山梨県農政部果樹食品流通課
山梨県は本州の中心に位置し、富士山や八ヶ岳、南アルプスなど標高2000メートルを越える山々に囲まれた自然豊かな県です。ブドウ・モモ・スモモは日本一の生産量を誇っており、果樹王国として知られていますが、野菜もまたその恵まれた気象条件を生かし、地域ごとに特色のある品目が栽培されています。
山梨県で生産されている野菜は、その多くを果菜類が占め、なす・トマト・きゅうり・スイートコーン・ズッキーニなどが栽培されており、京浜市場を中心に東海・関西市場にも出荷されています。
中でもスイートコーンは、なす、トマトを押さえて、山梨県の野菜生産額の第1位となっています。山梨県の全野菜作付面積は3,129ヘクタール、そのうちスイートコーンの作付面積が772ヘクタールを占めており、生産量は9,118トンとなっています(「平成24年度山梨県農業及び水産業生産額実績」より)。
図1 山梨県内の代表的なスイートコーン産地
山梨県におけるトウモロコシ栽培の歴史は古く、戦前から雑穀として食する「甲州もろこし」の産地化が行われていました。スイートコーンとしての栽培は、昭和32年頃に富士北麓や八ヶ岳山麓の高冷地で広まり、その後、甲府盆地の平坦地に畑作作物として導入されました。
昭和40年代に入ると、水田の裏作としてトンネル栽培による早出し栽培が導入され、その後、水田の転作作物として栽培面積が拡大しました。
山梨県におけるスイートコーンの栽培は、甲府盆地の気象条件を生かした早出し栽培が主力となっています。山梨県は春先の晴天率が高いため日照時間が多く、ビニールのトンネルを利用することで、スイートコーンの生育に必要な温度を確保することが可能となります。この栽培方法は主に、甲府市・笛吹市・中央市・市川三郷町など甲府盆地の中部から東南部で行われています。
また早出し栽培からのリレーとして、通常の露地栽培だけではなく、夏期の冷涼な気候を生かした夏出し栽培も、八ヶ岳南麓や富士北麓地域などの高冷地で行われています。
山梨県のスイートコーン栽培の主な作型は4つあります。(図2)ビニールマルチだけを用いた露地栽培で7月出荷となる作型に、透明~白のトンネルを1枚掛けた一重トンネル栽培で6月中~下旬出荷となる作型、出荷期の前進をねらい1重トンネルに大型のトンネルを掛けた二重トンネル栽培で6月上~中旬出荷となる作型、さらなる前進をねらったパイプハウスを利用してのハウス栽培で5月中~下旬出荷となる作型が確立されました。また、二重トンネル栽培では、水封マルチ(湯たんぽ)を活用した作型も増えています。
トンネルやハウスなどの施設等を利用した早出し栽培により、比較的価格の高い5~6月に出荷することで収益性は大幅に増大し、経営の安定化と出荷集中の回避、作付面積の拡大が図られています。
また、甲府盆地の早出しスイートコーン栽培は、水田での作付けが多く行われていますが、水田に作付けすることで、輪作による連作障害の回避や高品質・安定生産につながっています。特に、スイートコーンは肥大期に水分が不足すると、房重の低下や先端不稔の発生が懸念されますが、水田で栽培することにより、適期かん水が容易となり土壌水分を適切に管理することで、高品質生産が図られています。
現在の品種構成は、房が大きく先端不稔の少ないゴールドラッシュを中心に、きみひめ(JAふえふき管内)や恵味(JA北富士管内)などのイエロー系品種、甘々娘(かんかんむすめ)(JA西八代管内)・ミルフィーユ(JA甲府市管内)などのバイカラー系品種も栽培されており、特にJA西八代の甘々娘は、「地域ブランド」として定着しています。
品種に関しては、消費者ニーズの変化にも的確に対応するため、毎年、全農、農協、県などが連携して展示ほ場を設置し、新しい品種の食味や栽培性などの比較検討を行っています。
収穫されたスイートコーンは、自身の呼吸でせっかく蓄えた糖分を消費してしまうので、呼吸量が多くなる気温の高い日中に収穫すると、それだけで品質を著しく低下させてしまいます。そのため、山梨県の各産地は出荷直前の収穫を徹底しており、特に収穫作業は気温の上がらない早朝に行っています。
山梨県におけるスイートコーンの出荷は、5月~9月まで長期にわたります。その中でも主力は、5月~6月の早出し栽培ものです。関東近県へのスイートコーン出荷は、九州の西南暖地から始まり、続いて東京近郊の産地では山梨県産が最も早い出荷となることから、早いだけではなく品質的にも高い評価を得て高値で取引されています。
出荷形態は、5キロ箱での出荷が基本となり、各等級の本数は表3のとおりとなります。
中央市や市川三郷町などの地域では、地域ブランドとしてスイートコーンをPRし、販売拡大を図るため、毎年6月には収穫祭を行い、直売や試食の他、もぎ取り体験も行っています。生産農家が朝採りしたスイートコーンを、ケースで買い求める人で長蛇の列が出来るなど、シーズンには大勢の人でにぎわいます。
また、中央市の「道の駅とよとみ」では、シーズンオフにも地域のスイートコーンを楽しんでもらおうと、収穫後すぐにゆで上げて真空パックにした「ボイルコーン」をはじめ、「とうもろこしワイン」やドレッシングなどの加工品の開発にも力を入れるなど、商品開発と販路拡大を図っています。
◆一言アピール◆
日照時間日本一の肥沃な土地で作られた、甘くて大きなスイートコーンです。
生産者が丹精を込めて作った山梨のブランド野菜を、一人でも多くの人に味わっていただきたいと思います。
◆問い合わせ先◆
山梨県 農政部 果樹食品流通課 野菜・食品流通担当
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