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  山形県 北村山地域(すいか)

~豪雪地帯の真夏のすいか、甘さとシャリ感で勝負~

山形県農林水産部 生産技術課 技術調整専門員 大嶋 博之



1 産地の概要

(1)地域の自然条件

 山形県のすいか産地は、山形県の北東部にあたる北村山地域(村山市、尾花沢市、大石田町)にほぼ集中しています。この地域は、奥羽山脈と出羽丘陵で形成された盆地となっており、土壌は、すいか栽培に最適とされる火山灰土(黒ボク土壌)におおわれています。
 気候条件は年平均気温10.5度、年間降雪量1,710ミリ、積雪日数120日で、夏季は気温の昼夜格差が大きく、梅雨時期の降水量は比較的少ないのに対し、冬季は県内でも有数の豪雪地帯となっています。山形県は、国内有数の果樹産地で、さくらんぼや西洋なしなど、特産果樹に恵まれていますが、北村山地域の大半を占める尾花沢盆地は、冬期間の積雪の影響などもあり、果樹の生産が少ないのが特徴です。

(2)産地形成の歴史

 「尾花沢すいか」は、全国的にみれば比較的新しい産地と見られていますが、山形県内では、すいかといえば「尾花沢すいか」を指すほど有名な産地です。
 本地域でのすいか栽培は、昭和28年頃に尾花沢市の開拓農家が仙台市場に向けて栽培したのが始まりといわれています。その後、尾花沢農業改良普及所・農協などの支援を受けながら、地域で適正品種の選定やマルチ栽培など技術開発に努めた結果、食味のよい「尾花沢すいか」が評判になり、近隣に広がりました。
 本地域のすいかは、昭和60年代頃までは、地域毎に「花笠西瓜」や「べにばな西瓜」などのブランドで販売されてきましたが、現在は「尾花沢すいか」の統一ブランドで販売されています。
 東京都中央卸売市場における山形県産すいかのシェアは、年間トータルでは3位ですが、真夏の8月期のすいかとしては一位となっており、量、価格とも日本を代表する産地となっています。

(3)面積、生産量

 本県のすいかの作付面積は、平成20年現在で約926ヘクタールですが、この大部分が当該地域での作付となっています。しかし、この地域でも平成10年を境に、作付面積が減少に転じたため、「尾花沢すいか」の産地では、産地の存続について強い危機意識が生まれ、地域一丸となった取り組みが始まりました。ここ数年は、経営面積を拡大したり、新たにすいか栽培に参入する若者なども増えて、年々活力が高まってきています。

山形県におけるすいか作付面積、生産量の推移

2 産地栽培カレンダー

整地したほ場

大変な管理作業

3 生産・栽培上の特色

(1)主な栽培品種

 「尾花沢すいか」といえば、県内では以前から良食味すいかの代名詞となっており、消費者の期待を裏切ることがないように、食味を重視した品種選定を行ってきました。
 すいかの品種はたくさんありますが、現在、JAみちのく村山で出荷している品種は「祭ばやし777」、「富士光」が主で、生産する土地や出荷する時期に合わせて、最適なものを選んで栽培しています。

(2)栽培における取り組み(機械化や省力化、栽培技術)

 すいか栽培は少ない人数で大面積を管理しなくてはならないため、機械化や省力化が進んでいますが、その一方で、整枝や交配、収穫など、人手を使わなければうまく行かない作業もまだ多く残っています。本地域では、良食味のすいかを作るため、これまでのこだわりの技術に加えて、現在もさまざまな省力管理などが検討されています。
① 秋マルチ栽培
 県内でも有数の積雪地帯であることから、春になってから耕起し、マルチ張りを行おうとすると、作業期間が確保できず地温も上がりません。このため、積雪前の秋のうちに、翌年の施肥、耕起、ベッドのマルチ張りまで行う秋マルチの技術を産地独自で開発し、全体に普及しています。
② ほ場管理技術の改善
 すいか栽培には排水対策が不可欠であるため、生育ステージに合わせ、段階的にほぼ全面マルチに近いほ場管理を行っています。広大なすいか畑を整地するのは大変な労力が必要です。これに対応して、畝の傾斜付けや排水溝を一作業で成形できる特殊なトラクターアタッチメントを地元の業者と共に開発し、現在普及が進んでいます。
③ 整枝誘引方法の改善
 着果が安定するつる引き栽培は、複雑に絡み合ったつるを整理・誘引するため、長年の勘と経験を必要とします。近年では、つる引きの回数を減らし、着果位置にトンネルを移動させる「移動トンネル栽培」が増加してきました。また、県園芸試験場では、通常のつる引き栽培を定型化して、だれでもできるように改善した「省力つる引き栽培」の開発に取り組み、実用化が進んでいます。

