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(野菜情報 2012年12月号)

宮崎県南那珂地区のごぼう栽培

~消費者ニーズに応えた「洗い」と「あく抜き」を行った短根ごぼう生産~



宮崎県南那珂農林振興局農業経営課
野菜普及担当 甲斐 康二郎



 

1 産地の概要

 南那珂地域は、日南市と串間市の2市からなる地域で、宮崎県の沿海地帯の最南端に位置し、東は日向灘、南は鹿児島県志布志湾を臨む全国有数のリアス式海岸が続く、太陽と海、緑に囲まれた景観豊かな立地条件となっています。
 また、沿岸部に無霜地帯も広がり亜熱帯植物の自生も見られ、年平均気温17.4度と温暖な気候となっています。さらに、年間降水量2,630ミリ、日照時間2,010時間と、宮崎の中でも日照量・水資源に恵まれた気候条件となっているため、農畜産物や木材の生産、かつお・まぐろ漁業など第一次産業が盛んな地域となっています。
 ごぼう栽培は、平成元年に、農業従事者の高齢化や後継者不足などの問題への対応を契機に、既に地域の基幹作物になっていたオクラと並び、かつ栽培時期が競合せず、労働集約が図れる新品目として、当時の市木農協に発足した「市木の農業を考える会」において品目選定が行われ、栽培が始まりました。
 平成23年末現在の南那珂地域のごぼう栽培面積は86.6ヘクタールで、栽培者は249人となっており、地域の基幹作物としての地位を築いています。そのほとんどが、南那珂地域をエリアとする「はまゆう農業協同組合ごぼう部会」での生産となっています。

2 作型と栽培条件

(1)収穫期間および労力配分等を考慮し、周年での安定出荷を図るため、4作型体系を確立しました。

(2)夏場の早播きは、高温による発芽ムラ・股根・ヤケを生じやすいので、温度管理に注意しています。

(3)厳寒期は、温度確保のため、必ずトンネル被覆を行い、生産の安定と品質向上に努めています。

(4)品種は、「山田早生」で統一しています。

(5)栽培様式

3 生産・栽培上の特色

(1)品質の保持と連作障害の発生を回避するため、排水良好で前作に水稲が栽培されたほ場への作付けを実施しています。

(2)化学肥料削減ならびに土作り対策として、有機物や完熟堆肥の投入、深耕、緩効性肥料を中心とした施肥設計、土壌診断に基づく適正施肥、連作障害等に対応した土壌消毒、気候条件に応じた管理の徹底等により、品質低下(極端な短根・股根の発生)を防止しています。

(3)当地域の日照条件を生かすため南北畝を原則とし、根長確保のため30センチ以上の高畝をつくり、マルチの種類についても、は種期に応じて白黒ダブル・シルバー・黒を使い分けています。

(4)10月以降のは種では、防寒対策としてトンネル被覆を行い、有孔フィルムを活用した温度調整作業の省力化とともに、換気対策を徹底しています。

(5)生産履歴等トレーサビリティー対策として、ほ場、は種期ごとに「防除基準兼防除管理記録簿」を作成し、出荷前提出を義務付けています。

4 商品の特徴と出荷販売

(1)水田での栽培が多く、は種後収穫までの期間が約3~4ヵ月のため、短根(30~40センチ)で柔らかくて香りがよく、「新ごぼう」の名称で消費者には親しまれています。

(2)白く綺麗な荷姿を目指した「洗い」と、袋詰め前に行う「あく抜き」等を徹底するなど調理の簡便化への対応を行っており、また、扱いやすさ(買い物袋、自転車カゴに入る)やゴミ減量にもつながることから大消費地の主婦層に支持を受け、市場での取扱量も伸びています。

(3)地理的条件を生かし、新ごぼうの流通量の少ない冬春期の出荷を中心に、周年的な出荷を目指し、8月からの段播きによる4作型体系を確立しました。近年では、5月以降の出荷にも取り組み、こちらは「夏ごぼう」という商品名で販売を行っています。

(4)出荷は、農協での共同出荷で、商品性の向上を図るため、腐敗等の対策として、選果選別や水切り、予冷の徹底を図っています。また、品質管理体制を強化するため、平成19年から包装フィルムに生産者の名前を印字し、安全・安心の提供に努めています。

(5)1袋重、1箱袋数等の出荷規格は当初から変更していませんが、残す葉柄部の長さ、洗いやアク抜きの程度、その他の品質管理については、市場や消費者の意向を踏まえ、改善に努めています。

(6)市場・量販店等での販売促進活動では、生産者の顔を入れた販売促進資材(POP)や料理レシピを作成してのPRと、女性生産者を中心に試食宣伝販売を行うなど、「顔の見える販売」に力を入れています。

5 組織活動の成果(JAはまゆうごぼう部会)

(1)稲作経営が不安定な中で、早期水稲の後作として水田の高度利用が図られるとともに、農家経営の基幹品目として、収益が安定し、規模拡大に取り組む青年農業者も育っています。

(2)さらに、収穫~洗い~袋詰め~出荷時に労力を要することから、これらの作業に多くの人が雇用されており、機械化が進む一方で、雇用創出や地域活性化にも貢献しています。

(3)本地域は畜産も盛んであり、畜産農家が生産する良質な堆肥や、JAはまゆうが製造する「はまゆう堆肥」(県知事賞、九州農政局長賞を受賞)などの耕畜連携による堆肥の地域内活用を促進しました。

(4)平成5年度にJA市木水田ごぼう部会として、平成16年度にはJAはまゆう水田ごぼう部会として、高齢化や消費ニーズ等に対応した取組が評価され、宮崎日日新聞農業技術賞を受賞しました。また、平成22年度には、JAはまゆう水田ごぼう部会として、日本農業賞を受賞しました。

一言アピール

 「新ごぼう」は、若どりするため短根でアクが少なく、産地において、「洗い」と袋詰め前に行う「あく抜き」を徹底しているため、白く美しく柔らかい、おいしくて新鮮なごうぼうです。ぜひご賞味いただきますようお願いします。
 また、今後も市場や消費者の皆様のニーズに応えるべく、生産対策を徹底し、品質向上と安定供給に努めてまいります。

問い合わせ先

担当機関・部署:宮崎県南那珂農林振興局農業経営課
住所:宮崎県日南市南郷町中村甲1232番地1
TEL 0987-21-9550 FAX 0987-64-3964

 
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