫は機械収穫に対して有利性を持つ。しかし、機械化は時の流れであることからすると、集出荷施設での選別レベルを上げていかざるを得ないだろう。また、長期的には異物の自動識別と自動的な除去が技術的な課題である。

第三は、収益の安定・向上のための販売チャネルの確立である。大規模生産経営間の競争が激化する中で、スーパーマーケットや外食・中食企業といった顧客との取引関係の安定化と効率化が課題となる。そのためには、中間流通業者を利用するにしても、自社のポリシーに適合した業者を選択し、小売店頭までの商流と物流の両側面から管理できる販売チャネルを構築する必要がある。



参考・引用文献

(1) カゴメニュースリリース「山梨県と『農業の振興と発展に関する連携協定』の締結について」2016,3

http://www.kagome.co.jp/company/news/2016/03/002636.html

(2) 木村誠「生産性を上げた『トヨタのカイゼン』手法」AFCフォーラム, 2015.3, 2015, pp11-14

(3) 木村誠「農業者でグループを作り、生産を効率化を図る」JOYO ARC14.2, 2014, pp.23-24

(4) 道総研・道南試験場・研究部地域技術グループ「ベビーリーフ栽培マニュアル」

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