(野菜情報 2014年9月号)
産地紹介:北海道 JA
北の大地から届けます
「びらとりトマト」の生産・販売状況について
ホクレン農業協同組合連合会
苫小牧支所米麦農産課 齊藤 裕介
JA平取町は、北海道の南西部に位置(図1)し、西はむかわ町、東と南は日高町に隣接している。昭和50年3月に平取町内の3農協(平取農協、振内農協、平取町開拓農協)の合併により、JA平取町が誕生し、さらに平成16年2月には、隣接するJA北日高と広域合併し、今日に至っている。JA平取町の管内は、平取町、日高町の富川地区と北日高地区となっており、管内の中心である平取町は、北海道の南西部、日高振興局管内の西端にある総面積743平方キロメートルの町であり、町の中央を沙流川が貫流している。
管内の気象は、北海道としては比較的温暖だが、太平洋に面する沿岸地域と内陸部に大別され、沿岸地域では海洋性気候、内陸部は大陸性気候となっている。積雪量は、沿岸地域では少ないが、内陸部では多く、1メートルぐらいに達する。沿岸地域、内陸部ともに、冬から春にかけては日照時間が長く、また、内陸部では昼夜の寒暖差があり、比較的気象条件に恵まれている。
JA平取町の組合員戸数は、平成26年4月現在467戸であり、農作物としては、トマト、きゅうりをはじめとした青果物および水稲、また畜産物としては、肉牛および生乳の取扱高の割合が高くなっている。25年度の販売品取扱高は総額で70億5000万円で、うちトマトが約6割の42億5200万円(過去最高額)を占めている(写真1、図2)。昨年度は、トマトが府県産の出荷不安定の影響もあり、高単価で推移したことから、過去最高の販売額となっている。
昭和40年代に始まった米の減反政策により、経営面積が小さい生産者は、いち早く水稲以外で収益性の高い作物への転作の定着化を模索していた。47年に6戸の生産者が、ビニールハウスでの夏秋トマトの栽培を試験的に開始した。その後、国や道の補助事業の活用により、順調に作付面積を増加させ、54年には栽培農家46戸、栽培面積が2.7ヘクタールにまで増加した。
しかし、これまでの収穫の経験から、個人選別による作業体系では労働力に限界があり、これ以上の面積拡大は望めないとの声が出始め、トマト産地として大きな壁にぶつかった。そこで、JA平取町主導のもと、57年に国の農業構造改善事業を活用して、野菜集出荷施設を建設し、共同選果を開始した。これにより選別作業の省力化が実現し、生産者の作付意欲の向上による作付面積の拡大へとつながった。
平成元年には、「平取町トマト・胡瓜部会」を設立し、現在のJA平取町代表理事組合長である仲山浩氏が初代部会長に就任した。3年には、試験栽培を続けていた「桃太郎」に品種を統一し、4年にはトマトの選果施設・選果機一式を新設し、販売高5億円を達成した。5年には、生産者数が100戸を超え、面積も20ヘクタールを超えた。
7年から9年にかけては、主に7~10月まで出荷する抑制栽培(通常よりも遅い時期に生産する栽培方法)の規模拡大、選果機の増設、野菜予冷施設の建設、隣接するJAとみかわのトマト生産者7戸の受け入れおよび野菜育苗センターの建設を行い、さらなる規模拡大を図ったことで、9年には面積が50ヘクタールを超えた。
11年には、北海道が定めた北の農産物表示制度「北のクリーン農産物(YES!clean)」(化学肥料・化学合成農薬の使用を低減した農産物に「YES!clean」マークを表示する制度)の認証を取得し、14年からは、毎年道内外の新規就農者を受け入れることで、生産者の戸数維持に努めてきた。17年には、面積が100ヘクタールを超え、18年には、糖度センサーを搭載した最新式の第2選果施設が完成し、さらに念願の生産量1万トン、販売高30億円を達成した。
20年には、これまでの栽培技術を文章化した「びらとりトマト栽培マニュアル」を作成し、23年には、生産量1万2000トン、販売高40億円を達成し、25年には先述のとおり販売高が42億を超えた(図3)。
