[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

(野菜情報 2016年2月号)

今月の野菜

 産地紹介:静岡県 JA富士市
  ~標高差を生かしたカリフラワーの長期出荷~

富士市農業協同組合
営農部営農販売課 課長 村松 真人

1 産地の概要

 富士市農業協同組合(以下「JA富士市」という)は、静岡県の東部、富士山の南麓に位置する富士市を管内としている。北は富士山山頂付近(標高3421メートル)から南は駿河湾(標高0メートル)を臨む地区まで、標高差に富む地形を有し、西部には一級河川である富士川が流れている(図1)。富士市の気候はおおむね温暖で、年平均気温は16.5度、年間降雨量は1935ミリと、農業にとっては恵まれた気象条件といえる。特に海岸沿いは冬が暖かく、無霜地帯である。
 富士市は製紙や機械製造、化学工業といった工業都市のイメージが強いが、農業も盛んに行われている。山間地では、お茶やかんきつ、キウイフルーツ、樒(注1)など、平地では水稲や、キャベツ、たまねぎ、ほうれんそうなどの露地野菜類、いちごや花き類を栽培する施設園芸、さらになしやいちじくといった果樹類も栽培され、全体として少量ながらも多品目な産地を形成している。
平成26年度のJA富士市の販売額とその割合を見ると、茶2億9000万円(33.5%)、いちご1億8000万円(20.1%)、花き・花木1億7000万円(18.9%)などが多く、キャベツ、カリフラワーなどいちご以外の野菜は2900万円(3.3%)となっている。

注1:樒とはシキミ属の常緑樹で、本州中部以南に分布している。
   仏壇に供えるなど仏事に使われ、根付き株や切り枝などの状態で流通している。


2 カリフラワー生産の概要

 富士市におけるカリフラワー栽培の歴史は古く、大正時代の栽培記録が旧富士郡岩松村に残っている。当時は、水田の裏作として、レタス、キャベツなどとともに栽培されていたようだ。
カリフラワーは他作物に比べて低温に弱いため、富士市内でも温暖な地域での栽培が盛んであったが、近年では地球温暖化の影響により、以前では栽培困難な中山間地(標高200~300メートル)でも生産できるようになった。
そのため、標高差を生かして収穫時期をずらすことにより、11月から翌4月までの長期にわたって品質の良いカリフラワーの収穫が可能となった。

(1)出荷量と作型、品種

 平成26年度のカリフラワーの出荷数量は1万1732ケース(約70トン)、販売金額は1784万円となっている(表)。
 生産者の高齢化や都市化による農地の減少などによって作付面積が減少する地域がある一方、茶園からの転換畑で増えた地域もあり、出荷数量、販売金額ともに増加している。作型は、中山間地の畑地と平地の水田裏作に分かれる(図2、写真1)。収穫期は、中山間地が11月から12月で、平地は12月から翌4月である。
 品種は、は種時期などにより変わるが、必ず花蕾からいが純白系のものを選定している(写真2)。主な栽培品種は、「礒月いそづき」「輝月てるづき」「雪月ゆきづき」「春月しゅんげつ」「F-805」および「晩月おくづき」などである。

(2)地力の向上と適期収穫に努める

 カリフラワーはアブラナ科作物に属するため、根がこぶ状になり腐ってしまう「根こぶ病」の発生が問題となる。根こぶ病を防ぐためには、土壌の排水性と土壌酸度が重要である。そのため、ほ場の周りに排水路を掘ったり、石灰資材を投入して土壌酸度を中性に近づけるなどの対策を講じている。
 また、品質の良い花蕾を収穫するには、茎葉を丈夫に育てることが重要である。生育不良な株は、小さい花蕾が早期に開き、商品価値が劣ってしまう。そのため、畑地では堆肥を投入して地力を高めている。水田裏作地では稲刈り後すぐに耕運し、秋雨を避けて早めに定植する。その後は追肥や、株元への土寄せを3回以上行いながら生育を促していく。
 カリフラワーは、収穫や調製作業に労力がかかる作物である。花蕾に日が当たると黄色く変色してしまうので、純白の美しい花蕾を出荷するためには、葉で覆われているうちに収穫しなければならない(写真3)。特に雨上がりの晴天時などは一気に開いてしまうこともあるので、生産者は常に畑を見回り、適期収穫に心掛けている。

(3)花蕾が痛まないようていねいに出荷

 収穫時や収穫後は、軟らかい花蕾を傷つけないようていねいに扱う。箱詰めする際にも、外葉を適量残して花蕾同士がぶつかって傷まないようにするなど、細心の注意が必要となる(写真4、写真5)。
 出荷前には部会員全員で荷造講習会を開き、出荷規格の再確認や目揃いを行っている。出荷時にはJA職員による検査を徹底し、特に色を重視している。出荷先は、主に東京、神奈川および静岡県内である。

3 今後の展望

 今後は、さらに栽培面積を増やして長期出荷の安定化を図り、市場や消費者から期待される産地になることをめざしている。さらに、学校給食への積極的な働きかけを行い、子どもたちに地元の農産物を知って、食べて、好きになってもらうよう努めていきたいと考えている。

一言アピール

 JA富士市のカリフラワーは、富士山の白雪のような美しい花蕾が自慢。
ゆでて食べることが多いカリフラワーだが、天ぷらや素揚げなどもおいしく食べることができる。ぜひ、試していただきたい。

お問い合わせ先

担当部署:富士市農業協同組合 ふれあいセンター 営農部 営農販売課
住  所:〒416-0903 静岡県富士市松本12-1
電話番号:(0545)61-8124 FAX番号:(0545)64-4755
ホームページ:http://fuji.ja-shizuoka.or.jp/

今月の野菜「カリフラワー」


今月の野菜
元のページへ戻る


このページのトップへ