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茨城県 なめがた農業協同組合(さつまいも)
「土地を選び、技を磨き、心で作る」をキャッチフレーズに
収量よりも味にこだわるさつまいもの生産に挑戦


なめがた農業協同組合
営農経済部園芸流通課 河野 隆徳


産地の概要~2つの湖に囲まれた台地の産地~

 JAなめがたは、茨城県の南東部に位置し、行方市、潮来市を事業区域としています。都心からは100㎞圏内にあり、東側に北浦、西側に霞ヶ浦の2つの湖に面した南北に細長い区域となります。また、年間の平均気温は14℃、年間の降水量は1400㎜と比較的温暖な気候の地域です。北浦、霞ヶ浦の両湖岸の低地には水田地帯が広がり、内陸の標高30m前後の台地(行方台地)では畑作が盛んです。そのような自然条件の下で、特産のさつまいもをはじめ、約60品目の青果物の生産が行われています。

 農協の組合員数は、12,000人ほどで、そのうちさつまいもの生産農家は300人ほどです。平成19年度の青果物の販売額は85億円で、平成元年の農協合併当初(54億円)と比較すると約20年で30億円以上の伸びとなりました。販売額の多い順の上位品目は、1位さつまいも(16億円)、2位いちご(9億円)、3位ちんげんさい(7億1千万円)、4位みずな(7億円)、5位大葉(6億2千万円)などです。中でもさつまいもの販売額は、農協合併当初(6億円)の3倍となりました。


産地の歴史~県の銘柄産地の指定が生産者の生産意欲の向上に~

 茨城県は、全国でも鹿児島県に次いでさつまいもの生産量の多い県です。その茨城県の中でも、JAなめがた管内の行方市は、鉾田市に次ぐ規模のさつまいもの産地で、火山灰土の水はけの良い土壌に恵まれ、さつまいもの栽培に適した地域です。行方市の麻生地区では、昭和51年に生産者50名からなる甘藷部会が設立されました。昭和59年には、さつまいもの主力品種の「ベニアズマ」を他の産地のものと区分するために、「紅こがね」と命名し、独自の銘柄商品とするなどして産地の規模拡大を図ってきた結果、昭和62年には茨城県から銘柄産地の指定を受けるまでになりました。また、このことが生産者の生産意欲の向上を促し、生産規模の拡大にもつながりました。

さつまいもの品種の構成と生産規模~紅こがねを主体に~

 品種の構成は、紅こがねが全体の83%を占める450haの作付けがあり、続いて、べにまさりが同じく13%を占める73haの作付け、その他には、パープルスイートロードや紅赤、紅高系などの作付けが行われています。

 農協管内の生産規模は、作付面積が540ha、収穫量は10,800トンです。

栽培の概要~規格も品質も重要視~

 毎年秋には、土作りのために、ほ場に大麦を播き、翌年の3月に緑肥としてすき込みます。さらに4月には、牛糞と籾がらを混ぜた堆肥を投入します。その後、ほ場にマルチを張り、5月から6月末日までの間に苗の定植を行います。そして、8月上旬には、早堀ものの収穫が始まります。出荷は、8月上旬から翌年の8月末までの周年出荷となりますが、出荷の最盛期は、10月と年明け後の1月から3月までの期間となり、多い日には1日当たり5kg入り段ボール箱で15,000ケースの出荷があります。年間で見ると、1日当たり平均8,000ケースの出荷となります。

 規格の設定については、消費者が購入しやすいように細分化した設定を行っていますが、その一方で、生産者ごとに労働力、技術レベル、生産規模、土壌条件などが異なることを考慮して、A品率の割合の向上を求めるだけではなく、生産者にあった品質を重要視したさつまいもの生産、出荷を心がけています。そうした結果、市場の評価も高まりました。

平成20年産 甘藷出荷規格表 (紅こがね)
JAなめがた かんしょ部会連絡協議会

※クリックすると拡大します。

生産における工夫~徹底した管理~

 平成16年には、低温により貯蔵中のさつまいもが腐敗し、産地としての存続が危ぶまれました。そのことをきっかけに、平成17年からキュアリング(収穫したさつまいもを温度32℃・湿度90%以上の部屋で4日間保管することにより、収穫時などに出来た傷口にコルク細胞層が形成され、貯蔵中の腐敗を防ぐ。)処理施設を整備した結果、その年の暮れに記録的な寒さにより、他の産地のベニアズマは腐敗するなど大きな被害が出ましたが、当産地の紅こがねには腐敗はなく、実需者からも評価を得ました。

