(野菜情報 2014年1月号)
産地紹介:静岡県
JAとぴあ浜松のちんげんさい生産
~温暖な気候で栽培される高品質なちんげんさい~
とぴあ浜松農業協同組合 営農販売部 営農販売課
JAとぴあ浜松は、東京と大阪のほぼ中央、静岡県の最西部に位置する、浜松市(北区の一部、天竜区を除く)および湖西市を事業区域としている。地勢は、中央西寄りに浜名湖を抱え込み、大半が海岸地帯、天竜川右岸地帯、浜名湖岸地帯の平坦地で、北部が中山間地となっている。管内は、東西、南北とも約30キロメートルにわたり、面積は、約560平方キロメートルである。
管内の気象は、年間平均気温が16.2度と温暖な気候で、年間日照時間は2,311時間と、全国トップクラスの日照量を誇る。年間降水量は1,800ミリ前後で、夏期に降雨が多く、冬期の積雪はほとんどない。冬期は、西寄りの季節風(通称:遠州の空っ風)が強いことが特徴となっている。
管内の浜松市は、自動車、楽器などの製造業が有名で、野菜・花き・果樹などは全国的にもトップクラスの農業生産量を誇り、「
また、管内を JR東海道新幹線、JR東海道本線、東名高速道路、国道1号線が走り、京浜、阪神および中京の大消費地に近いという恵まれた交通環境のもと、定時・定量の青果物出荷が行われている。
当JAのちんげんさい栽培については、昭和56年頃から、浜松市や浜北市へ、既設のビニールハウス等の施設を利用しての栽培が普及拡大されたことに始まった。
平成24年現在、生産者63人、面積25ヘクタールで、静岡県内のちんげんさい系統出荷の大半は、当JAから出荷されている。
ちんげんさいの栽培期間は短く、施設栽培により、年間8~10作の周年栽培を行っている。そのため、家族経営では、小規模労働集約型の経営となるが、雇用労働の導入による、大規模経営も行いやすい作型でもある。
品種については、低温期から春先にかけては
ちんげんさいの苗については、JA総合育苗センターから生産者に供給されている。育苗作業(写真1、2)は、セル成型育苗(288穴セルトレー)が基本で、セル専用の育苗土をセルトレーに詰め、専用の播種機で、は種を行う。育苗期間は、外部気象条件および後述の本葉展開枚数の差異があるため、時期により異なる。
定植する時の苗は、栽培時期の季節により、本葉の枚数を変えて定植する(写真3)。
ほ場は、たい肥等の有機質資材で土作りをし、連作障害を防ぐために、化学肥料の使用は極力控えている。なお、栽培期間が短いため、栽培期間中の追肥は行わず、全量元肥で施肥を行う。
高温期には、株の蒸れと病害予防のため、株間を広めにして、定植後の活着を促すためしゃ光を行い、施設内の温度を下げている。
定植後、根が活着するまではやや多めにかん水を行う。収穫予定日の7日前からは、しおれ防止のためにかん水を控える。
日中の施設内温度は26度を目安として管理し、夜温が低くなる時期には、生育促進のために二重被覆を利用して保温に努めている。管内の気候は温暖なことから、二重被覆を励行することにより、厳寒期でもほぼ無暖房で栽培することができる。
定植から収穫までは、夏場が25日程度、冬場が45日程度と、栽培時期および品種により異なり、栽培時期に合わせた適期収穫を心掛けている。収穫作業(写真4)は、品質低下を防ぐために朝夕の涼しい時間帯に行われている。ほ場で根と外葉を切り落とし、ほぼ調整された状態で、各生産者の作業場に運搬される。
作業場では、重量で階級ごとに分け、箱詰めを行う。箱詰めについては、通常、鮮度保持袋に入れてダンボールに詰められるが(写真5)、販売先の需要に応じて、無袋のままダンボールに詰める場合もある。
ダンボール詰めされたちんげんさいは、各生産者によりJA集出荷施設に出荷され、真空冷却機(チャンバー内で真空処理にすることにより、急激に水分を蒸発させて野菜を冷却させる装置)によって予冷処理される(写真6)。真空予冷することにより、品温を下げ、棚持ちを一層長くすることができる。
真空冷却機により真空予冷されたちんげんさいは、トラックへ積み込まれ(写真7)、各市場へと出荷される。集出荷施設による集荷は13時までに行われ、当日中にトラック輸送されることから、収穫後2日目には市場販売される。
生育および収穫期間中は、定期的に生産者とJAが集まり、出荷物調査(写真8)や各生産者ほ場の巡回(写真9)を行い、品質の維持向上に努めている。また、出荷開始前に、農薬使用記録簿のチェックと残留農薬検査も実施しており、安全・安心なちんげんさい出荷を心掛けている。
JAおよび部会では、周年安定出荷を目標に、近年の異常高温などの気象変化に対応すべく、新品種試験や被覆資材の研究などに対して、積極的に取り組んでいるところである。JA土壌農薬分析センターによる土壌診断を基にした施肥設計および施肥指導など、栽培に関する勉強会はもちろん、経営を含めた勉強会も開催されている。ちんげんさいは、周年栽培および収穫ができることから、ここ数年で、20代、30代の後継者が増えており、技術等の向上および 生産者の若返りなど、産地強化が図られている。
販売面では、市場や末端販売先との情報交換を密にして有利販売に努めている。正確な出荷計画を提供することはもちろん、需要に応じた出荷調整を行うことで、販売先から「情報」「品質」「数量」の3拍子揃った、高い産地評価をいただけるよう、日々努力しているところである。
JAとぴあ浜松営農販売部 営農販売課
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