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海外情報 野菜情報 2025年4月号

2024年の米国の野菜をめぐる状況

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調査情報部

【要約】

 2024年の夏から秋にかけ、カリフォルニア州の一部で平年を上回る猛暑となったほか、ハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」がフロリダ州の野菜、ばれいしょの生産者に大きな損失をもたらすなどの異常気象に見舞われた。悪天候などにより生鮮野菜の生産量が減少し、レタス、たまねぎなどの生産者価格が上昇した。加工用のトマト、ばれいしょなどの価格は前年をわずかに下回った。ばれいしょの生産量は前年より減少した。

1 はじめに

 日本は、たまねぎなどの生鮮野菜のほか、トマト加工品、冷凍ばれいしょなど多くの野菜・野菜加工品を米国から輸入しており、米国の野菜の生産・流通動向が日本に及ぼす影響も大きい。また、野菜の生産量は、干ばつなど気象条件の影響を受けやすく、毎年の価格変動も大きい。このようなことから、2024年の米国の野菜をめぐる状況について、米国農務省(USDA)が24年12月に公表した「野菜展望報告」を基に報告する。
 なお、単位の換算には、1ポンド=0.4536キログラム、1エーカー=0.4047ヘクタールを使用した。また、為替レートについては、1米ドル=150.67円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場)を使用した。

2 2024年の野菜産業の概観

 2024年、米国の野菜主産地では、猛暑やハリケーンといった天候不順の影響により生産量が減少し、価格が上昇した。
 表1は、米国の野菜産業の基幹となる生鮮野菜(注1)、加工用野菜、ばれいしょの需給の概要である。以下にそれぞれの状況を示した。
(注1)特に断りのない限り、生鮮野菜の生産量などからばれいしょときのこ類を除いている。
 

(1)生鮮野菜
 2024年の生鮮野菜の生産は、天候不順により生育条件が悪化し、レタス、たまねぎ、トマトなど主要野菜の生産者価格は上昇した。一方、カリフラワーとセルリー(セロリ)は、天候不順にもかかわらず、一定の生産量が得られたことで価格は高騰せず、需給の混乱は見られなかった。

(2)加工用野菜
 加工用野菜は、生産量の6割を加工用トマトが占めている。2024年は猛暑の影響により生産量が減少したものの、価格は23年末の在庫が高水準であったことなどにより前年をやや下回った。
 
(3)ばれいしょ
 2024/25年度(注2)のばれいしょの生産量は、24年の収穫面積(前年比4.0%減)および単収(同1.0%減)が共に前年を下回ることから、前年比5%減の1896万トンと見込まれている。
(注2)ばれいしょ年度は9月から翌年8月。

タイトル: p060

3 生鮮野菜の動向

(1)2024年野菜価格は前年をおおむね上回って推移
 2024年の生鮮野菜価格は、野菜主産地であるカリフォルニアでの夏から秋にかけての高温や、フロリダを襲った2つのハリケーンの影響もあり、年の大半の時期を通じて前年平均をおおむね上回って推移した。この傾向は、主要野菜であるブロッコリー、にんじん、たまねぎ、トマトで顕著となった。こうした価格上昇により、USDAの野菜価格指数(注3)は24年11月に前月比40%高を記録した(図1)。同月の指数は、前年同月比では54%高となったものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる供給網の混乱、原油価格などの高騰、異常気象、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で生産コストが大きく上昇した22年との比較では27%安となっている。
(注3)野菜の生産者価格に関する指数。

タイトル: p061a

(2)猛暑・ハリケーンの被害を受けた野菜産地
 2024年の夏・秋の猛暑は、野菜生産に被害をもたらした。7月下旬には、カリフォルニア州野菜生産地の平均最高気温は平年より約5.5℃以上高くなった。24年11月現在、USDA危機管理庁は、同年6~8月にカリフォルニア州の野菜などの生産者が被った作物の損失に対して、2270万米ドル(34億2021万円)を補償している(図2)。これは、前年同期の暑熱関連の補償額の1780万米ドル(26億8193万円)を27%、直近5年平均の1360万米ドル(20億4911万円)を67%上回る金額となっている。
 また、フロリダ州と南東部沿岸では、9月26日に上陸した「へリーン」と10月7日に上陸した「ミルトン」の二つのハリケーンが野菜生産に大きな被害をもたらした。フロリダ大学は、「ヘリーン」がフロリダ州の野菜生産者に1050万~3820万米ドル(15億8204万円~57億5559万円)の損害を与えたと試算している。なお、「ミルトン」の被害額については算定中となっている。

