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(野菜情報 2016年7月号)

今月の野菜

産地紹介:山形県 JA鶴岡

~庄内砂丘に育つオリジナル品種のメロン~

鶴岡市農業協同組合

園芸部園芸特産課 販売主任 栗田 淳平

 産地の概要

 鶴岡市農業協同組合(以下「JA鶴岡」という)は、山形県の庄内地方に位置し、旧鶴岡市を管内としている(図)。庄内地方は日本海に面し、その日本海側には庄内砂丘と呼ばれる日本有数の砂丘地帯が、内陸部には庄内平野と呼ばれる米づくりに適した平野が広がっている。東側に月山を中心とした出羽丘陵、北に鳥海山、南に朝日山地と、三方を山に囲まれており、これらの山々の雪解け水が良質な地下水を形成し、豊かな作物を生み出している。対馬暖流の影響を受ける庄内地方は、県内陸部より温暖で降雪量も少ないものの、特に冬は北西の季節風による地吹雪と呼ばれる風雪が発生するほどで、年間を通じて風の強い地域である。



 JA鶴岡の平成27年度の総販売額は83億2069万円であり、その内訳は米穀46億7355万円(56.2)、園芸34億9536万円(42.0)、畜産1億5178万円(1.8)となっている。園芸の主体は、メロン(約10億円)、だだちゃ豆(約10億円)、 花き(約億円)、ミニトマト(約億円)などである。JA鶴岡では稲作を基盤に、砂丘地ではメロン、平野部ではだだちゃ豆を中心にミニトマト、さやいんげん、ねぎ、花きなどが盛んに生産されており、産地としてのブランド確立に取り組んでいる。

 また、鶴岡市は、自らの食文化を世界にアピールし、地域が守り育ててきた食の多彩な文化の継承発展や、生産から加工、流通、観光、飲食、食器など、視野の広い食関係産業の活性化に取り組んできたことが評価され、26年12月日に日本初のユネスコ創造都市ネットワーク食文化分野に認定された。

 庄内砂丘でのメロン栽培

 庄内砂丘は、南北に約35キロメートル、東西に約キロメートルにわたる面積約55平方キロメートルの、日本でも有数の砂丘である。中世以前は松林などの多くの緑があった庄内砂丘だが、戦国時代から江戸時代にかけては、戦乱による焼失や乱伐によって荒れ果てた不毛の地となっていた。その後、飛砂による農作物被害や排水被害などを解決するため、クロマツの植林が江戸時代より始まり、約世紀の時間と労力を費やして緑豊かな土地を復活させた。この防風林の恩恵を受け、現在ではメロンが盛んに栽培されている(写真)。



 庄内砂丘でのメロン栽培の歴史は古く、大正7年ごろより開始された。昭和38年には西郷地区畑作振興会(現・西郷砂丘畑振興会)が設立され、栽培が本格化した。54年には現在の主力である「アンデスメロン」の出荷が開始されるとともに生産量も大幅に伸び、メロン産地として全国に認知されるようになった。

 面積はピーク時に比べ減少したものの、近年はほぼ横ばいとなっている。若い世代の後継者も多く育ち、活力ある生産を維持している。平成28年産については、生産者約190戸で約135ヘクタール(戸当たり平均71アール)を作付けしており、夏場の出荷に向け日々栽培管理に励んでいる。

 きめ細かな栽培管理

 メロン栽培では、水分管理が重要である。庄内砂丘は、水はけが良く水分がコントロールしやすい、良質な地下水を豊富に利用できる、昼夜の寒暖差が大きいなど、栽培に最適な条件を備えており、みずみずしく甘いメロンを作ることができる(写真)。また、ミツバチを使うことでより自然に近い状態の交配ができ、おいしく形の良いメロンに仕上げることができる(写真)。





 つるの仕立て方は、株当たり子づる本仕立てとし、地い栽培で果どりを基本としている。メロンは温度、水分、肥料分などについて、生育ステージに応じた細かい管理が必要となる。また施肥については、地力の維持のための堆肥の施用や、効率的で環境に配慮したマルチ内施肥を行っている。病害虫対策については、かんれいしゃや捕殺虫シートなどによる耕種的防除に加え、県の病害虫発生予察やJAで発行する営農情報に基づき適期に防除することで、農薬の使用回数を減らすよう努力している。

