冬期の日照時間が長く露地栽培に適した環境
JA常総ひかりは、平成18年1月1日に合併により、下妻市(旧下妻市、旧結城郡千代川村)、常総市(旧水海道市と結城郡石下町)となった2市と、八千代町を管轄範囲とする広域農協です。当管内は、茨城県の南西部、関東平野のほぼ中央に位置し、首都圏へは60km圏内で、東西約10km、南北約30km総面積263.5k㎡の南北に長い地域で、農業地域類型では平地農村地域に属しています。管内は中央部に鬼怒川、東には小貝川、西を飯沼川が南流し、主に東部は水田地帯、西部は猿島大地に連なる畑地帯に大別されます。気候は平均気温13.5℃前後で年間降水量は1,300mm程度です。冬は北西の季節風が吹きつけますが、降雪量は極めて少なく、県内では少雨域に当たります。また、初霜は10月下旬、終霜が4月下旬で年により果樹等が晩霜害を被ることもありますが、おおむね温暖な地域で、農作物の栽培に適した環境にあります。また、当地域は、冬期の日照時間が長く、露地栽培に適していることも一大野菜産地である理由です。
管内の平成18年度の農業における販売実績額は、全体で107億円で、野菜が63億円(58%)と中心で、その他では、米は30億円(28%)、畜産は7億円(7%)、花きは2300万円(0.2%)となっております。野菜では、はくさい、キャベツ、レタス、きゅうり、ほうれんそう、メロン、すいかなど露地栽培を中心とした園芸作物が多く、その中でも、はくさいは野菜全体の販売額の37%を占め、管内では主力野菜となっています。
はくさい栽培は昭和41年から本格化
当地はかつて、麦、陸稲を主体とした普通畑作地帯でしたが、高度経済成長期以降、首都圏の人口拡大に伴う野菜需要の増加から都市近郊野菜産地へと転換しました。はくさいの導入は、戦後まもなくされ、昭和41年の野菜価格安定事業制度創設時には、すでに産地ができていたため、制度の創設とともに事業に加入し、本格的に栽培に取り組み始めました。
昭和41年当時の生産規模は、面積が660ha、生産量は39,600トン、生産者数が600~700名でした。その後、年々増反され、全国一の大産地が形成されましたが、昨今の価格低迷の影響を受けて、現在では、面積が600ha、生産量、37,000トン、生産者数が280名と減少しています。生産者は減少しているものの1戸当たりの作付面積の規模が拡大しているのが最近の特徴で、平均面積は2.1ha/戸となっています。
生産者の年齢層は、50歳代から60歳代の割合が約70%を占めており、昨今では、新規就農者が毎年若干名、はくさい栽培に参入しています。
部会は、秋冬はくさい部会と春はくさい部会とはくさいだけで2つあり、部会員は秋冬はくさいで約180人、春はくさいで約130人となっています。生産規模拡大に向けた取り組みとしては、生産者の収入安定を目的として、商談会や取引先の流通業者からの紹介などを通じ、実需者との契約取引の推進を図るなどの取り組みを行っています。
栽培品種「菜黄味」は、JAいばらきグループのオリジナル品種
当地の栽培品種は、その時代のニーズと作りやすさから、柔らかい品種、硬い品種等の作付けを繰り返しながら現在の消費者ニーズに合った黄芯系の品種主体の作付けに変わってきました。黄芯系の特徴としては、はくさいの内部の葉色が強く、白芯系と比較して甘みが強いのが特徴です。現在流通している秋冬はくさいはほとんが黄芯系です。また、春はくさいの主な品種として、クリ-ム2号、菊錦、幸村などがあり、秋冬はくさいは、八千代娘、菜黄味、黄ごころなどがあります。「菜黄味」はJAグループいばらきのオリジナル品種で中晩生の作型のもので、JAと生産者が一体となり、その時代にあった、食味、収量を考慮に入れ、その栽培技術の確立と育成をはかりました。また、この品種は葉が柔らかいため、浅漬けなどの用途に向きます。品種の選定については、品質と安定生産を目的に現地での試作などをとおして選定しています。また近年は、カット販売が多くなっているため、切った時の美しさも品種選びの重要なポイントになってきました。生産者だけでなく、消費者、販売先他、皆さんに喜んでもらえるような品種の選定に心がけております。
生産体制 ~真冬のはくさい収穫を工夫~
栽培方法については、秋まき栽培は、7/下~9/中頃まで播種を行い、10/中~3/上頃までが収穫時期となります。一方、春まき栽培は、11/中~下旬頃まで播種を行い、3/上~5/下頃までが収穫時期となります。
