(野菜情報 2014年5月号)
産地紹介:東京都 JA全農東京
都市化が進む中で生産される高品質な東京都のキャベツ生産
~豊かな土壌で栽培される高品質なたまねぎ~
全国農業協同組合連合会東京都本部生産事業部
農畜産資材課 課長 山 口 有 里
現在、東京のキャベツといえば、練馬および保谷産が二大産地(図1)となっており、都民に「安全、安心、新鮮」なキャベツを供給している。
練馬区は東京都北西部に位置し、面積は48平方キロメートル、人口は約72万人、年間平均気温は15.5度と温暖な地域で、東京特別区内(23区)で一番農地が多く、都市農業の維持発展を目指した各種施策を実施している地域である。隣接する西東京市は、練馬区の南東部に隣接し、旧保谷市と旧田無市が平成13年に合併して誕生した。面積は16平方キロメートル、人口は約20万人で、気候はほぼ練馬区と同様である。
キャベツは、家庭用、加工・業務用等、あらゆる用途に使える主要野菜の一つとして需要は高い品目である。地区別に生産量の偏在はあるが、現在も、都内全域で生産されている、東京産主要野菜の一つとなっている。
主産地である練馬区は、江戸時代から生産が始まった“たくあん大根”の原料として、“練馬だいこん”が古くから有名であった。同地は、関東ローム層という赤土層で、根菜類の栽培に適しており、練馬だいこんは、昭和期に入っても順調に生産を伸ばしてきた。しかし、その後の生産量拡大とともに、相次ぐ連作障害、ウイルス病の発生により生産継続は困難な状況となり、昭和8年頃にほぼ全滅したとされ、代替作物としてキャベツ生産が開始された。
練馬区内のキャベツ生産は、戦後飛躍的に面積を拡大し、練馬区は、かつてのだいこん産地からキャベツ産地へと変貌していった(写真1)。昭和25年頃より現在の年2作体制(初夏産、秋冬産)が定着し、栽培期の若干の変動はあったものの、現在とほぼ同じ生産出荷体系が確立した。
しかし、戦後の高度経済成長は、都市化と都内農地の大幅減少をもたらし、生産減、後継者不足が進行した。現在、東京産キャベツは、かつての高度経済成長期の生産減を上回る急激な生産減基調で、出荷量減には歯止めが効かない状況となっている。
年2作体制での出荷時期は、初夏産が5月上旬~7月上旬、秋冬産が10月中旬~12月中旬で、東京都産「春キャベツ」「秋キャベツ」として、東京都中央卸売市場を中心に出荷されている(写真2)。
上述の初夏産および秋冬産以外には、軟らかく食味に優れる冬越しのキャベツ、初春向け品等のキャベツも少量ながら生産されているが、これらは東京都中央卸売市場のほか、近隣地方市場向け、契約スーパー向け等に出荷されている。
平成24年度における、キャベツの東京都中央卸売市場全入荷量は18万5784トン、そのうち、東京都中央卸売市場における東京産のキャベツは1,986トン(表1)で、同市場における東京産シェアーは約1パーセントとなっている(東京都中央卸売市場年報より)。
現在の東京都内のキャベツ出荷組織は、全農東京都本部取扱いで5JA9組織、出荷市場は、地方卸売市場を含む都内13市場となっている。
キャベツは前述の通り、あらゆる用途に使える品目であり、最近は地産地消の観点から、学校給食用として都内小中学校でも積極的に取り上げられ、安全、安心、新鮮な東京産キャベツとして都内に幅広く流通している。
また、生産者自らによる量販店への契約出荷や庭先直売、JA直売所だけでなく、「安全、安心、新鮮、特別栽培」を全面に打ち出した高付加価値販売を目指し、オーガニックショップ等への出荷も行われるなど、非常に多様性に富んだ出荷形態になっている。
業務用では、外食事業者および学校給食用には大玉サイズ(2L以上)の支持が高く、市場出荷向けでは特に、近年の核家族化および小家族化の進展で、量販店からは小玉サイズ(L~Mサイズ)のニーズが高い状況になっている。
そのため、大玉にしない適期収穫が重要であり、出荷検討会の際には現行出荷規格(表2)の「10キログラム詰め L8玉入り」(写真3、4)は、小家族化への対応として、店頭販売で1個売りが可能な適正サイズとなっているため、市場性が一番高いキャベツとして推奨され、適期収穫を目指した生産を行っている。
なお、近年は扁平な形状の品種が多くなっており、これらはダンボール梱包での安定性・輸送の安全性にも優れている。
