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今月の野菜 野菜情報 2025年12月号

しゅんぎくのあれこれ ~香り高い和風ハーブ「しゅんぎく」は濃い味付けの鍋にオススメ~

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調査情報部

主要産地

タイトル: p029
 
  しゅんぎく(春菊)は、キク科に分類され、春に花が開き、葉が菊に似ていることが名の由来とされ、俳句の季語では「春」とされるが、旬は冬である。地中海沿岸を原産とし、日本へは中国を経て室町時代に渡来した。アジア諸国ではしゅんぎくを食用とするが、欧米では菊の香りがあまり好まれず、観賞用として栽培されている。日本では、さわやかな香りとシャキシャキとした食感、食卓を彩る鮮やかな緑色が好まれ、鍋料理の定番野菜として広く浸透している。東日本ではしゅんぎく、西日本では菊菜(きくな)と呼ばれ、品種も異なり、葉の大きさや切れ込み方により大葉(おおば)種、中葉(ちゅうば)種、小葉(こば)種に大別される。関西から九州にかけては大葉種が出回るが、全国的に栽培されているのは、葉が薄くて切れ込みが少ない中葉種で、この中葉種は株の形状により、株立ち型と株張り型に分かれる。その他、加賀野菜の一つである「金沢春菊」は「ツマジロ」という地方名で呼ばれ大葉種に分類されるが、葉が広くて丸みがあり、クセのない独特の香りとやわらかさが特徴である。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和6年の作付面積は、1650ヘクタール(前年比98.2%)と、前年よりわずかに減少した。
 上位5府県では、
●大阪府  176ヘクタール(同 95.7%)
●福岡県  166ヘクタール(同 94.9%)
●茨城県  129ヘクタール(同 100.8%)
●千葉県  123ヘクタール(同 99.2%)
●群馬県  99ヘクタール(同 91.7%)
となっている。
 
タイトル: p030a
 
 令和6年の出荷量は、1万9400トン(前年比94.6%)と、前年よりやや減少した。
 上位5府県では、
●大阪府  2860トン(同 94.1%)
●千葉県  1920トン(同 94.6%)
●福岡県  1910トン(同 91.0%)
●茨城県  1590トン(同 94.1%)
●群馬県  1460トン(同 90.7%)
となっている。
 
タイトル: p030b
 
 出荷量上位5府県について、10アール当たりの収量を見ると、千葉県の1.78トンが最も多く、次いで群馬県の1.75トン、大阪府の1.70トンと続いている。その他の県で多いのは、栃木県の2.32トン、愛知県の1.92トンであり、全国平均は1.41トンとなっている。
 
タイトル: p030c

作付けされている主な品種等

 しゅんぎくの種類は、前述の通り、葉の大きさや切れ込み方により、三つに大別される。関東を中心に出回る株立ち中葉は、茎が立ち上がって分枝し、伸長した茎を摘み取って丈を(そろ)えて出荷する。摘み取った後もわき芽が次々と生育するため、長期にわたり出荷できる利点がある。主な品種に「さとゆたか」や「おきく3号」がある。関西を中心に出回る株張り中葉は、茎が立ち上がらず、株が根元から横に張って生育する。側枝の分岐が多く、日持ちするよう根をつけたまま根元から切り取って出荷される。主な品種に「冬の精」がある。中国・九州を中心に出回る大葉は、葉が大きく丸い形が特徴で、ふぐの本場とされる山口県や北九州地方などでは、ふぐちりの具材として欠かせない。主な品種に「大葉春菊」がある。また、大葉種と中葉種の中間に位置する「みさか」は、やわらかくしゅんぎく特有のえぐみが少ない上に切れ込みが深く、飾りとしてのかわいさもあるため、サラダ春菊としても人気がある。
 
タイトル: p031a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、周年で出回っているものの、旬を迎え需要も多くなる11月から翌2月の入荷は200トンを超えている。千葉産など関東近県からの入荷が多いが、夏場は岩手産や青森産などの東北産も入荷している。
 
タイトル: p031b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、冬場を中心とした入荷となっている。1年を通して関西の主産地である大阪産の入荷が多く、和歌山産や福岡産のほか、岐阜産、京都産なども入荷している。
 
タイトル: p032a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場におけるしゅんぎくの価格(令和6年)は、1キログラム当たり568~2067円(年平均869円)の幅で推移している。入荷量の少ない8月や9月に高値となり、その後下降するが、12月や1月には鍋物などの需要により上昇に転じている。
 
タイトル: p032b

大阪中央卸売市場における価格の推移

 大阪中央卸売市場におけるしゅんぎくの価格(令和6年)は、1キログラム当たり437~1716円(年平均674円)の幅で推移している。東京都中央卸売市場と同様に、入荷量の少ない7月から9月に高値となり、その後下降するが、12月から翌2月には鍋物などの需要により上昇に転じている。
 

タイトル: p033a

消費の動向

 栄養価の高い緑黄色野菜の一つであるしゅんぎくは、体内でビタミンAに変わるβ-カロテンが、ほうれんそうやこまつなよりも多く含まれている。β-カロテンには、皮膚や粘膜、夜間の視力の維持を助け、風邪の予防に効果があるといわれている。また、その他にも造血作用があるといわれる葉酸や、高血圧の予防に効果的なカリウムやビタミンE、骨や歯を丈夫にするカルシウム、貧血を予防する鉄など、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいる。
 しゅんぎくの特徴となっている独特の香りは、α-ピネンやペリルアルデヒド等など、10種類ほどの精油成分(エッセンシャルオイル・揮発性の芳香物質)によるもので、胃腸の働きを促進して、胃もたれの解消にも効果がある。主に発汗作用や消化促進作用があるほか、痰を切って咳を鎮める効果もあるといわれる。なお、精油はエッセンシャルオイルとも呼ばれ、ハーブやアロマテラピーなどの浸透で昨今親しまれている。
 しゅんぎくは、鍋物によく使われ、醤油や味噌などを使い濃いめの味付けをするすき焼き、あんこう鍋、ぼたん(イノシシ)鍋、鴨鍋などの具材として欠かせないものとなっている。香り高い和風ハーブとも言われるしゅんぎくを使ったレシピを以下に紹介する。