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(野菜情報 2014年3月号)

今月の野菜

産地紹介:岐阜県
JAひだ 飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会

~ブランド力向上を目指したほうれんそうの生産~

飛騨農業協同組合 営農販売部園芸課 全農岐阜県本部 園芸部園芸販売課

1. 産地概要

 JAひだは、岐阜県飛騨地域を管内とし(図1)、岐阜県の北部に位置する。管内の総土地面積は4,178平方キロメートル(石川県、福井県の面積とほぼ同じ)で、そのうち88パーセントを森林が占め、耕地面積はわずか1.87パーセントと、典型的な中山間地域である。この地域は、3市1村(高山市、飛騨市、下呂市、白川村)からなっており、平成25年4月1日現在の総人口は16万6599人、世帯数は5万5519世帯となっている。平成24年産における、管内の農畜産物販売額は181億円で、そのうち野菜は、46.8パーセントの84億円となっている(表1)。
 管内を概観すると、東に3,000メートル級の乗鞍岳をはじめとする北アルプスや御岳、西に2,700メートルの白山連峰を望む、高い山々に囲まれた地域である。気候は地域や標高によって差はあるものの、全般に冷涼で冬期は積雪が多く、本店のある高山市における、年平均気温は11度、年平均降水量は1,699ミリ、一日の寒暖差は年間を通じて10度前後となっている。

2. ほうれんそうの栽培および品質の特徴

 飛騨地域でほうれんそうの栽培が始まったのは、今から約50年前。当時、夏が涼しい飛騨地域でも雨が降ると立ち枯れ病を引き起こすことから、ほうれんそうの夏作は難しいと言われてきた。それを可能にしたのは、全国に先駆けて飛騨地方で開発された雨よけハウス(写真1)である。これまでのビニールハウスと違うのは、ほぼ全面がスクロールによって解放できる点である。それにより日中には冷涼な外気を自由に取り入れ、また雨よけ効果も手伝って夏秋の収穫量が安定し、栽培農家も徐々に増えていった。
 高標高地で栽培される、管内のほうれんそう(写真2)は、日中に光合成によって栄養分を蓄え、気温が下がる晩から朝にかけて糖分を貯める。葉に厚みがあり、柔らかいのが特徴で、夏秋期に出荷されるほうれんそうの中でも、これらの特徴が高く評価され、西日本地域を中心に広く販売されている。

3. 生産数・栽培面積と収穫から出荷までの徹底した商品管理

 管内のほうれんそう生産者数は434戸、栽培面積は960ヘクタールとなっている。平成25年産は、7,200トン(図2)を出荷し、出荷量の約半分は、全生産者の13パーセントの生産者で生産されている。これら大規模生産者の栽培面積は、1ヘクタールを超える。当地では、高齢化による生産者数の減少の一方で、栽培規模拡大により生産および出荷量を拡大してきた。は種は3~9月、出荷時期は4~11月で、400~1,200メートルの高冷地で栽培を行っている。
 また、選別および調整作業については、部会およびJAによる厳しい指導体制のもと、各生産者が、袋詰めから箱詰めまで行っている。管内8カ所の集荷場には、真空予冷装置(写真3)が設置されており、20~25分かけて5度まで冷やされる。これは、夏場でも消費者の手元まで品質を維持するための、重要な工程の一つである。予冷処理されたほうれんそうは、関東、京阪神、中京および北陸地域へ出荷されている。通常商品のほか、販売先のニーズに対応し、少量目アイテムや量販店のプライベートブランド、業務用出荷にも取り組んでいるとともに、販売先と積極的に交流を図り、関係を密にした取り組みを行っている。

4. 安全・安心な商品作り・安定出荷に向けた取り組み

 部会およびJAでは、管内の作柄状況の把握と、全生産者のは種面積情報を日々集計し、市場等に向けた定期的な情報発信を強化することで、有利販売を行っている。また、全生産者が栽培暦を共有し、岐阜県認証の「ぎふクリーン農業」(図3)に取り組んでいる。ぎふクリーン農業は、慣行栽培基準に対し、化学合成農薬と化学肥料(窒素成分)をそれぞれ30パーセント以上削減した栽培方法である。化学合成農薬と化学肥料を、適正で効率的に使用すると共に、各種代替技術を最大限利用し、減農薬および減肥料と、環境への負荷に配慮した栽培を実現している。
 食への安全・安心が揺らぐ中、部会およびJAでは、一大野菜供給生産地として、消費者が安心して食べられる、安全な農産物の生産供給を行うため、生産履歴の記帳および点検はもちろんのこと、平成23年より飛騨独自のGAP(生産工程管理)に取り組んでいる。

5. 新規就農者支援・生産基盤拡大に向けた取り組み

 部会およびJAでは、新規就農者支援のため、直近10年間にほうれんそう栽培を開始した生産者にアンケートを実施することで、新規就農者のニーズを把握し、効果的な支援策立案に役立てている。また、生産基盤拡大のためアンケートを実施することで、現状の経営状況と将来動向を把握し、部会、行政およびJAによる、将来的なサポート体制を検討している。両課題とも最重要課題と位置付け、アンケートにより現実的な生産者の声を細かく聞き取り、関係機関がサポートすることによって、産地の将来を守る取り組みの検討および実践を行っている。

6. 「飛騨ほうれんそう」を盛り上げる取り組み

 ほうれんそうは、幅広く料理に使用される食材の一つだが、消費者アンケートを取ると、圧倒的におひたしで食べる人が多く、消費者にもっといろいろな料理にほうれんそうを取り入れていただくため、生産者が普段家庭で食べている料理(写真4、5)のうち、特に簡単で短時間で作れるレシピについて、リーフレットやインターネット等を利用し、広く紹介する活動を行っている(http://www.ja-hida.or.jp/recipe/index.html#spinach)。

一言アピール

 「飛騨ほうれんそう」をより身近なものに感じ、消費者に認知していただくためにイメージキャラクターを公募した。平成25年12月に、519名の応募の中から厳正な審査により、1つのイメージキャラクターが選ばれた。今後、出荷資材や宣伝資材などさまざまな場面で、飛騨ほうれんそうの「顔」として登場し、多くの方々に愛されるキャラクターに育つよう、産地全体で盛り上げているところである。
 栄養分が高く葉が厚く柔らかい「飛騨ほうれんそう」を、ぜひご賞味いただきたい。

お問い合わせ先

全農岐阜県本部 園芸部園芸販売課
〒500-8367
岐阜県岐阜市宇佐南4-13-1
TEL:058-276-5305 FAX:058-276-5338
E-Mail:seko-yuusuke@zennoh.or.jp

今月の野菜「ほうれんそう」


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