(野菜情報 2015年11月号)
産地紹介:石川県 JA金沢市
~肌のきめが艶やかな「金沢そだち」のだいこん~
金沢市農業協同組合
営農部 園芸販売課 課長補佐 高嶋 和哉
金沢市は石川県のほぼ中央に位置しており、金沢市西部の日本海に面する砂丘地には古くから野菜園芸産地が形成されており、だいこん、すいか、トマト、こかぶの他、
注1:昭和20年以前から栽培され、現在も主として金沢で栽培されている野菜。
金沢市農産物ブランド協会により、15品目が認定されている。
金沢市農業協同組合(以下「JA金沢市」という)管内の野菜、果樹および花きの生産者数は499名(平成22年農林業センサス)で、水稲が中心である平坦地区、水稲から野菜への転換が進む山間地区、施設園芸が盛んな砂丘地区に分けられる。
今回は砂丘地区のなかでも打木町、下安原町の2集落からなる南部地区と粟崎町、大野町の2集落からなる北部地区の農家で構成される砂丘地集出荷場大根部会が生産するだいこんについて紹介する(図1)。
だいこんは、昭和30年代よりすいかの後作品目として導入された。当初は、加賀野菜の一つで、肉質が軟らかく肌が美しいことから関西市場でも人気のある源助だいこんの栽培が主流であった。その後、全国的にF1品種が普及するにつれて、栽培のしやすさから50年代に青首総太だいこん栽培へと切り替わった。JA金沢市管内での青首総太だいこんの作付面積、農家数、生産量はともに順調に増えており、JAとしても力を入れている品目の一つである(表1)。
平成22年には、金沢市農産物ブランド協会から金沢の風土を生かして生産された優れた品目に与えられる「金沢そだち」ブランドの一つに認定された(図2)。現在では、「金沢だいこん」の名称で地元市場をはじめ、関西、中京市場へ3000トン以上を出荷する北陸でも有数の産地である。
金沢だいこんのは種は、8月上旬より開始され、すいか栽培に利用しているハウスを利用し9月初旬まで行われる。収穫は9月下旬から11月中旬に行われピークは10月いっぱいとなる(図3)。
品種としては、耐暑性に優れたものを中心に作型ごとに4つの品種を導入している。
特に、は種期である8月は、高温、乾燥に見舞われ発芽、初期生育の管理や害虫、ウイルス病対策が必須であるため、寒冷紗のトンネル被覆栽培を行っている。
砂丘地は粘土が含まれる土壌と比べると保肥力、保水性が低く、また、砂の熱伝導率、熱容量が小さいため地温が上がりやすく冷めやすい特徴がある。このため、こまめな灌水、施肥培管理が欠かせず、独特の栽培方法が組み立てられている。当地では、砂丘地での課題である灌水対策として、昭和40年代にスプリンクラーをほ場ごとに導入したことにより高品質な栽培が可能となった。(写真1)
収穫作業は早朝から開始され、収穫後は各農家の自宅納屋で水洗い、選別、箱詰め作業を行い集荷場へ持ち込む(写真2、3)。
高品質と鮮度にこだわった金沢だいこんは、その日のうちに、JAの箱に詰められ各市場へ出荷される(写真4)。
当地では20~40歳代前半の若手農業者の育成が活発に行われており、これら若手生産者が生産部会の役員を努め、栽培方法の研究や組み立て、出荷前検査などの集荷場運営にも意欲的に関わり、若手主導で産地運営が行われているのが心強い(写真5)。
JA金沢市では、9月下旬から11月中旬までは金沢そだちブランドの金沢だいこん、その他に10月中旬から翌年2月上旬までは加賀野菜ブランドの源助だいこんをリレー販売することで、だいこん産地としての金沢市の認知度向上を狙っている。
出荷先は、地元市場の他、関西を中心に県外の仕向地も多い。生産農家自らが、消費地に出向き、県内外に広くPRし続けることでさらなるブランド力向上を目指している(写真6、7)。
砂丘地ならではのまっすぐで、肌つやの美しさが自慢の金沢だいこん。
おでんなどの鍋物だけでなく、漬物、サラダなどにも幅広く使え貯蔵も効く便利な野菜である。旬真っ盛りの色白美人、金沢だいこんをお見かけの際は、ぜひ、お手に取っていただきたい。
問い合わせ先
〒920-0011 金沢市松寺町未59-1
金沢市農業協同組合 営農部 園芸販売課 TEL:076-237-3945
URL:http://www.is-ja.jp/kanazawa/