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(野菜情報 2012年9月号)

群馬県佐波伊勢崎地区の施設ナス栽培

~天敵スワルスキーカブリダニの利用による省力化と減農薬で、快適、安全なナス生産を実現~



群馬県中部農業事務所伊勢崎地区農業指導センター
生産指導係長 上村 学



 

1.産地の概要

 佐波伊勢崎地域は関東平野の北西、群馬県南東部に位置し、赤城山麓南面の標高40~160メートルにおよぶ緩やかな平坦地帯です。
 内陸性の気候で夏は高温多湿となりますが、冬は季節風(赤城おろし)が吹き乾燥した晴天の日が多く、日照時間に恵まれるため多品目の野菜産地が形成されています。
 ナスの栽培は、昭和30年頃からトンネル栽培として始まりました。昭和40年以降、畑かん設備の整備によりパイプハウスが導入され、無加温半促成栽培が増加していきました。
 現在、佐波伊勢崎地域の半促成ナスの栽培面積はおよそ37ヘクタール、栽培者180人で、露地ナスも含めて作付面積、出荷量とも群馬県一のナス産地です。

2 作型と栽培条件

(1)育苗

 品種は「式部」で統一されており、台木は発生する土壌病害や草勢の強弱により、「赤ナス」、「トレロ」、「トルバム・ビガー」など多様な品種が使われています。
 育苗はセル成型苗を購入して二次育苗するケースが多いですが、自家育苗を行っている生産者もいます。

(2)栽培施設・栽植方法

 施設の構造は、単棟パイプハウスや連棟パイプハウスのほか、大型の鉄骨ハウスで栽培している生産者もいます。ほとんどが無加温栽培ですが、一部加温栽培もあり、ハウス構造や加温の有無などにより栽植様式や定植時期が異なります。

3 生産の特徴

(1)訪花昆虫の利用

 平成13年頃よりマルハナバチやミツバチを利用した着果促進技術に取り組み始め、今ではほぼすべての生産者が導入しています。訪花昆虫は無加温栽培では4月上中旬頃に放飼し、栽培終了となる6月末頃まで利用しています。

(2)天敵を利用したIPM(総合的病害虫・雑草管理)の推進

 半促成ナスの栽培ではアザミウマ類、コナジラミ類などの被害が大きく、これらの微小害虫は発生の確認が遅れる傾向にあることや薬剤抵抗性も獲得しつつあるため、年々防除が困難になってきています。そこで、これらの難防除害虫を捕食対象とするスワルスキーカブリダニ(以下:スワルスキー)が有望な生物農薬として期待されています。また、訪花昆虫を利用した場合、使用できる農薬が制限されるため、天敵導入は、これまで農薬に頼っていた部分を代替し、IPMの実践に有効な防除手段となっています。

 スワルスキーを利用した害虫防除の取り組みに対し、群馬県では平成21年に県内6ヵ所の施設ナス産地において実証ほを設置し、利用の検討を進めました。各産地の情報を共有化し、その成果をもとに技術推進パンフレットを作成したり、各産地において現地研修会を開催するなど早期の技術普及を進めてきました。
 佐波伊勢崎地区では、防除効果が高く安定しているとの評価が高く、導入農家が急速に増加しました。平成23年に約90人、平成24年には約110人の生産者が導入し、普及率は7割に達しています。
 スワルスキーを利用することで作業負担の大きい農薬散布回数が減り、省力化が図られています。

 今後、スワルスキーの利用を基幹技術として、その他の害虫を捕食対象とする天敵の併用、粘着板、防虫ネットなどの物理的防除対策を組み合わせて、さらにステップアップしたIPMプログラムを確立させる計画です。

一言アピール

 現在では、ミツバチやマルハナバチなどの訪花昆虫利用技術は一般的となっており、ナスの生産安定に大きく寄与しています。
 また、スワルスキーカブリダニは、ナス植物体上での安定した定着と増殖が可能であり、肉眼でも観察しやすい天敵であることから、誰でも取り組みやすいIPM技術として普及が始まっています。
 天敵の導入により農薬散布回数を削減できることから作業の省力化が図られ、快適な栽培環境のもと高品質なナスの生産が行われています。

問い合わせ先

担当部署:中部農業事務所伊勢崎地区農業指導センター
住  所:群馬県伊勢崎市今泉町1-22-1
電話番号:0270-25-1252
FAX:0270-25-1278

 
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