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福井県大野市・勝山市(さといも)
砂質壌土と豊かな水が高品質のさといもを作る

テラル越前農業協同組合 指導販売部営農特産課
中村 康紀


山に囲まれた扇状地帯、夏は昼夜の温度差が大きい盆地特有の気候  テラル越前農業協同組合は、福井県東部に位置する大野市と勝山市を管轄しています。

 大野市は、福井県の市町村では最大の広さを持ち、県面積の5分の1を占め、かつての城下町の面影を残しています。大野市の総面積は872.30k㎡で、市域の約87%を森林が占めています。また、勝山市は、総面積253.68 k㎡で、大野市同様に森林が多くを占めた盆地地形です。両市とも積雪量が多い地域で、多いときは2mになります。

 これらの地域は、霊峰白山をはじめとして荒島岳などの1000m級の山々に囲まれた扇状地帯で、九頭竜川などの豊かな水が流れる自然豊かな環境です。気温は、冬期(12月~2月)の平均気温は1~2℃、降水量は270mm/月、夏期(7月~8月)は、平均気温は21~24℃、年間降水量は2900mmと多く、年間平均気温は17℃です。

 また、山から流れた土の堆積でできた扇状地が、さといもに適した砂質壌土であることや、盆地特有の気候である昼夜の温度差が大きいことなどの好条件が揃っており、この地域のさといもの特徴である、調理したときに煮くずれしにくい高品質のさといもができるゆえんです。

 交通面では国道157号が南北に、国道158号が東西に走り、東は東海北陸自動車道、西は北陸自動車道があるなど交通の便がよく、近くは福井中央卸売市場、遠くは中京、京阪神市場などにも出荷されます。

 管内の農業は、米を中心として、さといも、ねぎ、なす、トマトなどの野菜、その他、大麦、そば、大豆などの雑穀や花きを栽培しています。平成18年度では、管内の農協における販売実績の割合は、米が85.7%、野菜が9%、雑穀が2.9%、花きが2%、畜産が0.4%となっています。野菜では、平成18年度の販売金額が502,191(千円)で、その内、さといもは365,183(千円)で約72%を占めており、この地域の主力野菜で、その他の野菜としては、ねぎ46,585(千円)、なす41,641(千円)、トマト26,400(千円)などがあります。




さといもの本格的な栽培は昭和45年から、きっかけは米からの転作  さといも栽培の歴史は古く、室町時代に伊勢神宮に奉納したとの記録も残っており、何百年も昔から越冬用の貯蔵食物として農家で自給的に栽培されてきました。

 当地域のさといもの本格的な栽培は、昭和45年から始まりました。昭和45年に国の指導で米の生産調整が進められたのを契機に、さといもの産地を作る働きかけをしたことが生産面積拡大につながりました。

 昭和45年当時の生産規模は面積が60ha、生産者は800人、生産量は500トンでした。平成18年は、面積が110ha、生産者は1,100人、生産量1,200トンの生産規模となっており、全て水田で栽培されています。一戸当たりの平均面積は、10aですが、多い農家で60a程度の人もいます。

 生産者の年齢層は、60歳代が全体の約80%を占めており、最近では会社を定年退職した人など、それまで自家用に栽培していた人が、市場出荷を目指して面積を拡大する人が多いことが、この地域の最近の特徴です。最近では、このような新規生産者の参入が毎年10人前後います。




さといも栽培の様子


栽培品種は「大野在来」葉が垂れていないのが特徴  この地域で栽培されているさといもは、「大野在来(おおのざいらい)」という品種です。「大野在来」の来歴についてははっきりしませんが、別名「親責(おやぜめ)」と呼ばれており、さといもの株の中心の頭いも(親いも)の周りに子いもがしがみ付くように強くくっついていることからこの名前がついたと言われ、もちもちした食感が特徴的です。「大野在来」種は、葉がまっ平で、垂れないのが特徴で、蓮葉系と呼ばれています。蓮葉系の品種は、粘質の強い芋ができる特徴があります。

 当地では、洗った芋を醤油と砂糖で煮る「ころ煮」が最もポピュラーな調理方法です。芋は皮を剥かずに薄皮を残した状態で洗うのがポイントで、昔は芋を洗うには、竹で作った水車の中にさといもを入れて、川の流水を利用して洗っていましたが、近年は、根菜類を洗う機械(家庭用の小型器)で行っています。

 この他に、ズイキ用の品種としては、「八ツ頭(やつがしら)」がありますが、自家用としてのみ栽培されています。調理方法は、刈り取ったズイキを3cm位に切り、フライパンで炒めた後、甘酢漬けにして食べます。この料理を地元では「スコ」と呼んでいます。

 さといもの栽培に関しては、4月に植え付けを行い、10月から12月頃まで収穫、出荷を行います。

 その他、さといも栽培の細かい管理事項としては、4月始めに行う畝立て前には、土を細かくします。畝たてを行った水田にマルチを張り、さといもの子芋を30cm間隔で植え付けしていきます。植え付けの作業は手作業で、畝たて等は管理機械で行います。6月下旬から7月上旬には、子芋、孫芋の太りを促進するために土寄せを行います。7月中旬から下旬にかけては、子芋から出るズイキを刈り込み、親芋からのズイキのみを残します。8月上旬~9月中旬の梅雨が明け晴天が続く時期は、干ばつでは芋の肥大がよくないので、畦の間に水を入れ土壌中の水分を補給します。

