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JA京都やましろ宇治田原支店みず菜生産部会
宇治茶の郷から
―小束の「みず菜」を届けます―
京都やましろ農業協同組合
営農経済部 神原 嘉男
1 宇治茶の中心的産地でのみず菜栽培
宇治田原町は京都府の南東部に位置し、西部は城陽市、北西部は宇治市に、北東から東部は滋賀県に接し、町の中央部には国道307号線がほぼ東西に貫通しています。
京都府南部ではありますが、内陸部で標高が100~300m程度の中山間地域であることから、気象条件は内陸性山間盆地であり寒暖の差が大きく冬季は比較的低温となり、年間降水量は1400mm程度となっています。
農業生産は平坦部には水田や野菜が、丘陵地域は主に茶が栽培されています。茶の生産には鎌倉時代にまで遡る古い歴史があり、煎茶の発祥地で宇治茶の中心的産地として全国に知られています。JA宇治田原支店の農産物取扱高に茶が占める割合は80%程度となっています。
また、渋柿の「鶴の子」が茶園の間や傾斜地に栽培されていて、干し柿に加工し特産「古老柿」として出荷されます。京都市場等ではお正月用品として重宝されています。
野菜関係では京都府内の夏秋きゅうり産地として高く評価さています。春の茶摘みが終了した6月頃から定植され、9~10月まで収穫されます。
そのような地域環境にあり、冬場の労働力と茶の農閑期を活用し、農業の生産性向上を目指してパイプハウスの利用によるみず菜栽培が導入されました。周年安定的な収益が得られることから、地域農業の振興に大きく貢献することとなりました。
平坦部に散在するみず菜栽培のハウス
2 平成7年5名から発足したみず菜部会 今では部会員35名に
平成になって京都府内数カ所で始まったみず菜の小束出荷が、宇治田原町で本格的となったのは、平成7年に5名の生産者で「JA京都やましろ宇治田原町みず菜生産部会」が結成されてからです。その後、定年退職の新規就農者等もあって、JAや行政機関が実施する助成事業の取り組みで、栽培農家及びハウス設置面積が順調に町内各地域へ拡大していきました。その結果、平成19年3月には部会員35名、ハウス140棟余り、約300aの産地に成長しました。
その間、平成12年9月には、社団法人京のふるさと産品価格流通安定協会(以下「京のふるさと産品協会」という)が認証するブランド産地に認定され、共販出荷体制が確立されました。また、平成16年度からは他産地との差別化をはかるため「京都こだわり農法」にも取り組まれています。
最近の宇治田原町みず菜生産部会からの出荷実績は、図に示すように年間60t程度で、JA京都やましろ管内の主力産地となっていす。
図 最近のみず菜販売実績
(JA京都やましろ管内実績)
また、部会の女性グループとして「ミセス美菜‘S」が結成され、みず菜の学校給食への提供、加工利用の工夫等で消費拡大にも努力されています。
3 軸が白色で細く繊細な京都のみず菜
~「京都こだわり農法」で栽培~
京都のみず菜は「千筋京水菜」といわれ、軸が白色で細く繊細です。従来は、漬物、煮炊き等に利用されていました。そのみず菜を草丈30cm余りで収穫、出荷されるものが「小束みず菜」で、軟らかく、それでいてシャキシャキした歯ざわりがあります。そのため漬物、鍋はもちろん、葉の緑と軸の白さのコントラストが鮮やかで、生食サラダでも利用されるようになり京野菜の代表的なものとなってまいりました。
栽培は草丈30cm余りで収穫となりますので、ハウスの周年栽培では季節によって生育期間が大きく異なります。春から夏にかけての栽培では、播種から収穫まで早ければ3~4週間で収穫です。反対に低温期であれば無加温のハウス栽培であるため2~3カ月の期間を必要とします。
みず菜はアブラナ科ですから、冬期栽培では低温で抽台の可能性があります。抽台株は商品性がないので春先の収穫時には注意が必要です。
出荷には収穫、出荷調製、袋詰め作業に手間が掛かりますので1日の出荷量には限界があり、毎日安定して収穫出荷できるような栽培方法として、播種を計画的に行います。そのため、早春から夏に向かっては生育が早くなりますので、播種間隔をあけます。また、夏から冬に向かっては生育が遅延してきますので、播種間隔を短くします。このようには種を調整して年間通じてのハウス作付は、一般的に5~6作となります。
栽培は生育を揃えることがポイントとなり、発芽を均一にさせることです。種の発芽には土壌水分・地温等が影響し、播種の深さを一定にすることが重要となってきます。そのため、まず畝表面を均平にし、播種作業を省力的に行うことから、播種機の導入及びシーダーテープ等が利用されています。
