(野菜情報 2016年3月号)
産地紹介:福岡県 JAくるめ
~九州一の大河・筑後川に育まれたリーフレタス~
久留米市農業協同組合
営農事業部園芸流通課 課長代理 添島 健作
久留米市農業協同組合(以下「JAくるめ」という)は、旧久留米市(隣接する4町と平成17年に合併する前の久留米市)を管内としている。管内は筑後平野の中心部に位置し、北東部から南西部にかけて九州一の大河といわれる筑後川が流れ、南側には川に沿うように耳納連山が連なる(図1)。地形的には、南東の山麓や丘陵地から北西に緩やかに傾斜しており、筑後川によって形成された広大な沖積平野の一端に農地や市街地が広がっている。
JAくるめ管内にはJRと西鉄が走っており、九州自動車道の久留米インターチェンジもあって交通の便がよい。また、久留米市は人口約30万人の中核都市であり、福岡市にも近く、消費地に隣接した産地である。
肥よくな土壌条件のもと、管内での野菜栽培の歴史は古く、昭和30年代後半には施設栽培も始まり、現在では福岡県下有数の野菜産地となっている。
JAくるめの平成26年度の総販売額は56億1100万円であり、その内訳を見ると、野菜33億9400万円(60.5%)、米麦11億7700万円(21.0%)などが多く、直売所やインショップでの販売実績も2億3200万円(4.1%)となっている。
リーフレタス栽培は、約30年前より開始された。初期投資が少なく、高齢者や女性農業者も栽培しやすいことや、他品目との組み合わせが容易であることから導入され、当初は補完的な品目として位置づけられていた。近年では、省力機械(移植機や支柱打込機)の導入によって生産規模の拡大が可能となり、新規就農者や農業後継者が取り組みやすいこともあって、生産者数や栽培面積が増える傾向にある。その結果、リーフレタスは主力品目となり、JAくるめ管内では販売高1位を誇っている。
移植機が導入されたのは平成19年度であり、それによって規模拡大が急速に進み、栽培面積も増加傾向が強まった。翌20年度には国の「野菜指定産地」を取得し、「指定野菜価格安定事業」へ加入した。新規生産者や後継者が増えたため、部会員の平均年齢は22年度の57.4歳から27年度の54.5歳へと推移している。年間の出荷量は直近の5年間で約50万ケース程度増加し、1戸当たりの出荷量も増加傾向が続いている(図2)。
平成27年度のリーフレタス生産者は87戸であり、栽培面積は255ヘクタール(延べ面積)、1戸当たりの栽培面積は2.93ヘクタールである(図3)。サニーレタスとグリーンリーフを組み合わせ、また収穫時期の長期化が可能となるような品種を選び、安定生産、安定出荷をめざしている。栽培面積の割合をみると、サニーレタス55%、グリーンリーフ45%となっている。
JAくるめ管内のリーフレタスは、収穫期間が夏場を除く9カ月という長期にわたっており、夏季に他品目をとり入れることによって、周年雇用を実現する生産者も増え始めている。
は種は7月下旬から翌4月中旬まで、定植は8月中旬から翌5月上旬まで順次行い、収穫期間は9月中旬から翌6月中旬までとなっている(図4)。
16年度より、部会の下部組織として「生産委員会」を設置している。地区ごとに委員となる生産者を選出し、新品種の試作、生産コストの低減、栽培基準や作型表の見直しなどに取り組んでいる。
リーフレタスは露地やトンネルでの栽培であり、天候に左右されやすい。特に近年は年ごとの気候変動が激しく、安定した出荷を実現することが難しくなっている。そのため、病害や降雨、降霜による株の障害に強く、冬場の厳しい天候でも栽培が可能な品種の検討を続けている。また、栽培基準の見直しも、常に実施している。
リーフレタスの収穫、調製および箱詰め作業はほ場で行い、そのままJAの園芸流通センターへ持ち込む(写真1、写真2)。その後、第三者による抜粋検査で品質チェックを受け、真空予冷装置で急速冷蔵処理を行う。冷蔵庫(5度)で一時保管した品物は、各取引先へトラックで低温輸送される。
出荷先は、全国の青果市場19社が中心である。出荷地域の比率は、京浜地域25%、京阪神地域30%、中国地域20%、および九州地域25%となっている。出荷前には出荷規格査定会を開き、出荷規格を再確認している(写真3)。また、各取引市場の担当者と、産地で年間4回、消費地で2回の販売取引会議を開催している(写真4)。意見交換を重ね、契約規模の拡大や品質の統一、安定した出荷といった市場の要望に応えることで、産地の発展を図るように努めている。
レタス類は市場価格の変動が激しく、極端な高値や安値になる場合があるため、生産者の所得確保のためには安定した取引が課題となる。そのため、一定割合の契約取引や週間相対取引(注)を行っている。出荷前に年間作付計画をとりまとめ、それに併せて契約取引や週間相対取引の数量を決定する。一部では取引先への産地直送を行い、鮮度保持管理に努めている。
また平成26年度より、久留米市をはじめとした関係機関などと連携し、「久留米リーフレタス」のブランド化に取り組んでいる。その一環として、大都市圏の青果市場で、久留米市長、JAくるめの組合長および生産者代表によるトップセールスを実施した。また、商工会議所主催で「アイデアレシピコンテスト」を開催してレシピ集を作成したり、各種イベントなどでPR活動を行っている。
注:特定の取引先と、数量および価格を1週間ごとに事前(1~2週間前)に決めて出荷する取引。
前述したように、近年になって新規栽培者や後継者が増加しているため、さらなる栽培面積や出荷数量の拡大を図っている。また、生産者の所得向上を目指し、部会員一丸となって栽培技術の研さんや品質の統一に取り組んでいる。
JAくるめ管内は、厳寒期の市場シェア率が高い、全国的にも有数のリーフレタス産地である。穏やかな太陽の光を一身に浴びた「久留米リーフレタス」は、あざやかな色味と軟らかな食感が自慢。サラダはもちろん、しゃぶしゃぶやみそ汁、グリーンスムージーなど、その食べ方はいろいろある。
また、肌のキメを整えたり、免疫力を高め、さらには動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病予防効果もある「β-カロテン」が豊富に含まれるリーフレタスは、日々の食生活に欠かせない存在となっている。店頭で見かけた際は、「久留米リーフレタス」をぜひご賞味いただきたい。
担当部署:久留米市農業協同組合 営農事業部 園芸流通課
住 所:〒839-0821 福岡県久留米市太郎原町1110
電話番号:(0942)41-8905 FAX番号:(0942)44-8380
ホームページ:http://www.ja-kurume.or.jp