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(野菜情報 2012年2月号)
石川県 金沢市農業協同組合(れんこん)

~れんこん産地(金沢地域)の紹介~

金沢市農業協同組合
営農経済部 園芸販売課 竹内 淳彦



 

はじめに

 石川県金沢市には「加賀野菜」と呼ばれる金沢市で生産された農作物があります。これは金沢市農産物ブランド協会が認定した15品目の野菜で、その1つが、今回紹介するJA金沢市蓮根部会が栽培している「加賀れんこん」です。

1. 産地概要

 金沢市で作付されている加賀れんこんの土壌は、一度ほ場に足を踏み入れると抜けないくらい粘りのある土壌が多く、さらに北陸の澄んだ水と多雨の気候風土で栽培されています。
 くわ掘りどろ付きで出荷されている加賀れんこんは、JA金沢市小坂支店管内(旧河北郡小坂村)で栽培されています。しかし、小坂地区は近年市街化が進み、栽培面積が減少し始めました。れんこんを栽培していた生産者は栽培面積を確保するため、河北潟干拓地でも栽培を始め、かんがい用水を利用した水掘りでの収穫を行っています。このように、現在では小坂地区を中心に、森本地区や薬師谷地区ではくわ掘り、河北潟干拓地では水掘りで加賀れんこんの生産及び収穫を行っています。
 加賀れんこんは、約300年前、加賀藩五代藩主・前田綱紀が参勤交代時に美濃から持ち帰った苗を金沢城内に植えたのが始まりと伝えられ、「ハスノ根」として上層武士間で薬用に供されていたといわれています。その後、金沢市大樋町一帯(小坂地区)で栽培されるようになり、「大樋蓮根」と呼ばれるようになりました。
 明治20年代になると、ようやくれんこんの商品性が注目されはじめ、「小坂蓮根」と呼ばれるようになり、食用として栽培されるようになりました。
 その後、全国的にも知名度がある加賀藩の名にちなんで「加賀れんこん」と呼ぶようになりました。
 このように歴史ある金沢の伝統野菜、「加賀野菜の加賀れんこん」を栽培しており、くわ掘り、水掘り両方で出荷を行っているのが「蓮根部会」です。
 現在、蓮根部会は50人の生産者で構成されており、くわ掘り、水掘り合わせて34.4ヘクタールの面積で栽培し、252トン(H22年産実績)の生産量があります。
 若い生産者も増えてきており、部会全体が活気づいています。

2. 産地栽培カレンダー

3.生産・栽培上の特徴

 れんこんは、富農本岡三千治・太吉父子、精農表与兵衛らによって新品種の導入に力を注がれ、明治30年代は「青葉種」、明治40年代は「枯知らず」、「赤蓮種」などが導入されました。
 大正に入ると「白蓮種」、「南京種」、「赤蓮種」などがあり、大正中期、れんこんの生産拡大に功績のあった本岡大吉氏によって加賀蓮根と命名され市場へ出荷されました。
 昭和30年代の主な品種としては、「備中種」、「支那蓮種」、「上総種」などがありました。
 これまでさまざまな品種が導入され改良が加えられてきており、昭和40年代中頃、支那蓮種から選抜育成したものが、現在の品種「支那白花」です。
 れんこんは、赤ワインなどで健康ブームの火付け役となったポリフェノールを豊富に含有しており、また、野菜の中では春菊に次ぐ含有量を誇り、生活習慣病を予防する健康野菜として多くの注目を集めています。
 加賀れんこんの1番の特徴は、強いねばりです。他のれんこんでも切ったときに糸を引きますが、加賀れんこんはより一層きめが細かいです。また、でんぷん質が多くもっちりした食感とシャキッとした歯ざわりを特長とし、他の産地にはない食味があります。全体的に小ぶりですが、肉厚で穴も小さいため、食べ応えもあります。
 出荷開始当初である8月下旬の加賀れんこんは、「あく」が少ないため、刺身でも食べられます。9月以降は、でんぷんが蓄積されるとともに「あく」が出てくるので、火を通して使います。使う場所によって用途が違い、根元は硬めなのできんぴらなどの炒め物に、真ん中から先端は煮物やれんこん汁、金沢の伝統料理はす蒸しなどすりおろして使う料理に適します。
 栽培方法は、適地適作が基本です。同じれんこんでも生産者によってこだわりがあり、土作りのために基肥や追肥に有機物、有機質資材を施用している生産者もいます。
 水掘りは収穫しやすく、若手でも取り組みやすいですが、収穫時にエンジンポンプを使用するため、水がれんこん自体に当たりすぎると黒く変色してしまいます。
 くわ掘りのほ場においては、ほ場が乾くと雑菌が入りやすくなったり雑草が生えるので、完全に乾かすのではなく、水を入れたり抜いたりして管理し、保水することが大変重要になってきます。
 8月上旬頃から翌年5月下旬頃まで、約10ヵ月の長期にわたり出荷が出来ます。