 これらの技術により、管内生産者はエコファーマーの認定を受けており、またアンデスメロンについては、農薬と化学肥料の使用を制限した特別栽培にも取り組んでいる。メロン栽培においては機械化が困難な作業が大半を占めており、他品目と比べて人手がかかるが、その分こだわりや思い入れが非常に強く、そうした生産者の意識向上が産地ブランド確立へとつながっている。

 JA鶴岡では、平成23年度より全ての青果物で独自のGAP(農業生産工程管
理)に取り組み、28年度より農林水産省GAPガイドラインに準拠した山形県版
GAPへと移行した。これにより食品安全、環境保全、労働安全などの向上を図り、安全・安心な青果物の提供に努めている。

 作型はハウスとトンネルのつがあり、月から月中旬には種、月から月中旬に定植し、月下旬から月上旬に収穫して出荷する(図2、写真)。





 人気を呼ぶオリジナル品種

 JA鶴岡では、「アンデスメロン」「鶴姫メロン」「鶴姫レッドメロン」の品種を生産している(写真)。主力品種であるアンデスメロンは、昭和54年に導入して以来、「アンデス号」を採用している。この品種は、最新のアンデス品種と比較して果実肥大などでやや劣るものの、追熟した時のとろけるような食味と濃厚な甘さにより、根強いファンを持っている。

 鶴姫メロンは平成10年に栽培を開始した緑肉のメロンで、大玉でネット張りも良く、甘くかつすっきりした後味が特徴である。鶴姫レッドメロンは11年に栽培を開始した赤肉のメロンで、こちらも大玉でネット張りが良く、濃厚な甘さが特徴のメロンである。どちらもJA鶴岡のオリジナル品種で、青と赤のセットが贈答用として人気を呼んでいる。

 厳密な選別基準と多様な販売戦略

 JA鶴岡では、メロンが収穫可能かどうかの判定を行う「ほ場格付」を実施している。収穫期が近づくと部会の集落役員が担当集落のほ場を回り、メロンの状態と糖度をチェックして判定を行う。可能と判定されたほ場では、収穫前に再度糖度検査を行い、基準値を超えたほ場からのみ収穫をしている。



 集出荷方法は個選共販方式であり、生産者自らが選別して箱詰めを行い、封を開けた状態で選果場へ持ち込む。メロンには1玉ずつ品種名と生産者名が記載されたシールが貼られ、責任を持って出荷される。部会では選別基準を共有するため、毎年品種ごとに目ぞろえ会や栽培講習会を開催し、品質の安定に心掛けている。選果場では、検査員による無作為抽出の糖度検査(破壊方式)と、外観や箱詰め状態の検査を受ける。食味はもちろんのこと、外観にも強いこだわりを持ち、細かい選別基準を設けている。

 主な出荷先は、京浜市場を中心に関西、東北、中部の各市場であり、全体の約80は市場取引となっている。市場外流通にも積極的に取り組み、約20は量販店や販売先との直接取引となっている。市場取引においても量販店を中心とした販売に取り組み、末端となる販売先を把握した上で計画的な出荷・販売を行っている。

 また、量販店のPB商品としての販売を企画するなど、魅力ある産地の確立に取り組んでいる。

 部会ではほ場格付の実施に加え、精度の高い販売登録の取りまとめや生育調査を定期的に行い、市場や販売先へ情報提供している。品質や食味の向上に向けて生産者とJAが一体となって長年取り組んできた努力が市場にも評価され、「丸鶴」ブランドとして販売先にも認知されてきた。

 さらに、生食以外にもアイスクリーム、ゼリー、パンなどの加工品開発に取り組み、年間を通じた商品PRなどによる知名度の向上にも力を入れている。

 また来年、多くのメロン産地が参加する「全国メロンサミット」を鶴岡市で開催することが決まっている。

一言アピール

管内の生産者が丹精込めて作ったメロンが、6月下旬から8月上旬にかけて出荷される。最適な環境である庄内砂丘で栽培され、みずみずしく甘いメロンに仕上がっている。JA鶴岡産メロンを見かけた際は、ぜひご賞味いただきたい。また、直売所では期間限定でメロンの食べ放題も行っており、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄り願いたい。

お問い合わせ先

担当部署:鶴岡市農業協同組合 園芸部 園芸特産課
 住  所:〒997-0052 山形県鶴岡市覚岸寺字水上199
 電話番号:(0235)29-2828 FAX番号(0235)29-2832
 ホームページ:http://www.dadacha.jp/

今月の野菜「メロン」


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