タイトル: p061b
 
(3)生鮮野菜消費量に占める輸入品の割合が引き続き増加
 2023年の1人当たりの生鮮野菜消費量は、00年以降大きな変化はない。しかし、この間に1人当たりの同消費量に占める輸入品の割合は大幅に増加している。23年の同割合は35.2%に達しており、00年の13.3%の2倍以上に増加した。24年1~10月の主要生鮮野菜(ばれいしょを除く)の輸入量は、前年同期比0.1%増となった(表2)。メキシコでは干ばつなどの天候不順が続いており、同国から輸入されるカリフラワーなどの生鮮野菜の供給に影響が生じた。

タイトル: p062
 
(4)低温、害虫により価格上昇
 ブロッコリー、セルリー、ロメインレタスなどの有機および慣行栽培の生鮮野菜の生産者価格は、夏の高値から下落した後、2024年11月には上昇に転じた。11月の生産者価格の上昇は、葉物野菜、ブロッコリー、セルリーの生産地が季節的に大生産地であるカリフォルニア州中央部から、同州南部やアリゾナ州へ移動する時期に生じた。この価格上昇は、砂漠地帯の低温によるレタスの生育遅延や、カリフォルニア州のブロッコリー畑における害虫発生も要因となっている。
 10~11月の有機および慣行栽培の主要生鮮野菜の生産者価格は表3の通りであり、両月とも24年には前年に比べ大幅に値上がりした品目が多くなっている。

タイトル: p063
 
(5)2024年の温室ピーマンの輸入は減少、温室トマトの輸入は増加
 2024年1~10月の温室ピーマン(有機および慣行栽培)の輸入量は、前年同期比0.2%減の39万トンであった(表4)。また、生鮮ピーマン輸入量全体に占める温室ピーマンの割合は、前年同期並みの59%となった。有機ピーマンの割合は毎月5~7%(累計4万トン)であり、このうち77%の3万トンが温室栽培であった。
 有機野菜の輸出量では、23年にはレタス(結球レタスを除く。以下同じ。)、ほうれんそう、容器入りサラダミックスの3種類の葉菜類が上位5位以内に入った。24年1~10月の有機ほうれんそうの輸出量は、前年同期比23%減、容器入りサラダミックスの輸出量は同26%減となったが、レタスは同1%増となった。レタスとほうれんそうの輸出先の上位2カ国はカナダとメキシコであり、両国で輸出量の95%以上を占めたが、有機の容器入りサラダミックスの輸出先は、台湾が46%、カナダが39%であった。

タイトル: p064a

コラム トランプ大統領の大量強制送還計画で危機に陥る可能性がある耕種農家

 米国の農業部門は、不法移民労働者に大きく依存している。USDAが2024年11月下 旬に公表した調査結果によれば、移民由来の農作物雇用労働者のうち、米国での就労が合法的に認められていない者の割合は約40%とされている。この割合は、1989 ~ 91 年度の約14%から99 ~ 2001年度には約55%にまで増加したが、近年は減少傾向に ある。20 ~ 22年は、農作物雇用労働者の32%が米国生まれ、7%が米国市民権を取得した移民、19%がその他の合法移民(主に永住権保持者またはグリーンカード保持者)、残りの42%が不法滞在者であった(コラム―図)。

タイトル: p064b
 
 このような状況の下、トランプ大統領が25年1月20日に就任し、今後、数百万人の不法移民を強制送還するという選挙公約の実施について、農業部門からの不安が高まっている。17~21年の第1次トランプ政権では、ネブラスカ州の食鳥処理場や農産物加工施設に家宅捜索が行われている。第2次トランプ政権は、公共の安全や国家安全保障上の脅威となる不法滞在者の強制送還を優先するとしているが、不法滞在の農業従事者にも強制送還の対象を広げることを否定していない。

