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(野菜情報 2013年2月号)

      愛知県豊橋市のはくさい

~黒潮による温暖な気候を生かし、厳寒期に高品質なはくさいを供給~



愛知県東三河農林水産事務所 農業改良普及課 野菜指導グループ 森下 俊哉



 

1 産地の概要

 豊橋市は、愛知県南東部に位置し、南側は太平洋に面しています。太平洋を流れる黒潮の影響を受け、年間の平均気温は16.2度と温暖であり、雪が降ったり氷が張ることはまれです。この温暖な気候を最大限に生かし、厳寒期に高品質なはくさいやキャベツを出荷しています。
 また、当地域は過去には水源に乏しく、しばしば干害を受け、はくさい栽培には向かない地でした。しかし、昭和43年に豊川用水というかんがい用水が全面通水し、必要な時に水をやることができるようになったため、はくさいを始めとした園芸作物の栽培が飛躍的に発展しました。
 平成24年度の豊橋農協白菜部会は126戸、作付面積120ヘクタール、出荷予定数量8,500トンです。はくさいは秋冬作として作付けられ、春夏作としては、すいかやとうがん、葉タバコなどを組み合わせています。

2. 栽培カレンダー

 消費者ニーズに合わせた黄芯系を中心に数種類の品種を組み合わせ、9月上旬~中旬に種をまき、11月下旬~翌3月上旬に出荷しています。

3 生産、栽培の特色

(1)土づくり

 はくさいは、キャベツなどの他のアブラナ科野菜に比べて石灰欠乏症などの生理障害が発生しやすく、主力の黄芯系の品種は特に発生が多いため、いかに根の張りを良くするかが生産安定のポイントになります。このため、家畜ふんたい肥やソルゴーなどの緑肥を利用し、作物栽培の基本である土づくりに積極的に取り組んでいます。また、湿害による根傷みを防止するため、サブソイラーを利用した深耕などにより排水対策にも万全を期しています。

(2)直まき栽培

 間引き作業など、移植栽培より多くの労力を必要とするものの、根の張りを良くすることを重視して、直まき栽培が中心となっています。1か所に3~5粒ずつ種をまき、本葉5~6枚までに間引"center"、1ヵ所1株にします。間引きにあたっては、大きすぎる苗や小さすぎる苗を抜き取り、ほ場全体の生育が揃うようにしています。
 土壌条件の良いほ場や根の強い品種を選択することにより、一部では移植栽培も行われています。

(3)一斉防除

 地域全体の病気や害虫の発生状況を確認しながら、その時々の状況に合わせた薬剤を選択しています。選択した薬剤を一斉防除として農協の窓口に掲示し、産地全体で効率的な防除を行うように努めています。
 また、新しい農薬が登録された場合、薬害発生の有無や効果の程度を、実際に栽培しているはくさいに使用して確認しています。このことにより、より安全でより効果の高い農薬を使用した、効率的な防除が可能になっています。

(4)結束

 はくさいの葉は薄くて弱いため、いくら当地域が温暖とはいえ、1~2月の寒さで傷んでしまいます。このため、1~3月に出荷するはくさいは、12月になると、外葉をかき上げて稲わらや結束ひもを利用して頭部で結束し、外葉で商品となる結球部を保護することにより傷みを防止します。この作業は、腰を曲げた状態が続く重労働ですが、厳寒期に高品質なはくさいを届けるためには欠かせない作業であり、生産者は腰痛と闘いながら結束を行っています。はくさいの結束作業は、豊橋市の12月の風物詩ともいえます。
 また、8~9割の結球状態で結束されたはくさいは、厳寒期もジワジワ生長を続け、収穫する頃にはぎっしり詰まった、ボリューム感のあるはくさいに仕上がります。

(5)安全・安心への取り組み

 全てのほ場の生産履歴を記帳するとともに、出荷開始の1週間前までに生産履歴記帳シートを農協に提出し、事前のチェックを徹底しています。さらに、出荷されたはくさいの農薬残留分析を定期的に行うことで、安全・安心なはくさいを供給するよう努めています。

4 出荷の工夫

(1)尻の処理

 はくさいの尻は中心部分がくぼんでいるため、根の切り方が不十分だと隙間に土などが残ってしまいます。このため、刃が湾曲した専用の鎌を自作し、尻部の軸をえぐり取るようにしています。不要な葉を取り除いた後、専用の鎌を使って、残す葉を傷めないように注意しながら軸を元から深くえぐり取り、乾いた布で拭き取ります。

(2)パレット出荷

 出荷の際には、パレットを利用して出荷作業の省力化・軽作業化を図っています。作業場やほ場で箱づめしたはくさいを、トラックの荷台に載せたパレットに積み上げて出荷場に運搬し、フォークリフトで降ろしています。はくさいの出荷箱は1箱あたり15キログラム以上と重いため、荷下ろし作業から解放されるだけでも、以前と比べてとても楽で早くなりました。

5 販売戦略

 はくさいは、漬物として加工されて販売されるものも多くなっています。このため、キムチの漬物業者との契約による定価販売にも取り組んでいます。
 漬物業者の要望に対応し、品種はCR改良千両などのレギュラー品種に限定して栽培しています。また、やや大玉での出荷が求められるため、通常の栽培よりもやや株間を広くとって大玉生産に努めています。1玉あたりの重量が通常のはくさいよりも重くなるため、収穫・調製作業が重労働になりますが、実需者ニーズに対応するために産地をあげて頑張っています。

一言アピール

 はくさいの葉は薄く、冬の寒さで凍って傷んでしまいます。豊橋市は温暖な気候に加え、結束をすることにより、厳寒期にボリューム感があり、収穫したてのみずみずしいはくさいを供給することを可能にしています。また、はくさいは、温度が低くなると体内の水分が凍るのを防ぐために、体内に糖分を蓄えます。このため、寒くなるほどに甘味が増し、おいしいはくさいになります。
 恵まれた気象条件と生産者の努力が生み出した、豊橋のおいしいはくさいを、ぜひご賞味ください。

問い合わせ先

 担当部署:愛知県東三河農林水産事務所 農業改良普及課
 住  所:愛知県豊橋市飯村町高山11-40
 電話番号:0532-63-3529
 F A X:0532-63-7023

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