~管内のだいこん栽培を支える「にじの会」~
調査情報部
そお鹿児島農業協同組合(以下、「JAそお鹿児島」という。)は、鹿児島県大隅半島の北部に位置し、西に桜島、北西に霧島山系、東に志布志湾が広がる自然豊かな地にあります。気候は、霧島山系から寒風が吹きおろす冷涼な地帯、黒潮を臨む無霜地帯など変化に富み、広大な土地を生かした県内有数の畑作、畜産地帯となっています。
農産物取扱品目は、水稲、甘藷、野菜(ピーマン、メロン、なす、かぼちゃ、だいこん)、果樹、茶、花卉です。そのうちだいこんは、平成23年度の取扱実績が13,350.4トン、531,968千円で、作付面積は1千ヘクタール強と、ここ数年、ほぼ横ばいで推移しています。
だいこんはミネラルを含んだほ場で栽培され、取扱量の5割はべったらなどの漬物用、3割は青果用、残りの2割はコンビニなどのおでん用として、北は北海道から南は沖縄まで出荷されています。JAそお鹿児島のだいこんは「大根部会」(部会員36人)と大規模経営体の集団部会「にじの会」(部会員22社)で栽培されていますが、今回は「にじの会」を紹介します。
前述のように、にじの会は大規模経営体の集団部会です。管内に農業生産法人などの大規模経営体が増え、JAそお鹿児島もその生産力や販売力には関心があったものの、手を組むことには抵抗を感じていました。しかし、農家の高齢化等により農業生産基盤の脆弱化がすすむ中、産地を維持するためには大規模経営体を育成していくことが必要であると考え、大規模経営体とJAそお鹿児島による意見交換会を開催しました。その中で、JAに対するイメージを聞いたところ、「他金融機関などのアグリ事業では経営面における指導はあるものの営農指導はしてもらえないが、JAは両方を期待できる」との意見があり、双方ともに手応えを感じたことから、賛同した大規模経営体が集まり、JAそお鹿児島の部会組織を立ち上げることになりました。設立は、2年前の22年で、にじの会の名称は「にじ(虹)」のイメージから名付けられ、生産者と実需者を結ぶアーチや、いろいろなカラーを持つ農業生産法人の集まりであることを象徴しています。
14社で発足したにじの会の現在の部会員は22社で、JAそお鹿児島のだいこん取扱量は、にじの会設立以降増加しています。
農業生産法人有限会社水幸農園(以下、「水幸農園」という。)は、にじの会の発起人です。50ヘクタールのほ場では、2~2.5回転させながら、だいこん、かんしょ、ごぼう、キャベツ、メロン、かぼちゃ、オクラ、にがうりなどを栽培しています。夏場の7~9月は農作業の閑散期となりますが、従業員を確保するためには周年雇用の必要があるため、夏場でも栽培できる品目を増やした結果、栽培品目が増えていったそうです。
従業員数は、栽培作業が18人、選果場が12人の計30人で、そのうちの8人は中国からの研修生です。また、農業高校や農業大学校の研修生も、毎年受け入れています。
水幸農園では、以前は漬物用のだいこんを主体に栽培していましたが、自分が栽培しただいこんがスーパーに並ぶ楽しみを感じたかったことや消費者の感想が聞こえやすいこと、だいこんの良し悪しをより実感しやすく栽培技術が向上できると考えたことなどから、10数年前に青果用の栽培に切り替えました。
移行当初、遠隔のユーザーからは、輸送時間が長いことから品質が悪いというクレームもあり、品質維持に苦戦しました。しかし、品種の特性を学び栽培品種を選定するなどして、これを克服しました。現在では、水幸農園のだいこんを指名してくれる取引先もあり、それが何よりの喜びだといいます。
現在のだいこん作付面積は延べ約55ヘクタールで、輪作として甘藷やごぼうを栽培しています。生産量は年間約3,500トンで、そのうちの9割をJAそお鹿児島に出荷し、残りは加工用に出荷しています。
だいこん栽培でこだわっている点は土づくりで、近隣畜産農家のたい肥に土着菌を混ぜ、オリジナルのたい肥を作っています。もちろん、土壌分析は毎年実施し、2年に1度、緑肥を投入します。
だいこんは大きくわけて4作型で、作型ごとに5品種ほどを作付し、組み合わせています。畦幅50センチ以上で畦立てし、畑が乾燥している場合は深めには種していきます。間引きは、本葉3~4枚までに一本立ちとし、畦間に追肥を施して土寄せを行います。収穫は、生育期間70~75日を基準とし、状況に合わせて行います。自社の選果場で水洗いした後、箱詰めされただいこんは、集荷にきたJAのトラックに積み込み、出荷されます。
JAそお鹿児島は、にじの会の支援対策として、①営農指導事業、②販売事業、③購買事業、④信用事業、⑤経営支援を掲げています。
営農指導事業では、県や試験場と連携して栽培技術研修会を開催したり、栽培技術体系を確立させるための試験栽培を行っています。なかでも、栽培技術研修会は大規模経営体の従業員を対象にしたもので、年に数回開催しています。従業員数が多い大規模経営体ほど、従業員全員には経営者の目が届きづらいものですが、作物の出来不出来は、作物の異常をいかに早くみつけて対処できるかにかかっています。そのため、作業を行う従業員ひとりひとりの育成を目的とし、研修会を開催しています。そのほか、生育状況の把握を兼ねてほ場を回り、個別指導も行っています。
また、販売事業では販売先の構築や販売計画の作成支援、購買事業では大口での資材購入による価格対応、信用事業では農業金融サービスの提供、経営支援では経営改善計画の提案や補助事業などの情報提供などを行っています。
このようなJAそお鹿児島による支援の中でも、物流の手配や販売先の確保をJAに任せられることで、栽培に専念できるとともに輸送コストが省けるという点が、大規模経営体にとって大きな利点となっています。またJAそお鹿児島も、大規模経営体がJAの系統出荷に加わったことで、JAの販売実績が大きく伸びただけではなく、双方が独自にもつ生産や販売における情報を交換でき、産地の活性化につながっています。
にじの会では、だいこん以外にもキャベツやはくさい、ごぼうなど、さまざまな野菜を栽培しています。今後もJAそお鹿児島と共に手を取り、にじの会単独で総売上10億円を目指して取り組んでいく予定です。
◆一言アピール◆
土づくりにこだわって栽培しただいこんを、是非、ご賞味ください。
◆問い合わせ先◆
JAそお鹿児島 農産部営農指導課
住所:鹿児島県曽於市大隅町岩川5591-1
電話:099-482-6824