4 加工野菜の動向

 米国の多くの野菜生産者は、加工用野菜も栽培している。加工用野菜は、外皮が厚く、形状が均一で、収穫や加工が容易となる性質を有する傾向がある。トマトは加工用野菜生産量の約60%を占め、生産額では約50%を占めている。

(1)加工用トマト、2024年の猛暑を乗り切るも品質に影響か
 加工用トマトは、ほぼ全州で栽培されている。しかし、収穫面積の94%は、温暖で凍害の少ないカリフォルニア州が占めており、同州ではほぼすべてが灌漑(かんがい)により栽培され、通常6~10月に収穫される。
 2023年に続き、24年もカリフォルニア州では灌漑用水が不足することはなかった。しかし、7月には、加工用トマトの生産が集中しているサンホアキンバレーで平均最高気温が平年より6.7℃高い猛暑となった。7月の猛暑は、収穫期に近いトマトの単収や品質には特に影響を及ぼさなかった。しかし、秋に収穫予定の若いトマトは、猛暑が始まった時期に着花したところであり、一部が落花したため、単収と品質の両方が低下した。
 このような状況にもかかわらず、USDAの24年の加工用トマトの平均単収見込みは1ヘクタール当たり112.1トンとされている(図3)。これは、23年の単収を同0.4トン、過去最高の18年の単収を同4.7トン下回るが、過去第3位の単収となる。USDAの24年5月予測では、生産量を1043万トンと見込んでいたが、その後、猛暑により1.7%下方修正して1025万トンと推定している(図4)。24年の単収は平年より高いにもかかわらず、契約面積が過去5カ年平均より少ない9万1530ヘクタールであったため、生産量は過去5年平均を下回っている。

タイトル: p065
 
タイトル: p066
 
(2)加工用トマトの価格動向
 2024年4月の野菜展望報告では、24年の加工用トマトの価格は、前年の過去最高値である1トン当たり152.0米ドル(2万2902円)から下落すると予測されていた(注4)。カリフォルニアトマト生産者協会(CTGA)は、同140.5米ドル(2万1169円)を提示していたが、実際の基準契約価格は同124.0米ドル(1万8683円)であった。
 トマト加工品の在庫水準が高いことが、加工用トマトの価格を押し下げる主な要因となっている。CTGAによれば、トマト加工年度(6月から翌年5月)の始まる6月1日現在のトマトペーストの在庫は、17年の699万トンから23年には281万トンに減少している。しかし、CTGAが24年の基準契約価格に関する最初の入札を行った23年12月の在庫は、前年同月比36%増となっていた。
 価格下落のもう一つの要因は、加工用トマトの世界的な生産量の増加である。22年より前には、中国とイタリアがそれぞれ年間約544万トンを生産し、世界第2位と第3位を行き来していた。世界加工用トマト協議会によれば、中国は23年に生産量を798万トンに増加させたが、同年の米国の1161万トンには遠く及ばなかった。しかし、24年には中国の生産量が1043万トンの見込みとされており、カリフォルニア州の生産予測である1025万トンを上回る可能性がある。
 23トマト加工年度の加工用トマトの純輸出量(輸出量-輸入量)は、約125万トンから163万トンへと約30%増加した(図5)。世界の加工用トマトに対する需要が継続的に増加していることで、24年度の輸出量が増加し、米国国内の価格上昇にもつながる可能性がある。しかし、貿易量の変化は、金利や米ドル高などのマクロ経済要因や24年産トマトの品質にも左右されるとみられる。

(注4)『野菜情報』2024年9月号「米国の野菜をめぐる2023年の状況および24年の見通し(https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2409_kaigaijoho1.html)」をご参照ください。

タイトル: p067
 
(3)冷凍野菜の在庫が減少
 2024年10月末の冷凍野菜の在庫(ばれいしょを除く)は、前年同期比5%減であった。ほうれんそう(前年同期比29%減)、カリフラワー(同20%減)、アスパラガス(同19%減)、さやいんげん(同14%減)など、多くの野菜で在庫水準が前年同期を下回った。しかし、冷凍オニオンリングの在庫が同57%増と大幅に増加したことを含め、冷凍たまねぎの在庫は同25%増となり、10月の在庫としては過去最多となった。
 
