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今月の野菜 野菜情報 2026年1月号

はくさいのあれこれ~冬のホッとな食卓に欠かせない「はくさい」~

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調査情報部

主要産地



 はくさいは、日本の冬の食卓に欠かせない野菜であるが、意外にも日本での栽培の歴史は比較的浅く、本格的に日本へ渡ってきたのは、明治8(1875)年、勧業寮出張所(現在の新宿御苑)で試作されたのが始まりとされる。その後、明治27~28年の日清戦争を機に兵士が持ち帰り、広まったといわれている。
 はくさいは大きく分けて、結球・半結球・非結球の3タイプがあるが、現在日本で多く出回っているのは結球タイプである。近年、カットして販売されることが多いため、半分に切った時の見た目の美しさから、中心部が黄色い「黄芯系」が主流である。また、少人数の家庭向けに小型品種(ミニはくさい)も開発され、重さは通常の結球はくさいの4分の1程度の1キログラム前後である。江戸東京野菜の一つである下山千歳白菜は「白芯系」の大型で、大きいものは10キログラムもの重さになる。その他、甘みが強い「オレンジはくさい」や煮込み料理に向く「たけのこはくさい」(中国で品種改良された「紹菜シャオツァイ」)、漬物や炒め物に利用される非結球はくさい「山東さんとう」などがある。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和6年の作付面積は、1万5300ヘクタール(前年比98.1%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5道県では、
●茨城県  3300ヘクタール(同 100.6%)
●長野県  2790ヘクタール(同 99.6%)
●埼玉県  499ヘクタール(同 101.8%)
●北海道  498ヘクタール(同 101.4%)
●福島県  445ヘクタール(同 94.3%)
 となっている。
 
タイトル: p029a
 
 令和6年の出荷量は、69万6500トン(前年比97.6%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5道県では、
●茨城県  22万8900トン(同 100.4%)
●長野県  20万4100トン(同 100.5%)
●群馬県  2万  100トン(同 101.0%)
●北海道  1万8500トン(同 108.2%)
●埼玉県  1万8200トン(同 102.2%)
 となっている。

タイトル: p029b
 
 出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、長野県の8.10トンが最も多く、次いで茨城県の7.52トン、群馬県の5.86トンと続いている。その他の県で多いのは、和歌山県の6.44トン、長崎県の6.05トンであり、全国平均は5.41トンとなっている。
 
タイトル: p029c

作付けされている主な品種等

 はくさいは、冷涼な気候を好み高温に敏感な一方、寒すぎても結球しないため、種子の選択、作型、産地、適期適温での栽培、品種を組み合わせて、北海道から九州まで、高冷地や平地を産地リレーしながら、周年供給がなされている。
 はくさいが伝来してから150年、育種や生産の現場では、さまざまな試行錯誤が行われ、現在の日本のはくさいの品種数は非常に多く450種以上あるといわれる。はくさいの品種名を見ると、「ちよぶき70」のように数字がついているものがあるが、この数字は()(しゅ)時期から収穫時期までの日数の目安を示したものである。はくさいは品種の早晩性により、播種の時期はそれほど違わないのに、収穫時期が大きく違ってくるのも特徴であり、各産地では、品種特性を活かし、地域の適期に合わせた栽培の工夫が見られる。
 
タイトル: p030a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、11月~翌5月の冬から春にかけて茨城産が主流となり、その他、関東近在の群馬産、埼玉産に加え、関西の兵庫産が入荷した。6~10月は長野産が増え中心となり、茨城産、群馬産、兵庫産も入荷した。
 
タイトル: p030b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、11月~翌5月にかけて、全国で出荷量の最も多い茨城産の入荷が見られるが、1~4月は、関西近在の兵庫産、愛知産、和歌山産に加えて、九州の長崎産、熊本産、鹿児島産からの入荷もあり、多くの産地からの入荷が見られる。夏場の6~10月は、長野産が中心の入荷であった。
 
タイトル: p031a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場におけるはくさいの価格は、旬を迎える冬場(11月~翌2月)に下がり、3月以降の春先にかけてやや上昇する傾向がある。令和6年の3~5月にかけて、その直前2年より大幅な高値となっているが、これは、主力となる茨城産の作付面積は前年並みであったものの、暖冬の影響により生育が大幅に前進し、秋冬作の切り上がりが早く、一方で春作が追いつかなかったことから端境が生じ、その後も総入荷量が少なかったことによるものである。
 
タイトル: p031b

輸入量の動向

 生鮮はくさいの輸入は、平成30年の輸入量が多いが、この年は前年秋の台風および天候不順の影響により、出荷量が大幅に減少し、国産の価格が高騰したことから、加工・業務用需要を中心に、中国に加えて韓国からの輸入が大幅に増加したことが要因とされる。生鮮はくさいは、国産の不作時以外の輸入は非常に少ないが、国産が不作になり高値となった場合に、加工・業務用として輸入が増える傾向が見られる。
 
タイトル: p032a

はくさいの消費動向

 近年のはくさいの1人当たりの年間購入量を見ると、2500~2900グラムで安定して推移しているものの、令和3年の2922グラムをピークにその後は減少に転じている。小売価格の動向を見てみると、購入量が最も多かった3年は、1キログラム183円と200円を下回ったが、4年以降は上昇しており、それに伴い1人当たり年間購入数量が減少している。
 はくさいは、くせがなく漬物、鍋物、炒め物など和洋中どの料理にも使いやすい野菜である。特に、寒さに当たったはくさいは甘味が増し、うま味成分のグルタミン酸も多いため、冬場の鍋物の具材として欠かせない野菜である。また、漬物としての存在感は大きく、特にキムチとしての消費が伸びている。野菜の漬物は植物性の乳酸菌で発酵するが、乳酸菌は腸内環境のバランスを整えるため、「腸活」にも一役買う。成分としては、カリウムが含まれ、むくみ予防や高血圧抑制効果が期待される。カリウムは煮るとスープの中に溶け出す性質があるため、スープ料理にすると栄養成分を効率的に摂取することができる。
はくさいを使ったレシピを以下に紹介する。