(野菜情報 2017年3月号)
産地紹介:香川県 JA香川県
~穏やかな気候ですくすくと育つセルリー(セロリ)~
香川県農業協同組合
三豊地区営農センター 園芸課 セルリー担当 山本 周
1 産地の概要
香川県農業協同組合(以下「JA香川県」という)は、香川県下の43JAが合併して平成12年4月に設立した。その後、さらに2JAと合併し、25年4月に県単一農協として再スタートを切った。
香川県の農家1戸当たりの平均耕地面積は0.9ヘクタールと、全国平均(2.1ヘクタール)の半分以下であるが、農地の効率的な利用や経営の複合化を図り、生産性の高い農業を営んでいる。恵まれた気候条件などの下、レタスや金時にんじん、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)など、全国に誇る農産物を生産している。
JA香川県の27年度の販売額は400億6400万円で、野菜183億4300万円(45.8%)、畜産123億300万円(30.7%)、米53億3900万円(13.3%)、果樹25億9700万円(6.5%)などとなっている。セルリーの販売額は1億7000万円である。
香川県内のセルリー産地である観音寺市は、県の西部に位置し、北は瀬戸内海、南は讃岐山脈に接している(図1)。温暖少雨の瀬戸内式気候という恵まれた自然条件を高度に活用するとともに、経営規模の零細性を土地の高度利用と施設園芸などの資本集約経営で補完し、米麦を基幹に野菜、果樹、畜産などの複合経営を中心とした生産性の高い農業を展開している(写真1)。市内でも特にセルリーの栽培が盛んな有明地区は、海岸沿いの水はけのよい砂地を利用し、セルリーを中心にトマト、きゅうりなどが栽培されている。
香川県におけるセルリーの生産は、この観音寺市有明地区で昭和45年に始まった。当時は栽培の施設化が進んだ時期であり、導入する品目を検討していたが、関東の市場からセルリー生産の要望があり、5戸の生産者で栽培を開始した。現在、JA香川県観音寺地区セルリー部会の生産戸数は22戸で、栽培面積が830アール(うちセルリー590アール、ミニセルリー240アール)、1戸当たりの栽培面積は37.7アールである。生産量は640トン(セルリー480トン、ミニセルリー160トン)となっている。県内でも農業者の高齢化が進んでいるが、生産者の平均年齢は40歳代と若く、担い手も多く育っており、県下でも勢いのある産地である。
2 栽培概要
当地のセルリーは、主にトマトと組み合わせて栽培されている。セルリーは9月中旬ごろから11月末まで定植を行い、収穫は1月上旬から5月上旬までとなる。収穫の最盛期は3月である。栽培は、無加温の温室によるものが一般的である。ミニセルリーの定植は9月上旬から11月末までで、収穫は11月中旬から6月上旬までとなり、露地栽培や無加温の温室による栽培が一般的である(図2、写真2)。主な品種は、セルリーがコーネル619、ミニセルリーはトップセラーである。
育苗については、一括してJA香川県の子会社である香川県営農支援センターで行い、生産者の作業軽減を図っていた。しかし、平成18年ごろから、コーネル品種において、温暖化の影響による播種期の高温を原因とする種子の発芽不良や、定植苗にウイルス病に類似したねじれ症状の発生が見られるようになった。そのため、県の普及センターなどの関係機関と協力し、22年から系統選抜のための管内採種農家による自家採種を開始し、翌23年から選抜種の栽培に取り組んだ。選抜種は地域の固定種とし、香川県営農支援センターで育苗している。選抜種は発芽がよく、ねじれ症状の発生は少ないため、良質苗による定植を行うことができ、品質の向上につながった。現在は選抜種と市販種子との併用となっているが、選抜種のウエイトが高まっており、さらなる品質向上を目指している。
また、JA香川県では作業の省力化を図るため、各生産者に養液土耕栽培システムの導入を推進している。養液土耕栽培システムは、特殊な土壌や施設を必要とせず、かん水や施肥作業を自動で行い、従来の土耕栽培法よりも肥料の使用量を減らすことができる。また、定植時に肥料や土壌改良剤を投入する作業が不要で、省力化が可能となる。さらに、作物は効率よく水と肥料を吸収するため、ストレスがかかりにくく、増収や品質向上が期待できる。現在では半分ほどの生産者が導入し、省力化はもとより、品質の向上も実現している。
セルリーは、病気では軟腐病、斑点病、萎凋病、害虫はヨトウムシ、アブラムシ、ハクサイダニの発生が多い。そのため、定植前の土壌消毒や適時適切な防除を行い、安全で良質なセルリーの供給を目指している。
3 出荷と販売戦略
より新鮮な状態で消費者に届くように、収穫は朝に行い、生産者各自による選別・箱詰めの後、その日のうちに集荷場へ持ち込んで市場へ向けて出荷している(写真3、4)。集荷場では、検査員による品質検査が行われる。週に1回、出荷者を対象に出荷周知会を行い、生産者の意識の統一、品質の維持・向上を図っている。さらに、出荷用段ボールには生産者名と番号を記入し、問題があった際に迅速に対応できる体制を整えている。
主な出荷先は、京浜や仙台の市場である。毎年2月には、部会役員が各市場を訪問して販売検討会や販売促進活動を行い、再生産価格を意識した契約的取引の拡充を図っている。また、継続的・安定的な出荷を行うとともに、部会内で3月を出荷最盛期とするよう意思統一し、他産地の端境期を狙った有利販売に努めている。
さらに、農薬に関する安全使用基準の厳守、記帳および確認や保管を確実に実行するとともに、異物混入などを防ぐための食品衛生の意識づけを徹底している。
また、販売促進の一環として、JA広報誌やホームページにセルリーを使った料理レシピを掲載している(写真5)。
◆一言アピール◆
セルリーは独特な香りとみずみずしく、シャキシャキとした歯ごたえが魅力の野菜である。調理法も多く、さまざまな料理に使用できる。また栄養価も高く、ビタミンやカリウムが豊富に含まれている。さらに、非常に低カロリーな野菜で、ダイエット効果も注目されている。瀬戸内の穏やかな気候ですくすくと育った香川県産セルリーを、ぜひ一度ご賞味いただきたい。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:香川県農業協同組合 三豊地区営農センター 園芸課
住 所:〒768-0012 香川県観音寺市植田町1735
電話番号:(0875)25-0219 FAX番号:(0875)25-4715
ホームページ:http://kw-ja.or.jp/