 また、連作障害をおこしやすいので、水稲を5年作付けした後、さといもを1年栽培するように、5年以上間隔をあけた圃場で栽培を行うよう注意を払っています。

 秋の収穫時は、10月頃になると株の外側のズイキから黄色くなり、しまいには褐色に枯れてきますが、ズイキが1~2本残っている頃が収穫適期となります。

 生産者は、天気の良い日にズイキを株元から切り取り、黒マルチを取り除いた後に、専用の掘り取り機、スコップ、鍬などを使用して、株ごと堀上げ収穫します。

 1つの親芋に子芋が5~7個、それぞれの子芋には更に2~3個の孫芋が付き、1つの頭に12~20個の芋が付いています。

 収穫したさといもは、栄養体繁殖させるため、収穫した株を冬期の間は、貯蔵して翌年の種いもに使います。そうすることで、粘りが強い煮くずれがしないさといもになります。また、6℃以下の低温では、低温障害を受けて腐ってしまいますので、収穫した株を、各農家の屋内のいも穴に入れたり、モミ殻やワラで囲って屋外で越冬させます。



栽培カレンダー

※クリックすると拡大します。


親芋の周りに子芋、孫芋がしがみついている

生産体制 <丸いさといもを作るために完熟堆肥を投入>
 当農協では、さといも生産者に対して、栽培面に関する技術資料として「営農のしおり」を各農家に配布し、栽培管理を徹底しています。栽培管理方針の中には、病害虫防除基準を設けており、生産者はそれに基づいて防除を行っています。又、各生産者には生産履歴を記帳してもらい、出荷時に提出するようになっています。提出された生産履歴表は、当農協の営農指導員がその都度確認しています。さらに、残留農薬の検査として、サンプリングテストを毎年、15~20生産者分を検査しています。

 土壌作りとしては、さといもは土の中で肥大するので、丸いさといもを生産するために、土壌の物理性を改善する目的として、10a当り2トンを目安として完熟堆肥を入れるよう栽培指針に入れるなどの工夫をしています。

 近年では市場価格が低迷しているため、生産量が減少しているという課題に直面している中、当農協は独自に、集落営農組織を対象として、さといもの生産面積を拡大した組織には助成を行うなどの振興拡大事業を実施し、生産量拡大に向けた取り組みを行っています。


出荷体制 <出荷期間は10月中旬から12月下旬>
 掘り起こしたさといもは、その場所で数時間乾かしてから、株についている土を落とします。その後、各農家は小屋の中に取り込み、集荷の数日前に頭芋から子芋、孫芋を取り外します。主な規格は表の通りで、L(4.5~5.0cm)のものが多く、各農家は25kgコンテナに入れ、集落の集荷センターに朝8時までに各農家が出荷して、それを農協が集荷します。出荷期間は、10月中旬から始まり12月下旬頃まで続きます。

 当農協のさといも選果場は10月中旬~12月下旬頃まで毎日稼働し、計画的に選果を行っています。選果場では、品質(等級)をパートによる手選別、大きさ(階級)を機械選別にて仕分けを行い、主に10 kg段ボールに箱詰めした後、卸売市場などに出荷します。味がよいことはもちろんのこと、選別がきちんとされていることで市場からの評価を得ています。

選果規格表



品質仕分けの様子、秀、優、良の
3等級で仕分けする


販売戦略

<ダイレクトメールを活用した販売>
 この地域のさといもは、「越前さといも」というブランド名で、県に認定されています。毎年収穫の時期になるとテレビや情報誌に取り上げられ、越前カニと並ぶブランド品となっております。

 現在、当該農協では販売量の6~7割は青果市場中心に出荷しています。出荷市場としては地元の福井中央卸売市場が中心で、その他に中京、京阪神方面の卸売市場への出荷が多いです。

 また、昭和60年頃から郵便局の「ゆうパック」商品カタログや当農協の窓口にて「越前さといも」の販売していましたが、近年では、新たな販売方法として、ダイレクトメールを活用しています。「越前さといも」を毎年、購入していただけるたくさんのリピーターがいることが特徴です。ご注文の受付は9月~11月までで、10月中旬~12月上旬に順次、商品を発送しています。このような市場開拓を積極的に行った結果、現在では、総販売量の約1割、120トンを全国に宅配しています。その他、新規顧客の開拓として、雑誌等でPRするなど努力しています。

 さらに、市場価格の低い下位等階級(秀・優のS~2S、良品)は、当農協が所有する加工場で、10月中旬から12月下旬まで加工・冷凍などの処理を行い、「冷凍さといも」として量販店や料理店などに通年販売を行っており、これが残りの約2割を占めています。

 また、最近では安全・安心な「越前さといも」をPRするため、本年からは青果ネットに、当地域のさといも生産部会が実施している生産面の取り組みを紹介するなど、お客様への積極的な販売促進活動を実施しています。



箱詰された越前さといも



越前さといものゆうパックカタログ
段ボール10kgでの出荷


一言アピール

 「越前さといも」は、煮るほどに肉質のしまりがよくなり、崩れにくく、もちもちとした食感が特徴で、おいしさには定評があります。これは奥越前の土壌、気候、品種の3条件が醸し出したもので、絶妙なる美味、比類なき逸品として全国的にも有名です。
「越前さといも」は県のブランド品に認定されており、在来品種として先祖から受け継いでいる大切なさといもで、当地の宝となっております。

 ぜひ、当地のさといもを一度ご賞味下さい。やみつきになること受けあいです。


お問い合せ先
テラル越前農業協同組合

住所 :福井県大野市中挟1丁目1301
TEL :0779-65-1251 (指導販売部営農特産課)
FAX :0779-65-1274
Mail :einou2@jaterral.com
URL :http://www.jaterral.com/


※ ゆうパックの申込みはフリーダイヤル0120-64-1066へお願いします。
但し、本年の申込受付期間は終了いたしました。

 次年度の申込みに関しては、平成20年8月頃から開始させていただきます。
ご希望の方は、ダイレクトメールを送付いたします。
今月の野菜「さといも」 


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