(野菜情報 2016年9月号)
産地紹介:鳥取県 JA鳥取西部
~キラリ・とっとり 大山ブロッコリー~
鳥取西部農業協同組合
営農部特産園芸課 リーダー 高見 哲也
鳥取西部農業協同組合(以下「JA鳥取西部」という)は、鳥取県の西部に位置し、2市、6町、1村(米子市、境港市、南部町、伯耆町、大山町、日南町、江府町、日野町、日吉津村)で構成され、砂丘地帯、水田平野地帯、大山山麓の中山間地帯の3地帯に大別される(図1)。標高0メートルの平地から標高600メートルの中山間地帯まで耕地が広がり、起伏に富んだ特色のある環境条件を有している。土壌は、平たん地では砂質土と黒ボク土が、中山間地は黒ボク土と砂壌土が中心である。年平均気温は15.0度であり、年間降水量は1772.0ミリメートル(米子市)で、春から秋にかけては比較的温暖な気候である。平たん地ではほとんど積雪がない地帯もあるが、山間地では1~1.5メートルの積雪となる地帯もある。
JA鳥取西部の平成27年度の総販売額は、112億7140万円であり、その内訳は米穀類22億6100万円(20.1%)、特産園芸45億1500万円(40.1%)、畜産22億8600万円(20.3%)、果実9億2400万円(8.2%)、直販12億8500万円(11.4%)となっている。特産園芸の主体は、白ねぎ(24億円)、ブロッコリー(14億円)、トマト(1.5億円)、にんじん(1.5億円)、花き類(1.7億円)などである。
ブロッコリーは、特産園芸で白ねぎに次いで2位であり、JAの総販売額の1割を占めている。
2 ブロッコリー生産の概要
JA鳥取西部のブロッコリー栽培は、昭和46年に大山町(旧中山町)で、米の生産調整に伴い、県(普及所)、市場をはじめとする関係機関で話し合った結果、「これからは、西洋野菜ブームが来る」と考え、転作作物として導入されたのが始まりである。作付面積は年々増加し、60年代には初夏どり栽培も確立され、中山町農協(当時)は西日本一の産地と評されるまでになった。しかし、その後は年2期作による連作で根こぶ病が多発し、出荷量は減少していった。また、平成4年以降の円高による輸入量の増加に伴って価格が下落し、作付面積は減少の一途を辿った。
平成6年、県西部管内16の農協が広域合併してJA鳥取西部が誕生したのを契機に、ブロッコリー産地としての強化をめざし、共同計算、共同販売を開始した。出荷の段ボールを縦詰3キログラムから横詰5キログラムへと変更し(現在は横詰6キログラム)、輸入品との差別化を図るために、全国に先駆けて葉付出荷にも取り組んだ(写真1)。その後、緑黄色野菜ブームと消費者の安全志向の高まりにより、生産量も回復の兆しが見え、12年にセル育苗による定植機を導入したこともあり、面積は飛躍的に拡大した。それ以降もさまざまな機械の導入によって1戸当たりの栽培面積は増大し、27年度には、生産者数249戸、総面積467.6ヘクタール(1戸当たり平均188アール)、出荷量4120トン、販売額14億312万円となった(図2)。
ブロッコリーは栽培や出荷調製に手間のかかる品目であるが、関係者一丸となった努力により、全国有数の産地に成長したと自負している。また、24年6月に「大山ブロッコリー」を地域団体商標として登録し、ブランド力の強化に努めているところである。
ブロッコリーの栽培体系は、2月から4月に定植し4月から6月に収穫する初夏どり栽培、8月から10月に定植し9月から翌4月に収穫する秋冬・越年・春どり栽培と、大きく2つの作型に分かれる(図3、写真2~5)。品種は、恵麟、おはよう、サマードームなど、15種類を栽培している。
3 収穫・出荷作業
ブロッコリーは、中心にできた蕾の固まりである花蕾の直径が11~12センチメートルになった時に収穫する。収穫した瞬間から鮮度が落ちるため、収穫はブロッコリーの呼吸が緩やかな気温の低い時間帯に行う。
JA鳥取西部では、前日の午後10時から当日の午前9時までが収穫時間と決められており、個々の生産者はヘッドライトをつけてていねいに収穫を行い、部会の選別基準に沿って出荷規格ごとに鮮度保持フィルム入りの段ボールに箱詰めする(写真6)。集荷場へ出荷されたブロッコリーは、検査の後に真空予冷装置に入れて30分で品温を5度にし、保冷車で市場などへ搬送する(写真7)。現在の出荷先は、中京市場3社、京阪神市場5社、中国市場5社の計13社である。
味はもとより、確かな栽培体系と出荷計画、そしてコールドチェーンによる品質管理の徹底により、産地として高い信頼を得ている。
4 有利販売に向けた取り組み
JA鳥取西部では、全生産者へ定植日ごとのほ場管理台帳、栽培管理表の記帳を義務付けている。定植日ごとのほ場管理台帳により、精度の高い出荷計画を立てることができる。それを市場に伝えることで、事前販売による売り場の確保を行い、有利販売を実現している。
また、生産者、JA、関係機関、行政(県・市町村)が一体となり、大山ブロッコリー井戸端会議や大山ブロッコリー料理研究会を結成した。そこでは、食育活動をはじめ、県内外の消費宣伝活動による販売促進や商品力の向上、新規就農者支援などを行っている。そうした活動の一つとして、基準の硝酸イオン濃度をクリアし、化学肥料を7割削減して味を追求したブランドブロッコリー「きらきらみどり」の商品化に成功した(写真8)。現在も栽培面積拡大中である。
今後も、現状に満足することなく、新たな挑戦への姿勢を崩さず、次の一歩を踏み出す活動を実践していきたい。
◆一言アピール◆
当地域のブロッコリーは、色鮮やかで花蕾が充実し、食味が良いのが特徴であり、出荷に当たっては新鮮さを大切にしている。大山ブロッコリー料理研究会では、新しいブロッコリー料理を開発して広く発信することで、大山ブロッコリーの消費拡大にとどまらず、ブロッコリー全体の需要拡大に寄与できればと考えている(写真9)。たくさんのブロッコリーレシピをJA鳥取西部のホームページにて紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。
◆お問い合わせ先◆
担当部署:鳥取西部農業協同組合 営農部 特産園芸課
住 所:〒683-0802 鳥取県米子市東福原1丁目5-16
電話番号:(0859)37-5812 FAX番号:(0859)34-1146
ホームページ:http://www.ja-tottoriseibu.or.jp