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徳島県 里浦農業協同組合(かんしょ)

~色鮮やかななると金時「里むすめ」を栽培~

調査情報部



 

1.産地の概要

 徳島県は、鳴門海峡、旧吉野川、吉野川流域の砂地で栽培されている‘かんしょ’を‘なると金時’として商標指定しています。このうち里浦農業協同組合(以下「JA里浦」という)は、徳島県鳴門市の東南部にある旧吉野川デルタに開けた海抜ゼロメートルの海浜地帯に位置しており、栽培されている‘なると金時’は、「里むすめ」というブランド名で商標登録されています。

 同JA管内の畑の土質は海砂で、水分が少なく米や野菜作りには適さない土地ですが、栽培可能な作物として干ばつに強い‘かんしょ’の生産を開始しました。しかし、水はけが良くミネラルを豊富に含んだ砂地での‘かんしょ’栽培は、ほどよい甘さを育み、そのやわらかい砂は、鮮やかな皮色と美しい紡錘形の外観を作り上げています。かんしょ以外にもだいこんの栽培も盛んで、同じブランド名を使用して出荷しています。

 平成19年に設立されたJA里浦「里むすめ」里浦生産者部会は、生産者約270戸、栽培面積330ヘクタール、同JA管内の系統出荷率は95パーセントとなっており、地域の主要産業となっています。

2.栽培カレンダー

 「里むすめ」の作型は、1年を通して‘かんしょ’を栽培する作型と‘かんしょ’の裏作で‘だいこん’を栽培する作型の2つに分類できます。‘かんしょ’の裏作で‘だいこん’を栽培する場合は、8月中に‘かんしょ’の収穫を終えてだいこんのは種を行います。現在は、約120戸の生産者がこの作型で‘だいこん’を栽培していますが、近年、ほ場が集約されたため、以前に比べて生産者は減少しています。

図1 「里むすめ」の作型

3.「里むすめ」のブランド化

 昭和56年に高系14号を系統選抜して誕生した品種である‘なると金時’は、鳴門市全域で栽培されていますが、JA里浦管内で栽培された‘かんしょ’は、特に市場の評価が高く高値で取引されていました。‘なると金時’の評価が高くなるにしたがって、近隣市町村でも‘なると金時’の栽培面積は拡大しました。しかし、ほかの市町村が水田や畑作を行っていた土壌で栽培していることや栽培管理方法に大きな違いがあったことで、JA里浦以外の‘なると金時’と比べて品質や味に対して自信を持ってた生産者の声を背景に、同JAでは、平成10年に「里むすめ」の商標登録し、平成19年にはJA里浦「里むすめ」里浦生産者部会を設立しました。同部会員が栽培し、かつJA出荷した‘なると金時’であること、長年培ってきた栽培管理体系を取り入れて出荷されたものであることを条件として、「里むすめ」という商標を使用できることとし、ほかの産地との差別化を図りました。

 また、「里むすめ」というブランド名はJA里浦の‘だいこん’にも使用しており、産地商品として「里むすめ」ブランドを展開しています。

里浦産のなると金時「里むすめ」

4.‘かんしょ’「里むすめ」栽培の特徴

①種イモの選抜とウイルスフリー苗の導入

 より優秀な品種へ改良するために、長年にわたって全農家から優秀なイモを数個出してもらい、その中からさらに選抜を行い優れた品種へと改良してきました。昭和63年からは、種イモの成長点培養を行うことで、ウイルスフリー苗を各農家に供給できる体制が整備され、病気に強く、品質の良いものを生産しています。また、この苗は、各農家に設置されたビニールハウスで育苗された後、定植されます。

ビニールハウスでの育苗風景

苗の定植風景

②病害虫対策

 JA里浦では、営農指導員が各ほ場を巡回し、病害虫の発生状況を見極めています。その後、生産者に対して一斉防除の通知をして防除を実施しています。それぞれのほ場でバラバラに防除を行うと、害虫は近隣のほ場へ逃げてしまうため、結果として防除の回数が増えてしまいます。農薬の使用量を減らすため、農薬の種類、散布時期、使用方法を厳密に定めています。特に収穫前のほ場では、1メートル以上の棒に黄色のワナをつけたものを当該ほ場に2か所以上設置することで、隣接するほ場の生産者に対して注意喚起しています。また、収穫前の農薬散布は、標準的に定められている散布基準日より3日前を目安として使用しています。このことでより安心・安全な農産物を出荷できる体制を作っています。