現行の年2作の出荷体系である、初夏産および秋冬産の出荷時期に、都内主要キャベツ生産組織を参集し、東京産キャベツのさらなる品質向上を目指した品質検討会を実施している。検討会は、出荷組織、出荷JA、関係行政、野菜価格安定事業実施団体、市場関係者および全農東京都本部が、東京産キャベツの品質向上、市場性評価の向上を目指して実施している。特に、検討会における、市場関係者からの品質評価については、生産現場へ需要側の生の声を伝える重要な場となっている。
需要側からの要望は安全、安心および高品質な東京産キャベツの生産を前提とした、以下の取り組みに向けた重要な検討材料となっている。
①計画出荷による需要側の信頼を得た有利販売・高市況の形成
②適切な病害虫防除、市場性のあるキャベツとするための適期収穫の励行
③出荷規格の統一性向上(玉揃え・荷造りの統一等)
④生産者間品質格差の縮小等
キャベツは、用途が広く需要量が多いため、非常に多品種となっている。このため、都内各産地とも消費者に支持される食味のよいキャベツを求め、現在でも毎年品種比較・食味比較試験を行い、他産地と差別化を図ることが出来る新品種を選定する、「東京ブランドキャベツ」の試作試験を実施している。
また、現行の出荷時期は初夏産および秋冬産の年2作体系だが、出荷量が少なく高市況で、市場性の高い時期の出荷体系を模索するため、数年前からは都内でも現行出荷体系以外の出荷を目指した試作試験を実施している。
(1)東京産統一ダンボール製作
近年の燃油高騰、生産資材費高騰基調の中、青果物市況はどちらかといえば低迷基調である。生産コスト低減を目指した取り組みが全国的に行われる中、東京都産青果物についても同様の取組みが各種実施された。
東京産キャベツも、かつては全国的に主流となっていた、美観に優れ、商品性向上に役立つといわれた白色ダンボールで流通していたが、近年、コスト低減を図るため、茶色ダンボールへ回帰することになった。
白色から茶色への変更に合わせ、東京産キャベツを「オール東京」と捉え、東京産キャベツ統一ダンボール製作の検討着手となり、出荷組織および関係各者との協議により、「キャベツ統一箱」(写真5)が誕生した。
デザインは、東京産をイメージした「T」の文字を入れ、印字色・デザイン、形状は統一で、出荷組織名および規格等級欄は、各組織別の任意となっている(図2)。
また、低コスト化への取り組みとして、東京産キャベツは、輸送時間が短い都内流通を主力としているため、ダンボール材質については、一定の強度維持を図りながらも、他県産地に見られるような高強度ダンボール原紙の採用は見送られた。
また、統一ダンボールは「オール東京」として、東京産青果物のより一層の普及と市場評価の向上を目指すため、共選出荷に限定せず、共選以外の幅広い流通に利用できるよう配慮している。
(2)ノンステープルダンボール導入
キャベツを含む青果物用ダンボールは、長い間ステープル(封函用の金属針)が利用されてきた。しかし近年では、多様性に富んだ需要先への対応のうち、異物混入防止の対策として、ステープルを使用しない底面差し込み式ダンボール(ノンステープルダンボール)の利用が全国的にも普及しつつあり、東京産キャベツでも、ノンステープルダンボールの採用検討に着手した。ノンステープルダンボールは底面、封函作業の省力化にもつながることから、都内出荷組織では、以下の内容が検討された。
①ノンステープルダンボールの採用
②底面テープ貼り封函への変更
③その他の封函方法
キャベツは重量野菜であり、軽量な他の青果物とは違い、他県産地でもキャベツへの導入例は少ない状況の中で、東京産キャベツは出荷流通試験を実施した。
流通試験では、収穫後の水抜き不足の状態で梱包したため、底面が濡れ、差し込み部の強度低下などが見られたことから、収穫後の水抜きの徹底が課題となった。収穫後の水抜きの徹底は、輸送中の品質低下リスクの軽減も図られることから、品質向上にもつながった。
流通試験を経て、20年秋冬産より、ノンステープルダンボール流通が本格的に流通された。
都市化の進展等の課題がある中、品質および食味で高い評価をいただいている東京産キャベツは、都内5JAの出荷組織により、生産量維持および品質向上を目指し、生産出荷が行われている。東京産キャベツは、量販店の店頭だけでなく、加工業務用など、さまざまな用途に使用されているので、さまざまな機会で召し上がっていただきたい。今後とも、東京産キャベツの購入および利用をお願いしたい。
全農東京都本部 生産事業部 農畜産資材課
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