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(野菜情報 2014年8月号)

今月の野菜

産地紹介:長野県 JA松本ハイランド
『信頼あるすいか産地をめざして』

松本ハイランド農業協同組合 波田地区営農センター
すいか共選所 所長 足立 靖

1 産地の概要

 JA松本ハイランド(以下、「JA」という。)は、長野県の中心の松本市西部から山形村に広がり、標高600~800メートルの高原に位置し、日本で2番目の高日照を誇り、昼夜の気温差が大きいため、糖度が高くシャリ感のあるすいかが生産され、市場から高い評価を得ている。
 すいか栽培は、昭和20年代後半から、旧波田町(下原地区)を中心に始まり、57年に旧波田すいか共選所が、平成元年には旧松本すいか共選所が完成し、荷造り労務が軽減できたことから、面積が大幅に増えた。4年にJA広域合併によりJA松本ハイランドが誕生し、8年には銘柄が統一され、10年にはハイテク選果機を完備した新共選所が完成したことで、空洞や形状判定がより正確になり、さらなる高評価につながった。また、18年度には、内部品位センサーを導入し、うるみ果(高温障害により、すいか内部が赤紫色に変化して軟化したもの)等の混入が軽減され、より一層品質が高まった。

2 本年の生産状況

 JAにおける平成26年産すいかの生産および販売は、生産者238戸、作付面積236ヘクタールと、前年比97%となっており、出荷数量102万箱、販売金額27億円を計画している。

3 生産者組織

 生産者組織は、JA本所にすいか部会(部会員239名)を設置し、生産者の所属する支所を統括する営農センターごとに支部を設置している(松本、波田、山形の3支部)。また、部会には役員(26名)、ほ場および場内検査を行う検査部(43名)、試験研究を行う研究部(16名)があり、積極的な活動を行っている。
 JAの指導体制は、本所営農部野菜・特産課を中心に、各地区の営農センターにすいか担当指導係がおり、栽培指導や支部部会事務局を担当している。

4 栽培概要

(1)栽培地域

 JA管内のすいか生産ほ場は、火山灰土壌(黒ボク)に限定している。この土壌は、保水力と保肥力に富み、夏場のすいか生産に適している。

(2)品種

 品種は、草勢が強く、低温寡日照での影響が少ない「祭ばやし777」を中心に、大玉すいか4品種を栽培している(図1)。

 JA産すいかの主要品種である祭ばやし777は、生育時に比較的低温の影響を受けにくいことから、6月上旬から8月上旬までの出荷となっている。その後は、高温時の肥大安定性に優れる祭ばやし11などの出荷となる(図2)。

(3)栽培方法

 JA管内では、省力・安定生産技術である「親づる仕立て法」による栽培が全体の半数を占めている(図3)。
 定植は4月から開始されるが、凍霜害を防止するため、生育初期は二重トンネル被覆による保温対策を講じている。その後5月下旬には交配作業が開始される。すいかの肥大には適切なかん水が欠かせないが、JA管内のほ場は、ほとんどのほ場にかん水設備を整備しており、安定した肥大促進環境が整っている。

注1 慣行および慣行改良は、定植後しばらくしたら親づるをとめて子づるを伸ばす栽培法
注2 改良は放任に近い栽培法
注3 親づる仕立ては先に親づるを伸ばし、その後子づるを伸ばす栽培法

5 『JA松本ハイランドすいか』のおいしさの特徴

 下記の条件を厳守して出荷しているので、品質が統一されている。

①火山灰の地層で地域限定栽培している。

②1ほ場ごとに出荷前検査を実施して、合格したほ場のみ出荷している。

③出荷の際は、場内検査員による外観の目視検査のほか、内部品位センサーによる糖度、熟度、空洞、果肉色、変形果など厳密なチェックをし、品質にバラツキのない共選出荷している。また、交配したあと、2日ごとに着果印を変えており、付けたもののみ出荷しているので、収穫適期のブレが少ない。

④ほ場ごとに、栽培管理記録(農薬、施肥、管理)を徹底し、栽培日誌をチェックしたほ場のみ出荷する。1玉ずづシールに5桁の番号が印字された共選品のみが出荷されるため、トレーサビリティが完全に機能している。このシールには番号が入っている。この番号で、選果日、生産者、ほ場、栽培管理が確認できるなど、トレーサビリティが確立されている。


