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(野菜情報 2016年1月号)

今月の野菜

 産地紹介:宮城県 JA加美よつば
  ~豊かな清流がはぐくむはくさい生産~

加美よつば農業協同組合
営農販売部園芸課 課長補佐 三浦 たか志

1 産地の概要

 加美よつば農業協同組合(以下「JA加美よつば」という)は、平成11年4月に、加美郡内の4JAが広域合併して誕生し、仙台から西北に車で90分ほどの仙北地域に位置している。
北東は大崎市、南は黒川郡および仙台市、西は山形県に隣接し、西部に船形連峰、薬來山やくらいさん、奥羽山脈をたたえ、森林面積が70%を占めている地域である(図1)。
 平成26年の販売額とその割合を見ると、米穀が41.8億円(59.1%)、園芸8.9億円(12.6%)、畜産で20.0億円(28.3%)となっており、稲作が中心だが、近年は水田転換畑を利用した野菜生産にも力を入れている。野菜では、ねぎ、ほうれんそう、たまねぎの販売額が多く、はくさいは2700万円(野菜で6位)である。


2 はくさい生産の概要

 宮城県は、明治時代に中国より導入された種子を基に、わが国のはくさいの原型でもある「松島白菜」が育成された地である。三大はくさい品種群(注1)の一つとしても知られる宮城県のはくさい(松島群)は、「仙台白菜」として全国的に広まった。しかし、軟らかく長距離輸送が難しいことや収穫期間が短いことなどを背景に、昭和30年ごろから病気や輸送に強い、従来とは別の品種に移り変わっていった。現在では、作りやすさや多収性を考慮し、最近人気がある黄芯系の「黄楽」シリーズなどの品種が多く栽培されている。

 JA加美よつば管内の秋冬はくさいの生産は50年ごろから始まった。作型は、10月下旬から12月に収穫する秋冬はくさい(露地)が中心で、出荷量は増加傾向にある(図2、図3)。近年は、9月下旬に収穫できる秋はくさいも導入し、出荷期間の拡大を図っている。

注1:三大はくさい品種群とは、わが国のはくさい品種の基となる3つの系統で、
   野崎群(愛知県)、松島群(宮城県)、加賀群(石川県)とに分けられる。

(1)農産物貯蔵施設の整備で長期出荷を実現

 当初の出荷期間は、10月下旬から1月上旬と短かったため、需給バランスによってはほ場で品質が低下して出荷量の減少につながることもあり、大きな課題となっていた。
 また、豪雪地帯である当地では、早いときは12月上旬に積雪があり、はくさいの品質低下を招きかねないことから、JA加美よつばの自己資金により、平成22年度に管内の米倉庫を改装し、農産物貯蔵施設を整備した。この施設を活用することで、年内に集荷したはくさいを翌年に出荷する供給体制を実現し、最長で3月中旬までの出荷が可能となった(写真1)。このように、秋はくさいの導入も含め、出荷期間の長期化を図っている。

(2)加工・業務用への参入

 従来、市場販売を主として生産していたが、生産者の経営安定に向けた取り組みの一環として、14年から加工・業務用需要に着目し、現在では農家戸数44戸、作付面積9.5ヘクタールの規模で、生産量630トン(10月~翌3月)のうち約90%が加工・業務用となっている。
 一般の青果物販売では、市場相場に左右されることから安定した所得の確保が難しく、継続した生産が困難である。また、生産資材の高騰に加え、流通コストの増加により、農業を取り巻く状況は一層厳しさを増している。
 そうした中で、加工・業務用では生産者が直接、実需者に納品できるため、出荷用資材を段ボールからプラスチックコンテナに切り替えることなどにより、低コスト化が可能となっている。
さらに、通常、市場向けではL、Mが中心の規格となるが、加工・業務向けでは規格が幅広く設定されていることから、出荷時におけるロス率の低減も実現でき、経営の柱になりつつある。

(3)土作りへのこだわり

 栽培面においては、大崎農業改良普及センターの支援により、作付け前のほ場の土壌分析を実施し、生産者自らがほ場条件を把握することで、適正な施肥設計の充実を図っている。
 また、環境に配慮した循環型農業の実践を図るべく、JA加美よつばの第3セクターである「加美町振興公社土づくりセンター」において、管内の畜産農家から出される家畜排せつ物に農産物の出荷時に出される残さと籾殻などを混ぜ合わせて発酵・養生させた堆肥を製品化し、「エコ堆くん」の愛称で供給している。地元の未利用資源を活用した堆肥を土作り資材として農地に施用することで、地域循環型農業の仕組みを構築している(写真2、3)。

(4)実需者に求められる産地をめざして

 加工・業務用需要で特に求められるのは、「安定した品質」「安定した供給」である。JA加美よつばでは、こうした実需者の要望に応えるため、定期的なほ場巡回と栽培講習会、現地検討会を開催している(写真4)。
 また、品種試験や作型の検討を重ね、耐病性に優れた貯蔵性の高い品種の確保や収穫期間の拡大に取り組んでいる。

3 今後の展望

 はくさい生産者の平均年齢が60代後半となり、5年後を見据えて集落営農組織を主とした労働力の確保と、既存の生産者が農業を継続できる生産基盤の確立が求められている。
 機械化一貫体系および農作業請負組織の可能性を模索するとともに、産地自らが商品開発へチャレンジするなど、新たな試みに取り組んでいきたい。

一言アピール

 JA加美よつばには、富士山のような形をした薬來山(通称:加美富士)があり、そこから吹き降ろす薬來降ろしと霜によって玉締りが良く、軟らかいはくさいが仕上がる。
 JAのホームページ上にある「加美よつばフードアカデミー」では、野菜を使った料理などのレシピを提案しており、はくさいもクリーム煮や漬物が紹介されている。レシピ紹介者のメッセージもあるので、献立の参考にご覧いただきたい。

お問い合わせ先

担当部署:加美よつば農業協同組合 営農販売部 園芸課
住  所:〒981-4265 宮城県加美郡加美町字矢越220
電話番号:(0229)63-3761 FAX番号:(0229)63-3768
ホームページ:
 JA加美よつば http://www.ja-kami.or.jp/index.html
 加美よつばフードアカデミー http://www.ja-kami.or.jp/food/index.html

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