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(野菜情報 2012年5月号)

鳥取県鳥取市福部町、北栄町(らっきょう)

~シャリシャリした食感が魅力のらっきょうを生産~

JA鳥取いなば福部支店 次長 加武田 恵子
JA鳥取中央北栄営農センター販売課 課長 飯田 久範



 

1.産地概要

 鳥取県では、江戸時代かららっきょうの自家用の栽培があったと言われ、本格的に栽培が行われたのは、大正3年、浜本四方蔵氏が現在の福部町海士に50アールの砂丘畑で栽培に成功したのが最初とされます。大正6年には、らっきょうを中心とする産業組合が設立され、根切りしたらっきょうを塩漬け、たる詰めして関西へ出荷していました。
 現在、県の東部の鳥取砂丘で栽培される鳥取市福部町と、県の中部の北条砂丘で栽培される北栄町の生産が盛んで、県内生産のほとんどを占めています。ほかに、中部地区の湯梨浜町と西部地区のJA鳥取西部管内の米子市でも生産されています。
 鳥取市福部町は県の北東端に位置し、国立公園鳥取砂丘の東西16キロメートル、南北2キロメートルの東に位置する起伏豊かな丘陵の砂丘畑地帯で、日本海の荒風を受ける気象条件の中、「らっきょう」のみが栽培可能な作物として継続されてきました。現在、砂丘地の約113ヘクタールで栽培され、生産者数79人、生産量約 1,600トンの出荷を計画しています。品種は福部在来の「らくだ系」のみです。JA鳥取いなば管内の基幹品目となっています。
 北栄町は、県の中央に位置し、日本海側に面した砂丘地で栽培されています。かんがい施設の整備により砂地の特性を生かした栽培を行っています。JA鳥取中央管内の現在の生産者数は約340人、面積約86ヘクタール、生産量約1,400トンの出荷を計画しています。品種は、「ラクダ系」、「玉系」といった2つの品種で栽培を行っており、特に玉系の「玉らっきょう」は、鳥取県では中部地区しか栽培されておらず、小玉で高品質ならっきょうです。
 昨年は、各産地で生産面積の維持拡大、生産技術の向上を目的に掲げ、生産振興大会、生産者大会を開催しました。

■平成24年産生産計画(平成24年3月21日現在)
生産者数:420人
面積:202ヘクタール
出荷量:3,100トン(内訳 洗い:1,485トン 根付き:1,615トン)
 ※加工・直販含む

2. 栽培カレンダー

3. 生産・栽培上の特色

 鳥取県では、真夏の7月下旬から9月上旬にかけて種球を植つけ、翌年の5月下旬から6月中旬にかけて掘取り・収穫する作型で、植え付けから収穫までほぼ10ヵ月を要する、わが国で最も一般的な栽培法です。洗いらっきょう用は、分球が多い球数型の系統を選び、根付きらっきょう用は、分球の少ない球重型の系統を選んで植え付けます。種球の選定は採種ほ場を設けることを原則とし、施肥、種球選別を徹底し、病気の株は取り除き、ほ場に病原菌を持ち込まないことを徹底しています。種球は、掘りあげてから植え付けまで冷蔵庫で保管しています。植え付け機も一時開発されましたが、成果が上がらなかったため、今でも1球1球ていねいに手で植え付けています。真夏の炎天下の砂の温度は60度にもなり、腰を曲げての作業はかなりの重労働です。
 植え付けは手作業ですが、収穫作業は、葉を切り取るモア、集草機、掘り取り機、根付きらっきょうでは根切り機も導入が進んでいます。洗いらっきょう用の根きり機は、いまだに開発出来ていません。
 生産量を拡大するため、砂防林整備、スプリンクラーかん水施設を導入し、収量向上と品質の改善に大きく貢献しました。
 肥料農薬の使用にあたっては、栽培指針(基準)の遵守と栽培履歴書の記入、そして担当者によるチェックを厳しく行うことにより、安心・安全ならっきょうの生産に努めています。

植え付け作業(鳥取県東部)

