(野菜情報 2014年7月号)
産地紹介:秋田県 JAあきた湖東
秋田県えだまめ 日本一をめざして
あきた湖東農業協同組合
経済部農業振興課 課長補佐 小野 義隆
JAあきた湖東は、秋田県の県都秋田市の北側に位置し、かつて日本で2番目の面積を誇った八郎湖の東側に位置する1市3町(潟上市(旧昭和町、旧飯田川町)、五城目町、井川町、八郎潟町)を管内とし、旧5JAが合併した広域JAである。八郎潟残存湖の東に面しているとのことで「あきた湖東」となっている(図1)。
管内の主要農産物は「米」であり、日本の食糧基地として開拓された大潟村に隣接する地域のため、見渡す限りの水稲地帯である。管内の土地面積は3万3634ヘクタール、耕作面積は9318ヘクタール、組合員数は5791人、専業農家数は388人と第二種兼業農家が多く、担い手育成が課題となっている。管内の気候は年間の平均気温11.2度、年間降水量1658ミリ、年間の日照時間は1435時間となっている。
平成11年に策定された「新たな大豆政策大綱」を受け、大豆の基盤整備ほ場を活用した組織的な集団転作がスタートした(表1)。転作大豆をブロックローテーションで栽培する組織体が設立され、急激に面積拡大が図られ、大豆生産面積は最大850ヘクタールまで拡大し、生産機械の導入や整備が管内全域で進んだ。
そうした中で、米価が変動する中、農業所得の向上を目的に、複合作物による新たな栽培品目として、大豆の生産機械を活用するえだまめの栽培がスタートした。複合作物による農業所得の向上は、稲作経営を営む生産者の永遠のテーマとして、以前から多品目をJAから提案していたが、当時、産地形成までには至っていなかった。このえだまめの取り組みは、最も労力を必要とする選別調整作業をJAが請け負う形を採用し、JAも管内の主力作物として、今まで以上に産地形成を支援する形でのスタートである。
7月20日から9月下旬までの出荷期間を通して、一定量を確実に出荷することを前提としたJAの共同選別施設を適正稼働するため、JAが作付品種およびは種日を指定して、収穫と出荷をコントロールする仕組みを構築することとした。
この仕組みが湖東えだまめ生産の特徴であり、産地育成に大きく貢献したと考えている。生産者からは、作付面積と希望の作型を聞き取りし、個別に協議を行い、極早生から晩生に至るまでの10数種類の品種を使い分け、は種日を指定することにより、収穫予定日を算出する。算出された収穫予定数量を、JAの共同選別施設の適正稼働数量に照らし合わせることにより処理能力以上の数量を受けないことで、品質の安定に努めることが可能となった。
この品種とは種日の指定および収穫予定日の算出は、販売先への情報提供ならびに情報共有のアイテムとして大変重宝され、は種期前の3月には今年度の出荷予測を基に内容の濃い販売協議が行えるようになった。その結果、量販店との契約販売などに結びつけることにつながった。
また、作付けにあたっては、生産者との個別協議により、作付ほ場をJAも介在した中で選定することができ、周辺環境を考慮した、生産性を高めるための排水性の高いほ場の選定も可能となった。平成18年5月より施行されたポジティブリスト制度に対応した農薬の適正使用と、ドリフト(他作物農薬の飛散)も考慮したほ場管理シートを作成し、えだまめほ場の周辺の作物、栽培者を確認して記入することで、リスク管理を行うとともに生産者の意識高揚にも努めている。
毎年3月下旬には、栽培説明会を開催し、前年の課題の対応と、今年度の技術目標などを掲げ、意識を共有し栽培にあたるようにしている。4月下旬より始まるは種作業は、晩生種のは種が終了する6月下旬頃まで続く。6月上旬以降は、月2回程度の現地巡視会(写真1)を開催し、気象状況、生育状況に応じた適期管理を励行する形をとっている。定期的な現地巡視会は、栽培指導機関などからの情報提供だけではなく、生産者同志の技術交流の場ともなっており、午前中に開催して、午後から作業実施のスタイルが確立されている。
JAでえだまめの生産振興に努めて間もなく、秋田県の主力品目としてもえだまめが位置付けられ、全県で生産拡大が図られた。平成19年からは、「オール秋田」の協調販売と鮮度保持を目的として、全県統一袋(Pプラス)を採用し、京浜市場を中心に、青豆の秋田として販売を強化してきた経緯がある。秋田県は、青豆の産地育成をすることを全県的に統一し、東京都中央卸売市場での取扱量の拡大を目指すことを22年に掲げ、行政、関係機関一体となった取り組みを強化した。
JAでも産地面積の拡大にあたり、法人などの大規模組織経営体の育成として、選別機器の導入を進めた。また、有機質資材、土壌改良資材の投入、不織布の被覆の推奨、種苗メーカーと連携した施肥体系の見直しなども行い、単収向上対策を励行した。加えて、作期拡大を図るため、早生作型へのマルチ栽培(写真2)を導入し、作付面積52ヘクタールのうち20ヘクタールにマルチを導入した。このような生産振興対策については、県、管内行政からの支援に加え、JAでも独自の予算を準備し、JAの栽培基準に沿った生産者を強力に支援した。
えだまめ1品目1億円を目標として、生産振興を進めてきたが、作付面積の拡大と単収の向上により、現状のJA共同選別施設では対応できない状況となりつつあった。そこで、平成24年に国庫事業である強い農業づくり交付金を活用して、共同選別施設の機能を強化するとともに、パッケージング機能を併せた施設「JAあきた湖東えだまめ共同選果場」(写真3)を整備した。
