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京都府京丹波町瑞穂地域(ほうれんそう)
夏涼しく昼夜の寒暖差が大きい気候を活かして
周年でほうれんそうの栽培を実施


京都農業協同組合 瑞穂支店 営農指導係
外賀 雅樹 (げか まさき)



米を中心として、ほうれんそう、伏見とうがらし、京みず菜等の栽培が盛ん  京丹波町の瑞穂地域は京都府のほぼ中央に位置し、京都市内から西北に約50kmのところに位置しています。京丹波町は平成17年10月に丹波町、瑞穂町、和知町の3町が合併して京丹波町となり、瑞穂地域とは旧瑞穂町の地域をいいます。
 
 東西に国道9号線、南北に国道173号線といった幹線道路が通り、京都および大阪市内へは車で1時間以内の距離にあります。

 瑞穂地域の総面積は109.73Km2。うち山林が83%を占め、この間を縫うように耕地が広がっており、地域全体が山に囲まれた山村で、府下では標高の高い地帯です。
 気候は、8月の平均気温は27℃(最高29℃、最低24℃)と夏期は内陸性の気候で、1月の平均気温は2℃(最高6℃、最低1℃)と、冬期は温度が下がる日本海式気候で、降水量は平均1,400mmと、府下では多い地帯です。

 瑞穂支店管内の農業は米を中心として、野菜は、ほうれんそう、伏見とうがらし、京みず菜等の栽培をしており、ほうれんそうは米に次ぐ主要な農産品となっております。当地域の農家の特徴は、米と一緒に野菜を栽培している農家が多いところです。

 平成18年度におけるJA京都瑞穂支店の販売実績の割合は、米が50%、青果物が30%、瑞穂大納言小豆10%、松茸10%となっています。ほうれんそう、伏見とうがらし、京みず菜の3品が青果物全体の70%を占め、その内、ほうれんそうはこの3品目のなかで60%の売上金額を占めております。




ほうれんそうのハウス栽培は昭和62年から、今では30戸の農家で3ha  当地域でのほうれんそうの栽培は、昭和62年からハウスでの栽培が始まりました。

 以前はきゅうり、トマトなどを栽培していましたが高齢化とともに生産者が減少し、産地としての面積確保が難しくなってきました。そこで、なにか新しい作物を導入し、高齢者でも容易に取り扱いの出来る
ものはないか模索していたところ、比較的価格が安定しており、軽量で高齢者でも扱いやすく、また周年栽培が可能なほうれんそうが取り上げられ、現在では、米とほうれんそうを一緒に生産している農家が多いことがこの地域の農家の特徴です。

 当初は、7戸の農家、0.3haで開始し、平成3年には京都府ブランド産地育成事業により23戸、1.9haまで増えました。

 現在では、30戸の農家が約3haで栽培を行っています。生産者の年齢層は30歳台半ばから70歳台半ばまでと幅広く、平均年齢が60歳台ですが、主に京都府ブランド産地育成事業による作物転換農家が多いが、なかには新規就農者も見られます。


ほうれんそう栽培風景

品種は試験栽培を繰り返してから導入
平成18年度はアトランタなどを栽培
 ほうれんそうの品種は数多くあり、地域の気候や風土、様々な環境で生育条件が変わるため、こまめな試験栽培を実施し品種の選定を行っています。瑞穂地域では、周年で栽培をしているのが特徴ですが、特に、連作障害を回避するために耐病性のある品種選びに努めています。その他、収量、食味、栽培時期の気候条件を考慮に入れて品種を選択しています。

 作付は、秋から春作が多く、平均3~4回作付けする農家が多いです。

 平成18年度の導入品種は、秋冬の10月~1月がアトランタ、冬春の2月~4月がアプローチ、夏場の5月~9月はアクティブでの栽培で統一しました。

 今年度からは資材費の軽減等も考慮し、周年品種から2品種体系まで、少品種、多量購買により資材費を抑えることを模索すると同時に市場での人気の品種も踏まえ、実際に、平成19年度の作付品種は、年間2品種の栽培を目指し、秋冬はトラッド7・スパイダーを基本品種とし、春夏はアクティブ・ミラージュのいずれかと、マジェスタだけの年間1品種だけを栽培する農家に分け取り組んでおります。今年度は特に、耐病性、栽培管理、市場性を考慮に入れた品種の見極めをしており、平成20年度以降の栽培に備えています。

●平成18年度の栽培カレンダー


平成19年度における栽培品種



栽培の概要 ~有機肥料を中心にして減農薬栽培をめざす~  当地域では土壌改良を目的に緑肥としてギニアグラスを栽培し、①の写真の状態を②の写真のようにすき込みます。緑肥の栽培は隔年を基本として夏から秋頃に行っています。



①土壌改良にギニアグラスを栽培
②ギニアグラスをすき込んだ状態

 これは、塩類集積の緩和と緑肥としての効果を目的としています。

 また、当地域のほうれんそう栽培の特徴は、堆肥(有機)での栽培を中心としていることです。減化学肥料栽培での統一を図っており、施用する場合は硫酸根や塩素等の副成分をほとんど含まず、ゆっくりとした肥効で環境にやさしいノンストレス肥料を使用しています。

