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佐賀県(いちご)

糖度が高く、酸味が少ない食べやすさが好評の「さがほのか」を栽培

JAさが園芸部野菜花き課
伊東 克明

産地の概要  2007年4月、佐賀県内の8JAが合併し、「JAさが」としてスタートしました。JAさがは行政8市8町を管轄し、その地形は、佐賀県の地勢(5地域)のうち、大別して3つの地域に分けることができます。

 県南部を占める佐賀平坦地域は、筑紫平野及び佐賀平野を構成し、その土地は肥沃で生産力が極めて高い穀類地帯です。

 県北部の天山(1046.2m)・背振山麓地域は、筑紫山脈の西半分を構成し、地質は主に花崗岩質で、みかんを主とした果樹、米、野菜地帯です。

 また、長崎県境にまたがる多良岳地域は、扇状台地が発達し、台地間には水田、台地上には畑地が開け、緩傾斜地も多く気候にも恵まれていることから、みかんの産地となっています。

 こうした自然環境・立地条件を活かし、米・麦・大豆の土地利用型農業を中心に、野菜、果樹、畜産など幅広い農業が営まれています。管内の土地面積は、1,595.34平方キロメートル(佐賀県全体の約65%)、経営耕地面積は37,897ha(佐賀県全体の約79%)、農家戸数28,207戸です。年間平均気温約16℃で年間降水量1,500~2400mmとなっております。

 JAさがの平成17年度の農業における販売実績額は、全体は63,433百万円で、農産(米、麦、大豆)28,581百万円、果樹4,775百万円、野菜18,022百万円、花き特産2,426百万円、酪農1,739百万円、畜産7,890百万円となっています。野菜の内訳は、いちご6,179百万円(32%)、たまねぎ5,767百万円(29.9%)、アスパラガス2,204百万円(11.4%)、きゅうり1,331百万円(6.9%)、なす971百万円(5%)となっており、いちごは管内の主力野菜のひとつとなっています。




佐賀県におけるいちご栽培の歴史  佐賀県のいちご栽培の歴史は古く、大正14年に鹿島市古枝や神埼郡東脊振村(現在の吉野ヶ里町)に露地栽培が導入され、栽培が盛んに行われていたという記録があります。昭和30年頃からはトンネル栽培やビニールマルチの普及が進み、ダナー・福羽・八千代といった品種が栽培されていました。

 昭和40年代の初めには県下全域にパイプハウスの導入が進み、45年の稲生産調整以降は一気に作付が拡大し、昭和49年にはいちご取扱高15億6400万円で野菜取扱高のトップにおどりでました。ポット育苗の導入や年内早出し技術として短期株冷の体系が確立したのもこの頃です。昭和58年に「とよのか」が登場すると、いちごの生産量は飛躍的に増加し、株冷栽培との組み合わせで昭和63年にはついに系統販売高100億円の達成に至りました。

 平成2年に電照・加温機が本格普及し平成6年には系統販売高130億円となり、平成7年に数量・金額・単価・単収等で6つの新記録を達成しました。この頃より、「とよのか」に代わる品種の検討が始まり、大果系品種の「さちのか」や「アイベリー」等も栽培されました。

 平成10年、佐賀県農業試験研究センターで育種された新品種「さがほのか」が登場し、大果系・高収量性・果形や食味の良さ等が人気を得、10年以上続いた西の横綱「とよのか」から「さがほのか」へと品種転換が始まりました。平成14年には県内作付の90%以上が「さがほのか」「さちのか」に代わり、佐賀県での「とよのか」の時代は終わりを告げます。

 JAさがにおける、平成19年度のいちご部会員は866戸で、作付面積は162.2haとなっています。平均年齢は60歳前後と高齢化しており、70~80代で頑張っている生産者も少なくありません。最近では新規就農者や後継者も毎年10人程増えていますが、高齢によりやめる農家のほうが多いのが現状です。

 そのため、県内のいちご系統販売高は、平成12年産に132億円を記録してから高齢化や後継者不足により生産者数と作付面積の減少が始まり、それに伴い出荷数量・金額も毎年減少しています。

