一般社団法人 日本施設園芸協会
技術部長 土屋 和
【要約】
わが国における植物工場は、太陽光型と人工光型の双方で野菜栽培を中心に普及が進んでおり、経営規模も拡大している。経営的な成功には適切な設備導入や販路確保の他に、生産管理やエネルギー管理などでの日々の改善も重要であり、さらに必要な人材の獲得や能力の向上も必須である。施設園芸に占める割合はまだ小さいとみられるが、技術的な波及効果や野菜の安定供給に対する期待が高まっている。
1 植物工場とは
植物工場の国内での歴史をたどると40年程前から研究が開始されており、その後、人工光を利用した閉鎖空間で植物生産を行う施設のみがマスコミなどで認知され、同様な概念が諸外国でも一般的である。
一方で、2009年から農林水産省と経済産業省が共同で開催した「農商工連携研究会植物工場ワーキンググループ」(以下「ワーキンググループ」という)による検討によって、以下のような定義が行われた。
「植物工場は、施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分など)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜などの植物の周年・計画生産が可能な栽培施設である。この概念にあてはまる栽培施設として、大きく分けると、閉鎖環境で太陽光を使わずに環境を制御して周年・計画生産を行う『完全人工光型』と、温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、雨天・曇天時の補光や夏季の高温抑制技術などにより周年・計画生産を行う『太陽光利用型』の2類型がある。(太陽光利用型のうち、特に人工光を利用するものについては『太陽光・人工光併用型』とする。)」
これは、施設園芸の発展形ともいえる概念として両省が広義に打ち出したものとして捉えられ、その後も広く用いられている。また、この定義により従来の「ビニールハウス」や「温室」といった施設園芸でも、高度な環境制御技術と計画・周年生産が可能なものであれば、「植物工場」と呼ばれるようになった。最近では、おおむね50アール以上の比較的大規模な太陽光利用型(以下「太陽光型」という)と、完全人工光型(以下「人工光型」という)のものを中心に、植物工場と呼ぶことが多い。また、ワーキンググループによる検討の後、両省の植物工場に関わる補助事業により、全国の大学や研究機関における植物工場実証拠点や、商業生産を行う植物工場施設の整備も進められている。
2 植物工場の実態
(2)園芸施設設置状況に関する実態把握
農林水産省によるわが国の園芸施設の設置状況に関する実態把握(※1)では、施設園芸全体で4万6488ヘクタールのうち、高度な環境制御(日射量に基づく複合環境制御装置による)を行うものが655ヘクタール、養液栽培施設があるものが1848ヘクタール、1棟が50アール以上あるものが164ヘクタールとある。
これらの中で植物工場としての実態は把握されていないが、現状で少なくとも50ヘクタール程度は上記の定義に該当すると推察される。生産される作物は野菜が多く、果菜類(トマト、きゅうり、いちご、なす、ピーマン、パプリカなど)と葉菜類(レタス類、ほうれんそう、ねぎ、みずな、ハーブ類など)に大別される(写真1~4)。根菜類の商業生産は実用化されていない。また、人工光型での作物はレタス類が特に多い。
また、苗生産の分業化に伴い植物工場での野菜苗生産(写真5、6)も増加している。さらに、この実態把握の後に、農林水産省の次世代施設園芸導入加速化支援事業によって全国10拠点で整備される太陽光型のものが計画も含め30ヘクタール以上ある(※2)。
(2)植物工場の実態調査
一般社団法人日本施設園芸協会(以下「当協会」という)が三菱総合研究所に委託し行った実態調査(※3)によると、2016年2月時点で人工光型191箇所、太陽光・人工光併用型36箇所、合計で227箇所となっている(参考として、太陽光利用型が79箇所)(表1)。調査対象は、生産物の販売を目的として運営している植物工場とし、太陽光型は施設面積がおおむね1ヘクタール以上で養液栽培装置を有する大規模施設としている。
限られた範囲による調査のため、すべての実態を把握しているものではないが、箇所数は人工光型において経年で増加傾向にあり、併用型において横ばい傾向である。また、太陽光型では調査基準の変更で2016年2月時点では減少となっているが、次世代施設園芸をはじめとする大規模施設は増加中とみられる。以下に結果の概要を紹介する。
