(野菜情報 2015年8月号)
産地紹介:青森県 JAおいらせ
~夏場の冷涼な気候を生かしたにんじん栽培~
おいらせ農業協同組合 営農部指導課
係長 佐藤 元
おいらせ農業協同組合(以下「当JA」という。)は青森県の南東部に位置し、四方を太平洋、小川原湖、奥入瀬川に囲まれた
当JAは、平成13年4月に三沢市と六戸町の2JAの合併により誕生した。平成26年度の販売額は89億円であり、このうち野菜が70億円(79%)、畜産が13億円(15%)、水稲6億円(7%)と、とりわけ野菜の生産が盛んな地域である。
当JA管内における最も特徴的な気象は、夏期に「やませ」といわれる湿った冷たい東寄りの風が太平洋から吹くことである。このやませにより、稲作では冷害の常襲地帯であり、夏場が比較的冷涼なことから、天候に左右されにくい根菜類の栽培が盛んである。
また、土質はローム質火山灰が堆積し、黒色の腐植に富む層が、深いところでは地表面より地下1メートルに達している。れきなどが含まれないことから、特にながいも、ごぼう、にんにく、にんじん、だいこんなどの栽培に適した産地を形成している。
にんじんについては、ながいも、ごぼう、にんにくの輪作作物として作付されており、だいこんとともに夏期の換金作物として位置付けられてきた。26年度実績では生産者数202名、栽培面積203ヘクタール、出荷量6081トン、販売金額5億8515万円となり、野菜の販売額の8%を占めている。
夏にんじんの産地は、7月から8月にかけて千葉県から青森県、8月から9月は北海道へとリレーされていく。青森県産は7月の東京都中央卸売市場の入荷量の5割強を占めている。
当JAのにんじんは、6月下旬から7月末ごろまでに収穫される夏にんじんと、10月から11月に収穫される秋にんじんがあり、収穫量の比率は夏にんじんが85%、秋にんじんが15%となっている。
夏にんじんの作型には、トンネル栽培(写真1、2)とべた掛け栽培(注)がある。保温性に優れ、収穫期は早いが生産コストが高いトンネル栽培と、保温性は劣るが資材費が低く生産効率に優れるべた掛け栽培により出荷時期を調整している(表1)。
消雪後の3月には種作業が開始されるため、前年秋に改良資材や元肥を施肥しほ場作りをしている。
当JAには、にんじんの生産者が加入するにんじん部会があり、平成27年現在、190名で構成されている。部会では、地区ごとの収穫時掘り取り日程表を作成し、収穫日から逆算しては種を行うことにより、出荷が集中しないように調整を行っている。
注:保温を目的に、は種後に不織布を直接被せる手法。
当JAへ出荷登録されているにんじん生産者のうち約9割は、当JAのにんじんオペレーター協議会(以下、「協議会」という。)へ掘り取りを委託している。この協議会は、当JAやさい推進委員会にんじん部会の下に設置され、部会に出荷面積登録した会員の収穫作業を受託し、さらに、収穫機の効率的な運行、保守、修繕、管理を行っている。
協議会の設置に当たっては、いくつかの背景があった。まず一つは、収穫作業における労働力の確保問題である。にんじんを手掘りで収穫するには10アール当たり20~30人で約2時間かかる。また、収穫時期がにんにく、ばれいしょと重なり人員の確保が大変難しい。
一方、にんじんハーベスタは、迅速丁寧に収穫する高度な技術のために、専用の熟練したオペレーターを確保する必要があるものの、1台で10アールを2時間弱で収穫できる(写真3、4)。
ハーベスタは平成16年から本格的に、導入され、現在は10台が稼働している。この収穫作業の効率化の結果、生産者1人当たりの栽培面積は導入前の約2倍の1ヘクタール程度まで拡大している。
二つめは、ハーベスタ導入と修繕の費用負担である。ハーベスタは、1台当たり1000万円近くの投資になり、農家個人で購入するには負担が大きく、にんじん収穫のわずかな期間のために購入するのは現実的に厳しい。そこで、当JAがハーベスタを導入し協議会へ貸付け、その償却費は掘り取り料から協議会が機械利用料として当JAへ支払うことにした。協議会の支出(機械利用料、保守修繕費、キャリアカーレンタル料、オペレータ料など)は、全て収穫委託料で賄われている。生産者にとっては、購入費用を抑えることができる上、ハーベスタが計画的に更新されることから、収穫作業効率が安定しているというメリットもある。
協議会は、当JAにおけるにんじん栽培面積の拡大や出荷量の安定化だけでなく、省力化による他品目の作付面積拡大にも貢献している。
収穫作業の効率化により、にんじん栽培面積が拡大にするにつれ、共選施設の処理量も増加した。平成24年には、これまでの旧にんじん洗浄選別施設の老朽化と処理能力の限界から、にんじん洗浄選別施設を新設した(写真5)。新施設の1日の処理能力はおよそ136トンに増加し、カメラ選別とパレタイザー(自動箱積み機)の導入により選別品質の向上、省力化を図っている(写真6、7)。
また、原料から製品までの予冷体制を整備したことにより、品質管理能力も向上し、市場での評価も高まり有利販売が期待できるようになった。
出荷先は、出荷時期を問わず東北、東京、名古屋、大阪、四国、九州および青森県内となっている。
多くが生食用で、加工用は1%前後にとどまるが、加工会社や市場のほかジュース向けとして青森県内の単協等により運営されているJAアオレン(青森県農村工業農業協同組合連合会)にも出荷されている。
にんじんのオレンジ色は、体内でビタミンAにかわるβカロテンの色である。英語名のキャロットは、カロテンが語源となっているほどにんじんの代表的な栄養素で、粘膜を正常に保ち皮膚の状態を整えたり、視力を保つなどの働きがある。
産地では、日夜おいしいにんじん作りに力を注いでおり、市場でも「濃紅色で中心まできれいに着色する、抜群のそろい」といった評価を得ている。
肉質にこだわった品種選定により、従来の生食からジュースまで幅広い用途と風味の良さを特徴としています。
お見かけの際は、ぜひ、当JAのにんじんをご賞味いただきたい。
担当部署:おいらせ農業協同組合 営農部 指導課
住 所:〒033-0022 青森県三沢市大字三沢字堀口16番地7号
TEL:0176-54-2211 FAX0176-54-4470
ホームページ:http://www.ja-oirase.or.jp/