 しかし、キュアリング処理を施して貯蔵したさつまいもでも、温度や湿度の変化に弱く、特に低温では腐敗、高温では萌芽や発根、亀裂が生じ品質の低下となります。さつまいもの貯蔵は、温度14℃、湿度90%以上が最適ではないかと思います。当農協では、6月から7月末日までの間、定温貯蔵出荷を行っています。

販売における工夫~消費の拡大に向けた取り組み~

 さつまいもの消費拡大に向けて、様々な取り組みを行っています。

① 消費者ニーズの把握

 生協などでの試食やアンケート調査を通じて消費者ニーズの把握に努めるとともに、より消費者が買い求めやすくなるよう段ボールの小型化などの改善を図っています。

② 食味の安定について

 紅こがねは、秋には粉質でホクホク感がありますが、年明け後は粘質でしっとり感がでてくる特徴があります。また、同じ品種で同じ時期でも食味にばらつきを感じることがありますが、食味のばらつきは、生いものでん粉含量のばらつきが原因であり、品種の特性でもあります。そのため、ばらつきを栽培技術で制御することは今のところ困難です。消費者が買うたびに食味が違うと言われるのは、糖化が進まない年内は、ばらつきが大きく、焼き芋にしたときに混在する低でん粉や高でん粉のさつまいもが、しばしば食味のばらつきをもたらすからです。そこで、生いものでん粉含量を測定し、平均的なでん粉の含量のさつまいもだけを出荷すれば食味は安定するということになります。農協としては、540ha分のさつまいもすべてを測定して出荷することは不可能ですが、今後、徐々に測定数を増やしていきたいと考えています。

③ 消費拡大に向けた新たな試み

 平成15年からは、量販店と提携して焼き芋の店頭販売を開始しました。量販店の店頭に焼き芋を焼く機材を持ち込み、焼き芋の販売を行いました。この取り組みは、昨今の焼き芋ブームの火付け役となったとともに、生食用のさつまいもの需要の増進に結びついたのではないかと思います。

 また、さつまいもは1月から4月までの間は食味も安定し需要もありますが、夏場を迎えると需要は落ちます。そこで、さつまいもの消費拡大のために、主に女性をターゲットに平成19年から「冷やし焼き芋」の販売を開始しました。食べ方は、アイスカップに入れ、スプーンで食べます。また、消費者の方に、秋からしっとり感のある焼き芋を提供するために、平成14年から「ベニマサリ」の生産を開始しました。今年度は73haの作付けを行っていますが、生産を開始した当初は、袋の中で萌芽が進み、北海道からすべて返品されたことがありました。その時、焼き芋にして食べてみたところしっとり感があり好評でした。大きいサイズのものばかりとか、萌芽のもの、表面が黒ずんだもの、肌荒れのものなどさまざまな問題が発生しましたが、生産者一人一人が熱心に研究し、栽培に取り組んだ結果、19年産については、今までにない高品質のものを出荷することができました。

④ 消費者とのふれあい

 なめがた産さつまいもの知名度のアップをねらい積極的に販売促進活動を展開してきました。取引先の量販店において、定期的に「なめがたフェア」を開催し、さつまいもの他にも数品目の展示、試食、販売などを行っています。また、流通業者とタイアップして「さつまいもオーナー制度」による苗植え体験、生育状況の画像の提供、収穫体験などを通じて産地と消費者の交流を図るとともに、市場や各種イベント、銀座での焼き芋の無料配布を実施することにより、産地とさつまいものPRに力を入れています。

 また、安全・安心への取り組みとしては、茨城県が推進する農産物ネットカタログへの登録や、エコファーマーの取得、適期防除の実施、GAPの推進などを図っています。


さつまいものほ場と生産者のみなさん

一言アピール

 「強い甘み」と「しっとり感」のあるなめがた産のさつまいもは、味はもちろんのこと、食物繊維やビタミンCが豊富な健康食品です。冬でも夏でも一年をとおして味わってください。

お問い合わせ先

JAなめがた 営農経済部 園芸流通課
〒311-3835 茨城県行方市島並857-35
電話:0299-72-1880 FAX:0299-72-1113
E-mail:jan-eino@alpha.ocn.ne.jp URL:http://www.ja-namegata.or.jp/

 

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