掘り取り作業(鳥取県東部)

掘り取り作業(鳥取県中部)

根切り作業(鳥取県中部)

4. 出荷の工夫と販売戦略

 鳥取のらっきょうの出荷形態には、らっきょうを洗浄機で洗った状態で袋詰めで出荷し、簡単に漬ける事の出来る「洗いらっきょう」と、らっきょうを乾燥し、薄皮を取り除いた状態で出荷し、好みの大きさに切って漬けられる「根付きらっきょう」があります。「洗いらっきょう」、「根付きらっきょう」の2つの出荷形態で大量に安定的に出荷できる唯一の産地です。どちらも、通常は10キロダンボールで出荷していますが、販売先の要望に応えて、根付きらっきょうの5キロ箱、コンテナ出荷にも対応しています。
 品質面では、洗浄機、芽止機、選別機の改良を実施して、選別能力の向上による高品質品出荷を実現しています。また、完熟での出荷を基本として、生産者を対象とした出荷目合わせを実施して、出荷規格の徹底を図っています。
 販売は、大部分を卸売市場向けに出荷し、関東、中京、京阪神、中国、四国、北九州地区の市場に出荷しています。また、業務加工向けとして、JAのらっきょう加工所、県内の加工業者向けにも出荷し、甘酢らっきょうなどの製品にして、周年で全国に販売しています。
 消費拡大対策として、らっきょう漬け方講習会、店頭での試食宣伝販売を実施しています。らっきょう漬け方講習会は、失敗しない美味しいらっきょうの漬け方を知っていただくため、平成5年に福部町の生産者が始めたのが最初で、以来、産地が一体となって各地で開催しています。毎年、5月下旬から6月上旬のらっきょうの出荷シーズンに、生産者、JA職員、関係機関職員が協力して対応し、関東地区、中京地区、京阪神地区、山陽四国地区、北九州地区で、卸売市場と連携しながら約30会場で開催しています。生協の組合員様、量販店のバイヤー様及び来店者様、保育園・小学校・高校・大学などの教育機関、卸売市場内など多様な方々を対象に実施して好評をいただいています。店頭での試食宣伝販売は、より多くの消費者の方々にらっきょうの美味しさを知っていただくため、各地の量販店店頭で、産地で漬けた甘酢漬けを試食として宣伝販売を実施しています。実施の規模は京阪神地区を中心に毎年80店舗前後にのぼります。
 今後も、らっきょうの美味しさをより多くの方に伝えていくために、また消費の底辺拡大のため積極的に取り組んでいくことにしています。

漬け方講習会の様子

5. 生産者紹介

 7月下旬から9月上旬にかけて焼けるような暑さの中、1球ずつ手作業で植え付けを行っています。そして、冬には日本海から吹き付ける厳しい風雪に耐えてじっと春を待ち、白く引き締まったらっきょうになります。収穫も掘り上げたらっきょうを丁寧に切って出荷します。このように手間暇をかけて消費者の皆様へらっきょうをお届けしているため、「おいしかった」「また来年も漬けてみたい」といった声をいただくことが一番の喜びです。

一言アピール

 鳥取のらっきょうは、シャリシャリした食感が魅力です。この美味しさと食感を全国のより多くの皆様へ伝えるため、漬け方講習会、販売促進など産地一体となって取り組んでいます。毎年5月下旬には全国に出荷されますので、目に止まりましたら、ぜひ手に取っていただき、らっきょう漬けに挑戦してみてください。

問い合わせ先

JA鳥取いなば 福部支店 営農経済課
〒689-0102 鳥取市福部町細川603-1
TEL 0857-75-2231/FAX 0857-75-2006
JA鳥取中央 北栄営農センター 販売課
〒689-2224 鳥取県東伯郡北栄町妻波1725-2
TEL 0858-49-1147/FAX 0858-49-1018
JA全農とっとり 園芸部 野菜花き課
〒680-0932 鳥取市五反田町3
TEL 0857-32-8331/FAX 0857-31-2241

 
今月の野菜「らっきょう」 

今月の野菜
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