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(野菜情報 2015年2月号)

今月の野菜

産地紹介:山口県 JA岩国市
~岩国れんこんは、もっちりシャキシャキ感が魅力~

岩国市農業協同組合
経済部営農販売課 佐々木 淳

1 産地概要

 岩国市は山口県の東端にあり、慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いの後に移封された「吉川家きっかわけ」の岩国藩の城下町として栄えた。城下町の趣が強く残っている街並みを流れる清流「錦川にしきがわ」には、築城技術と組木技術を最大限に生かした五連のアーチ型の名橋「錦帯橋きんたいきょう」があり、その錦川の河口に、岩国を代表する産品「岩国れんこん」の産地が広がっており、岩国錦帯橋空港からほど近い尾津・門前地区で主に栽培されている。

 れんこんは、ハスの地下茎が肥大した部分を指すが、岩国れんこんの栽培は、寛政8年(1796年)に、岩国の愛宕地区の村本三五郎氏が、藩主吉川候の命を受けて、現在の岡山県から備中種の種バスを持ち帰り、門前地区に植え付けたのが始まりであるといわれている。その後、代々の藩主が、埋め立てた干拓地に栽培を普及させ、①日照時間が長い瀬戸内の温暖な気候、②れんこん以外の作物に向いていないという干拓地の風土、③山口県下一の豊富な水量を誇る錦川の水を利用できたこと、などにより産地が拡大した。

 明治時代に、多収で川底が浅い土地に合う「白花種」に品種転換し、昭和30年ごろから尾津・門前地区で生産が盛んになった。45年には水稲からの転作奨励で作付面積が増え、ピークの47年には作付面積331ヘクタールで5000トンの出荷量となった。現在は、住宅用地や商業用地の開発、生産者の高齢化で、作付面積は170ヘクタール、出荷量も2800トンと減少しているものの、約100戸の生産者で生産されている(表1)。

 岩国市は、平成18年に市町村合併しているが、JA岩国市の管内は、合併以前の旧岩国市である(図1)。JA岩国市の栽培品目は、れんこん、水稲などであるが、れんこんの占める比率が高く、管内のれんこんの作付面積は水稲の約6倍、れんこんの生産量は市全体の約8割を占める。

2 特徴

 れんこんは、江戸時代の岩国藩主、吉川家の家紋である九曜紋にも通じることから、殿様に大変喜ばれたという逸話が残っている。

 ハスの葉は、紙などが高価だった時代、包装紙に代わるものとして重宝されており、ハスの葉を乾燥させて束にして、100枚10銭で売買されていたという記録も残っている。今でいえば、紙やラップ、アルミ箔、クッキングシートの役目をしていたようだ。岩国の郷土料理「岩国ずし(殿様ずし)」でも、ハスの葉を敷いてすし飯を広げることがある。

3 栽培と収穫

 岩国れんこんは、晩生で、生育には15度以上の適温が長く続く必要がある。初期の生育は緩慢で、高温になると急速に生育が進む。葉柄は太く長いことから、葉は、ハスの中でも最も台風などの風害を受けやすい。

 花数は少ないが大きく、花弁は外側の3~4枚は淡緑色で、内側のものはすべて純白である。地下茎の枝分かれは比較的少なく、節間の長いものが浅く分布し、表皮は白く、斑点も少ないことから、肌はきれいであるという特徴がある。

 れんこん栽培には大量の水が必要で、病気を防ぐために収穫期にもほ場に水をためておくことが重要である。栽培法には、①「種バスを掘り取り、植え付ける方法」と、②前年のれんこんを残して種バスとして利用する「残し堀り法」がある。①は4月に植付けを行い、①②ともに収穫は9月から翌年の5月上旬まで続くが、その中でも品質が最も良いのは、冬期に収穫されるものといわれている(図2)。

 管内のれんこん栽培は、農薬、化学肥料の施用を減らし、堆肥などの有機質を主体とした施肥により、環境にやさしい農業に取り組むエコファーマー認定を受けた生産者が主体となって行っている。

 収穫は、手掘りと機械掘りがある。手掘りは、くわの一種の「ばんくう」と「かいかき(貝掻)」を使って、れんこんを傷つけないように掘り出す(写真1、2、3)。機械掘りは、最初に掘取り機を使って上泥を取り除いた後に、手掘り同様、ばんくうやかいかきを使って、れんこんを掘り出す(写真4)。土壌が軟らかいため、足がずぶずぶと泥に埋まり、中腰での作業となることから大変な重労働である。また、収獲したれんこんの持ち運び作業を軽減するために、ほ場内運搬機を使う。

4 荷造り、出荷

 出荷は主に、コンテナで出荷されるものと各生産者が箱詰めして出荷するものと2通りある。コンテナ出荷は、近隣の量販店や加工向けのものであり、近年は、コンテナ出荷が6~7割を占めている。各生産者は、収穫後枝などをとって調製後、泥付きのままコンテナで出荷する。
各生産者が箱詰めする場合は、収穫したれんこんを作業場に運び、品質や大きさを選別、調製した後、泥付きのまま段ボールに詰める(写真5、6)。段ボールのサイズは、3キログラム、5キログラム、10キログラムの3種類あるが、最も多いのは、5キログラムで、山口県、広島県を中心に全国に出荷される。泥付きで出荷される当地のれんこんは、新鮮さが長持ちすることで定評がある。

5 生産振興、消費拡大の取り組み

 全ての生産組織、流通加工関係者および関係機関を含めた「岩国地区れんこん振興協議会」(以下、「振興協議会」という。)が、平成6年に従来の生産者主体の組織から改編設立された。生産技術、販売促進および消費拡大の3つの専門部会で構成され、産地振興の協議をしている。
振興協議会は13年の秋、岩国れんこんのマスコットキャラクターとして、れんこん田の土の中から生まれた汚れなきスイレンの花の妖精「はあすちゃん」を全国公募により選び、シールとして贈答品につけたり市のイベントに参加するなど、さまざまな消費拡大の取り組みを行っている(図3)。

6 課題と今後の取り組み

 もっちりシャキシャキ感で人気の高い岩国れんこんだが、生産者の高齢化による生産量の減少が大きな課題である。このために、地元の小学校の児童を対象とした植え付けや掘り取りの収穫体験、一般消費者による収穫体験などを通じた消費者普及活動に今後も継続して取り組むとともに、伝統の味を次世代に引き継いでいくためにも若い世代の生産者を育てていきたい。

一言アピール

 “穴が多く空いている”ことから「見通しが良い」とされ、昔から縁起物としておせち料理などお祝い事に多く用いられているれんこん。

 れんこんには、ビタミンCをはじめ栄養がたっぷり含まれている。れんこんの黒ずみの原因ともなるタンニンなどのポリフェノールは、高い抗酸化力があり、花粉症などのアレルギー症状を抑える効果があると、注目されている。

 当地のれんこんは、もっちりとした粘りとシャキシャキ感が特徴で、味の良さは抜群である。酢の物、あえ物、寿司のたね、煮物、炊き込みご飯、揚げ物などさまざまな料理に、ぜひご利用いただきたい。

お問い合わせ先

担当部署:岩国市農業協同組合 経済部営農販売課
住  所:山口県岩国市今津町3-18-23
TEL:0827-21-2141  FAX:0827-22-0660
ホームページ:http://www.ja-iwakunishi.or.jp/

今月の野菜「れんこん」


今月の野菜
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