 さらに同JA青年部の取り組みとして、‘かんしょ’の病害虫であるハスモントヨウの駆除を薬剤散布に頼らず、性フェロモントラップを導入するなど農薬を使用せずに病害虫を駆除する方法を取り入れています。

ほ場での一斉防除

性フェロモントラップ

 農薬散布の状況は、ほ場ごとに生産履歴を記載しており、出荷時には必ずほ場名を記入することで、問題の起きた時に追跡可能なトレーサビリティの体制を整えています。この体制が整備できていることで、自信を持って安全・安心な農産物を出荷しています。

③手入れ砂の客土

 ‘かんしょ’の品質を維持するために‘手入れ砂’と呼ばれる海砂を定期的に入れています。これにより、海水に含まれるミネラルの影響で粉質のホクホクした特徴を維持しています。

 しかし、徳島県の海域では、海岸保護などの観点から昭和53年に海砂の採取が禁止され、手入れ砂の代替素材の開発が課題となっています。現在は、吉野川中流域の砂で代替し、これにミネラル分を補充できる資材を加えて使用しています。

 また、過去に洪水などによりほ場が海水に浸ってしまった年の翌年に豊作であった経験から、海水をほ場に散布する取組を始め、収量が増加し、食味が向上するなどといった成果を上げています。

堤防に囲まれた‘かんしょ’のほ場

海砂で栽培されている‘かんしょ’

④‘かんしょ’の貯蔵

 9~10月にかけて収穫された‘かんしょ’は、貯蔵庫に保管され、1年を通して出荷されます。これを可能にしたのは、昭和41年に導入された電力貯蔵庫です。それまでは、縦穴式貯蔵庫を使用していましたが、電力貯蔵庫は急速に普及し、現在はJA里浦管内の全農家に設置されています。

 電力貯蔵庫は、24時間温度管理が可能なシステムで‘かんしょ’の保存に適切な温度である13~15度に保つことができます。また、湿度の管理も可能なため‘かんしょ’の品質を落とさずに長期間貯蔵することができ、周年出荷を実現しています。

‘かんしょ’の貯蔵庫への搬入

‘かんしょ’の保管されている貯蔵庫

5.出荷の工夫

 「里むすめ」の出荷規格は、4L~2Sまで7段階に分かれています。選別はそれぞれ生産者が行っており、このような細かい規格に対応するには長年の経験が必要となります。
 一般的には‘かんしょ’は、青果用のほかでん粉原料や焼酎原料などに使用されているものも多くありますが、JA里浦管内で生産された‘かんしょ’は、主に青果用として卸売市場へ出荷しています。以前は、自家消費が多かったS品以下のサイズもビニール袋入り商品の規格を作ったことで、売上全体の約6分の1を占める主力商品の一つとなっています。
 同JAでは、関西向けは個販、関東向けは共販を中心としていますが、どの市場に出荷するかは生産者の判断に任せており、集荷場に掲げられている各市場の看板の下へ出荷物を置くことで、それぞれが希望する市場へ出荷される仕組みとなっています。
 同JAでは、‘かんしょ’の系統出荷率は約95パーセントですが、残り5パーセントは、ほとんどが規格外品で地元の加工業者などへ出荷されているものです。規格品だけ見ると系統出荷率は、ほぼ100パーセントとなっています。

‘かんしょ’の出荷

6.消費拡大の取り組み

 毎年10~2月にかけて、京浜、京阪神の量販店で試食販売を行っています。これまでJA里浦女性部では、100を超える‘かんしょ’料理のレシピを作成し、消費拡大に努めてきました。また、近年は食育推進を目的として、地元、里浦町の小学校を始め、京都、東京の小学校で栽培学習会を行い、作物を育てる喜びを感じてもらう取組をしています。また、収穫祭では、‘かんしょ’を使用したクッキング教室を開催し子どもたちが調理したかんしょ料理を食べてもらうことで、‘かんしょ’の魅力を感じてもらっています。

 一言アピール

 色鮮やかな「里むすめ」は、ミネラル豊富でホクホクした食感が味わえる‘なると金時’のトップブランドです。「里むすめ」を、ぜひ、ご賞味ください。

◆ 問合せ先

里浦農業協同組合
住所:〒772-0021 徳島県鳴門市里浦町里浦字花面233番地1
TEL:088-685-2111 FAX:088-685-0779
ホームページ:http://www.jasatoura.com/

参考資料・写真提供:JA里浦

 

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