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今月の野菜 野菜情報 2026年5月号

ばれいしょのあれこれ~ヨーロッパの飢えを救ったばれいしょ、新たな品種続々~

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調査情報部

主要産地

タイトル: p030
 
 ばれいしょはナス科の植物で、原産地は南米のアンデスの高地帯といわれ、インカ帝国を征服したスペイン人によって、ヨーロッパへと伝播した。戦争や飢饉が頻発していた当時、ドイツ(プロイセン)のフリードリヒ2世が国内での栽培を奨励し、また、フランスの農学者のパルマンティエ男爵が、救荒作物としてルイ16世に進言し、栽培の普及を図ったことなどにより広まった。このことから、フランス料理で「パルマンティエ風」と言えば、ばれいしょを使った料理を指す。
 日本へは、1600年頃にオランダ貿易により、長崎に伝来した。「じゃがいも」の名称は、オランダ人が東洋貿易の拠点としていたジャワ島のジャガトラ(現ジャカルタ)に由来する「ジャガタライモ」が転訛したものといわれる。日本の作物学上の名は、「ばれいしょ(馬鈴薯)」であるが、これは江戸時代の書物に「馬の鈴に似たいも」と書かれたことに由来する。
 ばれいしょは、家庭やレストランなどで消費される「生食用」、ポテトチップスなどに利用される「加工用」、かたくり粉や麺類に利用される「でん粉原料用」に大別され、用途に合わせて、最適な品種が栽培されている。生食用の二大品種は、粉質系でほくほくした食感が魅力でポテトサラダなどに向く米国原産の「男爵薯」と、粘質系で煮崩れしにくく煮物に向く英国原産の「メークイン」とされてきたが、近年、このほかにも消費の多様化や加工に適した品種、病害虫抵抗品種、春秋二期作が可能な品種など、さまざまな品種が作付けられている。品種については、後述する「作付けられている主な品種等」や、野菜ブックをご参照いただきたい(https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kikoukara/2509_kikoukara3.html )。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和6年の作付面積は、7万900ヘクタール(前年比99.6%)と、前年よりわずかに減少した。
 上位5道県では、
●北海道 4万8700ヘクタール(同 100.4%)
●鹿児島県  4300ヘクタール(同 97.5%)
●長崎県  3030ヘクタール(同 98.7%)
●茨城県  1630ヘクタール(同 102.5%)
●千葉県  1070ヘクタール(同 99.1%)
となっている。
 上位5道県が全国に占める割合は、82.8%となっており、1位の北海道が68.7%を占めている。
 
タイトル: p031a
 
 令和6年の出荷量は、197万2000トン(前年比97.6%)と、前年よりわずかに減少した。
 上位5道県では、
●北海道  168万トン(同 98.0%)
●鹿児島県  7万7300トン(同 98.2%)
●長崎県  6万5000トン(同 88.0%)
●茨城県  4万2800トン(同 112.3%)
●千葉県  2万2500トン(同 95.7%)
となっている。
 上位5道県が全国に占める割合は、95.7%となっており、1位の北海道が85.2%を占めている。
 
タイトル: p031b
 
 出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、北海道の3.84トンが最も多く、次いで茨城県の3.05トン、千葉県の2.53トンと続いている。その他の県で多いのは、青森県の2.65トン、静岡県の2.25トンであり、全国平均は3.24トンとなっている。
 
タイトル: p031c

作付けされている主な品種等

 現在生産されている主要品種は、生食用は「男爵薯」、「メークイン」、「ニシユタカ」であり、加工食品用はポテトチップ向けの「トヨシロ」などであるが、いずれもジャガイモシストセンチュウ抵抗性がないことから、抵抗性品種への転換が課題となっている。近年、加工適性、機械化適性を有し、かつ、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性など病害虫抵抗性などを有する優良品種が育成されており、生食用では、表面の目(くぼみ)が浅いため調理しやすく食味もよい「きたかむい」、「ながさき黄金」、「アイマサリ」、「ゆめいころ」などがあり、加工用では、食味が優れ加工食品にも適した「はるか」、ポテトチップス適性の高い「きたひめ」、「ぽろしり」、「ハロームーン」などがある。先述の通り、ばれいしょの出荷量が国内のほとんどのシェアを占めている北海道は、ジャガイモシストセンチュウの発生が確認されている地域でもあるため、抵抗性品種の普及をはじめとするまん延防止対策の継続的な徹底が重要となっており、生食用で抵抗性品種の「ゆめいころ」が伸びてきており、今後、「男爵薯」の一部などが置き換わっていくことが予想される。
 
