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(野菜情報 2012年4月号)
青森県野辺地町(こかぶ)

~夏季冷涼な気象特性を生かしたこかぶの産地拡大~

青森県農林水産部農産園芸課
野菜・畑作物振興グループ 技師 藤川 弘幸



 

1 産地の概要

(1)はじめに

 青森県は本州最北端に位置し、面積は全国第8位の9,607平方キロメートルと広く、豊かな自然に恵まれています。
 本県のカロリーベースによる食料自給率は 121パーセント(平成20年)となっており、例年110~120パーセントの高い水準となっています。また、品目別自給率では、りんごを主体とした果実をはじめ米、大豆(食用)、野菜、肉類、鶏卵、魚介類などが全国平均を上回り、食料供給県としてバランスのとれた農林水産業が展開されています。
 青森県のかぶ収穫量は 8,280トンと全国第3位を占めています。栽培の盛んな地域は、野辺地町を中心とした上北地域となっています。
 かぶには聖護院かぶ、天王寺かぶなどの大型のかぶ、日野菜かぶ、赤かぶなど主に漬け物に用いるかぶなど、大きさや用途によって多くの種類がありますが、青森県では「こかぶ」が主力となっています。

(2)野辺地町の自然概況

 青森県野辺地町は、青森県北部の下北半島の付け根に位置しており、県庁所在地の青森市までは車で1時間ほどの距離にあります。北はむつ湾に面し、南に八甲田連峰の山麓を背負い、東には緑豊かな丘陵が続いています。全体的に西高東低で、むつ湾からなだらかな平地が広がっています。河川は、奥羽山脈を源とする野辺地川が町の中心部を北に向かって流れ、枇杷野川、与田川、二本木川などの支流と合流してむつ湾に注いでいます。これらの川は、流域の農地のかんがい用水の役割を果たしています。
 この地域は、県内でも有数な豪雪地帯で冬は雪に覆われ、また、夏はオホーツク海高気圧からの冷気が東方海上から吹き込む季節風(偏東風=ヤマセ)の影響を受ける夏季冷涼な気候です。

(3)産地形成の歴史

 野辺地町は、ヤマセの影響により、夏季に低温・低日照となりやすい上、耕地面積も少ないことから、農業振興のためには収益性が高く、しかも女性や高齢者が生産に参画しやすい軽量野菜の取り組みが必要でした。そこで、野菜品目を模索し、昭和58年からこかぶ栽培の取り組みが始まりました。
 平成8年には、旧野辺地町農協にこかぶ部会が設立され、
 ・ 安全・安心で高品質なこかぶの長期安定出荷
 ・ 産地拡大に伴う労働力の確保
 ・ 産地間競争に打ち勝ち、ブランド化を図るための販売活動の強化
などの課題を明確化した上で、より安全・安心なイメージが得られる「葉つき」にこだわり、本格的な産地化に取り組みました。
 現在、ゆうき青森農業協同組合やさい振興会こかぶ部会で生産拡大に努めています。

2 生産・栽培上の特色

 商品力の強化策として、周辺地域に多い畜産農家で生産される完熟堆肥の投入や、緑肥による健康な土づくりと、被覆資材を活用した農薬節減を基本とした栽培基準を作成し、安全・安心な葉つきこかぶの生産を進めています。さらに、生産コストの低減と栽培技術の向上を図るため、定期的に現地指導や情報交換を行い、全国に誇れる品質の確保に日々努めた結果、みずみずしさあふれる高品質なこかぶ生産を実現しました。

3 出荷の工夫

 品質の低下を極力抑えるよう、収穫は気温の低い夜明け前から行われます。収穫後の品質保持のため、各農家では洗浄機によるスピーディな洗浄、調整作業が行われ出荷されます。農協では冷蔵施設や真空予冷施設を計画的に整備し、とれたてのおいしさを食卓に届ける取り組みが行われています。これら徹底した品質管理によって、市場では「夏場の品質日本一」と非常に高い評価を得て、他産地に比べ高い価格で取引されています。

図3 こかぶの箱詰め

4 販売戦略

 販売力の強化の面では、市場競争に打ち勝つために、中央卸売市場内や大手量販店の店頭で消費宣伝活動を行い、市場関係者や消費者にこかぶのおいしさを知ってもらう活動を展開しています。
 販路の拡大については、平成19年に、こかぶ包装機械を導入したことにより、遠隔地輸送の際の鮮度保持が可能になったほか、店頭でも扱いやすくなっています。また、消費者にさまざまなこかぶ料理を提案したり、地産地消の取り組みも進め、消費拡大を図っています。
 平成19年11月には、地域ブランド化推進の取り組みとして「偏東風と大地の恵み 野辺地葉つきこかぶ」が商標登録されたことから、野辺地町の特産品として更なるブランド化が期待されています。

図4 販売PR活動

5 これまでの成果と今後の展望

 これらの取り組みが実を結び、平成23年には8億円を超える販売額となっています。また、生産面積は、部会を設立した平成8年の33ヘクタールから平成23年には約3倍の100ヘクタールへと、大幅に拡大しています。
 今後は、夏場に向けた適性品種の検討、異常気象に対応できる安定生産技術の習得、競合産地の生産計画を視野に入れた販売計画の策定、価格低迷期における有利販売と消費宣伝活動、直販及び契約取引の拡大などに取り組み、生産面積と販売量の拡大を図っていくこととしています。

「ゆうき青森農業協同組合野菜振興会こかぶ部会」
  からのメッセージ

 葉つきこかぶは、葉がまるごとついてフルーツのような甘みと柔らかい食感が特徴で、なまでも食べることができます。品質と鮮度をなによりも重視するため、夜明け前の早朝から収穫しています。気温の低い朝方に収穫しその日のうちに出荷するため、葉もシャキシャキとした歯ざわりで、根から葉まで余すところなく食べられますので、ぜひご賞味ください。

問い合わせ先

青森県農林水産部農産園芸課
野菜・畑作物振興グループ
電話:017-734-9481 FAX:017-734-8141

 

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