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(野菜情報 2013年5月号)

 JA上伊那のアスパラガス


 



JA上伊那 西箕輪支所営農経済課 荒井 英昭



 

産地の概要

 JA上伊那は、長野県南部伊那谷の北側半分になります。辰野町・箕輪町・南箕輪村・伊那市・宮田村・駒ヶ根市・飯島町・中川村の8市町村にまたがり、タカトオコヒガンザクラの「高遠」やゼロ磁場の分杭峠は伊那市に含まれます。縦断距離は約50キロあり、生活圏は標高480メートルから1200メートル。周囲を中央アルプスと南アルプスに挟まれているためか、乾燥しやすく、冬場は寒天生産も行われる程凍み、夏の日差しは刺さるようですが蒸さないので日陰は涼しく、春と秋が短く、冬から数週間で夏、夏から数週間で冬になります。一日の気温差や日なたと日陰の気温差が大きい環境のため、美味しい農産物ができる地帯でもあります。凍みる冬を生き延びるためにしっかり溜めた糖分を春一気に使い、上伊那のアスパラガスは伸びていきます。伊那市を中心にほぼ上伊那全域で栽培されており、JA上伊那の野菜の基幹品目になっていて、平成24年は県内1位の出荷量となっています。

栽培について

 JA上伊那のアスパラガスの品種は、ウェルカムがほとんどです。収量性が良いとされる他品種も試験的に栽培してみましたが、先端の締まり具合や紫色の出にくさにより、収量よりも品質重視でウェルカムを選択しています。生産者数は330人あまりで、ほ場総面積は約65ヘクタールです。その内90パーセント程がハウスでの半促成栽培、10パーセントが露地栽培と促成栽培となっていて、半促成の90パーセントが間口2.4メートルの2条ハウス、10パーセント程度が大型ハウスでの栽培です。この間口2.4メートルハウス(写真1、2)は上伊那独特のようで他産地では見かけませんが、上伊那産アスパラガスの先駆者の方々が試行錯誤の中で作り上げたコストパフォーマンスの高いハウスだと思います。

 半促成や露地栽培では、種を5月にまいて翌年の夏から収穫が始まり、翌々年の4月から本格的な収穫になります。促成栽培(写真4)では、種を5月にまき、翌年12月初旬に堀り取ってハウス内の加温床に伏せ込み(10アールで養成した株を70平方メートル程度の加温床に詰め込む)、12月中旬から収穫が始まります。物量に差はありますが、12月中旬から10月中旬まで上伊那のアスパラガスが出回ることになります。

 は種から約1年間養成する手間を省くため、毎年約6万株の1年養成苗を準備してあり、面積の維持と拡大を図っています。出荷量は個々の農家で格差が大きく、ハウス面積での収量は10アール当たり3.5トンから0.3トン台までありますが、平均すると1.2トン程度となっています。
 アスパラガスは、は種後7年前後が収量のピークになると言われていますが、上伊那の場合その限りではなく、20年近く経っていても、反収2トン以上のほ場が多くみられます。これは、栽培当初から雨よけ栽培を勧めてきたことや残渣のほ場外への持ち出しの徹底、残茎を焼いての殺虫殺菌により茎枯病などの病害発生が少ないこと、地域内の畜産農家やキノコ栽培農家から供給された堆肥を毎年投入して地力を上げるようにしていることが要因かもしれません。
 栽培の省力化を目的に、栽培面積の小さなほ場ではハウス間を狭くして密植し、栽培面積が大きなほ場ではハウス間を広くして(写真5)防除機や作業機が通れるようにしてあります。そのほかにも個々で工夫してあり、収穫や管理に座ったまま移動できる台車を利用している方もいます。

 生産者数も多く出荷期間も長いので、生産者全体の栽培技術や収量の向上、安全安心対策を目的に、県関係者にも協力していただきながら栽培事例の解析を行っています。管理のポイントになる時期に栽培講習会を実施し、生産者ごとのほ場台帳を作ることで、栽培状況の変化や傾向を探りながら、状況別の対応に取り組んでいます。また、年に1回女性生産者の慰労も兼ねた研修会を行ない、生産者活力の向上を図っています。

出荷

 朝夕の涼しい時間帯に収穫したアスパラガスは、出荷規格に分け、翌朝株元を切り戻して水揚げをした後、集荷場に出荷されます。選荷場で品質確認をして縦詰めの専用スチロール箱に入れ、真空予冷庫で冷やした後、中京主体に、関西、京浜、県内の市場へ出荷されます。上伊那では夏でも日陰は涼しいため、一昨年までは12月から5月の期間はダンボール箱出荷、5月から10月はスチロール箱出荷を行っていましたが、上伊那の日陰が涼しくても出荷先の気温が高ければ品質低下が早くなってしまうので、昨年からは12月から3月の促成出荷時期を除き、半促成、露地では出荷期間を通してスチロール箱出荷を行っています。

 品質向上、出荷規格統一のため、年2回の出荷会議のほか、地域ごとで目揃え会も実施しています。
 市場へは通常の100グラム束出荷のほか、極太や結束無しの出荷も行い、生協、量販店の企画物への対応も行っています。
 羽広農業公園を中心に収穫体験も行っていて、時期になると多くの方々が自分の好みのアスパラガスを収穫して帰ります。

最後に

 アスパラガスの機能性はあまり調べられていないのですが、グリーンアスパラガスの先端部分や細物には、抗酸化作用や悪玉コレステロールを減少させ生活習慣病を抑制する作用が期待されるルチンや、強い抗酸化作用があって細胞の老化を抑制するとされるグルタチオンが多く、根元には脂肪吸収抑制、強壮効果、血流促進、血圧上昇抑制、腫瘍細胞の増殖抑制効果が期待されるプロトディオシンが多く含まれています。
 日本人はアスパラガス好きが多いようで、春野菜の主役になってきていますが、「食べ方」にあまり特徴がありません。ヨーグルトにキムチを加えたもので和えたり、チーズ焼きにしたりしても美味しく食べられます。ゆで時間や加熱時間が長いと、前述した栄養分が溶出することがあるので、サッと火を通すようにしましょう。

問い合わせ先

・上伊那農協 営農部 指導販売課
 〒396-8510  長野県伊那市狐島4291
   TEL 0265-72-8833/FAX 0265-72-6107
・羽広農業公園みはらしファーム
 〒399-4501  長野県伊那市西箕輪3447-2
   TEL 0265-74-1807/FAX 0265-74-1808

 


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