4. 出荷の工夫

 蓮根部会では秀2L・L・M・S・2S・3S、優2L・L・M・S・2S・3S、外秀・優・良の計15の規格に仕分け、ダンボールに箱詰めし、各生産者が集荷場に持っていきます。持ち込まれたれんこんはJA職員と生産者が確認し、疑わしい品物は等級を落とすなど、規格の徹底に努めています。
 生産者によって異なりますが、家族で栽培、収穫、出荷を行っている農家が多く、水掘り農家ではアルバイトやパートを雇い、収穫や格付け箱詰めをしています。
 れんこんというと肉体的にきつい作業ですが、調整や格付け箱詰めは、女性の方が多く従事しています。

5. 販売戦略

 金沢の伝統的野菜で、加賀野菜の1品目、加賀れんこんという地域団体商標も取得し、ブランドを生かした新鮮なれんこんとして、地元市場をはじめ、関東圏や関西圏などの県外へも出荷しています。加賀れんこんブランドを汚さないために、加賀れんこんの特徴である「ねばり」を無くさないよう、肥培管理を日々研究し、生産者同士で話し合って部会全体で創意工夫をしています。
 安全性の面でも、栽培指針の厳守、GAPや栽培日誌の徹底のほか、荷受時には生産者とJAが一緒になって製品チェックを行っています。皆の目で見ることで、意思統一を図ることや注意喚起にもつながり、問題発生の予防に努めています。
 8月上旬頃から翌年5月下旬頃までの10ヵ月間という長い出荷期間であるため、部会、市場、JAが連携を密に行い、市場への出荷を途切らせないようにしています。注文に対し確実に出荷できるよう、注文情報を早く伝達し、早めに収穫するなどして、安定供給を図っています。
 また、定期的にスーパーなどに出向き、販売促進活動も行っており、消費者の方々に「加賀れんこんとはこういうモノだよ」「こういう食べ方があるんだよ」ということをアピールしています。

6. 生産者紹介

 化成肥料をなるべく使わずに、有機肥料を中心とした肥培管理をおこなうことで、加賀れんこんの特徴であるねばりを損なわない努力をしています。化成肥料を使うと肥培管理は簡単になるのですが、有機肥料を使い、手をかけ、丹精込めて栽培することで、れんこんもそれに応えてくれるので、ねばりのある良いれんこんになります。
 伝統ある野菜なので、今もそうですが、これから先も加賀れんこんのブランドが廃れないよう、より全国の皆様に加賀れんこんを知ってもらい、美味しさを知ってもらえるよう、蓮根部会全体で加賀れんこんの栽培に尽力しています。

一言アピール

もっちり、シャキッ!!の加賀れんこんを是非食べてみて下さい。

お問い合わせ先

担当部署:JA金沢市 営農経済部 園芸販売課
住  所:石川県金沢市松寺町未59-1
T E L:076-237-3945
F A X:076-237-0015

 
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