米国の多くの野菜生産者は、加工用野菜も栽培している。加工用野菜は、外皮が厚く、形状が均一で、収穫や加工が容易となる性質を有する傾向がある。トマトは加工用野菜生産量の約60%を占め、生産額では約50%を占めている。
(1)加工用トマト、2024年の猛暑を乗り切るも品質に影響か
加工用トマトは、ほぼ全州で栽培されている。しかし、収穫面積の94%は、温暖で凍害の少ないカリフォルニア州が占めており、同州ではほぼすべてが
灌漑により栽培され、通常6~10月に収穫される。
2023年に続き、24年もカリフォルニア州では灌漑用水が不足することはなかった。しかし、7月には、加工用トマトの生産が集中しているサンホアキンバレーで平均最高気温が平年より6.7℃高い猛暑となった。7月の猛暑は、収穫期に近いトマトの単収や品質には特に影響を及ぼさなかった。しかし、秋に収穫予定の若いトマトは、猛暑が始まった時期に着花したところであり、一部が落花したため、単収と品質の両方が低下した。
このような状況にもかかわらず、USDAの24年の加工用トマトの平均単収見込みは1ヘクタール当たり112.1トンとされている(図3)。これは、23年の単収を同0.4トン、過去最高の18年の単収を同4.7トン下回るが、過去第3位の単収となる。USDAの24年5月予測では、生産量を1043万トンと見込んでいたが、その後、猛暑により1.7%下方修正して1025万トンと推定している(図4)。24年の単収は平年より高いにもかかわらず、契約面積が過去5カ年平均より少ない9万1530ヘクタールであったため、生産量は過去5年平均を下回っている。
(2)加工用トマトの価格動向
2024年4月の野菜展望報告では、24年の加工用トマトの価格は、前年の過去最高値である1トン当たり152.0米ドル(2万2902円)から下落すると予測されていた
(注4)。カリフォルニアトマト生産者協会(CTGA)は、同140.5米ドル(2万1169円)を提示していたが、実際の基準契約価格は同124.0米ドル(1万8683円)であった。
トマト加工品の在庫水準が高いことが、加工用トマトの価格を押し下げる主な要因となっている。CTGAによれば、トマト加工年度(6月から翌年5月)の始まる6月1日現在のトマトペーストの在庫は、17年の699万トンから23年には281万トンに減少している。しかし、CTGAが24年の基準契約価格に関する最初の入札を行った23年12月の在庫は、前年同月比36%増となっていた。
価格下落のもう一つの要因は、加工用トマトの世界的な生産量の増加である。22年より前には、中国とイタリアがそれぞれ年間約544万トンを生産し、世界第2位と第3位を行き来していた。世界加工用トマト協議会によれば、中国は23年に生産量を798万トンに増加させたが、同年の米国の1161万トンには遠く及ばなかった。しかし、24年には中国の生産量が1043万トンの見込みとされており、カリフォルニア州の生産予測である1025万トンを上回る可能性がある。
23トマト加工年度の加工用トマトの純輸出量(輸出量-輸入量)は、約125万トンから163万トンへと約30%増加した(図5)。世界の加工用トマトに対する需要が継続的に増加していることで、24年度の輸出量が増加し、米国国内の価格上昇にもつながる可能性がある。しかし、貿易量の変化は、金利や米ドル高などのマクロ経済要因や24年産トマトの品質にも左右されるとみられる。
(注4)『野菜情報』2024年9月号「米国の野菜をめぐる2023年の状況および24年の見通し(https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2409_kaigaijoho1.html)」をご参照ください。
(3)冷凍野菜の在庫が減少
2024年10月末の冷凍野菜の在庫(ばれいしょを除く)は、前年同期比5%減であった。ほうれんそう(前年同期比29%減)、カリフラワー(同20%減)、アスパラガス(同19%減)、さやいんげん(同14%減)など、多くの野菜で在庫水準が前年同期を下回った。しかし、冷凍オニオンリングの在庫が同57%増と大幅に増加したことを含め、冷凍たまねぎの在庫は同25%増となり、10月の在庫としては過去最多となった。
(4)2024年1~10月の貿易状況:野菜加工品の輸出入額が増加
2024年1~10月の野菜加工品輸入額は、前年同期比9%増の66億米ドル(9944億円)であった(表5)。野菜加工品の輸入先は、最大となるカナダが同11%増で輸入量の33%を占め、メキシコが前年同期並み、中国が同14%増であった。
冷凍野菜の輸入額は、ばれいしょ(同12%増)の増加を受けて同7%増となった。輸入量は、過去最多だった前年同期を1.5%上回った。冷凍野菜は、主にフライドポテトなどのばれいしょ製品を中心に過去3年間の野菜加工品の輸入量の約54%、輸入額の約50%を占めた。調理・保存処理済み野菜の輸入額は、トマト製品(輸入額:前年同期比37%増、輸入量:同9%増)とポテトチップス(輸入額:同25%増、輸入量:同10%増)の増加により、同12%増となった。乾燥・脱水野菜の輸入額は、でんぷんなどのばれいしょ製品が同7%減となったものの、全体では同4%増となった。
野菜加工品の輸出額は、同7%増の32億米ドル(4821億円)であり、輸出先はカナダが最大であった。カナダへの野菜加工品の輸出額は同6%増であり、第2位のメキシコ(同10%増)と第3位の日本(同8%増)への輸出額も前年同期を上回った。
冷凍野菜の輸出額は、ばれいしょ(同3%増)にけん引されて同4%増となった。近年、ばれいしょ製品は、冷凍野菜の輸出額と輸出量の80%以上を占めている。金額としては少ないが、アスパラガスの輸出額は同32%減、グリーンピースは同16%減など一部の冷凍野菜の輸出額が大幅に減少した。冷凍野菜全体の輸出量は同1%増であり、ばれいしょ製品、ミックスベジタブル、さつまいもの輸出量が増加した。調理・保存処理済み野菜の輸出額は、同12%増であった。近年、トマト製品は、調理・保存処理済み野菜の輸出額と輸出量の50%以上を占めており、輸出額の増加は、トマト(同19%増)、きゅうり(同26%増)、そのほかの野菜(同9%増)の増加によるものであった。