(4)2024年1~10月の貿易状況:野菜加工品の輸出入額が増加
 2024年1~10月の野菜加工品輸入額は、前年同期比9%増の66億米ドル(9944億円)であった(表5)。野菜加工品の輸入先は、最大となるカナダが同11%増で輸入量の33%を占め、メキシコが前年同期並み、中国が同14%増であった。
 冷凍野菜の輸入額は、ばれいしょ(同12%増)の増加を受けて同7%増となった。輸入量は、過去最多だった前年同期を1.5%上回った。冷凍野菜は、主にフライドポテトなどのばれいしょ製品を中心に過去3年間の野菜加工品の輸入量の約54%、輸入額の約50%を占めた。調理・保存処理済み野菜の輸入額は、トマト製品(輸入額:前年同期比37%増、輸入量:同9%増)とポテトチップス(輸入額:同25%増、輸入量:同10%増)の増加により、同12%増となった。乾燥・脱水野菜の輸入額は、でんぷんなどのばれいしょ製品が同7%減となったものの、全体では同4%増となった。
 野菜加工品の輸出額は、同7%増の32億米ドル(4821億円)であり、輸出先はカナダが最大であった。カナダへの野菜加工品の輸出額は同6%増であり、第2位のメキシコ(同10%増)と第3位の日本(同8%増)への輸出額も前年同期を上回った。
 冷凍野菜の輸出額は、ばれいしょ(同3%増)にけん引されて同4%増となった。近年、ばれいしょ製品は、冷凍野菜の輸出額と輸出量の80%以上を占めている。金額としては少ないが、アスパラガスの輸出額は同32%減、グリーンピースは同16%減など一部の冷凍野菜の輸出額が大幅に減少した。冷凍野菜全体の輸出量は同1%増であり、ばれいしょ製品、ミックスベジタブル、さつまいもの輸出量が増加した。調理・保存処理済み野菜の輸出額は、同12%増であった。近年、トマト製品は、調理・保存処理済み野菜の輸出額と輸出量の50%以上を占めており、輸出額の増加は、トマト(同19%増)、きゅうり(同26%増)、そのほかの野菜(同9%増)の増加によるものであった。

タイトル: p068

5 個別品目の状況:ばれいしょ

 本章では、米国産野菜の中で単一品目としては最も輸出量の多い、ばれいしょの動向を紹介する。なお、日本へのばれいしょの生の塊茎の輸入には、厳格な植物検疫上の要件が課せられているため、試験研究などの目的を除き経済上現実的ではなく、日本の輸入品はほぼすべてが加工品となっている。
 
(1)作付面積と単収の減少から24/25年度の生産量は減少見込み
 2024/25年度の米国のばれいしょの生産量は、収穫面積が前年比4%減、単収が同1%減と前年を下回ったことにより、同5%減の1896万トンと見込まれている。24/25年度の生育状況は州により異なるが、全米の平均単収(1ヘクタール当たり50.6トン)は、20/21年度、23/24年度に次いで過去3番目の高さが見込まれている。ワシントン州、オレゴン州、ミシガン州、メーン州は歴史的な高単収と見込まれる一方、フロリダ州の単収は5年平均の10%減、ウィスコンシン州の単収は同9%減と見込まれている(図6)。

タイトル: p069
 
 24/25年度の生産量は、直近10年間で21/22年度、22/23年度に次いで3番目に少ない水準と見込まれている。同年度のばれいしょ生産上位2州は、アイダホ州(国内生産量の32%)とワシントン州(同24%)である。ウィスコンシン州では、春の降雨が単収に悪影響を及ぼし、平均単収が02年以降で最低の1ヘクタール当たり42.6トンとなり、順位はオレゴン州に次ぐ第4位に下がった。24/25年度の生産量が前年比で増加すると予測されている州は、ミシガン州、メーン州およびコロラド州の3州だけとなった。
 