まず、栽培開始年は人工光型では2010年以降の割合が3分の2で新しい経営体が多くを占めた。また、太陽光型でも新しい経営体が約半数という傾向だが、これは調査対象を1ヘクタール以上としたことから、大規模経営へ参入が多いことを反映したと考えられる(図1)。
次に、雇用者数は人工光型では10人以下が過半数で小規模経営の割合が多く、21人以上は2割程度であり、太陽光型では21人以上が過半数で大規模経営が多くなっている(図2)。
また、栽培施設実面積(育苗室を含む栽培に使用する施設)は、人工光型では1000平方メートル未満が7割で同様に小規模経営の割合が多い(図3)。最後に、収支の傾向では人工光型、太陽光型とも赤字が半数を占め、黒字は2割程度にとどまる(図4)。サンプル数が少ないものの、栽培開始年と黒字化についての関係を見たところ、開始年が古いほど黒字化の傾向が見られ、植物工場では生産や販売面の安定化に時間を要することが示唆されたが、収支についてはより詳細な調査が今後必要と思われる。なお、詳細は当協会の実態調査など(※3、4)を参照いただきたい。
2 植物工場の事例紹介
最近の植物工場の事例として、今年の2月に開催されたた当協会主催のセミナーで報告(※5)された2例について、現場での改善内容も含め以下に紹介する。
(1)事例1:施設園芸の高度化による大規模トマト生産例(太陽光型)
農業生産法人株式会社井出トマト農園(以下「㈱井出トマト農園」という)は、神奈川県藤沢市にあり、1980年にトマト栽培を開始、その後個人経営体から法人経営による1ヘクタール規模の大規模トマト生産へ段階的に事業拡大を図ってきた。代表取締役の井出寿利氏は農学系大学を卒業後、民間企業に就職、営業職を勤め、2006年に就農し養液栽培によるトマト生産を開始した(写真7)。
経営の特徴として都市近郊の立地を生かした直売所運営やネット販売、契約販売があり、またJAへの個選契約やブランド化を行った市場販売も含め、周年の生産体制を組んでいる。常勤従業員を2名、パート従業員を35~45名、それぞれ雇用している。同社では単一の大規模施設での栽培ではなく、いくつかの小規模施設を組み合わせ計画的な作付けを行うことで、切れ目無い収穫と出荷を行っている。また、消費者ニーズに対応し少量多品目生産を基本としており、大玉と各種カラーのミニトマトなどを取り混ぜている。こうした生産体制の構築の上で、太陽光型に関わる技術導入が順次進められてきた。主要な技術について、以下に紹介する。
まず、人工光型の一種ともいえる閉鎖型苗生産システム(写真5)の導入(2008年)がある。これは閉鎖空間内での蛍光灯による照明化で計画的な良苗の生産を行う装置で、主に野菜苗生産を専門とする育苗業者に導入されてきたものである(※6)。最近の施設園芸経営では、こうした育苗業者から苗を購入することが普通である。しかし同社の生産体系では複数の育苗や作型が同時進行することが多く、品種も多岐にわたっており、育苗の外部委託による不確実性やトラブルの回避を含め、育苗期間や苗質のコントロールが可能な本システムを利用している。
次に、カメラ式の選果装置を導入(2010年)し、品質面での管理水準を高め、バラツキを低減している。こうした選果装置は最近では大規模な選果場で導入が進んでいるが、1経営体での導入は現在でも珍しく、また投資額も大きいため、重要な経営判断であったと思われる。契約取引先に対する出荷規格に品質面の情報を加えられることで、より有利な販売が可能となり、直売所での商品形態を多岐なものにしている。トマトという単一作物の経営でありながら、実際は非常に多くの商品の開発、販売に寄与したと考えられる。
次に、トマトの生育や収量を高めるため、最近の太陽光型の技術の主流となっている統合環境制御装置を導入(2014年)している。これは、冒頭のワーキンググループによる定義にあるような環境制御技術のことであり、栽培ハウス内の環境モニタリングを基礎とし、植物の生育状態や気象の状況にあわせ、最適な環境を機器(暖房機、換気装置、かん水装置、二酸化炭素発生装置など)の複合的な制御によって実現するシステムのことをいう。
ここで注意が必要なのは、このような設備を導入しただけでは高い収量や品質を獲得できるとは限らないことである。従来の篤農家が観察力や経験の積み重ねで行ってきたことを、より具体的なデータや指標に置き換えて管理者が判断し、設備の操作をすることが重要である。同社では日々のさまざまな環境データを確認するとともに、トマトの生育に関する定期的な調査も実施しており、制御条件改善の参考としている。また暖房機やヒートポンプなどの動作状況のモニタリングも欠かさず、エネルギー消費量の確認や省エネ化にも活用している。