タイトル: p032

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、北海道産は周年の入荷があるが、8月には9割を占め、その後、貯蔵物の入荷が継続し、翌年の3月頃まで入荷量の大部分を占めている。12月以降は、長崎産や鹿児島産など九州産の早春物(新じゃが)が、12月以降に入荷し、翌6月頃まで続く。5月頃からは、静岡産や茨城産、千葉産などの入荷が見られる。
 
タイトル: p033a
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、8月~翌2月にかけて北海道産が多くの割合を占めている。3~6月にかけては、鹿児島産および長崎産の入荷が多い。また、6~8月にかけては茨城産、熊本産、千葉産、青森産なども入荷している。
 
タイトル: p033b

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における令和7年の価格の推移を見ると、男爵薯は1キログラム当たり135~272円(年平均201円)、メークインは同139~372円(年平均245円)、その他は同106~334円(年平均233円)となっている。年平均価格で比較すると、メークインが最も高く、次いでその他、男爵薯の順となっている。東京都中央卸売市場への令和7年の入荷量は、男爵薯が2万4839トン、メークインが7698トン、その他が3万8158トンと、その他が最も多い。入荷量の最も多いばれいしょ(その他)の卸売価格の月別推移を見ると、令和6年の5~8月が5年に比べ高くなっていることが分かる。これは、北海道以外の各県産が、生育時の天候不順の影響により入荷量が不足し、北海道産の入荷が始まる8月頃まで高値で推移したためである。その後、いったん価格は落ち着いたものの、令和7年1月以降は、北海道産の不作と、九州産地が急な気温低下による生育不良などから出荷が不安定となり、全体的な絶対量不足から、1~4月にかけ前年よりも高値となった。10月以降についても、夏場の高温の影響を受け、北海道産が小玉となり不作傾向となったことから、入荷量が少なく価格が上昇した。





 
 

輸入量の動向

 ばれいしょの輸入量の約9割は、冷凍ばれいしょが占めており、主に外食産業向けのフライドポテトや量販店の総菜などに使われている。冷凍ばれいしょの令和7年の輸入量は、前年比106.1%の44万9437トンとなっている。生鮮ばれいしょは、ほとんどがポテトチップスへの加工に仕向けられている。生鮮ばれいしょの同年の輸入量は、4万8319トン(前年比135.5%)であった。
 冷凍ばれいしょの国・地域別輸入量を見ると、7年は、約6割を占める米国のほか、中国、ベルギー、オランダ、カナダなどから輸入されている。生鮮ばれいしょは、米国がほぼ100%となっている。
 
タイトル: p035

輸出量の推移

 ばれいしょの輸出は、直近7年で1000~2500トンの間で推移している。令和7年の輸出量は1913トンで、その他調製が最も多く60%を占め、次いで冷凍が21%、生鮮が19%となっている。
 それぞれの形態別(類別)に輸出先を見ると、その他調製は5年までは中国向けが最も多かったが、6年以降は中国向けがかなり減少しており、7年は香港向けが432トン、台湾向けが402トン、次いで米国向けが72トンとなった。
 冷凍は、平成30年は中国が最も多かったが、7年は台湾が130トン、米国向けが115トン、香港向けが43トンとなった。
 生鮮は、令和2年はマレーシアが全体の5割以上を占め、次いで香港となっていたが、3年以後は香港向けのシェアが増え、7年はそのほとんどは香港向けで、358トンとなった。
 
タイトル: p036
 
タイトル: p037a

消費動向など

 ばれいしょの1人当たり年間購入量は、令和2年以前は3100グラムを上回って推移していたが、3年以降は3000グラムを下回って推移しており、7年は2742グラムと減少した。
 小売価格(東京都区部)の動向を見ると、平成30年以降、価格が上昇しており、令和2年までは1キログラム当たり300円台で推移していたが、3年以降は5年を除き400円台で推移し、7年は508円と最も高くなった。
 
タイトル: p037b

  
 
 ばれいしょは、フランスでは別名「大地のりんご」と呼ばれ、ビタミンCがりんごの倍以上含まれる。ばれいしょのビタミンCは加熱しても壊れにくく、煮たりゆでたりしても高い栄養価を保つ。主成分であるでん粉はエネルギー源となるほか、ビタミン類を豊富に含み、また、高血圧予防に効果的なカリウムや、腸内環境を改善する食物繊維なども豊富である。近年、消費者の嗜好の多様化もあり、カラフルポテトとして、高カロテン含有品種(インカのめざめなど)やアントシアニン含有品種(ノーザンルビーなど)も開発されている。季節によって、各産地からさまざまな品種が届くばれいしょは、その個性を楽しみながら、いろいろな料理に使いたい野菜である。
 ばれいしょを使ったレシピを以下に紹介する。

     https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00158.html