かとり農業協同組合 東庄経済センター
鈴木 宏一
1 東庄町の概要
東庄町は、千葉県の北東部で東京から80キロメートル圏に位置し、北には利根川および黒部川が流れています。北部の利根川沿岸と南部の低地(干潟八万石)は水田地帯で、中央の台地は畑地帯となっています。年間の平均気温は15.5℃で、冬は東京より2~3度温かく、夏は逆に涼しいです。年間降水量は1,300~1,700ミリメートル程度です。
東庄町の位置
2 地域農業の概要
平成12年の農家数は約1159戸で、主業農家が283戸で全体の24.4%を占めています。業種別では、養豚を中心とする畜産が盛んであり、次いで米、かぶが上位を占めています。平成15年の農業粗生産額84億5千万円のうち、畜産は36億7千万円(43.4%)、野菜が21億4千万円(25.3%)、米が18億円(21.3%)と続いています。野菜のうち、かぶは7億2千万円で野菜全体の33.6%を占めており、こかぶ以外では、にんじんやだいこん、キャベツなどの露地野菜や観光いちご栽培、みつば・サンチュ・小ねぎの養液栽培などの施設園芸も行われています。
水稲は温暖な気候を生かし、8月中旬から新米が収穫できる早場米産地として知られています。また、首都圏から60~90キロメートルに位置する好条件な流通環境を生かし、50種類を超える野菜を京浜市場中心に出荷しています。
また、消費者に農業体験の場を提供するなど、農業への理解を深める活動も積極的に行っています。
3 こかぶ生産の概要
こかぶが栽培されている地域は、畑作地帯にある東城地区、橘地区などが中心で、町の特産品となっています。その栽培面積は約170ヘクタールを数え、全国第1位の生産を誇る本県において、柏市に次ぐ県内有数の産地として位置付けられています。
東庄町こかぶ産地マップ
東庄町のこかぶ栽培は、昭和30年代中頃に始まり、11月から冬にかけて収穫する露地栽培で行われてきました。昭和40年代は夏蒔き冬どりにんじんの栽培が主力で、こかぶも無被覆で栽培されていましたが、昭和50年代後半から被覆資材「タフベル」を利用したトンネル栽培が普及することで生産は次第に増加しました。被覆栽培により収穫量の増加、玉揃いの向上など高品質なこかぶが生産されるようになりました。また、被覆栽培の導入で周年生産が可能となり、東庄町のこかぶの評価は高まり、県内有数の産地となりました。さらに、昭和55年に夏野菜出荷対策として予冷庫を設置し、品質の維持向上が可能となりました。その結果、昭和60年にはこかぶがにんじんを逆転して、町の主力品目となりました。
販売においては、白く綺麗で野球のボールの様相から「ホワイトボール」と命名し、ブランド品としての生産販売に取り組み、平成14年10月には「ホワイトボール」として商標登録されました。
現在、こかぶの生産は、農協組織のホワイトボール部会およびホワイトボール研究会の2部会69名のほか、系統外の任意組合2組織などを合わせて約100戸の農家が栽培に取り組み、京浜市場向けの出荷体制をとっています。
そのホワイトボール2部会が属するかとり農業協同組合は、2001年4月に7町5農協が合併して誕生しました。
4 栽培品種および出荷量
こかぶの周年生産を安定的に行うため、夏と冬の品種を組み合わせて栽培に取り組んでいます。
<主な品種>
10月下旬~6月上旬収穫…「CR白涼」、「CR雪峰」
6月上旬~10月中旬収穫…「CR白根」「CR鷹丸」「CRもちばな」
また、こかぶの需要は浅漬けやみそ汁の具が一般的ですが、需要拡大や消費者に美味しいこかぶを提供するため、軟らかさと甘さを特長とするサラダ向き品種の導入を検討しています。
生産のほとんどが露地のトンネル栽培で行われているために、台風などの自然災害や夏場の干ばつ、病害虫の被害で出荷量が左右されます。冷涼な気候を好む作物で、夏場の高温期には病害の発生や横縞症などにより品質が低下するため、遮熱効果のある被覆資材などの検討を併せて実施しています。
近年は、年間に40万~48万ケース(8キログラム入り)が京浜市場に出荷されています。
栽培カレンダー
5 生産から出荷まで
(1) 土作りおよび施肥