最後に、生産管理システムの開発と導入(2015年)がある。これは、常勤従業員やパート従業員による日々の作業において、作業速度や作業品質のバラツキを少なくし、併せて能力向上に対し待遇改善も行うことでモチベーションを向上させている。
そのため日々の作業情報や収穫量、および農薬履歴などをICT利用により入力集計するシステムを構築した。既存の同様なシステムは多くあるものの、水田作や畑作向けのものが中心で、同社のような施設園芸で多様な作型に対応するものではなかった。そこで外部委託による自社システムの開発を行った。本システム導入より、日々の作業状況の可視化が進むとともに、能力差も明らかになる中で、作業方法の標準化を進め全体レベルの向上にも寄与している。さらに多くの品種の個別の生産性も判別できるようになり、経営情報として活用されている。
以上のように、育苗、栽培、選果出荷、作業管理の各分野への技術導入を進め、生産面と販売面の機能を高めることで経営向上に結びつけている。一般の施設園芸と比べ、設備や技術面から見ても十分に植物工場といえるが、販売ニーズへの対応、現場の問題解決などが伴うことで、これら設備や技術が経営面でも無駄なく生かされているといえる。
なお、同社では3年後の売上2億5000万円を目指し、静岡県の高冷地での第2農場建設を予定し、さらに10年後の売上10億円も視野に多角化も計画中である。
(2)事例2:新規参入によるレタス類生産例(人工光型)
株式会社木田屋商店(以下「㈱木田屋商店という」)は、千葉県内で米穀販売や小売業、不動産業などを経営する企業である。福井県小浜市にて、福井県などの補助事業を活用して2013年より人工光型によるレタス類の生産(写真8)を開始した。植物工場はもとより農業生産に関わる経験や知見の乏しい同社では、当初はプラントメーカーによる指導をもとに育苗や栽培を行っていたが、計画通りの収量を実現できず苦慮をしていた。その後、専門家の意見やさまざまな情報をもとに、生産上の問題や課題を洗い出し、個々に改善や解決を図ってきた。
同社では、面積1000平方メートルの建物の内部に12段の栽培装置が立体的に配置された栽培設備で、操業開始から3年目の現在、日産で8000株程度のレタス類を出荷している。経営規模も国内の上位となっており、単年度での黒字化が見込まれるとのことである。
従業員は生産管理と営業、総務を含め社員が7名(うち女性4名)で、生産に直接関わっている従業員(主にパート)は常時17名程度である。人工光型において管理部門や営業部門にも最低数の社員が必要なため小規模経営では黒字化が難しいといわれるが、同社の経営規模でさまざまな改善を重ねながら、黒字化にようやくつながったことから、新規参入での規模感は、これが一つの目安になるかと考えられる。
同社では技術的な改善として、生産工程や培養液管理の見直しによる収量向上と、エネルギー管理の見直しによるコスト低減を進めてきた。
同社における生産工程は、育苗と本ぽでの栽培~収穫、出荷調製に大別され、栽培~収穫の工程は栽培ベッド構造の関係で栽培日数は固定化されているため、前の育苗工程で適度に大きく充実した苗を育成し、それを定植することが大切となる。同社では環境条件や培養液処方について見直すとともに、育苗方法や育苗期間についても細かく見直し、収穫時により大きな植物体が得られるよう改善を進めてきた(※7、8)。
多くの人工光型の設備と同様、同社でも育苗から収穫に至るほとんどの作業は機械化されていないため、日々の作業目標を定め、時間内に作業が終了するよう従業員に指示や指導を行っている。また、能力の高い従業員には給与面でも処遇をしている。人工光型で計画通りの生産を行うためには、生産工程や管理条件を最適化するだけではなく、計画を実行するための作業能力も重要となる。苗や収穫物、パネルなどの積み下ろしや運搬、長い作業動線など、軽作業ばかりとはいえない環境の中で、同社では従業員の入れ替わりも少なく、個々の作業レベルも維持されており、そうした状況は経営安定化に寄与している。
次に、コスト低減の手段として、生産コストで大きな比率(一般に3分の1程度といわれる)を占める電力料金について、見直しを進めてきた。人工光型での主要な電力消費源は照明器具であり、ここで発生する熱を除去し空調を行うエアコンがこれに次ぐ。その他に空調用の送風設備、ポンプ類、事務所や作業室の空調や照明などがある。これらの消費電力をひとつひとつ時間帯別に洗い出し、消費量の大きなものを見つけ、無駄を省いている。
