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(野菜情報 2016年4月号)

今月の野菜

 産地紹介:千葉県 JAきみつ
  ~温暖な気候のもと、さやいんげんを長期出荷~

君津市農業協同組合
小櫃経済センター 栗原 博之

1 産地の概要

君津市農業協同組合(以下「JAきみつ」という)は、千葉県の南西部、房総半島の中央付近に位置し、東京都心からほぼ50キロメートル圏内にある。平成16年4月に3JAが合併し、君津市、ふっ市、袖ヶ浦市を管轄するJAきみつが誕生した(図1)。管内は比較的温暖な気候で、米、野菜類、畜産物などの生産が盛んであり、地理的条件にも恵まれ、強い農業生産基盤を備えた地域といえる。9年の東京湾アクアラインの開通以降、富津館山道路や館山自動車道の開通、圏央道の延長など、交通網の整備が進み、利便性が高まっている。


JAきみつは「経営の健全化」「地域に愛される元気なJA」を目指して協同組合活動の原点に返り、地域農業の振興を基軸に、総合JAの特性を生かした事業運営に取り組んでいる。26年度の総販売額は58億4477万円であり、その内訳は米穀類21億3635万円(37%)、青果物・花き14億8932万円(25%)、畜産4億4471万円(8%)、直売所17億7439万円(30%)で、稲作や園芸が盛んな地域である。

2 さやいんげん生産の概要

JAきみつ管内でさやいんげんの栽培が盛んなのは、君津市びつ地区である。小櫃地区はJAきみつのほぼ中央に位置し、温暖な気候で年間降水量は1800ミリメートル前後と、農業経営を行う上で恵まれた環境にあり、水稲、野菜および花きの栽培が盛んである。

(1)出荷量と作型、品種

小櫃地区のさやいんげん生産は、今から約50年前の昭和38年に開始された。当時、小櫃地区では稲作と裏作のレタスの作付けが一般的であったが、袖ヶ浦市大鳥居地区でさやいんげんの作付けを行っており、そこの生産者から情報をもらって作り始めたのがきっかけであった。近年の年間出荷量は、100トン程度で推移している(図2)。


小櫃地区のさやいんげんはハウス栽培が主体であり、作型は半促成と抑制の2タイプである(写真1)。半促成は2月から7月にかけて、抑制は8月から12月にかけて栽培される(図3)。出荷は5月から7月上旬、10月から12月上旬と、春と秋の2回に分かれる。



栽培面積は延べ5.6ヘクタール(半促成3.5ヘクタール、抑制2.1ヘクタール)、生産者は延べ45戸(半促成25戸、抑制20戸)である。

主な品種は「スーパーステイヤー」「ケンタッキーブルー」である。さやいんげんの品種を大きく分けると、つるがある蔓性種とつるがない矮性種に分かれるが、両品種ともつるがある蔓性種である。

(2)選果・箱詰め作業の効率化

JAきみつでは、「JA選果」と言って、生産者がコンテナ一杯に詰めたさやいんげんをJAきみつの選果場に出荷し、選果場でベルトコンベアーを使い季節雇用者によって等級別に箱に詰めるシステムを採用している(写真2、3)。

小櫃地区では、収穫後のさやいんげんの選果と出荷用の箱詰めの人手が足りず、栽培面積が伸び悩んでいた。そこで、選果作業と箱詰め作業を軽減し、その分面積を拡大して出荷数量を増やす目的で、平成15年よりJA選果を開始した。

その後、生産者の高齢化による栽培面積の減少に伴い、出荷量は減少傾向にあるものの、JA選果による厳しい選果は市場から高い評価を受けている。高品質ないんげんを出荷し、産地としての地位を維持する上で、JA選果は欠かせないものとなっている。

(3)天敵ダニを利用した防除

近年、ハウス栽培のさやいんげんにおいて、アザミウマ類などの微小害虫による被害が深刻化している。これらの害虫は、春から初夏にかけて気温の上昇とともに個体数が急増し、加害による果実の秀品率低下や、樹の生育抑制を引き起こす。半促成栽培の6月以降の収穫に、特に大きな被害をもたらす。

害虫の天敵であるスワルスキーカブリダニは、アザミウマ類やコナジラミ類、それにホコリダニなどを捕食する習性がある。そのため、この天敵をさやいんげんの開花期にあらかじめ放飼しておくと、アザミウマ類の被害が抑制される(写真4、5)。

利用した生産者からは、「夏場の薬剤散布の回数を減らすことができ、楽になった」「アザミウマ類の被害を抑えられ、収量が増えた」といった声が聞かれ、効果を実感しているようである。天敵の利用は化学農薬に頼らないため、千葉県がすすめる「ちばエコ農産物」の認証の取得につながっている。

「ちばエコ農産物」とは、「環境にやさしい農業」によって消費者が安心して購入できる農産物を届けるため、化学合成農薬と化学肥料を通常の半分以下に減らして栽培する取り組みである。生産者は農薬使用履歴を記録し、収穫前には実際のほ場で審査を受けるなど、認証を取得するために厳しい基準を達成している。

3 販売先と今後の展望

生産者の高齢化を考えると、今後、栽培面積や出荷量を増やすことは、残念ながら困難な状況であるが、今の生産量を維持するとともに、「高品質生産」と「販売ルートの確立」を目標としている。今まで以上に品質を高め、アクアラインによる交通の利を生かし、京浜市場を中心に出荷していきたい。鮮度の良い安全なさやいんげんを消費者に届け、JAきみつのファンになっていただけるように、まごころを込めた生産に努めている。

◆一言アピール

 当地のさやいんげんは苦味がなくて甘く、お子様から大人までおいしく食べられる自慢の野菜。おすすめの食べ方はやはり和えものだが、素揚げにしてしょうがじょうゆやにんにくじょうゆをかけてもおいしく食べられる。ぜひ試していただきたい。

◆お問い合わせ先

担当部署:君津市農業協同組合 小櫃経済センター
住  所:〒292-0451 千葉県君津市末吉152
電話番号:(0439)35-2911 FAX番号:(0439)35-3645
ホームページ:http://www.ja-kimitu.or.jp/

今月の野菜「さやいんげん」


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