 高齢化対策や大規模経営農家・新規栽培農家に対して、神埼郡支部や佐賀みどり支部等では、本格的にいちごパッケージセンター(PC)による共同選果を始め、作業支援を行うなど栽培面積の維持に努めています。

 また、直販事業を通じて新規顧客の獲得や特殊形態販売への要望をうけ試験的な販売も行っています。

佐賀県内の品種別の生産量の推移



共同選果の様子



「さがほのか」は省力化品種  「とよのか」が全盛期だった頃の問題点として、秀品率の低さによるパック詰め作業効率の低下や長距離輸送、暖候期のイタミ果発生による単価安がありました。
 
 暖候期の果実のイタミは、圃場での葉よけ・玉出し作業や早朝収穫・予冷の徹底等、細心の注意を要する作業が生産者の負担となります。また、果形の乱れによるパック詰め作業の効率の悪さが、収穫ピーク期には影響し、生産者は徹夜でのパック詰めの連続で健康を損なう人が多くいました。

 佐賀県農業試験研究センターで育種された「さがほのか」は、大果系の「大錦」と食味に優れる「とよのか」を親にもつ佐賀県のオリジナル品種です。その特徴として、大果で酸味が少ないことや果実がしっかりしてイタミが少ないことがあげられます。また、年内の花芽分化が早く夜冷や株冷といった早出し処理の必要がないことや、果房の連続性が高く収穫の波が少ないことがあげられます。

 大玉で秀品率が高いため、パック詰め作業が「とよのか」よりも格段に早く、作付面積の拡大を行う生産者も出てきました。また、果形の良さはパッケージセンター(PC)を導入する際にも高効率化につながる等のメリットが大きいため追い風となりました。


生産体制~苗立ち枯れ症の克服~  「さがほのか」は「とよのか」より炭疽病や疫病に弱く、従来の育苗方法では大雨で育苗床が冠水したり長雨が続いたりすると立ち枯れ症が発生し、定植苗不足が問題となりました。そこで、苗が水に浸からないよう高設ベンチ育苗を導入しました。
 
 また、無病親株への更新を推進しています。無病親株は県農業試験研究センターから原原種苗を購入し、管内の雨除けベンチ育苗施設を備えた花苗農家で増殖して配布しています。

  圃場は収穫終了後に土壌分析を行い、PHやECを測定し次年度の土づくりの検討を行います。PH異常や過剰な成分を把握することで元肥や土づくりを個人ごとに調整しています。最近は、畦立ての省力やコスト削減のため不耕起栽培を導入する農家も増えてきたため、不耕起栽培用施肥も検討するようにしています。

  ~温暖化による影響とその対策~
  「さがほのか」の作付面積が増えてきた平成14年ごろとの気象を比較すると、最近は9月中下旬の定植時期から10月の気温が非常に高くなっており、9月15日前後の定植では12月のクリスマス前に1果房の収穫が終わってしまいます。さらに、果房間葉数も増加しやすく2果房の収穫開始が遅れるため、安定した生産出荷が出来ない状況となっています。平成17年産は12月中旬から2月中旬まで消費地に十分ないちごを送ることが出来ず、産地の信頼を失墜させる事態となりました。

  このため、産地信頼回復のため、①年内の収量確保 ②1~2月の収量確保 ③3月以降の品質向上に努め、10a収量4,000kg、販売金額450万円の達成を目標に、産地一丸となって次の取組を行いました。

①健苗育成
  生産の基本は苗つくりであるため、年内収量増加対策として中苗~大苗を目標に早めの親株準備など計画的な育苗管理を行いました。

②安定作型定植
  花芽分化直後の9月15日前後の定植を避け、9月20日から25日としました。

③適正温湿度管理の徹底
  開花から収穫までが45日以内となるように、ハウス内温度管理を徹底するため、花へのラベル付けなどで生産者の管理意識を高めました。

④天敵ダニの導入
  栽培期間中の農薬使用を少なくするために、天敵を使った防除体系の導入に取り組んでいます。特に、春先のダニ被害は後半の収量に影響が大きいため、年内から天敵ダニをスケジュール放飼することで春先のハダニ類の抑制につなげています。効果的に散布すれば、農薬散布も減少し、省力化にもなります。
  ダニだけではなく総合的な防除技術の導入も検討しています。