また、改善点の多くはプラントメーカーの当初設計には盛り込まれていなかったことであり、商業生産の歴史が浅く、公開された事例も少ない人工光型では、こうしたノウハウや情報の共有も大切と考える。
同社で生産されるレタス類の在庫日数は1日程度であり、貯蔵スペースも小さく、日々の売り切りが原則となる。売り先のないものは廃棄処分となり、経営収支に直結する。そのため販路獲得と計画的な受注生産が必須である。さらに近年の気象変動により露地レタスの生産が不安定となり、予定外の注文増も頻発している。そのため、販路確保とあわせ、供給量の調整も必要な場合もあり、生産と販売の一体化が高いレベルで求められる。同社では3年程の経営の中で、こうしたことへの対応を積み重ねている。
なお、同社では低コスト化が進むLEDを利用し、より充実した苗を育成する設備の導入を本年、進めている。これにより空いた場所を本ぽ栽培に活用するとともに、栽培日数の短縮も図ることで、日産1万株の体制に移行している。
(3)事例から見た植物工場をめぐる今後の課題
事例1、2について、両事例とも単なる設備導入にとどまらず、さまざまな技術的な改善を進めており、経営的な改善も並行して行っている。短期間に経営を軌道に乗せるには、こうした改善への取り組みが重要であり、さらに人に頼るところが多い作業について、能力向上による改善が必須となる。
一般に栽培や収穫における作業能力は、初心者とベテランでは2~3倍程度の開きがあるといわれ、経営の立ち上げ時に作業初心者が多い場合には、それが収量や売上の制限要因になりやすい。そのため、計画が未達成の場合は資金面や労力面での準備や支援が必要となる。両事例とも同一の工程や作業が同時並行で年間繰り返される仕組みのため、熱心な取り組みによって短期間に習熟が進んだものと推察される。
植物工場の立ち上げにおける人材の獲得や能力向上は、人材難が進む昨今の雇用環境において、より重要なテーマとなっている。その解決のための仕組み作りが求められており、求人から作業訓練、効率的な作業チーム作り、作業工程の計測や改善手法の確立、作業方法の標準化と定着、といった一連のテーマがそこにある。これらは植物工場だけではなく、一般の製造業で長年取り組まれてきたテーマでもある。
今後は、こうした作業管理や労務管理、さらに上位の生産管理面での改善も含め、産業界や、製造業分野の技術者からの支援を期待したい。国内製造業での管理技術の集大成であるTQM(Total Quality Management 総合的品質管理)などの手法も参考となる。なお、技術的なテーマについてはオランダなど海外からの施設園芸技術の導入や、国内関連メーカーや研究機関による増収や品質向上、自動化省力化のための技術開発が多くみられるが、本稿では割愛する。
3 地域農業や野菜生産販売への影響と今後の課題
(1)地域農業への影響と課題
植物工場を新たな生産形態や経営形態として振興をするとともに、地域農業の中に位置づけ、地域振興に寄与することが今後も重要と考える。さまざまな技術やノウハウが投入される植物工場には、地域モデルとなる可能性もあり、そのための情報の発信や共有が必要とされることもあろう。規模的に匹敵する経営体が無い農業地域であっても、要素技術や経営管理の手法は参考になることが多い。太陽光型では一般に養液栽培の導入が必要と思われているが、施設園芸での養液栽培の普及率は数%台であり、土耕栽培の比率が圧倒的に高い。最近は統合環境制御の土耕栽培作物への適用事例が増えており、成果も各地で報告されている。植物工場技術の普及環境は、すでに整備されたといっても過言ではない。
注意が必要なこととして、他の雇用型経営との競合が起こるケースもあるため、地域雇用への影響が挙げられる。参入や立地の検討には慎重さが求められる。また、植物工場事業者単独での対処は難しく、地域や自治体で取り組むことが望ましいと考える。雇用助成金などの活用例も多く見られる。
(2)野菜生産販売への影響と課題
大規模な生産体制を持つ植物工場が増加すると、販売面の競合を生む可能性は否定できない。一方で販売先があっての生産であり、契約販売を前提として経営が成り立つものと考えられ、いかに安定した生産販売を行うかが重要となる。このことを販売先側から見ると、購入ロットの大きさそのものが魅力となり、さらに品質や数量が安定することで、仕入先としてのランクが上がることにもなる。従来の販売における要素である「量と質、価格」に加え「大量安定供給」を掲げることが、植物工場の強みとなる。また遠隔地における生産では、地元向け販売は限定されるため、大消費地や需要先に向けた販路開拓、さらに輸送コスト低減が常に課題となっている。
