(野菜情報 2015年1月号)
産地紹介:大阪府
~サラダでもおいしい大阪のしゅんぎく~
全国農業協同組合連合会大阪府本部
生産事業部農産資材課長 福山 和志
大阪は、古くから「天下の台所」「くいだおれの街」といわれている。歴史的にも、全国各地からさまざまな人やモノが行き交うことで、多様な食文化を吸収し、発展してきた。そうして育まれた食文化や、往来する多くの人々を支える高い生産能力を誇る農業が、昔の大阪には多く存在していた。
現在の大阪農業は、都市化の流れの中で担い手の減少、高齢化が進み、経営規模も全国で最も小さくなっているが、今でも昔からの伝統を受け継ぎ、都市近郊のメリットを生かした、技術水準の高い集約型農業が営まれている。その品質の高さから全国に出荷され、生産量も全国有数を誇る農産物も少なくない。今回紹介するしゅんぎくは、平成24年において、千葉県に次いで全国第2位の出荷量を誇る産地となっている。
また、しゅんぎくは、大阪府とJAグループが選定する、なにわの食文化に根ざした特産品や、優れた栽培技術で生産されている21品目の農産物である「なにわ特産品」の1つである。
しゅんぎくの栽培は、古く室町時代には伝わっていたとされ、江戸時代には、各地で栽培されていたことが記録に残っており、大阪でも栽培されていた記録がある。
一般的には、春に花が咲く菊という意味で「春菊」と呼ばれているが、関西では菊の葉に似ていることから、「菊菜(きくな)」とも呼ばれている。
しゅんぎくは、葉の切れ込み具合によって種類が分かれ、葉の切れ込みが浅いものは、「大葉」と呼ばれ、葉に厚みがあり、柔らかい。
葉の切れ込みが深いものは、「中葉」と呼ばれ、府内を中心とした関西地方では、生育しても茎が立ち上がらず、株が根元から横に張る「株張り中葉」が栽培されており、根から切り取って出荷するのが主流になっている(写真1)。
しゅんぎくは、府内の各地で生産されている。市町村では堺市、岸和田市、貝塚市、八尾市、東大阪市、和泉市、大阪市、泉佐野市などが主な産地となっている(図1)。
府内のしゅんぎくの作付面積や収穫量については、担い手の高齢化などにより徐々に減少傾向ではあるが、野菜の中では、特に安定した作付面積や収穫量となっている(表1)。
栽培の形態については、露地およびハウスでの栽培となっている。露地での主な作型は、図2の通りで、夏場は、1~2カ月、冬場は2~3カ月栽培し、年に4~5回作付けしている。冬は、トンネル被覆を利用して栽培を行っている。
ハウス栽培では、しゅんぎくのみの周年栽培、しろな、こまつな、ほうれんそうなど、他の軟弱野菜との輪作による周年栽培、水なすとの輪作などがある。水なすとの輪作は、岸和田市、貝塚市、和泉市、泉佐野市などの泉州地域で行われており、水なすを2~7月の夏場に栽培し、その後しゅんぎくを10月頃からは種し、冬場に2回程度栽培している(写真2)。
しゅんぎくは、鮮度が見た目に表れやすいという軟弱野菜の特性により、遠隔地への出荷が難しい品目であり、大部分が地元向けに出荷されている。全農大阪府本部の月別市場別出荷数量の構成比を見ても、大阪市場への出荷は90%を占めており、次いで奈良市場9%、京都市場1%となっている。
また、夏場の出荷は少なく、10~翌5月の出荷が多く、12月が最多、次いで1月となっている(表2)。
府内では、技術水準の高い集約農業、都市近郊のメリットを生かした栽培と出荷を行っていることから、平成25年の大阪市中央卸売市場の都道府県別産地別の入荷量を見ると、当府産の占有率は50%を超えている(表3)。
生産者は、JAと全農大阪府本部を通じて市場へ出荷する系統出荷をはじめ、自ら市場や量販店、直売所などへ直接出荷するなど、都市近郊産地ならではの多様な形態となっている。
JAグループ大阪は、「大阪採れたて農産物消費推進協議会」を設立し、JAや大阪府と連携して、府内産農産物のPR活動を行っている。
しゅんぎくといえば鍋料理が定番だが、あくの少ない大阪のしゅんぎくは、おひたしや天ぷらはもちろん、生食としてサラダにも合うので、レシピの紹介など新たな食べ方などの提案も行っている。
規模は小さいけれど、都市近郊のメリットを生かしてがんばっている大阪農業の中でも、しゅんぎくは全国有数の生産量を誇っている。
あくの少ない大阪のしゅんぎくは、くせのないさわやかな味で、鍋料理をはじめとして、サラダなどさまざまな料理に合う野菜である。
しゅんぎくは、体内でビタミンAに変わるカロテンを多く含み、抗酸化作用により活性酸素の働きを抑制したり、肌の老化防止にも効果があるで、ぜひ毎日の食事で、ご賞味いただきたい。
全国農業協同組合連合会 大阪府本部 生産事業部農産資材課
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