この施設整備により、処理能力の向上はもとより、鮮度が命のえだまめのスピード感を重視し、限りなく外気にさらす時間を短縮することで、品質の高位安定を図ることに努めており、販売先からも一定の評価を頂いている。
収穫から出荷までの流れは、生産者がえだまめをほ場より抜き獲り、午前9時までに共同選果場に搬入を終了。搬入されたえだまめは共同選果場で脱莢(写真4)(7:30より開始) → 洗浄・脱水 → 選別(8:30より)→ 予冷 → 計量・包装・箱詰(250g/39袋/分)(写真5)を行い、予冷して、翌日出荷となる。従来の施設に比べ計量・包装・箱詰時間が極端に短縮され、現物の品温を上げることなく鮮度を保った状態で消費者にお届けすることが可能となった。
平成16年の作付開始から、京浜市場を中心に出荷を行っているが、当初は品質が安定せず、クレームを受けることもあったことから、単価の低下を招き、生産者の経営が安定しない時期があった。特に作付け2年目の17年は全国的な豊作傾向により、過去に例を見ない低価格となったことから、栽培者が減少した。それを踏まえ、結果翌年からは管内行政からの指導もあり、県の価格補償事業に加入したことから、生産者の減少に歯止めをかけることができた。
計画出荷の精度を向上させるとともに、契約販売にも積極的に取り組んだほか、出荷先との販売協議の内容を管内の作型に反映させることで、必要とする時期に出荷量を確保し、生産者の収入の安定が図られるようになった。生産者においても、安定販売につながるは種計画の重要性を理解し、品種構成から作業日程まで一体となった生産体制が構築されつつある。
また、個選出荷者については、出荷調整作業の効率化と鮮度保持を高める手法として、リターナブルコンテナによる大規格出荷も実施し、センター直送の輸送体制に乗せることで、品質の劣化を最小限に抑えながら消費者にお届けすることができている。この大規格出荷体制は個選出荷者の面積拡大を推進した要因と考えている。
22年度からは、秋田県のえだまめ日本一事業の後押しもあり、全農秋田県本部主導による全県協調販売体制オール秋田の販売強化により、県北、県央、県南での産地リレーによる秋田県100日出荷体制の確立が推進されている。当管内は県内でも積雪が少なく、通年では秋田県全出荷量1504トンのうち、JAは153トン(10.1%)(図2)だが、は種作業が早いことから、シーズン前半の7月単月では、秋田県全出荷量の17.3%を占め、シェアが高いことから、秋田県産のイメージを低下させないよう商品づくりに努めている。
また、供給が潤沢な時のリスク軽減に向けた取り組みとして、主体の京浜市場に加え、地元市場や東海市場へも出荷するほか、例年取引を頂いている量販店とは個別の出荷形態を検討しながら差別化に向けた取引を実施し、安定販売に努めている。22年度に秋田県が掲げた日本一産地には、まだ届いていないが、今後も微力ながら、日本一に貢献できる産地の育成に努めたいと考えている。
平成23年にオープンしたJA直営の農産物直売所「湖東のやさい畑」の開設にあたり、地場産農産物を使用した特産物を開発することとなり、鳥海高原の花立牧場工房ミルジーと連携し、管内で最も生産量の多いえだまめを使用したソフトクリームを発売した。地元メディアにも取り上げられ、大好評となり、管内のえだまめの産地PRにもなった。
このソフトクリームに使用したえだまめの品種である「あきた香り五葉」は秋田県が、在来の五葉豆を改良して育種したもので、9月上旬に収穫期を迎える。通常えだまめの葉は3枚だが、名前のとおり5枚の葉が特徴である。秋田県のえだまめ出荷の中でも、かめばかむほどに甘味がでる栗系の甘さが楽しめるという点で一番特徴的な品種で、秋田を代表するえだまめと認識されつつある。
えだまめ加工品の第2弾として、その「あきた香り五葉」を使用し、ソフトクリーム製造でもタイアップした鳥海高原の花立牧場工房ミルジーと連携し、「枝豆アイス」(写真6)をデビューさせた。
枝豆アイスは、秋田のうまいもんのコラボレーション「あきた香り五葉×濃厚ジャージーミルク」のフレーズで、秋田県からも認知いただき、県のフレーズ「あんべいいな秋田県」にも記載し、秋田新幹線「こまち」でも車内販売されている。まさに、枝豆アイスは、秋田へ来県する方へのおもてなしである。このような取り組みが、夏場に旬を迎えるえだまめの認知度を高め、秋田県のえだまめ、JAのえだまめのファンを増やすことにつながればと考えている。
最後に、秋田県、管内行政をはじめ、関係機関一体となり、生産振興、産地育成に努めて参ったが、生産者とJAの役割分担を明確にし、生産者には「農産物生産=(とは)商品づくり(は種する時から量販店の商品棚に陳列されるイメージを持つこと)」の意識を高めてもらうことをお願いしている。
生産者が丹精込めて生産した商品をほ場の品質に近い状態で消費者にお届けすることがJAの役割と感じている。JAの青果物販売のフレーズ「小さな産地から真心を込めて」にあるようお客様に愛される産地になれるように、これからも精進していきたいと考えている。
是非JAの商品を見かけた際はご賞味いただきたい。
あきた湖東農業協同組合 経済部農業振興課
〒018-1512 南秋田郡井川町北川尻字海老沢土社28
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