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(野菜情報 2016年5月号)

今月の野菜

産地紹介:岩手県 JA新いわて
~菌床しいたけの収量向上・高品質化への取り組み~

新岩手農業協同組合
奥中山営農経済センター 米穀園芸課 課長補佐 工藤 享


1 産地の概要

新岩手農業協同組合(以下「JA新いわて」という)は、平成20年5月に旧JA新いわて、旧JAいわてくじ、旧JA北いわて、旧JAいわて奥中山、旧JAみやこの5JAが合併して誕生した。西は奥羽山脈を境に秋田県と、北は青森県と接し、東は陸中海岸により太平洋に面し、岩手県のほぼ半分に相当する5市8町6村という広大な事業区域を有している。

JA新いわてでは、事業区域を7つのエリアに分けている(図1)。それぞれのエリアに営農経済センターを設置し、各エリアの立地条件や気象条件に合わせ、米をはじめ野菜、花き、果樹、畜産など多種多様な農畜産物を生産している。


奥中山営農経済センターは県北部に位置し、奥中山エリアの一戸町と二戸市浄法寺地区を管轄している。当地は畜産や野菜のほか、生しいたけの栽培も盛んである。管内には南から北に馬淵川が流れ、国道4号線が走っている。

奥中山エリアの北部は平場地帯のため比較的温暖であり、トマト、きゅうり、ピーマンなどの果菜類や果樹の産地となっている。これに対して、南部は標高が高い高冷地であり、レタスなどの野菜や酪農が盛んである。26年度のエリアの総販売額は57億1946万円であり、畜産が38億5796万円(67.5%)、園芸が18億2718万円(31.9%)、米穀・雑穀が3433万円(0.6%)となっている(表1)。園芸のうち野菜は14億3412万円(25.1%)、生しいたけなどのきんたけ類は2億161万円(3.5%)である。管内には国道4号線の最高地点(458メートル)があり、交通の難所として有名である。また、北上山系や奥羽山脈に囲まれているため、冬場の最低気温がマイナス20度以下になる極寒の地でもある。


2 奥中山エリアの菌床しいたけ生産

当地の菌床しいたけ生産は、冬期の換金作物として平成3年から取り組み始めたが、当時は技術的に不明な点が多く、全体への普及には至らなかった。その後、9年ごろから新技術である上面栽培(注)へと栽培法が切り替わり、品種も北研600号から北研607号に変更したことで品質が高まった(写真1)。それにつれて、生産者も徐々に増え始めた。27年度には、25人の生産者で30万弱の菌床を栽培している(表2)。菌床しいたけ部会員は1菌床当たり収量800グラムを目標としているが、27年度においては14人が達成した。また、27年度最高の1115グラムを達成した生産者は、5年連続で1000グラム以上の収量を実現している。

注:菌床の上面からのみしいたけを発生させる栽培法。全面栽培(上面と側面から発生させる栽培法)に比べ、栽培棚に並べる菌床の数を増やせる、日常管理や収穫作業が容易である、大きく肉厚のしいたけ生産が見込まれる、などの利点がある。

菌床しいたけの栽培は、原木しいたけ栽培とは異なり、重いほだ木の移動などの重労働がないため、高齢者や女性でも従事することが可能である。菌床は、自家ハウスで培養している。



菌床しいたけの一般的な作型は、冬から培養し、翌年の秋からの収穫が主体となる冬どりである(図2)。その作業の合間を縫い、夏秋期にはレタス、ミニトマトなどを栽培している。15年からは、秋から冬にかけて培養し、翌年の夏からの収穫が主体となる夏どりにも一部の生産者が取り組み始め、産地として年間を通じた出荷が可能となった。


3 菌床ブロックの製造

これまで、生産者は個人で菌床ブロックを購入してきたが、規模が拡大するに従って購入に支障をきたすようになってきた。そのため、平成16年に生産者30人で「有限責任中間法人いわて奥中山菌床しいたけ生産組合」を設立し、JAが施設整備事業を活用して建設した菌床ブロックの製造施設の運営を手掛けている(写真2、3)。一次培養には、冬期間のJAの野菜予冷庫を利用するなど(全国初の試み)、施設を有効活用しながら、17年より菌床ブロックの供給を開始した(写真4、5)。





17年度に12万7000菌床を製造したが、その後は増加が続き、27年度には21万1000菌床を製造する予定である。製造にあたっては、施設内の環境整備や清掃によって雑菌の混入を少なくし、安定的に生産者へ届けることに重点を置いている。また不足する分については、県内の製造元より購入している。

4 販売への取り組みと今後の展望

菌床しいたけの販売は、輸送運賃の値上がりなど、生産コストの上昇により厳しい状況が続いている。平成27年の冬は灯油価格が安価であったため、生産者への負担が軽減されたが、さらなるコスト低減や品質向上のための努力が必要である。

現在、JA管内全域で規格の統一を図り、各エリアを越えて出荷調整を行うことで、高品質な生しいたけの安定出荷を実現している。また、出荷用の段ボールも統一し、コスト削減に努めている。さらに、品質向上に向けた取り組みとして、年2回の出荷規格目揃会、市場視察査定会を開催している(写真6、7)。こうした取り組みにより明らかになった産地としての課題を取り上げ、解決のための検討を続けている。



部会では、収量トップ賞、品質トップ賞の表彰を行っており、今後もそうした点で生産者の意欲向上に努めていきたい。また、規模の拡大や後継者の育成により、出荷数量の増大を目指している。

◆一言アピール

 当地は生産者のつながりが強く、高品質で均一化されたしいたけを出荷している。しいたけは、食物繊維やミネラル、ビタミン類などを豊富に含む、低カロリーな野菜である。おすすめは、当地で栽培が盛んな夏場のレタスや冬場の促成アスパラとの炒め物である。ぜひ、JA新いわての菌床しいたけをお試しいただきたい。

◆お問い合わせ先

 担当部署:新岩手農業協同組合 奥中山営農経済センター 米穀園芸課
 住  所:〒028-4306 岩手県岩手郡岩手町御堂第三地割112-3
 電話番号:(0195)35-3224 FAX番号:(0195)35-3615
 ホームページ:http://www.jaiwate.or.jp/shin-iwate/

今月の野菜「生しいたけ」


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