(2)ばれいしょの生産者価格の動向
 2023/24年度のばれいしょの平均価格は、生鮮ばれいしょの価格の下落分(前年度比29%安)が加工用ばれいしょの価格の上昇分(同11%高)を上回ったことで、前年度比5%安の100キログラム当たり27.1米ドル(4083円)となった(図7)。ばれいしょの販売量の約3分の2は加工用であるが、23/24年度の加工用契約量は過剰であったとみられている。生鮮ばれいしょの価格は、生産量の増減に連動するが、加工用ばれいしょの価格は、春の作付け前に生産者と加工業者が契約を結ぶため、あまり変動しない上、契約単価の上昇により前年度より値上がりして推移することが多い。過去10年間の加工用ばれいしょの価格について、最大の下落幅は15/16年度の▲6%であり、最大の上昇幅は22/23年度の20%であった。
 23/24年度の生鮮ばれいしょの生産者価格は、同22.49~28.22米ドル(3389円~4252円)であり、前年度の同40.78~57.10米ドル(6144円~8603円)を大幅に下回った。24/25年度の最初の3カ月間(24年9~11月)の生産者価格は、生産量が少なかったにもかかわらず、ほぼ横ばいで推移した。24年9月には、生鮮ばれいしょの生産者価格が12カ月ぶりに同26.46米ドル(3987円)を超えたが、10月には前月より14%安い同23.15米ドル(3488円)となった。

タイトル: p070
 
(3)冷凍ばれいしょ製品の生産者価格は上昇傾向
 2023/24年度の冷凍ばれいしょ製品(主にフライドポテト)の生産者価格指数は、加工用ばれいしょの価格上昇にけん引され、前年度を大きく上回る傾向にあった。24/25年度の最初の2カ月間(24年9月、10月)の冷凍ばれいしょ製品の生産者価格指数は、前年同期並みで推移した。同様に、ポテトチップスなどの卸売価格は、平均で前年同期を3%上回った。冷凍ばれいしょ製品とポテトチップスの生産者価格指数は、果物・野菜加工品の生産者価格指数とほぼ連動しており、平均価格の変動はインフレによる上昇期を経て、23/24年度には上昇ペースは緩やかになった。
 
(4)冷凍フライドポテトの輸入超過が拡大
 冷凍フライドポテトは、金額と数量の両方において米国のばれいしょ貿易の第1位の地位を占めている。米国は、2023/24年度に数量では5年度連続、金額では3年度連続で冷凍フライドポテトの純輸入国となった(図8)。
 23/24年度の米国の冷凍フライドポテト輸出量は、前年度比2%減で10/11年度以降の最低の79万トンであった。主要輸出先である日本とメキシコへの輸出量は前年度比3%増であったが、10%以上の減となったサウジアラビア、マレーシア、中国、インドネシア、豪州の減少分を相殺することはできなかった。23/24年度の米国の冷凍フライドポテト輸入量は、同3%増の123万トンとなり、過去最高を記録した。カナダからの輸入量が全体の86%を占め、これにEUからの輸入量が13%で続いた。EUからの冷凍フライドポテト輸入量の約9割は、ベルギー(65%)とオランダ(24%)からであった。24/25年度の最初の2カ月間(24年9月、10月)のフライドポテトの貿易は前年度の傾向を継承しており、前年度同期比で輸出は減少(数量で7%減、金額で8%減)し、輸入は増加(数量で5%増、金額で11%増)した。

タイトル: p071

6 おわりに

 2024年には、カリフォルニア州で灌漑用水の不足が問題となることはなかったが、ラニーニャ現象により夏季は猛暑となったほか、大型のハリケーンの上陸によってフロリダ州を中心に大きな被害が発生した。23年に大きな問題となった燃油や肥料・農薬といった生産費の上昇は、いまだ高水準ではあるものの、比較的安定して推移した。
 一方、すでに期限切れとなった18年農業法は、依然として新法に置き換えられることなく再延長された。24年11月の大統領選挙ではトランプ大統領が当選し、上下両院も含め共和党が多数派となった。同大統領は、現地時間25年1月20日の就任早々、数多くの大統領令に署名しており、気候変動に関するパリ協定からの離脱、2月1日にはカナダ、メキシコ、中国からの輸入品に追加関税を課すとの大統領令に署名したほか、コラムにも取り上げたとおり移民規制の強化を行うとみられている。野菜収穫は、季節的なものを含め、移民労働者に依存するところが多く、また、近年の頻発する異常気象もあり、米国の野菜における政策や貿易の動向を含めた需給状況については、引き続き注視する必要があると考えられる。