栽培ポイントとして、土作りでは、土壌分析を行いその結果に基づいた土壌改良資材等の処方について指導、提案を行っています。また、残留農薬については、各圃場毎に「栽培管理台帳」を作成し、生産管理履歴(トレーサビリティー)の徹底を図っております。そして、農協内に専門担当者と、コンピューターによる履歴管理システムを導入し、履歴管理の他、最新の農業情報を提供しています。さらに、出荷物を無作為に抽出し出荷の都度、残留農薬分析を行い、その安全確認を行っております。
真冬時期のはくさいの収穫については、年明~1月末収穫するものは年内に頭縛り(広がっている外葉を束ねて上部を縛る)を行い、一時保管して、計画的な出荷体制の維持、相場状況、品質等を考慮に入れに収穫しています。また、2月から3月上旬は本囲といい、株を畑のすみに寄せて、その上を寒冷紗やビニールで覆うなどして寒さを防止するなどの工夫を凝らしています。
現在では、秋冬はくさいを中心に作付けされていますが、メロン、レタス、キャベツなどとの輪作で効率よく年間を通じた栽培が行われています。大規模農家も多く、年間を通して中国人研修生を受け入れ、規模拡大を図っています。
また、女性部の活動として、産地のはくさい消費宣伝用として当地のはくさいを使った本格的なキムチ漬けを作り、特産品作りにも積極的に取り組んでいます。
出荷体制 ~夏場を除いた周年出荷が可能な産地~
平成18年度における茨城県の出荷量は秋冬作で16万トン(全国シェア25%)、春作約4万トン(同35%)で、ともに全国一の産地です。秋冬作は10月下旬~2月、春作は4月~5月ごろが多く、出荷が途切れるのは夏の7月~9月の間だけです。
その中でも八千代町を中心とした、当JA常総ひかり管内のはくさいがその多くを占め、茨城県で最も出荷量が多く、同時に日本一の産地です。
生産者は早朝に収穫して、午前中に出荷調整を行い、JAの集荷所に17時までに各農家が持ち込むことになっております。出荷規格は、小売店及び量販店向けの4玉入り(10~13kg)の段ボール規格のものが最も多く、その他には業務及び加工向けの6玉入り(15kg)の段ボール、加工契約向けのコンテナ出荷があります。
その他、根部、外葉を適切に除去することや、腐敗、病害虫の被害がない等の注意を図り出荷調整を行っております。
出荷形態においては、以前は、2本、3本束で出荷されていましたが、年によっては1束5円、10円というような安価に遭いながら何とかして生産費が確保できる販売方策をということで、京浜市場各社の方々のご協力をいただき、集落座談会等を開催しながら段ボール出荷に変えました。その他にも、連作障害等を克服しながらの作付けと、食生活の変化に伴う消費者に対し常に趣向をこらした消費宣伝を行いながら、常に生産費が確保でき、安定経営ができるよう、生産者、JA組織、関係機関が一丸となり取り組み、現在に至っております。
販売戦略~VFステーションと連携し、加工業務需要を拡大~
日本一の生産量を誇る産地として求められる、安全で安心な高品質なはくさいを、安定して供給する使命を自負し、はくさいの供給基地となる産地としての地位を確立できるよう取り組んでおります。近年では、農産物への残留農薬などの問題が出ている中、JAグループいばらきでは、安全・安心な農産物を消費者の皆様に提供できるようHPで生産履歴を公表しています。さらに、青果物のトレーサビリティシステムを強化するために、定期的に生産履歴の記帳についての講習会を行い、安全・安心なはくさいをPRしております。出荷先としては、京浜地域の卸売会社を中心に出荷しており、その他、東北、京阪神、北海道などへ幅広く出荷しています。近年の取り組みとしては、全農茨城県本部県西VFステーションと連携し、主に漬け物業者などの加工業務用に契約取引を実施しており、古いところでは10年前から取り組んでいます。今後もJAの指定卸売会社や、VFステーションと連携を密にし、顧客の確保と契約取引の推進を展開し、販売拡大に向けた取り組みを行っていく予定です。
一言アピール
当地域のはくさいは玉の先端まで葉が詰まっていて重量感があり、胴がしっかり張って、切り口尻がみずみずしく新鮮であるといった特徴があります。
また、半分にカットした場合は、カット面が水平で切り口が黄化、変色していない良品質で新鮮なはくさいで、加工・業務用に適したはくさいです。
はくさいは、漬物や、火をとおした食べ方が多いですが、生でも食べられます。当地のはくさいは、みずみずしく甘みがあるので、千切りキャベツの代わりや、サラダにして食べるのもおすすめです。
ぜひ、当地のはくさいを一度ご賞味ください。