[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

(野菜情報 2015年4月号)

今月の野菜

産地紹介:長崎県 JA全農ながさき
~温暖な気候を生かした長崎の新じゃが~

全国農業協同組合連合会長崎県本部
園芸部 部長 堀田 由人

1 産地の概要

 長崎県は、本土の最西端、九州の西北部に位置し、東西213キロメートル、南北307キロメートルに及ぶ県域を有する。地形的に大きな特徴は、約8割が半島、島などから成り、起伏に富んでいるため陸地は平たん地に乏しい(図1)。ばれいしょの主産地である島原半島北西部の年間平均気温は15.7度、年間降水量は2300ミリメートル、全国的にも温暖で降水量の多い地域であり、初霜は11月下旬、晩霜は3月下から4月上旬で無霜期間の長い地域である。また、台風の接近や上陸が多く、農産物などに甚大な被害を及ぼすこともあり、土地条件、気象条件ともに厳しい中で営農を行っている。

 このような県下において、市場で「新じゃが」と呼ばれる4月から6月に出荷される春ばれいしょは、まず五島列島の福江島を皮切りに収穫が始まり、島原半島北西部へ移行し(写真1)、対岸の諫早市飯盛地区で終盤を迎える。いずれも海に面した温暖な地域で栽培されている(写真2)。

 長崎県のばれいしょは、慶長3年(1598年)オランダ人によって、ジャワ(現在のインドネシア)から長崎港へ入ったといわれている。その後は幾度かの飢饉ききん の際の救荒きゅうこう作物として利用されながら、全国へ広がり栽培されるようになった。

 栽培面積は、近代に入ってからの記録では、明治末期には約500ヘクタールが栽培されており、昭和20年には2987ヘクタール、54年には8570ヘクタールと、最大の面積となった。しかし、翌年以降、減少傾向に転じ、平成25年には4000ヘクタールとなっている。

2 栽培の概要

 ばれいしょの栽培は、生育適温が確保できる9月から12月の秋作と、3月から6月の春作の2つの期間を中心に作型が分化した結果、5つの作型となり、収穫は11月から翌年の6月中旬である(図2)。以下は、それぞれの作型についての特徴である。

(1)秋作栽培

 島原半島を主体に作付けられており、出荷量は約5500トンである。露地栽培であるため秋の干ばつの影響を受けやすく、また、台風の襲来時期とも重なり収穫量が少なく、作柄は不安定である。

(2)秋作マルチ栽培

 初霜の時期が遅れる島原半島の温暖な地区で作付けられている。出荷量は約4500トンである。

(3)冬作トンネル栽培

 福江島を主体に作付けられており、出荷量は約300トンである。以前は島原半島でも盛んに作付けられていたが、労力と費用の割に収量が確保できないことにより、島原半島ではトンネルから不織布べた掛け被覆に移行した。

(4)早掘りマルチ、春作マルチ栽培

 長崎県の主たる作型であり、無霜地帯である島原半島南端では、4月下旬から梅雨入りとなる6月中旬までの収穫となっている。出荷量は約3万7000トンである。霜害によって収量が左右されることから、安定した早期出荷量の確保を図るため、冬作同様、不織布べた掛け被覆が採用されている。

3 栽培品種と品種特性

 春と秋の年2回栽培が行われるため、暖地二期作栽培に適した独自の品種が育成されている。昭和46年に春作秋作とも多収で食味が良い「デジマ」、53年には極多収の「ニシユタカ」が育成され、現在の丸いもの主力品種となっている。

 一方、そうか病、青枯病などの土壌病害、ジャガイモシストセンチュウなどの抵抗性品種として、平成15年に「アイユタカ」、22年に「さんじゅう丸」の栽培が始まっている。メークインは、春作において栽培されており、5月中旬から6月に約8000トンを出荷している(表1)。

4 生産出荷

 JA全農ながさきのばれいしょの年間販売額は、45億~72億円と、年によって差が大きく、価格変動の大きい品目であるが、取扱量は過去10年で4万~5万トンと、比較的安定して推移している。これは、取扱量の8割以上が、ALICの指定野菜価格安定対策事業を活用しているため、市場販売価格下落時のリスクマネージメントが機能し、再生産が確保されていることによる。このことが、産地と数量の維持に大きく貢献している。

 出荷期間は11月から翌7月であり、主な出荷時期は5月から6月である。平成26年東京都中央卸売市場での長崎ばれいしょの占有率は5月46%、6月56%、大阪府中央卸売市場では5月72%、6月82%となっている。

5 消費拡大への取り組み

 長崎県産のばれいしょは、47%が京浜、東北地域、24%が京阪神地域へ出荷され、卸売市場を経由して量販店で販売される。このため、JA全農ながさきでは、人材派遣会社と提携して、長崎のばれいしょを学んだ販売員による量販店の店頭販売を積極的に行っている。また、市場担当者、量販店バイヤー、店頭販売員を県内の産地に招き、長崎のばれいしょについて理解醸成を図るのはもちろんのこと、愛着を感じ、接客時に長崎の風景が頭に浮かぶような研修会を開催している。

 また、キューピー株式会社、JA全農、ばれいしょ主産地(ホクレン、JA鹿児島経済連、JA全農ながさき)が協調し、「家(で作る)ポテサラ」のキャンペーンを実施している。具体的には、ホームページやリーフレットを通じたレシピの紹介やプレゼント付きのクイズにより、国産生鮮ばれいしょの位置付けを明確にして消費拡大を図っている。
そのほかに、京阪神地域の卸売市場と協力して、平成20年より毎年、小学生を対象とした食育活動を行っている。小学校では、ばれいしょの植付けと収穫には、長崎県から栽培指導員や野菜ソムリエが出向いて「長崎弁」で説明し、収穫したばれいしょは、カレーライスにして食している。この取り組みは、参加者から非常に好評であり、今後も継続していく。

おすすめの食べ方

トマトケチャップで減塩「肉じゃが」
(調理時間約30分、エネルギー285kcal、塩分1.4g)
・材料(4人前)
ばれいしょ3個(450g)、たまねぎ1個、豚薄切り肉200g、サラダ油大さじ1、水2カップ、和風だしの素(顆粒)小さじ1弱、砂糖大さじ2.5、しょうゆ大さじ1.5、トマトケチャップ大さじ1.5
・作り方
 ①ばれいしょは皮をむき一口大に、たまねぎはくし型切りに、豚肉は5~6㎝幅に切る。
 ②フライパンにサラダ油を熱してたまねぎ、じゃがいも、豚肉の順に炒め、水、和風だしの素を加える。
 ③沸騰したらアクを取り、砂糖、しょうゆ、トマトケチャップの順に加え、ふたをして弱火で約15分煮込む。
 ④ばれいしょに火が通ったらふたをとり、強火にして煮汁を煮詰める。
・ポイント
しょうゆの半分をトマトケチャップに置き換えることで、30%減塩できるほか、砂糖、和風だしの素の使用量も半分に減量でき、おいしくでき上がる。

一言アピール

 長崎県産のばれいしょのうち、冬に植えて春に収穫されるものは新じゃがと呼ばれ、全国に出荷されている。皮が薄く、春の香りが漂う長崎県産の新じゃがをぜひ一度ご賞味いただきたい。

お問い合わせ先

全国農業協同組合連合会長崎県本部 園芸部特産課
住所:長崎市出島町1-20
TEL:095-820-2171 FAX:095-826-6290
ホームページ:http://www.ns.zennoh.or.jp/

今月の野菜「ばれいしょ」


今月の野菜
元のページへ戻る


このページのトップへ