  これらの取組の結果、平成18年産はクリスマス需要期の出荷量確保や1月の安定出荷につなげることができ、産地の信頼を取り戻すことが出来たと思います。しかし、本年産(平成19年産)は定植時期から10月の気温が予想以上に高かったことや、11月に乾燥したことが原因で収量が伸びず、安定出荷を続けることが出来ませんでした。次年産は課題克服のため、さらなる高温対策の検討が必要となっています。



原種苗出荷状況
高設ベンチ育苗の状況

栽培カレンダー

※クリックすると拡大します。

出荷量の推移


出荷量の推移


出荷体制~品温管理の徹底でイタミのない商品輸送~  いちごはイタミやすく繊細な果物であるため、その取り扱いには収穫から店頭に並ぶまで非常に気を遣います。いちごは一個一個丁寧に手で収穫し果実の温度が上がらないうちに各農家の予冷庫に運びます。農家は予冷庫から共同選果場に運び、スピーディーに選果します。春先、気温が高くなってくると早朝収穫と収穫後の予冷が重要です。パック詰め作業中や出荷の際も温度管理に気をつけ、品温が上がらないようにしています。佐賀県から関東市場へはまる二日かかって輸送を行うため、収穫から出荷まできちんとした予冷管理を怠ると、即イタミ発生につながるため、気温の上がるこれからの季節は特に注意しています。
 
 出荷時は、各いちご集荷場で専門の検査員や部会員が1パックずつ目視による検査を行い、イタミ果や事故品等の混入防止に努め安心して販売できる検査体制をとっています。

 出荷先は、関東方面が約50%で一番多く、その他関西中四国方面に出荷しています。

 「さがほのか」は秀品率・大玉率が高く、300gレギュラーパックで2L・Lが中心となっています(2L・L・Mで約55%を占有)。300gレギュラーパックのほかに、400g平詰めパックや500gの化粧箱もギフト需要期を中心に出荷しています。

出荷量の推移



販売戦略~「リカちゃんの好きなさがほのか」でPR~  青果物では全国初の宣伝企画となる「リカちゃんの好きなさがほのか」PR作戦を展開し、女性層を中心に「さがほのかファン」を獲得して全国的なイメージアップをはかっています。主にはスーパー等の量販店での試食宣伝活動によるファン作り、ポスター作成や「オリジナルリカちゃんキーホルダーがあたる!」プレゼントキャンペーン等を行い、消費拡大に向けたPR活動を行っています。

  業務用として、業務用果実専門業者を通して、洋菓子店などへ産地直送品として販売しており、新鮮さを打ち出すとともに産地の顔が見える販売に取り組んでいます。

  また、実需者から要望の多いレンタルコンテナに積極的に取り組み、「さがほのか」の鮮度面の強みを最大限に発揮し、安定した品質と価格での販売を実現するようにしています。さらに直販事業を拡大して差別化販売・こだわり販売により顔の見える産地を推進します。

  近年では、農産物の残留農薬等の問題が出ているなか、JAグループ佐賀では、生産履歴記帳100%運動を展開し、安全で安心して食べられるいちごを自信持ってお届けできる体制作りにも取り組んでいます。

   

さがいちごHP
イメージキャラクターのリカちゃん



一言アピール


 いちごは生食でそのまま食べてもおいしいので子供から大人まで人気の食材です。また、ビタミンCが豊富で、一日に10粒程度とると、一日に必要なビタミンCが簡単にとれます。

 「さがほのか」は、酸味が少なくて甘さが際立ち後味がさっぱりしているのが特徴です。美味しい食べ方は、へたをとっておしりからガブリと丸かじりで食べると最後まで甘みとほのかな香りが楽しめます。さらに、さがほのかは、果実が大きくて色鮮やかなので、ケーキに映え、クリスマスケーキやショートケーキにぴったりです。

 ぜひ、当地のいちごを一度ご賞味ください。


お問い合せ先

JAさが 園芸部野菜花き課
〒840-0803 佐賀県佐賀市栄町2番1号
TEL:0952-26-2138  FAX:0952-26-2140
URL:http://jasaga.or.jp/
いちごのホームページ:http://www.saganet.ne.jp/ichigo/

 


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