6 JA松本ハイランドすいかのこだわり
(1)栽培方法

 慣行および親づる仕立て栽培方法では、トンネル内において4~5本の子づるを伸ばし2果取りを行う作型が基本である(2果以外の子づるは炭酸同化作用を活発に行わせるために重要な子づるとなる)。10アール当たり約450~500本の苗を定植し子づるを伸ばし、3回づる整理を行い、トンネル内において交配が最適条件で行えるよう管理する。
 第1回目の管理作業は、4~5本が揃った子づるを伸ばす事を目的として実施し、第2回目はその子づるから出た横枝などの除去を行い、健全なつるの展開につなげる。第3回目は、着果が3番花から4番花に確実に交配が行えるよう管理作業を行う。これらの作業を実施する事により、葉の展開枚数を確保し、大玉生産に結び付けている。1玉の大玉生産にするためには、葉枚数は40~50枚を確保しないと大玉にならず、また、糖度不足果が発生するため、生産者は、葉数確保技術を励行している。

(2)人工受粉

 すいかは雄花と雌花が分かれており、受粉が必要となる。自然界では、ミツバチなどの訪花昆虫によって受粉されることから、多くの産地が、受粉はミツバチまかせで、着果標識は玉の肥大を確認してから実施する。しかし、JA管内では、人工受粉を徹底している。ミツバチにより着果した果実は、受粉した日がわからないため、収穫果の品質にバラツキが出てしまうためである。受粉日が違えば、最初こそ大きさに差があるが、しばらくすると同じような大きさとなり、それから着果標識をしたのでは熟期に差がついて、当たり外れが発生する。
 生産者は受粉時に、これは○○日に受粉したものという『目印』を付ける。収穫時には、この目印を見て順次収穫するため、当たり外れの発生を最小限にすることができる。この人工受粉と目印付けは大変な作業だが、すいかは品質と信頼が命、消費者においしいすいかを届けるため、生産者全員が励行している。

(3)出荷までの検査体制

 毎週水曜日に検査部代表者会議を実施し、収穫について交配から○○日という目安日が決定される。生産者は、その交配目安日の技術情報を、JAホームページ上のすいか情報ネットワークシステムから引き出し、収穫日を決定する。農家で収穫日が決定すると、栽培管理日誌を提出し、ほ場検査申し込みを行う(栽培管理日誌の提出がないと、ほ場検査申し込みは受理されない)。申し込みを受け付けた段階で、JA内の営農支援システムとの整合を図り、なおかつ、栽培管理日誌のチェックを行い、合格と認められた場合のみ、ほ場検査受験資格が与えられる。ほ場検査受験資格が与えられると、ほ場検査員(すいか部会より委託された検査員15名)が各ほ場へ出向き、ほ場状態のチェック並びに交配日のチェックなどを行う。このとき、色、食味等の総合判断を行うため、無作為に1玉抽出してカット検査を実施し、合格後、合格票を発行する(合格しなかった場合は、再検査報告書又は出荷停止の指示を行う)。その合格票が、出荷の際に受付に提出されたすいかのみが、すいか共選所へ搬入されることで、JA産すいかは、厳選されたもののみの出荷が励行されている。

一言アピール

 すいかは、冷え症、肩こりからダイエットなど、幅広い効能を持つ「シトルリン」を含む高機能果実的野菜である。全国でもトップクラスのすいか産地であるJAは、食の安全と消費者の信頼の確保を行うべく、徹底した栽培管理でおいしいすいかを生産している。また、規格外果の有効利用についても、農商工連携による「すいかクッキー」の開発など、積極的に取り組んでいるところである。盛夏期になる7月下旬以降は、JA産すいかの出荷ピークとなり、多くの量販店などで見かける機会が増える。糖度が高く、当たり外れのないJA産すいかを、ぜひ召し上がっていただきたい。

お問い合わせ先

JA松本ハイランド波田地区営農センター 
〒390-1401 長野県松本市波田10144番地1
TEL 0263-92-3070 FAX 0263-92-4720

今月の野菜「すいか


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