調査情報部 調査情報第二課
用途に応じたバラエティーに富んだ加工・業務用向け品種
多くの来場者が集まるなか、当機構の木下理事長より「これまで農林水産省と共催で、加工・業務用野菜推進のためのシンポジウムやセミナー等を開催してきたが、本年からは、実際の取引の推進に向けて産地と外食・中食、食品加工、流通等実需者の方々との交流会を開催しており、この場が生産者と実需者の相互理解を深め、産地の改革にも役立てればと考えている。」とのあいさつにより交流会が開始された。
今回のブース出展では多くの種苗会社から「加工・業務用向けの品種」として解凍してもホクホク感の残るかぼちゃや、流通上の利便性から硬く改良したトマト、加熱用のトマト品種、葉付きミニだいこんなど用途に応じたバラエティーに富んだ野菜が紹介された。
また、ジューシー感やカラフルな色を売りにスティック野菜やジュースとしてのメニュー提案も多く見られ、来場者の関心を集めていた。
一方で、値頃感に見合った食味・品質をもった品種をいかに必要としている実需者へ、産地を開拓し必要な時期に栽培を合わせて届けるかという点が課題であると種苗メーカーの担当者は語っていた。
産地側のブースでは主要品目や特産物の紹介の他に、中食・加工向けの加工品の紹介や流通への対応など積極的なPRが行われた。全農福岡県本部や鹿児島県経済連によるGAP(適正農業規範)に基づいた認証制度の導入、高知県園芸連によるIPM(総合的病虫害管理)に適応した栽培の普及など、環境・安全に配慮した生産への取り組みをPRしていたのが特徴的であった。
国内野菜産地と食品産業との連携を促進
今回の交流会ではブースの展示に加えて加工・業務用野菜マッチングセミナーおよび出展者によるショートプレゼンテーションが開催された。
セミナーでは野菜の消費動向や加工・業務用野菜の需要対応への取り組みなどが発表された。
財団法人外食産業総合調査研究センター主任研究員の堀田氏は「外食・中食における戦略食材としての野菜の魅力」として、外食・中食市場の野菜メニューの変遷を語った。90年代は差別化商品としての有機野菜や減農薬野菜の影響もあり、外食でも肉中心のメニューに加えて野菜の利用が広まった。2000年代に入ってからはさらに安心・安全を前提に健康につながる食生活という観点からさらに野菜への関心が高まり、サラダ専門店やビュッフェレストランなどが出現した。また、機能性食材としての野菜の可能性も期待されており、今後は健康をキーワードに野菜の消費が拡大すると分析結果を述べた。
自社でトマトのほ場を持ち、研究開発に取り組んでいるカゴメの生鮮野菜ビジネスユニット課長佐藤氏は「カゴメ生鮮トマト事業の業務用販売への取り組み」として自社で開発した品種「デリカトマト」を事例に用途別のトマトの特性を解説した。この中で、特に業務用のトマトの場合はドリップが少なく、ゼリー部分が落ちにくい肉厚なものが好まれると述べた。さらに、業務用需要の拡大のためには1)安定品質・安定供給、2)需要拡大のための商品開発と提案、3)流通構造の改革、この3点がカゴメの課題であると締めくくった。
神奈川県農業技術センター専門研究員の北氏は「寒玉キャベツの4~5月需要への対応について」というテーマで同センター等での試験結果について説明した。業務用に使用されるキャベツの場合、中がつまっていて硬く、切っても目減りしない寒玉キャベツが求められている。4~5月の間は、この寒玉系を収穫することが困難であり輸入物に頼る傾向があるが、これからは国内産で対応できるよう品種開発等を行っている。春キャベツの20%を寒玉系が占められるよう最終目標を設定し、日々、研究に取り組んでいるとのことであった。
(なお、セミナーの詳細については機構ホームページhttp://vegetable.alic.go.jp/kak ougyoumu/index.htmをご覧下さい。)
ショートプレゼンテーションは19の生産団体、生産法人、種苗会社、流通・研究関係等により行われた。
全農長野県本部は主要品目に加えパプリカやトレビスといった新しい野菜の導入と業務需要に対応する栽培方法やコンテナ流通についてPRした。シンジェンダ、サカタのタネ、タキイ種苗からは加工向け・サラダ向け・ジュース向けの品種や育種の方向性、そして卸売会社の東京青果からは国産青果物の安定した供給についてのプレゼンが行われた。また、産地としては、有限会社Tedyや北海道ホープランドなどが栽培方法の工夫を、トップリバー、和郷園は生産から販売までの一貫体制をアピールした。
最後に当機構からインターネットで野菜の情報を入手できる「ベジ探」の機能の説明を行い、産地紹介ができる「産地プロモーション」や季節ごとの野菜産地が一目でわかる「野菜マップ」、各種データの検索画面などを中心に紹介した。
当日は、開場直後からかなりの熱気につつまれ、特にプロが多い来場者たちが熱心な質問や名刺交換を行っているのが目についた。当機構としては、今後ともこのような実取引に結びつくイベントその他に取り組み、国産野菜の振興実需者への安定供給につなげていきたいと考えている。