(3)ほ場管理(土つくりや減農薬)

 すいか栽培は長年連作を余儀なくされることから、土作りには地域を上げて全力で取り組んでいます。

① 管内は畜産(肥育牛)が盛んであり、土作りのためそこから生産される完熟たい肥を定期的に施用しています。

② 化学肥料の施用を低減するため、いち早くベット内施肥に取り組んだほか、緩効性肥料の活用や、局所施肥など、さまざまな施肥改善に取り組んでいます。

すいかの雌花

収穫間近の尾花沢すいか

4 出荷の工夫

(1)2カ所の共同選果場(西部、東部)

① 徹底した品質管理
 平成14年にJAみちのく村山では、音波(打音)による空洞センサー、画像処理による果形センサー、近赤外線による糖度センサーを備えた共同選果場を整備しています。また、こうした機械に頼るだけでなく、庭先での自己選別や、選果場直前での検査員による糖度チェックや目視による品質検査を徹底するなど、厳しい品質管理を行っています。
② トレーサビリティと生産者表示ラベル
 選果場では、箱詰めの段階で、果実一つ一つに生産者を特定できるラベルが貼られます。生産者は、使用した農薬、肥料、生産の工程を農協に報告することが義務づけられていますので、このラベルには、生産情報の全てが集約されており、安全・安心の証しとなるものです。

(2)出荷期間の拡大

 積雪寒冷地における露地産地という制約の中で、少しでも出荷期間を拡大し、平準化するため、栽培方法や作付地域による定植時期の分散化を進めています。近年は8月中旬以降の出荷も一定量求められていることから、遅出しに向けた取り組みも徐々に増加しています。

(3)新たなすいかビジネスの創造

 本来のすいかのうまさを追求し、さらなるブランドの確立を図るとともに、規格外品などの有効活用による新たな需要創出を進めています。

出荷風景JAみちのく村山東部選果施設

すいか出荷風景(西部選果施設)

【商品開発例】

〈飲料など〉

すいかアイスクリーム、すいかソフトクリーム、すいかリキュール、すいかの種茶

〈すいか糖、菓子など〉

高品質すいか糖(尾花沢すいか糖、尾花沢健康すいか糖)、すいかジャム、すいかのかりんとう、すいかのチーズケーキ、すいか糖プリン など

〈漬物〉

すいかの漬物(摘果した果実の利用)

すいかグッズ

キャラクターもとなりくん

5 産地の取組み

 地域を代表する品目として、この地域のすいかによせる思いは特別なものがあります。県内では夏の風物詩として「尾花沢すいか」は欠かせないものとなっています。
 すいか生産の適地であり、栽培経験も豊富な産地ですが、試験研究機関などとの連携を図りながら、さらなる栽培改善などに取り組んでいるほか、年1回、生産者と関係機関が一堂に会して、「日本一の夏すいか」研究大会を開催し、直面する産地課題などについて研鑽を深めています。
 平成20年にはすいか産地を今後いっそう発展させるために、生産者や関係機関が一体となって「尾花沢すいか」パワーアッププランを策定し、現在も産地強化に取り組んでいます。

日本一の夏すいか研究大会

一言アピール

 近年、食の豊かさで注目されている山形県で、すいかと言えば「尾花沢すいか」です。
 安定した糖度と絶妙なシャリ感は、一口食べると納得のうまさです。
 すいかなんてみんな同じと思っているあなた!絶対後悔させません。
 一度、山形の「尾花沢すいか」を味わってみてください。

お問い合せ先

山形県農林水産部生産技術課 技術調整担当
電話番号:023-630-2444
       山形県村山総合支庁北村山農業技術普及課
電話番号:0237-47-8638

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