「京都こだわり農法」では、有機質資材の投入による土作り、減農薬・減化学肥料栽培に力点が置かれています。春から夏の高温期を利用して、土壌の太陽熱消毒や地力増進緑肥作物の栽培も計画的に取り入れられています。
良品出荷への注意点としては、害虫被害葉の除去、高温期のしおれ・ズルケ防止等々、軟弱野菜としての鮮度が重要視されています。そのため、収穫後の品温管理や出荷調製作業には細心の注意がはらわれています。
袋詰めされたみず菜 (小束のみず菜)
収穫期となったみず菜(中央2畝)
株元に注意し丁寧に収穫
4 京の伝統野菜として出荷
~一部は首都圏始め各地域に出荷~
荷姿は200gの袋詰めで、ダンボール1ケース20袋入り(4kg)です。各生産者が早朝から収穫、それぞれの手で丁寧に出荷調製し袋入れ、箱詰めされます。その後、集荷場のJA宇治田原支店に設置されている生産部会の冷蔵庫に持ち込まれ、JA担当者の検品を受けます。
出荷先は京都中央卸売市場で、すべてJA京都やましろ宇治田原支店みず菜生産部会の製品として出荷されます。なお、原則として市場の休みの前日以外は毎日の出荷で、出荷量は事前に生産者からの報告を受けJAで把握します。京都市場からは京都府内各産地のものと同様に、一部は首都圏を始め各地域へ「京の伝統野菜」として転送もされています。
規格品質の統一を徹底するため、部会として隔週毎に生産者全員で目合わせ会が開催されています。その時には各生産者に対してJAや普及センター等の関係機関から様々な情報提供も同時に行なわれるとともに、生産者間でもいろいろ栽培技術を中心とした意見交換が行われています。
「京都こだわり農法」で栽培された京の伝統野菜は、京のふるさと産品協会の認証するブランド農産物として出荷します。これらについては、出荷段階でJAの担当者が栽培履歴のチェックを行い、さらにJA中央会の検査員が定期的な検査を実施し、安心安全に対する厳しいシステムを組んでいます。また、各生産者の履歴情報は全農京都のホームページを通じて公開していて、消費者はみず菜の袋に記載されている生産者コードによって、病害虫防除履歴等の内容確認ができます。
目合わせ会で袋詰め状態を確認
冷蔵庫で出荷を待つみず菜
5 作物にやさしい土づくりに取り組みより安心安全なみず菜の栽培を目指す
これまでに太陽熱による土壌消毒、緑肥作物の導入等が実施され、平成16年度には京都府が実施する土づくりコンクールで表彰を受けました。しかし、継続的なハウスの周年栽培であるため、土づくり・土壌改良で良好な栽培環境を維持することが、さらに重要な課題となってきています。
土壌条件を改善することは発芽揃いを良くするとともに、栽培の省力化にもつながってきますので、経営的な面からも重視しなければなりません。そのため、農業改良普及センター等の関係機関と連携し、生産部会の大きな課題として今後とも作物にやさしい土づくりに取り組んで行く予定です。
また、目合わせ会の充実による規格品質の統一、完全な計画生産・計画出荷で流通関係からも一層信頼される産地としてのイメージを定着させることも重要と考えています。
さらに、消費者ニーズを直接的に得て、より安心安全なみず菜を提供することの重要性を肌で感じるため、部会員による小売店での店頭販売協力等を定期的に実施していきたいと思っています。
一言アピール
JA京都やましろ管内は古くから都市近郊の生鮮野菜産地として、なす、ねぎなど多種の野菜が生産・出荷されてきました。そのため、消費者に最良の商品を提供し、信頼されることが何よりも大切との認識から、栽培技術は確かで常により良いものを栽培するための努力がされています。
元来の千筋京水菜は、初秋に種を播き、冬季に約1000本程度の葉柄で、3kg程度の大株として収穫されていました。それを、こまつなやほうれんそうなど軟弱野菜の栽培技術を生かして、小さな株に仕上げています。
どんな食材とも良く合いますので、フランス料理や中華料理にも広く利用されるようになりました。JA京都やましろの「小束のみず菜」を、是非一度ためしていただければと思います。
お問い合せ先
住所:〒613-0331 京都府京田辺市田辺鳥本1番地2
JA京都やましろ 営農経済部
電話:0774-62-5890
Fax:0774-62-9450
ホームページ:
http://www.ja-yamasiro.com
情報コーナー「京都の伝統野菜を行かしたブランド野菜の振興と現状」
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