栽培面では太陽光型において気象変動の影響、とりわけ日射量の減少が収量減に直接及ぶことが多い。こうした影響を最小限に食い止め、気象回復後に再び立ち上がる技術や対応力を身につける必要がある。人工光型においては大量受注による前倒し出荷の影響が後々に生産面に響くことが多い。生産工程にひずみを生じ、その回復に時間がかかる場合も多く、受注時の対処が重要となる。
なお、輸入品が主体のパプリカにおいて、特に軒高の高いハウスによる太陽光型での栽培が有望視されている。輸入品による市場拡大が進み、国産品の希少価値も高まる中で、高い栽培空間で生産性を向上できる作物として注目され、最近では企業による参入が相次いでいる。次世代施設園芸拠点においても、トマトに次いで選択されている作物である。しかし国内の栽培事例が少ない作物のため、栽培技術や管理指標についての情報共有が今後は求められる(※9)。
4 おわりに
以上のように、実態調査や事例などをもとに植物工場をめぐる現状や課題について述べてきた。植物工場は、植物と環境、人間(作業者)を相手に最適な管理が求められる分野であり、それらの要素が相互に影響し合う複雑な世界でもある。データに基づく客観的な管理は有効であるものの、植物に対する観察力、経験に基づく判断力なども必要とされる。また、工場と呼ばれながらも人的作業の比率が高く、機械化の余地も多く残されている。
そうした課題に対し、今後はICTやAI(注)、ロボットの分野からのアプローチも増えることが予想される。ここ数十年の施設園芸分野の発達、発展は、外部からの技術や素材の導入によるところも多かった。植物工場分野も、よりオープンな立場でイノベーションを進めることが肝要と考える。
注:Artificial Intelligenceの略で、人工知能、または、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、またはそのための一連の基礎技術をいう。
引用文献
(※1) 「園芸用施設及び農業用廃プラスチックに関する実態(平成24年)」 農林水産省生産局園芸作物課、2016年 http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/haipura.html
(※2) 「次世代施設園芸の全国展開」 日本施設園芸協会、2016年 http://www.jgha.com/jisedai/h27/pl/h28jisedai2.pdf
(※3) 「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例集」 日本施設園芸協会、2016年 http://www.jgha.com/jisedai/h27/r2/h27r25.pdf
(※4) 「平成27年度 次世代施設園芸導入加速化支援事業(全国推進事業)事業報告書」 日本施設園芸協会、2016年 http://www.jgha.com/jisedai/h27/r0/h27r01.pdf
(※5) 「第37回『施設園芸総合セミナー・機器資材展』プログラム・テキスト」 日本施設園芸協会、2016年
(※6) 川口和雄 「接ぎ木苗生産における閉鎖型苗生産システムの導入 月報野菜情報 2005年10月号」 農畜産業振興機構 2005 http://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/joho/0510/joho02.html
(※7) 「施設園芸・植物工場事業者への栽培支援・経営支援事例集」 日本施設園芸協会、2016年 http://www.jgha.com/jisedai/h27/r3/h27r3.pdf
(※8) 「平成26年度 次世代施設園芸導入加速化支援事業(全国推進事業)事業報告書」 日本施設園芸協会、2015年 http://www.jgha.com/files/houkokusho/26/26_4shidou.pdf
(※9) 「特集:パプリカ栽培の新たな展開、施設と園芸 2015年夏号」 日本施設園芸協会 2015年
参考文献
(1) 高辻正基 「植物工場」 講談社、1979年
(2) 「農商工連携研究会植物工場ワーキンググループ報告書の公表について」農林水産省・経済産業省、
2009年http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/engei/090424.html
(3) 「植物工場・施設園芸ハンドブック」 農文協、2015年
(4) 「SHPのあゆみ」 スーパーホルトプロジェクト協議会、2016年 (日本施設園芸協会にて公開準備中)