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岡山県 瀬戸内市牛窓地区(はくさい)

~瀬戸内の冬場温暖な気候を生かして産地を形成~

岡山県農林水産部 農産課 主任 伊藤 啓泰



 1 産地の概要

(1)地域の自然条件

 岡山県備前地域(岡山市、瀬戸内市、赤磐市、吉備中央町)のはくさいは、瀬戸内の温暖・多照という自然条件を生かし、地域の基幹作物として古くから傾斜面を利用した棚田や段々畑で栽培されています。
 特に、岡山県の東南部に位置する瀬戸内市牛窓地区は、瀬戸内海に面し、年間の平均気温14.7度、降水量1,093ミリ、日照時間1,842時間で降雪はほとんどなく、冬期は温暖で日照時間が長く野菜栽培に適した地域であることから、県内でも最も古くから野菜産地が形成され発展してきました。
 現在では、はくさい、キャベツをはじめ、約16品目の野菜を生産・出荷し、年間約10億円以上の売上高を誇る県下有数の露地野菜産地です。

(2)産地形成の歴史

 牛窓はくさいの産地としての歴史は古く、昭和41年の野菜価格安定制度創設時にはすでに産地ができていたため、制度の創設の翌年には事業に加入し、本格的に栽培に取り組み始めました。
 また、小区画の棚田や傾斜のある段々畑が多く、作業性が悪いうえに、河川がないので用水にも不自由していたことから、ほ場整備や畑地かんがい施設、農道整備などの基盤整備が進められた結果、生産安定が図られ栽培面積の拡大に拍車がかかりました。
 併せて産地のブランド化に向けて、独自の栽培ほ場検査の実施や出荷規格の厳守により、京阪神や中国地区の市場ではトップクラスの評価を受けるまでになりました。

(3)面積、生産量

 はくさいは、岡山県産野菜の中で生産量が第1位の品目です。また、販売金額もなす、トマトに次いで第3位で、岡山県野菜生産の中心的な品目となっており、そのうち約70パーセントが牛窓地区で生産されています。
 作型は、春はくさい、秋冬はくさいの2つの作型がありますが、秋冬はくさいを中心(約90パーセント)に生産しています。秋冬はくさいは8月下旬~9月上旬にかけて「は種」を行い、9月中旬~10月上旬の間に「定植」します。「収穫」は10月下旬から3月中旬にかけて行われます。春はくさいは、12月上旬~2月上旬に「は種」を行い、2月上旬~3月上旬に「定植」し、寒さから守るためにビニールシートでトンネンル被覆を行います。収穫は3月中旬~5月下旬にかけて行われます。

○岡山県のはくさい栽培面積および生産量の推移

                        (単位:ヘクタール、トン)

○備前地域のはくさい栽培面積(平成20年度実績)

                    (単位:ヘクタール)

2 産地栽培カレンダー


産地独自のほ場検査(収穫時)

 3 生産・栽培上の特色

(1)主な栽培品種

 主な品種は、「黄ごころ65」「黄ごころ85」です。秀品率が高く、栽培性や品質、食味が高く評価されており、 球揃いが良く、球内の鮮やかな黄色が特徴です。
 秋冬はくさいの主要品種はどの産地も「黄ごころ85」ですが、牛窓地区では、ほかの産地に先駆けて平成18年から新品種の導入に踏み切りました。導入した品種は「晴黄(はれぎ)85」で、べと病に強く、肉厚でうまみ、甘みがあり食味に優れた品種です。

(2)栽培における取り組み

① 安全・安心な野菜づくり(機械化・省力化・栽培技術)
 安全・安心なはくさいの栽培に向けて、フェロモン剤の利用などによる減農薬栽培の取り組みや「栽培管理台帳」の記帳による生産管理履歴(トレーサビリティー)の徹底を図っています。また、肥料についても、土壌調査の実施による土づくりの推進により、適正な施肥管理に努めています。

② 機械化による省力栽培および労働力の確保
 はくさいは栽培に多大な時間を要します。また、生産者の高齢化が進んでいることから、機械導入による省力化や新たな労働力の確保が求められています。そこで、は種から定植までの機械化を進めたり、パート・アルバイトなどの補助作業員の確保により作業負担の軽減を図っています。

 4 出荷の工夫(販売戦略)

 産地のブランド化を進めるため、平成18年から需要期に出荷されるはくさいのうち一 定品質以上のものに限り「冬黄(とうき)白菜」として販売を行っています。先述した とおり、現在、秋冬はくさいの主要品種はどこの産地も「黄ごころ85」のため、販売の 差別化があまりできていない状況にあります。差別化を図るために導入した品種「晴黄 85」の中でも特に、尻張り、胸張りが良く、外葉が緑のものだけを「冬黄白菜」として 販売しています。「晴黄85」のうち、このブランド名で出荷できる割合は、全体の約30 パーセント程度です。 
 産地のPRとしては、牛窓産野菜の出荷箱のデザインをすべて白黒の牛柄模様にした ことで、市場関係者や流通業者の話題を呼んでいます。また、昨年は丑年であったこと から、干支にちなんで、牛窓神社で牛窓はくさいの豊作を祈願する「牛窓白菜祈願祭」 を開催しました。
 地域が一丸となってブランド化に取り組んだ結果、平成21年度においては、3億円の 販売額が達成され、今後、全国ブランドとしての生産活動が一層期待されています。

 

白黒模様の出荷箱と牛窓牛男・牛江夫妻

牛窓白菜祈願祭(境内にて祈祷中)

一言アピール

 岡山県は「マスカット」、「ピオーネ」、「オーロラブラック」などのぶどうや「清水白桃」、「おかやま夢白桃」など、高品質な果物生産が盛んな県ですが、野菜のブランド化にも力を入れております。中でも備前地域の牛窓はくさいは肉厚でうまみ、甘味があり、食味に優れた岡山県一押しのブランド野菜です。市場の評価も高く、確かな手応えを追い風に作付面積の拡大を進めて行く予定です。

お問い合わせ先

岡山県農林水産部農産課 園芸振興班
電話番号:086-226-7425
FAX :086-224-1278

  今月の野菜「はくさい」 

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