 しかし、長年にわたり連作を行ってきたことと温暖化の影響もあり、春夏の栽培が非常に困難になってきています。

 当地域では出来る限り薬剤を用いての土壌消毒は行っていません。

 その結果、立枯病とケナガコナダニの発生により収穫困難となる作型も見受けられるようになり、特に夏期の立枯病が発生し、収穫皆無という状態をもたらしています。

 そこで、夏期では、③のように土壌改良資材を加えて太陽熱土壌消毒を実施しています。土壌改良資材を施用することで、夏期の立枯病、秋期のケナガコナダニの発生が大きく抑制することができ、これまで夏期の収穫皆無のハウスが収穫できるようになり、幾分かは改善出来たと思っています。

 また、年間を通してのハウス栽培ですから、夏期には④のように、遮光ネットを張り地温の上昇を抑え、ハウス内の温度の低下に努め、少しでも生育しやすい条件に近づけています。



③太陽熱土壌消毒の様子
④夏場の遮光ネット被栽培
(遮光ネットで地温の昇を抑え、
生育しやすい環境にしている)


 次に、播種についてはシーダーテープを利用しています。シーダーテープは直播に比べ発芽率や生育の揃いが良く、また作業面でも比較的容易に扱えることができます。

 写真⑤のシーダーテープリールは使い回しが出来るよう、JA京都専用としてリール部分を再利用して、資材費の軽減、廃プラスティックの減少、また、近年問題になっている地球温暖化対策の一つとして取り組んでいます。


⑤シーダーテープを使って播種を実施


生産体制 ~生産量の維持が課題~  当該JAでは、生産者部会としてJA京都京野菜部会を組織し、栽培講習会や出荷目合わせ会、また販売促進活動などを実施しており、特に栽培講習会や出荷目合わせ会は生産者それぞれの栽培技術の高位平準化を図るために定期的に実施しています。


栽培講習会



出荷目合わせ
瑞穂ほうれんそう出荷袋

表 規格表


 また、生産量の減少が課題である中、生産量が維持出来るよう、行政などの関係機関と連携して収量の改善や肥培管理の勉強を行っています。さらに、平成19年からは新規生産者3名が、特産物の瑞穂ほうれんそうの生産に励んでおり、生産量の拡大に向けた取り組みを行っています。

出荷体制 ~出荷先は京都市中央卸売市場が主体~  早朝に収穫したほうれんそうは午前中に出荷調整します。出荷調整は、各農家が下表の規格にあわせて選別します。主な規格は、A(M)の25cm以上、35cm未満のものを基本に、1袋200g入りの専用袋に瑞穂ほうれんそうを入れ、6kgダンボールに30袋ずつ詰めて、各農家がJAの集荷場予冷庫に運びこみ、夕方に保冷車で輸送します。出荷先は、京都市中央卸売市場を主体とし、近年は、少量ながら京野菜として他のブランド京野菜とともに、大阪や東京方面への市場出荷も行っています。

販売戦略 ~HP上で栽培履歴を公表~  販売店舗の協力のもと、生産者が参加して試食会を行い、消費者の皆様への瑞穂ほうれんそうの宣伝活動に取り組んでいます。

 さらに、近年、農産物への残留農薬などの問題が広く伝えられる中、JA京都グループでは、京の伝統野菜を中心に、安全安心を消費者の皆様に提供出来るようトレーサビリティシステム(情報開示システム)がいち早く導入されています。瑞穂ほうれんそうは平成18年10月に、京の伝統野菜以外の一般野菜として、京都では初めてトレーサビリティシステムを導入しました。

 このシステムでは、農薬防除回数と生産者の顔写真を開示しており、生産者には徹底した栽培履歴の記帳管理などをお願いしています。

 現在では、消費者の皆様が望むものを生産するという時代でもあり、生産者にはトレーサビリティシステムについてご理解いただくとともに、早い情報提供と安全安心な瑞穂ほうれんそうの生産に努めています。

 今後も引き続き、消費者の皆様に支持いただける産地を目指すとともに、良質な瑞穂ほうれんそうのさらなる生産拡大につなげていきたいと考えています。


HP上で栽培履歴を公表している
http://www.kt.zennoh.or.jp/kyoto/


一言アピール  当JA京都瑞穂地域では、緑肥や堆肥を投入した土づくりに努め、また減農薬栽培にも取り組み、安全安心なほうれんそうの栽培に取り組んでいます。

 また当地は、夏は内陸性気候で、昼夜の寒暖差が大きく、冬は日本海式気候で寒さが厳しいことから、ほうれんそうの栽培に適しており、品質の高いほうれんそうができます。お陰様で京都市場では、京野菜「瑞穂ほうれんそう」のブランド名で人気も高く最高値で取り引きされています。

 味がよい瑞穂ほうれんそうを是非ご賞味ください。

お問い合せ先

京都農業協同組合 瑞穂支店生産課
住所:〒622-0311 京都府船井郡京丹波町和田丸戸15
電話:0771-86-0160
FAX:0771-86-0254
ホームページ:http://www.jakyoto.com/



今月の野菜「ほうれんそう」 

今月の野菜
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