幕別町農業協同組合 管理部 企画課 課長 下山 一志
幕別町は、北海道十勝平野の中央部よりやや南に位置し、冬は寒く、夏は適度に高温となり農作物の栽培に適した地域です。全耕地面積11,100ヘクタールのうち、7,236ヘクタールを小麦、ばれいしょ、豆類、てん菜の4品目が占める畑作地帯です。また、レタス、キャベツ、はくさい、ながいも、だいこん、にんじん、たまねぎなどの野菜生産も盛んに行われ、今では農畜産物の総取扱高の約27パーセントを野菜が占めるまでになりました。
その中でレタスは、現在、幕別町農業協同組合(以下、「JA幕別町」)そ菜事業部会レタス委員会(以下、「レタス委員会」)の会員27戸により78ヘクタール(1戸平均2.9ヘクタール、1戸最大4.6ヘクタール)に作付されており、道内最大のレタス産地を形成しています。
レタスの品種選定に当たっては、栽培の時期に応じた品種試験などにより、生育の早晩、異常球の多少、低温時の生育耐病性などを考慮して選定しています。
早期出荷ものの栽培には、マルチや被覆資材を使用しますが、多くの作型は露地栽培となります。また、夏場に収穫する作型では、肥料の投入量を減らし、ほ場が栄養過多とならないように必要以上の硝酸態窒素の投入を行わないようにしています。
生育日数や球肥大の早さは、気象条件や土壌条件などの栽培環境によってかなり変動しますが、JA幕別町では150日間の出荷計画に基づくは種計画を立て、JA幕別町野菜育苗センターにおいて、毎日は種作業が行われます。その作型は、多い生産者で40回となっており、ほぼ3日毎に定植作業を行うこととなります。
JA幕別町レタス栽培カレンダー(露地栽培)
JA幕別町の育苗センター
JA幕別町管内におけるレタスの栽培は、十勝川と猿別川に囲まれた肥よくな沖積土地帯を中心に行われています。同地帯はもともと地力があるため、化学肥料の使用量は少なくて済みます。また、十勝地方は、夏でも30度を超える日は少なく、夜温も15度程度まで下がる日が多いことから病虫害の発生は少なく、野菜栽培には適した地域といえます。
栽培方法も10アール当たり5,500~6,000株と、風通しをよくするため株間を広くとって植え付けを行うなど、レタスがのびのびと生育する環境を整えています。
十勝地方には梅雨はありませんが、それでも雨の続く日がありますので、排水性を良くするため20センチの高畝で栽培し、過湿による病害を防ぎ、必要以上の農薬散布を行わないように努めています。また、輪作体系をとっていることから土壌消毒は一切行わず、農薬の散布回数も少なく、病害の発生はほとんど見られません。輪作体系は4年輪作を基本に小麦、てん菜、豆類などの作物とのローテーションにより計画的に行っており、ほ場にたい肥を投入し地力の維持・増進を図るなど、土づくりにも力を入れています。
「苗半作」という言葉があるように、作柄を良くするには健苗の育成が重要となりますが、作型が多いため、以前は生産者の育苗管理も重労働でした。しかし、平成9年からセル成型苗の共同育苗施設(JA野菜育苗センター)が稼働したことにより、生産者はほ場管理に専念できるようになりました。このような環境の中で、幕別産レタスは「甘み」と「シャキシャキ感」たっぷりに育ちます。
生育途中のレタスのほ場の様子
レタス委員会では、品質と鮮度を維持するため、健康なレタスを育てる土づくりに力を入れるとともに、畑の通気性を高め、病気の発生を防いでいます。
収穫は、気温の低い早朝に行い、収穫後は速やかにJAの野菜センターに搬入し、一度急速に冷蔵しレタスの芯まで冷やした後、冷蔵庫で一晩かけて鮮度を安定させ、2日目に出荷します。
このように、消費者に安定した品質による確かなものをお届けするため、産地では各工程において品質の向上を目指しています。
レタスの収穫の様子
JA幕別町野菜センター
出荷期間の6月から10月までの間、十勝管内のスーパーマーケットの店頭には、地元の消費者にとってお馴染みの幕別産レタスが並びます。地元での評価を第一に考えて出荷した結果、そのシェアは9割以上を占めるようになりました。
(レタスの生産拡大のきっかけ)
JA幕別町で野菜が導入されたきっかけとなったのは、平成5 年12月のガット(GATT:General Agreement on Tariffsand Tradeの略で関税および貿易に関する一般協定)のウルグアイ・ラウンド交渉の合意により畑作所得の減少が見込まれたことにあります。畑作所得の減少を補うため、北海道を代表する野菜の産地化を目指し、集出荷選別貯蔵施設を整備するなどして、レタス、だいこん、キャベツなどの作付が徐々に拡大していきました。
特にレタスは寒暖の差のある幕別町の気候に適しており、作付面積も順調に拡大し、幕別町を代表する産品として期待されるようになりました。
野菜生産が拡大する中で、レタスを中心とする野菜の新たな販路の開拓として、沖縄県への出荷に挑戦することとなりました。
水分量が多くて傷みやすいレタスは、北海道から沖縄県への出荷は無理だと言われていました。それでも沖縄県までの鮮度保持が可能であれば、全国どこへでも問題なく出荷できるとの考えから、沖縄県へのレタスの輸送試験に取り組みました。
(レタスの輸送試験)
輸送先は、沖縄県下を中心に小売業、外食産業、ホテル業などを営む株式会社サンエーのスーパーマーケット(以下、「サンエー」)に決まり、手始めにキャベツ、だいこんの輸送実績を重ねた上で、レタスの試験輸送に取り組みました。
最初は、10ケースを冷蔵トレーラーに積み込み、陸路、海路を合わせて6日間をかけて輸送しました。沖縄県のサンエーに到着し、レタスの品質を確認した同社担当者から「鮮度が全く落ちていない」との連絡を受け、再度同様な輸送試験を繰り返し問題がないことを確認した後、徐々に数量を増やし、また、輸送条件も変えるなどして、輸送試験において産地としてできる努力はすべてやり尽くした結果、沖縄県へのレタスの出荷は可能であるとの結論に達し、平成12年から幕別産レタスの沖縄県への本格的な出荷が始まりました。
(取引の実績)
レタスを中心とした沖縄県への野菜の出荷額は、取引開始当初は年間2千万円程度でしたが、今ではおよそ2億円まで伸びました。
家庭では、これまでチャンプルーなど炒め物中心であった食卓にサラダとしてレタスがのぼるようになり、そのことについてサンエーの社長は「幕別町のレタスが沖縄県の食生活を変えた」という言葉を幕別町のレタスの生産者に送りました。
レタス委員会の生産者は、実際に販売先の現場を訪れ、店頭にズラリと並んだ幕別産の野菜の品数と鮮度の良さに驚き、JA幕別町の積極的な販売体制に信頼を寄せ、改めて生産に専念できる確信を得たようです。
生産者とJA幕別町の信頼関係に基づいた役割分担が、幕別産レタスを支えています。
JA幕別町レタス委員会の皆さん
北海道で一番の生産量を誇る幕別産レタスは、「地元のお客様の評価」と「沖縄県への出荷というチャレンジ精神」など、生産者と消費者の信頼関係から生まれた、強い責任感と誇りを持って生産されています。
「幕別産レタス」を応援してください。そして、近所の店頭に並んだときはご賞味ください。
幕別町農業協同組合 管理部 企画課
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