現在、トマトの生産者は166戸、1戸当たりの平均作付面積0.72ヘクタール、平均年齢が53歳、後継者も比較的多くいる産地である。
びらとりトマトは、3月10日定植の加温半促成栽培から始まり、7月1日定植のハウス雨よけ夏秋どり栽培(抑制栽培)まで、9種類の作型に分けて栽培することを部会にて取り決めており(図4)、5月上旬~11月中旬の長期にわたり収穫を行うことで、消費地へ安定出荷を行っている。3月定植分については、他の作型と比較して燃料費が多く必要となることから、部会から助成金を支出する仕組みを作っている。品種は、全て桃太郎系の品種でリレー出荷を行っており、収穫段数を8段にすることで、長期間にわたって安定収穫・高品質生産ができるように努めている(写真2)。このため、生産者たちは毎日、早朝から遅い時は夕方まで、休みなく収穫作業を続けている。規格は、秀・優・良の3等級あり、さらに大きさを3L、2L、L、M、M1、S、2Sの7階級に選別しており、一番多い階級は、LおよびMである(写真3)。
一方、規格外品については、トマトジュースをはじめ、トマトピューレ、トマトケチャップ・トマトゼリーなどの加工品をJAにて製造し、「ニシパの恋人」ブランドとして販売している。ニシパの恋人は、北海道一の出荷量を誇るびらとりトマトやその加工品をブランド化した名称で、「ニシパ」とは、アイヌ語で、紳士・旦那・金持ちを意味する。ニシパが健康な体を保つために真っ赤に熟れたトマトを毎日食べて、恋人のように愛してしまったと言うストーリーからネーミングされている。ニシパの恋人は、JA平取町のAコープ(ネット販売)および道内外の量販店などで販売されている。
また、JA平取町は、YES!clean認定を取得していることから、毎年の定期的な土壌診断の実施、施肥基準の厳守、化学合成農薬使用回数の制限など、クリーン農業栽培への取り組みへの強化も実施している。さらに、町との連携により、新規就農者などへの就農支援策を行い、担い手確保に努めており、現在までに14人の新規就農者が、トマト栽培を行っている。
平成24年には、「びらとりトマト」を、地域ブランドとして育成するため、JA平取町が地域団体商標として登録した。
びらとりトマトは、先述の通り5月上旬から11月中旬にかけて、収穫、選果、出荷を行う。出荷のピークは7月下旬~9月上旬頃で、最盛期には、2カ所の選果機をフル稼働して、5万ケース(200トン)/日の選果量となることもある(写真4)。また、自然冷熱を利用した環境にやさしい製氷予冷施設を選果場に併設し、予冷庫の冷蔵に使用している(写真5、6)。
販売については、道内が約15%、近畿圏が約45%、関東圏が約40%程度となっており、トラックまたはJRコンテナで出荷している。各市場とは各量販店、生協など実需者との直結型取引を進めており、関東圏、近畿圏ともに、3日目には店頭に並ぶ。トラックとJRコンテナの比率は5対5で、最近は、ガソリン値上げなどによる輸送費の高騰が、問題になっているが、流通コストの低減を目指し、通いコンテナを使用するなどしている(写真7)。また、量販店、生協からの要望に応じて、スタンドパック(写真8)のような産地パッケージアイテムや1キログラム箱も作っている。
これらの取り組みを通じて、道内外の消費者に対してびらとりトマトを認知していただき、いつでもおいしいびらとりトマトをお召し上がりいただくことが、産地の願いである。
夏は冷涼で昼と夜の寒暖差がある北海道は、トマト栽培に適しており、なかでも日高山脈を源とした清流、沙流川沿いに広がる平取町のトマトは、糖度・酸度のバランスが良く、おいしいトマトである。
北の農産物表示制度「YES!clean」の認証を受けており、食の安全と消費者の信頼を確保したトマト作りに取り組んでいる。
ぜひ、びらとりトマトをお召し上がりいただきたい。
平取町農業協同組合 営農生産部 青果課
北海道沙流郡平取町本町40番地1
TEL:01457-2-2020 FAX:01457-2-3792
E-mail:jaseika@nishipa.or.jp