(野菜情報 2016年11月号)
産地紹介:徳島県 JA名西郡
~さらなる品質の向上を目指す名西郡ほうれんそう~
名西郡農業協同組合 石井経済センター指導販売課 仁木 宏則
1 産地の概要
徳島県の北東部に位置する名西郡農業協同組合(以下「JA名西郡」という)は、神山町と石井町の2町を管内としている(図1)。1000メートル級の剣山山系が連なり、全面積の83%が山地である。
その中央を鮎食川が蛇行して流れ、それに向けて数多くの谷川が流れ込み、春は桜、秋は紅葉によって美しい渓谷美を作っている。神山町は、徳島県を代表する特産物であるすだちの日本一の産地として知られ、石井町は徳島市のベッドタウンとして発展しつつ、農業も盛んな地域である。平成28年6月1日現在で、管内の総人口は3万695人、面積は202.15平方キロメートルとなっている。
JA名西郡の27年度の総販売額は14億9811万円であり、その内訳は米穀3522万円(2%)、野菜8億1701万円(55%)、果樹4億4793万円(30%)、畜産1億1476万円(8%)、花き8318万円(5%)などである。野菜を品目別に見ると、ほうれんそう(3.6億円)、ブロッコリー(1億円)、こまつな(0.9億円)の順であり、ほうれんそうは野菜全体の40%を超える販売額となっている。
JA名西郡管内におけるほうれんそうは、石井町内で栽培されている。古くから水田裏作の野菜として定着しており、JA名西郡における秋冬野菜の顔となっている(写真1)。石井町は人口2万5510人(28年6月1日現在)、面積28.85平方キロメートルで、年平均気温が16.4度、年平均降水量は2534ミリメートルである。町の北側には吉野川が、町の中央付近にはその支流である飯尾川が流れている。温暖な気候に加え、吉野川流域の肥沃な土壌と良質な水を生かし、ほうれんそうをはじめさまざまな野菜を栽培している。
2 ほうれんそう栽培の概要
現在、ほうれんそう生産者は269戸であり、面積は約100ヘクタールである(1戸当たり平均37アール)。出荷期間が10月中旬から翌4月上旬までと、長期にわたる栽培を行っている。播種は各品種ごとにその特性に合った時期に何回かに分けて行う(図2)。また、生育の早い品種と遅い品種を同時に播種することによって出荷の切れ目をなくし、長期的継続出荷を実現するため、現在8品種程度を採用している。特に、当地では秋播きが多いので、プログレスやオシリスなどの品種を使っている。管内のほうれんそうは主に露地栽培で行っており、播種後1~2カ月程度で収穫している。
石井町では10年ほど前にべと病(注1)が大発生し、深刻な被害をもたらした。それ以降、レース(注2)7抵抗性品種の導入や農薬の予防散布により沈静化されていたが、近年のレースの分化により、べと病の発生が多数確認されるようになった。対策として、新たな抵抗性品種を導入するとともに、土壌消毒剤のユニフォーム粒剤による病害の抑制や、農薬のランマンフロアブルなどによる発生の予防に努めている。
また、石井町ではほうれんそうの8割以上が露地で栽培されているため、天候に左右されやすく、降雨が度重なると産地に甚大な被害をもたらすことがある。そのため、降雨時に圃場内に水が溜まらないように排水用の溝をつけたり、降雨後には中耕や葉面散布を行うことにより、品質の低下を防いでいる。
注1:糸状菌(カビ)の一種であるべと病菌による、葉全体に病斑が広がる病害。平均気温15度前後で、曇天や雨が続くと発生しやすい。
注2:病原菌の形態に差異はないが、病原性が異なる菌系統のこと。それまで発病が認められない抵抗性品種を侵す新たな系統が発生すると、それが新レースとなる。
3 集出荷体制
出荷調製作業は、生産者が各自で行う。出荷当日の収穫は葉を傷めやすいので、生産者は前日の午後に収穫を行う。収穫したほうれんそうは、出荷当日に、規格に従って長さや株の太さを揃えて1束210グラムに仕分けし、株元5センチメートルぐらいの所をテープで結束して根を0.5センチメートル程度に揃えて切る(表、写真2)。4キログラム段ボールに20束ずつ詰め、近くの集荷場に持ち込んで等階級ごとに積み分ける。段ボールには等級ごとに色をかえた専用テープを貼り、容易に仕分けできるようにしている。その後、JA職員が各集荷場を巡回し、品質検査を行ってトラックに積み込む(写真3、4)。
集荷場では、生産者が互いの荷物を見比べることで個人差を是正し、品質にバラツキが出ないように努めている。また、生育に関する状況などを話し合うことで情報の共有化を図り、病害虫に対する地域としての迅速な対応などに役立てている。
集荷されたほうれんそうは全てJAの予冷センターに集められ、真空式予冷装置を使って品温を6度まで冷やす。真空予冷後は冷蔵庫に入れることで品温の上昇を防ぎ、鮮度保持に努めている。その後、トラックに積み込まれたほうれんそうは、集荷日の夜から翌未明にかけて、地元市場のほか、主な出荷先である京阪神市場に到着する。
昨今の異常気象により、ほうれんそう生産は一段と難しくなっているが、JA名西郡では、生産者の高い技術力や優良品種の選定などにより、品質の高いほうれんそうを出荷している。今後、さらなる品質の向上や新たな栽培・出荷技術の展開により、名西郡産ブランドの発展に取り組んでいきたい。
◆一言アピール◆
当JAの経営理念である「地域のみなさまとのふれあいを大切に、信頼と満足を感じていただけるJAに」のもと、消費者が安心して購入でき、頻繁に食卓に上るほうれんそうを目指し、日夜努力を続けている。
当JAのほうれんそうはほとんどが露地栽培であり、かつ冬場の霜に当たることで甘味が増すことから、おいしさに定評がある。名西郡産ブランドのほうれんそうを店頭でお見かけの際は、ぜひ味わっていただきたい。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:名西郡農業協同組合 石井経済センター 指導販売課
住 所:〒779-3223 徳島県名西郡石井町高川原字高川原218
電話番号:(088)674-2125 FAX番号:(088)674-5082
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