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(野菜情報 2012年6月号)

宮城県 仙南地域(そらまめ)

~「終わり初物」のそらまめ産地~

調査情報部



 

1.産地の概要

①宮城県の概況

 宮城県は東北地方の南東部、太平洋側に位置し、東西47キロメートル、南北130キロメートルに広がっています。総面積は7,285平方キロメートルで、そのうち、耕地面積(平成22年)は1,363平方キロメートル(総面積の18.7パーセント)となっています。

 県庁所在地仙台市の年平均気温は、東京や大阪に比べて5度ほど低い12.1度。真夏日日数16.8日、真冬日日数2.2日と、夏でも暑さが厳しくなく、冬は比較的あたたかな気候です。

 同県では、「ひとめぼれ」や「ササニシキ」に代表される良質米をはじめ、仙台牛や仙台いちごなどが生産され、平成22年度の農業産出額は1,679億円、そのうち、野菜の産出額は268億円(農業全体の16パーセント)です。主な栽培品目はいちご、きゅうり、ほうれんそう、ねぎ、トマト、そらまめなどで、仙台市場はもとより、京浜や北海道の市場にも出荷されています。

②産地形成の歴史

 宮城県でのそらまめ栽培は、仙南の村田町で昭和10年代から始まったといわれています。

 当時は秋まき露地栽培が一般的な作型で、県北部では冬季間の気象条件から越冬が難しく、県中部(黒川郡)辺りが栽培北限とされていました。しかし、水稲の電熱育苗器や育苗ハウスを利用した春まきの作型が開発普及されたことにより県北部へも産地が拡大され、米の所得減を埋めるための有力な転作作物のひとつとして、昭和50年代半ばから県下全域にそらまめの栽培が普及していきました。

 その後、春まき栽培よりも、生育・収量性の優れる秋まき栽培が増加しましたが、1月から2月の厳冬期の凍害による枯死欠株発生が減収の大きな要因となっていました。昭和60年代になり、定植後の防風網や不織布による防寒対策技術が県農業試験場で開発普及され、秋まき栽培が一般的な作型として県下全域に定着し、現在に至っています。

■宮城県のそらまめ生産状況(平成22年産)

 作付面積:86ヘクタール(全国で第6位)
 収穫量:626トン(全国で第7位)
 出荷量:522トン(全国で第6位)
 生産者数:約400人

③仙南地域でのそらまめ生産

 県内のそらまめ主産地は村田町、蔵王町、栗原市などで、みやぎ仙南農業協同組合(以下、「JAみやぎ仙南」という。)は、村田町、蔵王町を含むそらまめの主要出荷農協です。
 JAみやぎ仙南管内のそらまめ生産者数は現在約130人。約15ヘクタールのほ場で栽培されており、平成23年度の出荷量は約160トンでした。

2. 栽培カレンダー

 最も一般的な作型は秋まき栽培で、10月中旬には種・育苗し、11月上旬に定植します。12月上旬から3月中・下旬まで不織布によるべたがけを行い越冬させ、6月上旬から6月下旬にかけて収穫します。

3. 生産・栽培における取り組み

 JAみやぎ仙南での栽培品種は、さやが大きめで耐寒性に優れた「打越一寸」が約11ヘクタール、鮮やかな緑色が特徴の「緑陵西」が約4ヘクタールです。

 緑陵西は試作も含めて5年前に導入され、3年ほど前から少しずつ浸透しています。収穫時期に発生しやすいさび病が発生しにくいという利点がある反面、生育に時間がかかるため、打越一寸と緑陵西の2品種をうまく組み合わせることにより、収穫作業の負担を分散させている例もあるほか、緑陵西の導入により、出荷期間が6月末まで延長しました。

 ほ場管理については、連作障害回避のため、そらまめ収穫後のほ場を1年間休ませるか輪作体系を組み、越冬後から収穫前には追肥を3回ほど行います。

 毎年5月下旬に目揃会を実施し、春と秋には栽培講習会を開催しています。春(3月)は、不織布をはがした後の薬剤散布による病害虫防除について、秋(9月)は、は種時期や育苗管理について講習を行い、高品質のそらまめ栽培を目指しています。

そらまめのほ場

収穫前のそらまめ

4. 出荷の工夫と販売戦略

 そらまめの収穫は、涼しい時間帯に行います。生産者は収穫後、規格ごとに選別・箱詰めし、8時半までにJAへ出荷。品質低下を防止するため、産地予冷庫で一晩予冷した後、市場へ出荷しています。

 県内や仙台市場への出荷はごく一部で、大半を京浜市場へ出荷しています。

 生産、販売方針については、各JAの部会が集結した県下統一部会で決定し、周知徹底を図っているほか、京浜地区の量販店ではJA全農みやぎによる販売宣伝会が実施され、PR活動も行っています。

 また、そらまめうどんやそらまめアイスクリームなど加工品への利用もあり、地元の特産品として広まっています。

5. 今後の課題

 新規でそらまめ栽培にとりかかる生産者がいる一方、高齢化によりやめる生産者が増加し、生産量は減少傾向にあります。法人化するなどして一人当たりの作付面積を拡大させ、維持向上を図っていくことが今後の課題です。

 また、宮城県の土地にあった品種を常時検討・試験栽培し、新しい品種についても積極的に取り入れていく方針です。

6. 生産者紹介

 JAみやぎ仙南のなかでもそらまめの主力産地である村田町。同町のそらまめ生産者、渡辺さんにお話を伺いました。

 渡辺さんはご夫婦2人でそらまめを栽培しています。ほ場は山間にあり、作付面積は約28アール。連作障害回避のため、とうもろこしと輪作しています。栽培上最も苦労する点は、いかにして枯死欠株の発生を抑えて冬を越せるか。また、収穫したそらまめを規格ごとに選別し箱詰めする出荷作業は、ご夫婦2人では大仕事だそうです。今年は娘さんも加わり、家族3人でそらまめを栽培。「(娘さんのお手伝いが)いつまで続くかわからないけどね」と話す渡辺さんの表情は、とても嬉しそうでした。

一言アピール

 宮城県のそらまめは出荷期間が5月下旬から6月末までと短いですが、一番の需要期である6月の父の日前後に流通し、京浜市場では「終わり初物」の産地として広く知られています。
 また、村田町では町の特産品となっており、毎年そらまめ祭りが開催されています。道の駅村田において、そらまめの風味を生かした加工品の販売や豆のつかみどりを行いますので、ぜひ、お立ち寄りください。

JA全農みやぎより

 昨年3月11日の東日本大震災大津波により、本県園芸の主要地帯である仙台湾岸地域は甚大な被害を受け、主要な園芸品目の生産が大きく落ち込みました。
 しかし、全国の皆様からのあたたかいご支援をはじめ、国の補助事業の活用などにより、園芸施設の大規模団地計画が推進されるなど、産地の復旧・振興に向けて、農業者はじめ県、市町村、農協等関係機関が一体となって取り組んでおり、数年後には被災前の生産実績に回復することを目指しています。

お問い合わせ先

みやぎ仙南農業協同組合 西部営農センター 園芸販売指導課
〒989-0821 宮城県刈田郡蔵王町大字円田字白山前8
TEL:0224-22-7558 FAX:0224-33-2070

JA全農みやぎ 園芸部 生産販売課
〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町5-1-8
TEL:022-782-3350 FAX:022-782-3360

参考資料、写真提供:JA全農みやぎ

 
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