周年栽培が始まってから20数年が経過していますが、今まで連作障害が見られませんでした。その要因の一つとして、えん麦などの緑肥鋤込みや地域の畜産農家で生産された堆肥などを主体とした土作りが挙げられます。
使用する家畜の糞の種類は、鶏が60%、豚が30%、肉牛または乳牛が10%という割合で、1年おきの施用を中心に、毎年から3年おきの間隔で使われています。未熟豚糞堆きゅう肥ではシミの発生、窒素成分の高い鶏糞使用では割れを防止するための減肥などに注意します。
肥料は、肥料メーカーと共同開発したこかぶ専用の「美白名人」など、有機質を原料とする肥料を使用しています。施肥にあたっては、年に一回土壌診断を実施することで畑の状態を確認し、それぞれの状況に基づいた施肥設計を行います。肥料は有機質を含む肥料を使用するなど、化学肥料だけに頼らない施肥技術の励行に、こだわりのこかぶ作りの本質があります。
(2) 耕耘および播種作業
施肥後、トラクターで耕耘と同時にベット(床)を作り、病害虫防除のための粒剤散布を行います。円盤式の播種機やシーダーテープで播種を行いますが、近年では耕耘と同時に作業できるクリーンシーダーの導入事例が見られます。冬季は8条蒔き、夏季は6条蒔きにして、植物の生育や病虫害対策など季節に合わせた播種を行い、速やかに防虫ネットで被覆します。
(3) 生育期間および収穫
播種時期によって生育期間は異なりますが、夏季は最も短くて約35日、冬季は約110日で収穫が可能となります。周年生産を行うためには、その時期毎の生育日数をうまく組み合わせ、計画的な播種と収穫が必要になります。
こかぶの生育状態を見たことがない消費者などは、だいこんのように土の中に埋まっている様子を想像しているようですが、実際には土の上に“ちょこん”と乗っかっている姿を見ると、驚きや感動があるようです。
夏季の収穫は、出荷当日の早朝(早い人では3時頃)から始まります。冬季は前日の夕方や出荷当日の午前中など、寒さでの凍結のない時間帯に収穫します。
(4) 選別作業・洗浄作業
収穫したホワイトボールは、枯れ葉などを取り除き、階級・等級別に仕分けされ、その後に等級別の玉数に結束します。
結束後に洗浄機による高圧の噴霧で洗浄し、水切りをしておきます。水切り後に箱詰作業をしますが、ここでもう一度品質を確認しながら規格別・等級別の束数を段ボールに詰め出荷となります。
(5) 検査・予冷入庫
出荷されたホワイトボールは、検査員により検査され、合格したものだけが出荷されます。
予冷は、4月~11月まで行います。
6 安全安心農産物づくりと販売の取組み
(1) 害虫および雑草防除
病害虫対策は、防虫ネットによるトンネル被覆栽培の実施と、残さをほ場に残さないなどのほ場衛生の徹底、周辺雑草の除草、生物薬剤であるBT剤の使用など化学合成薬剤だけに頼らない、物理的防除と生物的防除を組み合わせた総合防除体系で病害虫被害を軽減させています。
(2) 連作障害回避のための計画的な作付け
圃場の年平均利用回数は、2~2.5回程度に抑えることで連続栽培による品質低下をさせないように心がけています。
(3) 減農薬・減化学肥料栽培農産物の認証取得
平成16年産は、こかぶの最も美味しい時期である1~3月(冬どり)の作型でJAグループちばの提唱する「もっと安心農産物」の生産・販売活動に参加するとともに、千葉県独自認証制度である「ちばエコ農産物」の認証を受け、当地農産物の安全性をPRしました。
平成17年産においては、販売期間を1~4月に拡大するほか、秋どりの作型において、技術検討を行う予定としています。
(4) 消費宣伝活動の実施
東庄こかぶのブランドである「ホワイトボール」をもっと大勢の方に知っていただき、より多くの消費者の方々に食べていただくために、卸売市場においては仲買人やバイヤー、小売店の青果担当者など、スーパーでは一般消費者を対象とした試食宣伝やメニューの提案を行ってきました。
スーパー店頭での試食宣伝活動
問い合わせ先
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〒289-0624
千葉県香取郡東庄町小南55
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